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年功序列の意味や特徴は? 制度のメリットや企業事例を紹介

年功序列の意味や特徴は? 制度のメリットや企業事例を紹介

年功序列は、終身雇用制度とともに日本企業の多くで採用されている人事制度です。少子高齢化や成果主義の台頭によって、時代に合わない雇用形態とも考えられていますが、実際の日本の現状はどうなのでしょうか。

今回は、年功序列の特徴やメリット、年功序列制度を廃止した会社の事例を紹介します。企業の優秀な人材確保や人材育成に関わる話ですので、参考にしてください。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

年功序列とは?

まずは、年功序列とは何か、日本での現状について解説します。

年功序列の意味

年功序列とは、勤続年数や年齢が高い社員ほど、賃金や役職などにおいて優遇されやすい制度です。終身雇用制度が中心だった時代にセットで扱われることが多かったので、日本の一般的な雇用制度としてよく知られています。

長期雇用の傾向が強く、現在のような転職などによる労働力の移動が少ない以前の日本の雇用形態のなかでは、合理的な制度と考えられていました。

年功序列の現状

年功序列の雇用制度を採用している日本企業の数は、着々と減少しています。年功序列制度は、少子高齢化の進展などによって、現在の日本の雇用環境に適さなくなっていると考えられているからです。

IT技術の進歩や成果主義の台頭などによって、能力のある人材はどんどん条件の良い会社へ転職をするようになる傾向が高まっています。年功序列による雇用形態のあり方がそぐわなくない、と考える人が増えているともいえるでしょう。

経済が停滞期を迎え、労働力人口が減少傾向にある状況の中、年功序列制度が適しているとは必ずも言えず、営業職や不動産業界等のように、年齢や勤続年数よりも成果(ノルマ)が重視された業界もあります。

年功序列の廃止はある?

年功序列が採用されている会社の数は、年々減少傾向にあります。近年、労働力人口は少子高齢化により減少しているため、終身雇用の制度自体が成立しなくなる未来も十分に考えられます。

今後も働き方の変化や国際的な競争力を保つために、年功序列を廃止する企業は増えていくと予想されます。

しかし、終身雇用制度のメリットが大きい業種もあるため、完全に廃止されることは考えにくいでしょう。


年功序列型賃金制度の特徴

年功序列型の賃金制度には、以下のような特徴があります。

  • 年齢や勤続年数が長くなるにつれて、賃金水準が高くなる
  • 企業への帰属意識が高くなる
  • キャリアプランを構築しやすい環境である

年功序列型賃金制度は、その名のとおり、年齢や勤続年数に応じて賃金の水準が上がる賃金制度です。若い社員は賃金水準は低く設定されており、年齢や職歴が長くなるにつれて、役職が昇進し、賃金などの待遇面についても水準が引き上げられることが大きな特徴です。

また、年功序列は年齢や勤続年数に応じて賃金水準が高くなるため、少しでも長く会社に勤めた方が得られるメリットが大きくなると考えられます。良い待遇で仕事をしたい人や安定した環境を求める人にとっては、望ましい環境です。そのため、会社への帰属意識が高くなり、離職する人は少なくなるでしょう。

年功序列制度は終身雇用とセットで導入されていることが多いため、入社してから定年退職までの期間のキャリアパスをどのように構築するか、イメージしやすいことも特徴です。

キャリアプランとともに、評価制度も分かりやすいものになっていることが多く、何歳までに目指すキャリアを実現させるために、どのような評価基準をクリアする必要があるかについても明確です。一つの会社で定年まで働きたい社員にとって、キャリアプランの形成がしやすいといえます。


年功序列のメリット

ここからは、年功序列制度を導入する企業にどんなメリットがあるかについて解説します。 

1.長期的な人材育成計画を構築できる

年功序列を導入している企業は、終身雇用の制度も合わせて導入しているところが多いため、社員が定年までの長期間にわたって定着する可能性が高いといえます。

年齢や勤続年数が長くなるにつれて役職の昇進や賃金水準の向上がともなうため、長期的なキャリアプランの内容とかみ合ったキャリア形成を行うことができるでしょう。

2.離職率を低く抑えることができる

年功序列の大きな特徴として、終身雇用制度を併せて導入していることがあります。安定した雇用環境下で働くことができるため、社員が離職するリスクを減らせることは大きなメリットです。

