ラポールの意味や由来とは?効果や手法についても紹介
ラポールは、もともとは相互の信頼関係を意味する心理学の用語です。近年は良好な人間関係構築のためのコミュニケーションスキルとしても注目されていますが、ビジネスではどのように活用していけばよいのでしょうか。
今回は、ラポールの代表的な手法や役立つシーンについて解説します。組織の人間関係の改善や顧客との関係を築くために役立つ考え方ですので、参考にしてください。
ラポールとは
まずはラポールとは何かについて、語源から解説します。
ラポールの意味・由来・語源
「ラポール」とは、カウンセリングの場面でカウンセラーとクライエントの間で築かれた、相互の信頼関係を指します。
フランス語の「rapport」が語源と言われており、「橋を架ける」という意味から、心が通じ合い、互いに信頼しあい、相手を受け入れていることを表します。
ラポールの形成は、その後のカウンセリングを継続していくために最も大切なコミュニケーションスキルの一つです。
ラポールの形成は近年、ビジネスや家庭などで人間関係の構築や改善を図る時にも用いられるようになりました。
特にコミュニケーション活動でもあるビジネスでは、部下や後輩に向けたマネジメントや取引先との商談の際にもラポールを築くことが大切です。
ラポールの心理学との関係性
ラポールが形成されると、相手は安心して自分自身の思いを語りだします。背景には、心理学を根拠とした姿勢と技法があります。
姿勢は、人間性心理学から生まれた来談者中心療法の中核3条件「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」がベースです。たとえ相手の世界観が自分と違っても尊重し、理解しようと努めます。
技法は、神経言語プログラミング(NLP)から生まれたコミュニケーションスキルを利用します。自分と似ているものに親しみを感じやすい「類似性の法則」を交えた関わりで、相手の警戒心を解いていきます。
ラポールの必要性と効果
ラポールがビジネスの世界で使われるようになったのはなぜなのでしょうか?
ここからは、ビジネスシーンでのラポールの必要性や効果について解説します。
ラポールの必要性
ビジネスシーンでラポールが必要とされるのは、顧客や取引先、上司、部下と良好な関係、つまり相手の警戒心を解き、心が通い合うような関係性が築ければ、ビジネスでの成果につながるからです。
一人ひとりが独自の存在だと尊重し、役割を超えて相手を理解しようとする姿勢で話を聴くため、ラポール形成の過程で信頼関係が育まれます。「この人になら、何を話しても大丈夫」という心理的安全性が確保された状況になれば、本音を語ってもらいやすくなります。
その結果、部下のマネジメントをしやすくなったり、商談でこちらの提案を聞いてもらえたりするだけでなく、想像力豊かなアイデアから新たなビジネスが生まれる可能性にもつながるでしょう。
ラポールの効果
ラポールが形成されると、互いに不利益を与える存在ではないと分かった安心感から、スムーズな意見交換ができるようになります。同時に、こちらの提案や意見も受け入れてもらいやすくなります。
たとえば、ラポールを築くことによって、相手は以下のように変化します。
- お客様が本音で課題やニーズを話してくれる
- お客様が自分の提案や説明を信頼して聞いてくれる
- 部下が本音で悩みや相談をしてくれる
- 部下へのアドバイスを真剣に受け止めてくれる
特に新規顧客への営業活動は、相手からの信頼がないところから始まることがほとんどです。だからこそ、相手に心を開いてもらえるような関係になるために、ラポール形成の姿勢や技法が有効です。
ラポールを形成する代表的な3つの手法
ラポール形成には、複数の手法が存在します。ここからは代表的な3つの手法について解説します。
ミラーリング
「ミラーリング」は、相手の動作を鏡に映しているように模倣する手法です。
- 表情:口角や目の開き具合
- 体:腕組みや足組み、ジェスチャー
上記についてなど、相手のしぐさや姿勢といった非言語領域を観察して合わせていきます。
ただ、やりすぎて相手に気付かれると不信感を抱かれ、逆効果になりかねません。コミュニケーションの一環として、自然に行うのがポイントです。
