職務分掌の必要性は? メリット・デメリットや実際の作成方法まで解説
職務分掌とは、組織内の役割や仕事内容を分類して担当者に割り振ることを意味します。職務分掌が明確になることで、従業員は自らの仕事に責任を持って取り組むことができます。
今回は、職務分掌のメリットとデメリット、実際の作成方法を順を追って解説します。組織の内部統制やリスクマネジメントにも役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
職務分掌とは
職務分掌とは、組織内の役割や仕事内容を分類して担当者(役職者や従業員)に割り振ること、または割り振られた役割や仕事内容のことです。職務分掌によって、担当者は自分の役割や仕事内容を理解することができ、その責任や権限も明確になります。
また、職務分掌に定められた役割や仕事内容を遂行するため、担当者に求められる能力やスキル、経験が「職務要件」です。
職務分掌の必要性
企業でなぜ、職務分掌は必要とされているのでしょうか?3つの必要性について、解説します。
1.仕事の担当範囲と責任所在を明確にするため
職務分掌は、担当者が自分の組織内での役割や仕事内容を理解するために必要です。担当者は仕事の目的とやるべきことが明確になるため、安心して業務に専念できます。
また、従業員それぞれの役割や仕事内容がはっきりしていることで、問題が起きた場合の責任の所在も明確になります。同時に、業務上の決定を行う時、誰に権限があるかも明らかであることもメリットです。
2.従業員の無用なストレスを排除するため
職務分掌には、従業員の無用なストレスを排除する効果もあります。従業員は自分の役割や仕事内容を十分に理解できないと「この仕事を自分がしても問題ないかな?」「自分の仕事は終わったつもりだが、ほかの人を手伝わないといけないのかな?」などの疑問や不安を抱きながら仕事をしなければなりません。
職務分掌によって自分の役割と仕事内容が明確になれば、余計な疑問や不安を抱く必要がなくなります。
3.従業員に責任感を芽生えさせるため
職務分掌は、従業員に責任感を芽生えさせることもできます。割り振られた自分の役割や仕事ができていない時、責任が自分にあることは明らかです。従業員自身が責任感を持って業務に取り組むことが期待できるでしょう。
また、職務分掌が職場内に周知されていれば、上司や同僚から指摘されることもあるため、本人も責任を自覚せざるを得ません。
職務分掌のメリット
ここからは、職務分掌のメリットを3つ解説します。
1.業務がスムーズに遂行できる
職務分掌のメリットの1つ目は、業務がスムーズに遂行できることです。組織を運営するにはさまざまな業務が必要です。しかし、従業員同士の業務が重複したり、誰もやらない業務が発生したりすると、組織の運営に支障をきたします。職務分掌によって必要な業務が適切に割り振られることで、業務運営がスムーズになるでしょう。
また、担当者も自分の役割や仕事内容を正しく理解することで、優先順位をつけて効率的に業務に専念できます。
2.人材育成を効率的に進められる
人材育成を効率的に進められることも、職務分掌のメリットの一つです。任せる仕事が明確になるため、人材育成を行う上司や教育担当者が、どんな知識やスキル、経験を身につけさせればいいかを判断でき、効率的な育成が可能になります。
また、従業員自身が目標を理解し、自主的に自己の成長に努める効果も期待できるでしょう。
3.組織の内部統制とリスクマネジメントが進む
メリットの3つ目は、組織の内部統制とリスクマネジメントが進むことです。組織を健全に運営するには、社内外のさまざまなリスクをコントロールすることが欠かせません。職務分掌によって従業員それぞれの責任を明確にするとともに、社内の業務をチェックする役割を設けることで、組織の内部統制とリスクマネジメントが期待できます。
また、社内の権限が特定の人や部署に集中しないよう、権限を分散させる職務分掌を設けることも、リスクの低減に効果的です。
職務分掌のデメリット
