サーバントリーダーシップとは? 10の特性や成功事例から得られる効果や利点を解説
サーバントリーダーシップとは、部下に対して奉仕の気持ちを持って接し、相手の能力を最大限に発揮できるよう導くことを目的としたリーダーシップです。
今回は、大企業も導入しているサーバントリーダーシップの10の特性や成功事例について解説します。
従来の支配的リーダーシップとの違いも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
サーバントリーダーシップとは
「サーバントリーダーシップ」とは、部下に対して奉仕の気持ちを持って接し、相手の能力を最大限に発揮できるよう導いていくことを目的とする支援型リーダーシップのことです。
これまで日本で主流とされてきたのは、部下に対して説明や指示を行う支配型リーダーシップですが、サーバントリーダーシップは「部下との信頼関係」や「リーダーの奉仕の精神」が重視されます。
傾聴・共感によって部下のやる気や主体性を引き出すことで、チーム全体の生産性を向上させる手法です。
サーバントリーダーシップ10の特性を紹介
サーバントリーダーシップには10個の特性を持っています。それぞれの特性について解説します。
1.傾聴
相手の望むことを意図的に聞き出すことに強く関わります。
同時に自分の内なる声にも耳を傾け、自分の存在意義(どのような言葉をかけてあげるべきか)を考えます。
2.共感
傾聴するためには、相手の立場に立って、何をしてほしいかが共感的にわからなくてはなりません。
先入観を持たず、相手の気持ちを理解し、共感することが大切です。
3.癒し
集団や組織を率いる際に大きな力となるのは、癒しです。
相手に欠けているもの、傷ついているところを見つけ、全体性(wholeness)を探し求めましょう。
4.気づき
組織全体や、相手への意識を高めることも大事ですが、同時に自分への気づき(self-awareness)がサーバント・リーダーを強化します。
自分自身を知り、自分が大切にしたいと考えている倫理観や価値観を把握しましょう。
5.説得
自らの権限(役職)に依存したり、部下に対して服従を強要することなく、ほかの人々を説得できることが大切です。
相手の納得を得られるような説得をしましょう。
6.概念化
日常の業務上の目標や、短期的な目標を超えて、自分の志向をストレッチして広げましょう。
大きな夢を見る(dream great dreams)能力を育て、ビジョナリーな概念を持つことが大切です。
7.先見力
概念化の力とともに大切なのが先見力です。これから起こることをあらかじめ予見できなくても、それを見定めようとすること。
それが見えた時に、はっきりと気づくこと。過去の教訓、現在の現実、将来のための決定のありそうな帰結を理解できる力を指します。
8.執事役
執事役とは、大切な物を任せても信頼できると思われるような人のことです。
部下に献身的に接し、部下の利益に貢献するように支援することで、部下から執事のように思われるような奉仕の精神を持ちましょう。
9.人々の成長への関与
仕事における目標達成だけでなく、部下一人ひとりの成長を支援します。
プロセスを重視し、チームメンバー一人ひとりの存在に内在的価値があると信じましょう。
10.コミュニティづくり
同じ制度の中で仕事をする(奉仕する)人たちの間に、コミュニティを作りましょう。
コミュニティの中でメンバー同士がお互いに助け合うことで相乗効果が生まれ、さらなる成長が期待できます。
支配的リーダーシップとサーバントリーダーシップの違い
支配的リーダーシップとサーバントリーダーシップにどのような違いがあるのかについて、下記の表にまとめました。
支配型リーダーシップ |
サーバントリーダーシップ |
|
---|---|---|
主な特徴 |
部下に対して説明や指示、命令を行う |
傾聴・共感によって部下のやる気や主体性を引き出す |
価値基準 |
リーダーの命令が絶対 |
リーダーと部下は協力関係 |
コミュニケーションの取り方 |
説明・指示・命令 |
傾聴・共感 |
相性がよい組織 |
新人が多い組織 |
メンバーが一定の知識や意欲をもった組織 |
メリット |
決定者がリーダーのみのため、意思決定のスピードが早く短期間で成果を出すことができる |
主体的・能動的に動ける人材を育成できる/組織内のコミュニケーションが活性化する |
デメリット |
指示待ち型の人材が育つ/メンバーの帰属意識が低下しやすい |
脱落するメンバーが出やすい/意思決定のスピードが遅くなりやすい |
支配型のリーダーシップは、一方的に部下に対して説明や指示、命令を行うコミュニケーションが特徴です。
