フィードバックとは? 意味を簡単に解説! 得られる効果や具体例も紹介
フィードバックとは、問題解決や成長促進を目的として、口頭や文章などで行う教育や指摘、評価のことです。ビジネスにおいては、従業員の目標達成や、業務内での行動や言動に対する軌道修正などを目的として、フィードバックが行われています。
一口にフィードバックと言っても、大きく分けて3つの種類があり、それぞれの型が適しているシーンも異なります。フィードバックをする立場の人は、目的と手段を正しく理解したうえで行うことが大切です。
本記事では、実際の会話の例を含めて、フィードバックの種類や、やり方を紹介します。
フィードバックの意味とは? わかりやすく解説
まずは、フィードバックの意味を確認していきましょう。
フィードバックの定義
フィードバック(Feedback)とは、問題解決や成長促進を目的として、口頭や文章などで行う教育や指摘、評価のことです。
Feedbackは、「feed(餌を与える)」と「back(返す)」という異なる意味の単語が1つになった言葉で、もともとは「フィードバック制御」という、制御工学の分野から生まれたといわれています。当初は、出力(結果)を入力(原因)側に戻す操作のことを指していました。
現代では、教師と学生の間、上司と部下の間、カウンセラーとクライアントの間、コーチと選手といった、教育の現場やビジネスシーン、カウンセリングの場などでフィードバックが広く行われています。
消費者が商品やサービス、応対の感想をメーカーや店舗、企業側に伝えたりすることもフィードバックに相当します。
ビジネスにおけるフィードバックとは
ビジネスの場では、従業員の目標達成や、業務内での行動や言動に対して軌道修正などをするために、フィードバックが活用されています。口頭や文章を通じて、教育・指摘・評価を行うのが一般的です。
企業では、人材育成や人事考課の際に、上司と部下が1対1形式で実施されるケースが一般的です。その際、上司が部下に対して、一方的に問題点や改善点を指摘するのは適切とは言えません。部下の仕事ぶりを公正に評価し、具体的な根拠を論理的に示したうえで、成長を促すために改善点を伝えることが大切です。
また、課題だけでなく、相手の良かった点を伝えることも忘れないようにしましょう。フィードバックを受けた部下は、課題への気づきを得て、ミスの予防やスキルアップに前向きに取り組もうとするでしょう。
フィードバックにより得られる効果
フィードバックによって得られる効果には、次のようなものがあります。
モチベーションの向上
フィードバックは、問題点の指摘だけをするのではなく、それまでの取り組み姿勢や努力、成果などの良い点に対する評価も伝えていくと良いでしょう。それにより、相手の部下も、指摘を受けた問題点や克服すべき課題を冷静かつ、謙虚に受け入れやすくなります。
また、上司からの客観的かつ公正な評価を受けることで、部下の自信や自己効力感、モチベーションも高まります。さらに、定期的に評価(褒めること)を行い、新たな課題の指摘や提案のサイクルを回すことで、部下の高いモチベーションを維持することも可能でしょう。
パフォーマンスの向上
フィードバックの目的には、業務目標達成に対する軌道修正を図る役割があります。部下が成果の上がらない問題行動や、間違った方向での努力をしていた場合は、それを適宜指摘したり、アドバイスをしたりすることで改善へと導けます。
フィードバックによってモチベーションが上がった部下は、上司の指摘や指導に対して、自主的かつ意欲的に取り組むでしょう。個人はもちろん、チーム全員、ひいては企業全体の生産性の向上や効率化、業績アップにつながる可能性もあります。
上司と部下の信頼関係の構築
定期的なフィードバックを実施することで、上司と部下のコミュニケーションの機会も増えます。また、上司が自分自身や仕事ぶりに対して関心を持って見ていてくれていたこと、公正な評価をしてくれたことに対して、上司に対する信頼感も高まることでしょう。
その結果、チーム全体の雰囲気が良くなり、メンバー間のコミュニケーションもスムーズになる効果も期待できます。上司が部下に対して一方的に話すのではなく、部下の話にも耳を傾け、双方向のコミュニケーションを図ることが大切です。
若手人材の効果的な育成
中堅社員やベテラン社員に対して定期的に行うフィードバックとは別に、新卒や中途入社の仕事経験の浅い若手社員の育成には、必要に応じてこまめなフィードバックを行うことが有効です。
業務未経験の彼らが仕事を覚え、職場環境に慣れるまでには、かなりの期間を要します。その間、先輩社員が教育担当やメンター役を務めるのが一般的ですが、若手の新人社員に仕事を教えながら、その都度フィードバックをするのが効果的です。
また、新人社員へのフィードバックは、誰が担当するかによって成果が大きく変わります。適材適所だけでなく、メンターと新人社員との相性も考慮しましょう。
【種類別】フィードバックの方法
フィードバックは、主に次の3種類に分けられます。
- サンドイッチ型
- ペンドルトン型
- SBI型
それぞれの特徴と、適したシーンを見ていきましょう。
サンドイッチ型
「褒める→改善点を伝える→褒める」というように、ポジティブなフィードバックの間にネガティブなフィードバックを挟む手法です。