また、一つの会社で長期間働くことで、他の社員とのコミュニケーションも密になります。社員同士の仲間意識が強くなれば、良好な人間環境の職場を離れたくないという考えになり、離職する可能性を抑えることができます。


年功序列のデメリット

長期的に人材を育成できる年功序列制度にはデメリットもありますので、解説します。

年功序列によるモチベーションの低下

年功序列は年齢や勤続年数が長くなればなるほど得られる恩恵が大きいため、入社して間もない若手社員にとっては、不公平感を感じやすい制度です。同じ水準の仕事をしているのに、年齢や勤続年数が長いという理由だけで賃金の水準が高いことに不満を持つ場合があります。

社員に不満が募るデメリットは、モチベーションの低下を招くだけではありません。早期退職者が続出することで、人材不足に陥るといった最悪な結果となるリスクも生じます。

人件費の高騰

年功序列は年齢や勤続年数の増加に伴って賃金水準が上昇するため、年齢が高い社員が増えれば、賃金などの人件費が高騰しやすくなります。

また、ベテラン社員になったからといって、必ずしも仕事ができる人ばかりではありません。賃金と業績が釣り合わない人にも高い賃金を支払う必要が出ることになり、高額な人件費が経営における足枷となることも考えられます。


年功序列と成果主義の割合

年功序列と対極にある成果主義は、年齢・勤続年数に関わらず、個人の成果に基づき賃金などが決まる制度です。年功序列と成果主義の割合について、日本と海外を比較しながら解説します。

日本企業の割合

年功序列制度を採用していた日本企業も、2000年代から大企業を中心に、業績や成果を賃金の評価基準とする成果主義の採用を始めています。

しかし、長期的な安定した雇用を企業として考えているところも多く、まだまだ年功序列に対する考え方を支持している人が多いことがうかがえます。

とはいえ、年功賃金制度については2000年代後半から、徐々に否定的な考え方を持つ人が増えているとも言われています。

海外企業の割合

海外では大半の企業において成果主義が採用されており、特にアメリカではほぼすべての企業が成果主義を採用しています。

また、日本の近隣諸国である中国や韓国の企業については、1990年代は日本と同様に年功序列の採用をしている割合が高かったものの、近年では、成果主義を採用している企業の割合が増加しているとも言われてます。

海外と比べて、日本では年功序列を採用している企業の割合がかなり多いことが伺えます。


年功序列を廃止した会社

ここからは、年功序列を廃止した代表的な会社として「パナソニック」と「三菱ケミカル」の事例を紹介します。

1.パナソニック

パナソニックは、2015年に年功序列制度と終身雇用制度を原則廃止しました。新しい制度ではまず、管理職の人に対して役職や業務の内容によって賃金が変動する役割等級制度を導入しました。

その後、若手社員のモチベーションを向上させるために、一般社員についても同様の制度を導入。成果主義による賃金体系を浸透させるようになりました。

なお、電機メーカーでは他にも三菱電機・ソニーといった大手企業が、年功序列賃金制を廃止することを決定しています。

2.三菱ケミカル

化学業界大手の三菱ケミカルは、2020年10月に人事制度の刷新を行いました。管理職社員に対して、職務内容を明確にしたうえで、実際の成果を基に評価するジョブ型雇用制度の導入が大きな変更点です。職務の能力や実績が高い人には特別な処遇が行われます。

社員のモチベーションを引き出しつつ、会社への貢献度を上げることが導入の狙いです。

新しい人事制度の導入の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による働き方の変化も影響しています。在宅勤務などのさまざまな働き方が広がり、働き方改革が進んだことが企業に変化を促したと考えられます。


年功序列についてのまとめ

年功序列は、勤続年数や年齢に応じて賃金や役職などが優遇される制度です。

個人の成果によって賃金や役職が決まる成果主義に比べて、長期的な人材育成ができることや離職が抑えられることがメリットです。

ただ、少子高齢化やIT技術の進歩といった時代の変化に合わせて、年功序列を廃止する企業も増えてきています。人事評価制度の変更は、企業経営にとって大きな変化となりますので、年功序列と成果主義のどちらが適切か、慎重に見極めていきましょう。

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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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