それに対して、サーバントリーダーシップは、部下と協力関係であり、傾聴や共感を重視するコミュニケーションによって、部下のやる気や主体性を引き出すリーダーシップです。
サーバントリーダーシップで得られる効果や利点
ここからは、サーバントリーダーシップによって得られる効果や利点について解説します。
1.社員のパフォーマンスやモチベーションが向上する
上司からよく話を聞いてもらうことができ、共感されるコミュニケーションが行われるため、部下のモチベーションが向上します。
心理的安全性が保たれることで、業務におけるパフォーマンスの発揮も期待できるでしょう。
2.顧客満足度が向上する
モチベーションが高く、自ら考えて動くことができる社員のふるまいは顧客満足度の向上にもつながります。
何を伝えても「上司に確認します」と言われるのではなく、自分なりに考え、顧客に最適な解を提供しようとする姿勢は顧客に必ず伝わるでしょう。
担当社員を信頼し、さらなる仕事を依頼したいと思うことにつながります。
3.組織内のコミュニケーションが活性化する
上司が傾聴・共感を行うことで部下の安心感は確実に高まります。
組織内の雰囲気を穏やかにし、部下一人ひとりが自分の意見を臆せず発信するようになります。
結果として組織内のコミュニケーション量が増え、活発に意見が交わされる組織となるでしょう。
サーバントリーダーシップで成功した事例
ここからは、サーバントリーダーシップを取り入れて成功した企業の事例を紹介します。
1.良品計画の事例
業績が急落したタイミングで良品計画の社長に就任した松井忠三氏は、全国のほぼ全ての店舗を回り、店長や現場の話に耳を傾けました。
傾聴の結果、業務を見える化するため「MUJIGRAM」というマニュアルを作成しました。
同時にスタッフの声を吸い上げるシステムを構築し、現場の声を基に毎月ブラッシュアップを重ねています。
この良品計画の事例は、サーバントリーダーシップの特性にある「傾聴」「概念化」「先見力」を駆使したものです。
良品計画は2000年から業績を悪化させていましたが、2001年の松井社長の就任以降はV時回復を達成し、現在は増収増益を続けています。
2.スターバックスの事例
スターバックスは、サーバント・リーダーシップをいち早く導入した企業の一つです。
スターバックスを大きく成長させた元CEOのハワード・シュツル氏は、「スターバックスにとっての最優先事項は社員を大切にすることである」と『スターバックス成長物語』(日経BP社)で語っています。
この考えに基づき、アメリカで初めてパートタイマーに対して正社員と同様の健康保険を適用するなどの取り組みを行っています。
また、ストアマネージャーを対象にした「奉仕型リーダー育成セミナー」が行われています。
3.ダイエーの事例
ダイエーが赤字店舗の閉鎖を余儀なくされた際、当時の社長だった樋口泰行氏は閉鎖対象となった50店舗を訪れ、閉鎖理由を直接説明し、働いてくれたお礼を伝えました。
その結果、スタッフのモチベーションが向上し、「閉店売りつくしセール」では2年4カ月ぶりに前年比プラスの売り上げを記録しました。
閉店後、継続店舗に配置転換となったスタッフが「店が赤字になってはダメだ、みんなで頑張ろう」と自ら働きかけ、業績改善につながりました。
社長自ら傾聴・共感を行ったことでスタッフの主体性につながった事例です。
4.資生堂の事例
90年代後半、経営危機が訪れた資生堂の社長に就任した池田守男氏は、「店頭を起点とした経営改革」を方針として打ち出しました。
当時の資生堂はピラミッド型の組織体制を敷いており、社長>本社・研究所>支社長>営業担当>店頭の販売員という序列でした。
池田氏はこのピラミッドを真逆にひっくり返し、トップに店頭とビューティー・コンサルタントを据えました。
「会社が社員を支える」という奉仕の精神は、まさにサーバント・リーダーシップと言えるでしょう。
サーバントリーダーシップのまとめ
サーバントリーダーシップとは、部下に対して奉仕の気持ちを持って接し、相手の能力を最大限に発揮できるよう導いていくことを目的とする支援型リーダーシップです。
従来の支配的リーダーシップとは異なり、傾聴や共感を重視しています。
大企業でもサーバントリーダーシップを導入して業績がV字回復した事例があり、社員のパフォーマンスやモチベーション向上に効果があることが実証されています。
組織内のコミュニケーションを活性化する効果もありますので、ぜひ導入を検討してみてください。
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