「あなたに共感し、好意があります」というメッセージを、意識と無意識の両面から相手に与えられる効果があります。人間は自分に似た相手に対して、無意識に安心感や親近感を覚えるからです。あなたを自分と似た存在であると認識するからこそ、相手の警戒心を解くことができます。
参考:日本NLP協会公式サイト|日本NLP協会用語集
ペーシング
「ペーシング」は、相手の話し方や状態、呼吸に合わせてコミュニケーションを図る手法です。相手の声の調子や話すスピード、ボリュームに合わせて話すほか、明るさや静けさ、暗さ、感情の起伏といった相手の状態にも合わせます。
さらに「息が合う」という言葉があるように、呼吸もペーシングします。相手の肩や胸や腹部の動きを観察しながら、同じ呼吸のリズムになるよう合わせていくと、相手の無意識にまで関わることができます。
ペーシングには聞き手と話し手の間に一体感を生み、話し手が安心して話ができるようになる効果があります。
ただ、ミラーリングと同様、過剰に行うと相手に気付かれるので、注意が必要です。
参考:日本NLP協会公式サイト|日本NLP協会用語集
マッチング
「マッチング」はペーシングの一部で、相手の声の調子に合わせる手法です。相手の声のボリュームが大きいか小さいか、テンポは早口かゆっくりか、声のトーンは高いか低いかといった聴覚情報を見極めながら、リズムを合わせて会話を進めます。
コールセンターなど、電話を使った仕事では、必要なスキルです。
会話のテンポがずれている相手との会話は、話しにくさを感じるものです。だからこそ相手と同じリズムで話ができれば、親近感を与えられます。
マッチングが使いこなせるようになると、あえて相手に合わせないことで、場の雰囲気をコントロールすることも可能になります。たとえば、早口で怒りをぶつけてくる相手を鎮めたい場合は、あえて穏やかにゆっくり話します。
ラポールが仕事で役に立つシーンを紹介
ここからは、ビジネスでのラポールは実際にどのようなシーンで効果的なのかについて解説します。
医療・介護現場
ラポールの形成は、医療や介護の現場で役に立ちます。
たとえば、医師と患者の関係において、医師が「患者のため」と思って提案しても、話を遮られたり、セルフケアをしなかったりする患者もいます。
関係性が築けていない、あるいはコミュニケーションが一方的と感じた時こそ、ラポール形成が必要です。
介護現場でも同様に、スタッフと施設の利用者にラポールが築けていれば、安心して介護や介助を受けてもらいやすくなります
もちろん、組織内の関係性向上にも役立ちます。特に医療や、介護の現場はスタッフ間の連携が不可欠です。ラポールが形成されていれば、コミュニケーション不足による情報の抜け漏れやトラブルの防止につながるでしょう。
営業の現場
商談では、相手の警戒心を解き、安心して自分の話を聞いてもらう必要があります。そのためにも、顧客との関係性を早く構築しなければなりません。
だからこそ、営業の現場でラポールの形成は必須のスキルです。
まずは、相手のことを理解するために、しっかり話を聞くことから始めましょう。自分たちの商品やサービスを提供・提案することばかり考えがちですが、ラポールを形成するスキルを使って、相手の話を聞きながら関係構築を図ることが先決です。
食事などで同席する場合は、ミラーリングの手法を使って相手と食べ方を合わせれば、親近感を持ってもらえるでしょう。相手の心理的安全性が確保され、本音を話してもらいやすくなります。
ラポールについてのまとめ
ラポールとは、カウンセラーとクライエント間の相互の信頼関係のことです。ラポール形成は顧客や取引先、上司や部下との良好な関係を築くための手法であることから、ビジネスの世界でも注目を集めています。
特に、互いの信頼関係が重要な医療・介護現場や営業の現場では、ラポール形成は必須のスキルと言えるでしょう。
ミラーリングやペーシング、マッチングといった手法を活用して、本音を話してもらえるような関係を築き、ビジネスの成果につなげましょう。
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