この手法を用いれば、相手のモチベーションを下げることなく、改善点を伝えられるようになります。具体的に指摘したい、ネガティブなフィードバックがある場合に使うといいでしょう。
シンプルな方法のため、特別なスキルも必要なく実施できるのが利点です。
ペンドルトン型
心理学者であるペンドルトンによって開発された手法です。上司が部下に対して一方的に評価・命令・指示をするのではなく、部下自らの内省をもとに改善点を見出し、主体的にアクションプランを考えるように促します。具体的に部下に振り返ってほしい業務がある場合に使うと有効です。
最終的に部下が改善に向けた具体的な行動計画を言語化できるようにサポートし、実行動へと導くことを目指します。その結果、部下が自発的に行動するようになるでしょう。
SBI型
SBI型とは、「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の頭文字を取ったフィードバック手法のことです。
まず、状況を説明し、次にその状況を踏まえて行動を分析し、最後に行動に伴う影響や結果を評価するというものです。この順番通りに説明することで、「いつ、どこで、どんなことが、どうなった」が明確になるため、フィードバックの内容が部下に理解されやすいのが特徴です。
部下に対して指摘したい、具体的な行動がある場合に用いると有効な手法です。
フィードバックのやり方や具体例
ここでは、フィードバックのやり方を、具体的な会話の例を挙げて種類別に紹介します。
サンドイッチ型
<例1>
ポジティブフィードバック
「今日のプレゼンは、資料がわかりやすくて良かったよ」
ネガティブフィードバック
「1つレベルアップのためのアドバイスをあげるとすれば、質疑に対する回答は、まず結論から話すことかな」
ポジティブフィードバック
「とはいえ、今日は話し方もハキハキしていて、とても良いプレゼンだったよ」
<例2>
ポジティブフィードバック
「君が作成してくれた営業所長会議の資料だけど、過去数年の我が社の実績データや競合他社と比較しながらの分析によって、我が社の課題や強みが明確になった。参加者からも好評だったよ」
ネガティブフィードバック
「ただ、文字が多い印象で、配布資料の枚数も多くなり過ぎたかもしれないね。パワーポイントも配布資料も、データを表で並べるのではなく、グラフにして見やすくすると、説明しなくても一目でわかりやすくなると思う。もっと文字数を減らして、視覚に訴える工夫をしてみよう」
ポジティブフィードバック
「とはいえ、よくできた資料だったので、次回も君に頼むよ」
ペンドルトン型
<例>
部下
「先日のイベントでの集客に関して、お話ししたいことがあります」
上司
「かなり多くのお客様を集めることができたようだね。頑張った成果が出たね」
部下
「ありがとうございます。チームメンバー全員で手分けしてお得意様にメールや電話、お手紙などでイベントの案内をして、お誘いした結果だと思います。ただ、予想以上にお客様が集まり過ぎて、スタッフで対応しきれず、お客様を長時間お待たせしたり、なかには怒って帰られてしまうお客様を出してしまいました。読みの甘さとリスクマネジメント不足を深く反省しています」
上司
「そうだね、当日はどんなことが起きるかわからないので、あらゆる場面を想定して、対応できるようにしておくことが重要だね。今回のようなことを繰り返さないためには、どうしたらいいと思う?」
部下
「あらゆる状況を想定して、こういう場合は誰をどこに配置して、どんな対応をするのか、役割分担をして、事前打ち合わせもしようと思います。そのために、マニュアルも作成しようと思っています」
上司
「それはグッドアイデアだね。完成したら、ぜひ見せてもらえるかな」
部下
「かしこまりました。考えられる状況を複数想定し、来週中にはマニュアルを完成させたいと思いますので、チェックをしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします」
SBI型
<例1>
S(状況)
「昨日提出してもらった資料について、少し時間いいかな」
B(行動)
「私が求めていた内容以外にも、自分で考えて必要なデータを追加してくれていたね」
I(影響)
「おかげで、より説得力のある資料になったよ。次からも、指示されたことだけでなく、自分で考えたことを取り入れてほしい」
<例2>
S(状況)
「君が今月の目標に掲げている、A社との契約締結に向けての進捗状況に関してなんだけど」
B(行動)
「私に対して、逐一報告、連絡、相談を怠らず、A社に対してもコミュニケーションを積極的に取って、信頼関係もしっかり築いているようだね。この分だと、順調に目標達成できそうだね」
I(影響)
「安心して君の仕事ぶりを見ていられるよ。私が同行して交渉が必要な場合は、早めに相談してもらえるかな。引き続き、この調子で頑張ってね」
フィードバックについてのまとめ
実際の会話の例を含めて、フィードバックの種類や、やり方を解説しました。フィードバックは、効果的な方法で行えば部下のモチベーション向上やスキルアップにつながりますが、やり方を間違えると相手が心を閉ざし、逆効果になってしまう可能性もあります。
フィードバックをうまく機能させるには、日頃から良好な関係性を築いておくことが大切です。コミュニケーションを積極的に行い、関係性が構築されてからフィードバックを行うことで、より高い成果が期待できるでしょう。