職務分掌には業務の遂行や人材育成に効果的ですが、一方でデメリットも存在します。ここからは、職務分掌がもたらす3つのデメリットについて解説します。
1.業務が硬直化する
職務分掌のデメリットの1つ目は、業務が硬直化する可能性があることです。社会情勢の変化に伴い企業の活動内容も変わり、新しい業務が発生します。その際に、職務分掌に定められた業務に縛られて新しい業務をやる人がいないと、スムーズな組織運営ができません。
企業活動が停滞しないよう、状況に応じた職務分掌の見直しや、新しい業務が発生した時に対応する仕組み作りが必要です。
2.決まった業務以外しなくてよいと捉えられる
デメリットの2つ目は、社内に決まった業務以外しなくてよいという風潮が生まれることです。このような風潮が蔓延すると、組織の運営に支障をきたすとともに、従業員が自分で考えて業務を進める習慣がなくなります。
結果として、マンネリ化によるモチベーションの低下や従業員の成長が阻害される恐れがあります。従業員が自主的に仕事を創り出すことを、推奨・評価する仕組みが必要です。
3.仕事の押し付けあいが発生する
仕事の押し付けあいが発生する可能性があることが、職務分掌の3つ目のデメリットです。
職務分掌によって自分の仕事範囲を決めることで、その範囲外の仕事は他人がやるものと決めつけて、仕事を押し付けあうことも十分考えられます。
押し付けあいを防ぐには、部署間や従業員間の連携を深める、調整役となる存在を設けるといった方法があります。
職務分掌の作成方法
ここからは、職務分掌の作成方法を順を追って解説します。
1.全社員に事前了承を取る
職務分掌を作成する時は、まずは経営者を含む全社員の事前了承を取りましょう。
職務分掌は組織運営の基本ともいうべき事案であるため、最終的には経営者の了解が必要です。また、各部署の膨大な業務内容を把握し、業務が円滑に進むように職務分掌を定めるには、全社員の協力が必要です。
2.会社全体の組織図を作成する
次に、会社全体の組織図を作成します。職務分掌を作る過程では、組織全体の業務を各部署・各役職・各従業員に割り振ることになるため、予め個々の組織を確認しなければなりません。また、現在の業務内容や分担を確認するためにも会社全体の組織図が必要です。
職務分掌の内容によっては、組織全体の見直しが必要になることもありますが、まずは現状を確認しましょう。
3.職務内容・権限・責任を決定する
組織図を作成後、組織ごとの業務内容をすべて洗い出します。組織内の業務を一覧化すると、重複する業務や欠けている業務が明確になります。必要に応じて業務内容を見直し、組織が効率的に運営できるように業務内容を整理しましょう。
次に、整理したすべての業務を各部署・各役職・各従業員に「職務」として割り振ります。同時に、職務遂行に必要な責任と権限を明確化します。
4.職務分担一覧表など関連書類を作成する
職務の割り振りが終わった後は、明確になった職務内容や権限、責任を記載した一覧表(職務分担一覧表)などを作成しましょう。
職務分掌を作る過程は、割り振りに漏れがないか、組織間や役職間の連携に問題がないかなどをチェックするために役立ちます。また、確定した職務分掌を従業員全員に周知するためにも活用できます。
5.職務分掌規程を作成する
最後に、職務分担一覧表などを基に会社のルール(規則)として「職務分掌規程」を作成しましょう。従業員がいつでも確認できるようにするとともに、新しい人の配属時に周知を徹底するなど、職務分掌規程を全従業員に周知することが重要です。
必要に応じて規程の見直しを行い人事評価へ反映させるなどして、企業や従業員の業務が円滑に進むように活用しましょう。
職務分掌のまとめ
職務分掌とは、組織内の役割や仕事内容を分類して担当者に割り振ることです。職務分掌を明確にすることで、従業員は業務をスムーズに遂行することができます。また、組織の内部統制や人材育成にも効果を発揮します。
一方で、従業員の間で仕事の押し付けあいが起こったり、新しい業務が滞ったりするデメリットもあります。職務分掌は1度作成して終わりではなく、定期的に見直すようにしてください。
【書式のテンプレートをお探しなら】