仕事中に昼寝を取り入れる効果は? 導入のポイントを解説
近年、仕事中に昼寝の時間を設ける企業が増えつつあります。適切な時間・環境で昼寝を取らせることで従業員の集中力アップ・ストレス解消につながると言われており、うまく活用すれば自社の業績アップも見込めます。
この記事では、仕事中に昼寝の時間を設ける効果や、導入時の注意点を解説します。
仕事中に昼寝をする効果とは?
「仕事中の昼寝」と聞くと、やや違和感があるかもしれません。しかし、実は仕事中の昼寝にはさまざまな効果が見込まれます。
集中力アップにつながる
仕事中に昼寝をすると集中力を高められることが、さまざまな研究結果から証明されています。昼寝を活用して、業務のパフォーマンスを向上させる取り組みを進める大企業もあります。
NASAが行った宇宙飛行士の睡眠に関する実験では、昼に仮眠を取った場合、認知能力が34%、注意力が54%も上昇したという結果が出ました。このことからも分かるように、昼に仮眠を取ることで、午後の業務の効率が大きく延びる可能性があるのです。
また、仮眠により、集中力や注意力だけでなく、想像力も高めると言われています。
ストレスが減る
昼寝をすることで、午前中の業務で発生したストレスも、ある程度は解消させた状態で午後の業務に取り組めるでしょう。
業務に取り組み始めると、脳に必要以上の負荷がかかり、それが原因でストレスを感じるようになります。
そのストレスを抱えたまま業務に取り組み続けると、作業効率が低下するばかりか、社内外でのコミュニケーションがうまくいかなくなります。結果として、生産性が低下してしまうことにもなるでしょう。
そのため昼寝をして脳内をリセットさせることは、非常に有効だと言えるわけです。
疲労が軽減し脳がスッキリする
昼寝をすることで、脳だけでなく身体を休めることもできます。思考と行動がしっかりと連動した動きを取れるようになるでしょう。
身体はいつでも休められますが、脳は常に動き続けています。意図的に休める状況を作らなければ、脳への負担は大きくなり、身体との動きの連携が取りづらくなる可能性があるのです。
そのため昼寝を取り入れることで、一旦、脳をリセットでき、心身の連携をしっかりと取れるようになります。
病気のリスク軽減につながる
仕事中の昼寝には、単に心と体をリフレッシュさせるだけでなく、睡眠不足の解消にも貢献すると考えられます。
現代社会においては、仕事によるストレスが原因でさまざまな健康障害を発症する方が増えています。
このような状況下で従業員の睡眠時間を少しでも確保するために、企業でも昼寝の導入が考えられるようになりました。その効果が実証され始めてきた現在では、健康障害発症のリスクを減らすことも見込めると言われています。
仕事中に昼寝をする際のポイント
さまざまな効果が期待できる仕事中の昼寝ですが、ただやみくもに取り入れれば良いというわけでもありません。
より効率的に昼寝の効果を得るためのポイントを、3つ紹介します。
適切な睡眠時間を設定する
睡眠時間を20分くらいに設定し、従業員が眠りすぎないように注意が必要です。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レム睡眠は比較的浅い眠りの状態ですが、ノンレム睡眠は深い眠り(熟睡している状態)です。
さらにノンレム睡眠にはステージが4つあり、ステージ1から4になるにつれて深い眠りになります。入眠直後はステージ1から2の浅い眠りで、入眠して大体30分以上が経過するとステージ3の深い眠りへと進行していきます。
深いノンレム睡眠の状態から目覚めようとすると、心身の両方へかなりの負担がかかってしまい、逆効果です。昼寝を行う際は睡眠時間を意識させ、極力深い眠りにならないように注意が必要です。
光をシャットアウトする
睡眠の質を上げるために、光をシャットアウトすることも重要です。
光がある場所での睡眠は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が減ります。そのため、いくら睡眠を取ったとしても、疲れの解消具合には効果があまり期待できなくなります。
