ポジティブアクションとは? 具体例と企業が取り組むメリットを解説
女性の社会進出が活発化するに伴い、ポジティブアクションに取り組む企業は増加しています。ポジティブアクションとは、社会における男女の平等性向上を目的として、女性がさらに活躍できるようにする取り組みです。
労働人口がますます減少していくと言われる現在において、女性の活躍推進は企業にとっても重要なテーマでしょう。
そこでこの記事では、ポジティブアクションの概要や目的、具体例や企業が取り組むメリットについて詳しく解説します。
ポジティブアクションとは?
ポジティブアクションとは、一般的には雇用や就業における差別を解消する取り組みです。具体的には、男女間で生まれる平等性の向上を目的としていて、企業がさらに女性の活躍の場を広げるために行っています。
雇用に限らず、女性の職域や管理職に就くことを増やすなど、社会全体で男女平等に活躍できる環境作りが重要視されています。
ポジティブアクションを行う目的
ポジティブアクションを行う目的は、男女の活躍を平等にしビジネスの発展につなげるためです。男女間の差を埋めながら多様性を受け入れることで、一人ひとりの持つ特性や能力を最大限に引き出す狙いがあります。
各個人の力が適切に発揮されることで、企業や日本社会の発展につながると考えられています。
女性の活躍推進の現状
日本では、男女の格差をなくすために1986に、男女雇用機会均等法が出されました。しかしながら、現状はいまだに女性の社会進出の水準は低いです。
具体的に数字をみていくと、昭和60年の労働力人口総数に占める女性割合は39.7%、令和元年には44.4%と上昇はしているものの、半数には至っていません。
さらには、男女間の賃金格差の数値は、年々広がっているという結果も出ています。
参考:総務省|働く女性の状況
アファーマティブアクションとの違い
アファーマティブアクションとは、社会的な原因による差別をなくすための取り組みです。ポジティブアクションとほとんど同じような意味で使われます。
とはいえ、日本ではアファーマティブアクションは性別や人種、障害の有無など総合的な差別に対して使い、ポジティブアクションは性別による格差に焦点を当てて使用されることが多いです。
ポジティブアクションによって企業が得られるメリット
ここでは、ポジティブアクションによって企業が得られるメリットを4つ紹介します。
女性のキャリア意識向上
ポジティブアクションを行うことで、女性のキャリア意識が向上します。社内の重要ポジションや管理職などに女性を起用することで、女性社員が会社での将来を設計しやすくなるでしょう。
女性のキャリア意識が向上することにより、離職率の低下にもつながります。
労働力不足の解消
ポジティブアクションを行うことで、男女間の格差を減らせます。そういった取り組みをしている企業は魅力的に映り、性別に関係なく離職率の低下が期待できるでしょう。
離職率の低下や長期就労者が増えることで、企業の労働力不足の解消につながります。
企業のイメージアップ
企業のイメージアップもポジティブアクションによるメリットです。男女の格差を無くす努力をしている企業は、世間からよい印象を持たれるでしょう。
消費者や株主からのイメージがアップすると、売上やビジネスの発展に貢献できるのが魅力です。
ポジティブアクションの具体例
ポジティブアクションのメリットは理解できたものの、実際に企業はなにができるのか気になるところです。
ここでは、ポジティブアクションの具体例を3つ紹介します。
女性の雇用・職域の拡大
まず実践できるポジティブアクションの1つに、女性の雇用や職域の拡大があげられます。女性の雇用を増やすと男女比を均等に近づけられるでしょう。管理職や重要ポジションに女性社員を配置することも可能です。
また、職域を増やすのも有効な手段です。性別による限定的な業務を排除し、男女平等に同じ業務をこなす意識がポジティブアクションにつながります。
女性管理職の人数増加
女性管理職の人数増加もポジティブアクションといえるでしょう。管理職に配置する社員の能力や条件などを明確化し、性別ではなく個人の能力で登用を判断することが大切です。
また、管理職につく条件として女性にとって難しい要件などがあれば、見直しも視野に入れておきましょう。
働きやすい職場環境の整備
女性が働きやすい職場環境の整備も、重要なポジティブアクションです。男女比率や古くからの風習などに加えて、育休や体調不良などに対する理解を会社全体で意識づける必要があります。