そのため、昼寝をする際には、光を発するものを極力避けるようにしましょう。例えば、パソコンのディスプレイやスマホの画面の光などは、スリープモードにするといった対応をすることをおすすめします。
光が発生しないように工夫することで昼寝の質の向上を図れるほか、頭のなかの整理もできると言われています。
昼寝をする前にカフェインを取る
昼寝を行う前にカフェインを摂取することで、効率良く目覚められるようになります。
カフェインの摂取による覚醒の効果が出始めるのは、摂取後約20~30分が経過してからと言われています。
そのため、コーヒーや紅茶などを昼寝前に摂取しておくことで、昼寝の効果を向上できるのです。ただし、業務の状況との兼ね合いを考えた上で行うことが重要です。
昼寝による仕事効率アップ効果を狙う「シエスタ制度」
従業員に仕事中の昼寝をさせる制度を、「シエスタ制度」と呼びます。シエスタ制度の特徴や効果、導入時の注意点を解説します。
シエスタ制度の概要
シエスタ制度とは「昼寝制度」とも呼ばれる制度です。基本的に、昼休憩の時間にこの昼寝の時間を組み入れて行います。
シエスタ制度の導入が根強い地域では、午後2時から5時あたりを休憩時間としているところが多数あります。長い休憩時間を、余暇や昼寝などの時間に充てる方が多いのが特徴です。
シエスタ制度を導入する目的・効果
シエスタ制度を導入する目的は、体内リズムの低下にともなう集中力・注意力の低下を防ぐことです。仕事の生産性を高い状態で維持させるためとも言えるでしょう。
体内リズムが低下傾向になると、眠気が出てくるようになり、その結果として集中力や注意力が下がります。そして、仕事のパフォーマンス低下につながってしまうのです。
シエスタ制度を導入することで、効果的に心身の休養ができます。すると午前中と同程度のパフォーマンスを維持できるようになり、生産性が向上するのです。
シエスタ制度の導入方法
シエスタ制度を導入する際は、休憩の時間を延長した分だけ終業時刻を引き下げることが一般的です。
しかし、必要以上に終業時刻を引き延ばすことは、働き方改革で長時間労働の削減を目指している現状に逆行するものとも考えられてしまいがちです。
そのため、終業時刻を引き延ばすために、「伸ばした休憩時間は有給で対応する」といった対応をすると良いでしょう。労働者がシエスタ制度を利用しやすくなる環境整備が大切です。
仕事中の昼寝を許可している企業はある?
仕事中の昼寝は、すでに多くの企業で積極的に導入されています。特に導入が進んでいるのはIT系の業種です。
この背景には、人材不足が顕著な業界であることがあります。従業員一人一人が少しでも万全な体調の状態で業務に取り組むことで、高い生産性を維持できるようにする目的があるようです。その結果として、業界全体が人材不足であっても高い成果を上げられていると言われています。
次に導入実績が多い業種として、製造業が挙げられます。製造業も同じ作業を長時間続ける業種です。時間の経過とともに、集中力の低下が懸念されるところであると言えます。
また製造業の場合は、工程のなかで不備が生じた場合の原因探求を効率良く行うために、高い集中力を持続しなければなりません。このことからも、昼寝の積極的な導入が進んでいると言われています。
仕事中に昼寝をする効果についてのまとめ
仕事中に昼寝の時間を作ることには、単なる休息以外にも多くの効果が見込まれます。ただし昼寝の時間を導入する際は、体への負担も考えた睡眠時間を設定するほか、眠りやすく目覚めやすい環境づくりも必要です。また、昼寝の時間をどのように就業時間に馴染ませるかの検討も欠かせません。
現在は、集中力が必要とされるIT系企業・製造業を営む企業での導入が目立ちます。しかしその効果の高さから、今後はより多くの業界で導入されるでしょう。従業員の心身の健康を守り、自社をさらに成長させるためにも、昼寝の時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。