特に、男性が中心となってプロジェクトや業務を進行している会社は、環境の見直しをした方がよいかもしれません。
ポジティブアクションに取り組むには
ここでは、ポジティブアクションに取り組むために、具体的な方法を7つのステップで解説します。
1.経営陣の意思決定
会社の経営方針を決定する経営陣において、女性の活躍を促進する考え方を持つのが重要です。どんなに、現場で女性の活躍についての意見があったとしても、その意見を会社として実現させるには、最終的に経営陣の意思決定が必要となります。
まずは、組織のトップの考え方を明確にすることが必要です。
2.取り組み体制の確立
業種や職務内容にもよりますが、具体的に女性の活躍を推進するための取り組み体制を確立させることが大切です。
取り組み体制と現状の業務の取り組み方に違いが生じては、せっかく体制を確立させても機能しない恐れがあります。従来と何ら変わらないといった結果になる恐れがあるので、注意が必要です。
3.現状分析
現状の勤務実態や職場の職務内容などを詳細に分析し、どの部分において女性の割合が低いかといった課題点を洗い出すことから始まります。
また、現場の声を積極的に聞くことで、リアルタイムで起きている現場の要望などと取り組むべき項目などをより明確にできます。
4.課題と目標の設定
現状分析を行うと現在地における課題点がが明確になるため、その課題点をどのようにして解消させるかを考える必要があります。
課題が明確になることで、会社全体として目指すべき方向性がはっきりするので、最終的なゴールをどこに設定するかの話し合いが大切です。
5. 具体的な改善策を検討
ゴールが明確になったらその目標を実現するために、具体的にどのような施策に取り組む必要があるかを決めます。
会社全体・部門別といったように、対象範囲ごとに改善を行わなければならない内容は異なりますので、それぞれの組織単位ごとに改善策を考えて、実行することが必要です。
6. 実行と成果の確認
改善策を実行し、その結果についてゴールとの距離感がどれくらいあるのかを分析します。そのうえで、ゴールとの距離感を更に縮めるにはどこを改善するべきかを話し合い、さらなる改善策を出して実行します。
いわゆる「PDCAサイクル」を何度も繰り返し行うことで、会社として取り組んでいる改善策をゴールに近づけていくことが大切です。
7. 改善
PDCAサイクルを繰り返し行っていくことで、会社全体として当初掲げていた目的が達成され、更によくするための改善策を会社として取り組み続けます。
このように、会社全体でポジティブアクションに取り組む姿勢を続けていくことで、より快適な職場環境の実現に近づけます。
ポジティブアクションに取り組む企業例
ここでは、実際にポジティブアクションに取り組む企業とその事例を紹介します。
日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社は、平成5年に米国本社の会長が社員のダイバーシティを経営課題としました。それを受け日本で調査を行った結果、社員数および管理職数において女性の比率が少ないことが判明しました。
そして「ウィメンズ・カウンシル」を設立し女性社員活用の促進に取り組んでいます。実際に女性社員を積極的に採用し、女性比率は平成10年の13%から平成15年の1月には15.7%まで上昇しています。
ポジティブアクションの取り組みが結果に出ている事例の1つです。
株式会社ニチレイフーズ
株式会社ニチレイフーズも、ポジティブアクションを導入し結果が出た企業です。レトルト・冷凍食品などの製造、加工、販売を行う加工食品メーカーであるニチレイフーズは、仕事への満足度や意欲が、男性と比べて女性の方が低いと、社内調査で判明しました。
そこで2000年からの3年間ポジティブアクションを実施したところ、女性管理職の割合は1.2%から4.7%まで上昇しています。ワークライフバランスの見直しなど、女性社員が活躍しやすい環境作りにも取り組んでいたため、女性社員の意欲向上にもつながりました。
ポジティブアクションについてのまとめ
ポジティブアクションは、優秀な人材を集めて企業を発展させるために有効な取り組みです。ポジティブアクションを進めるためには、組織的かつ計画的に取り組むことが重要でしょう。
今回ご紹介した具体例や、企業例を参考に自社でできる施策を考えてみてはいかがでしょうか。
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