職能資格制度とは? 職務等級制度との違いからメリット・デメリットまで解説!
職能資格制度は、従業員の人事評価の手法であり、モチベーションや企業の成長に影響します。
長く日本で使われている手法であり、現代でも多くの企業が職能資格制度を採用し、人事評価に役立てています。
この記事では、職能資格制度のメリットやデメリット、仕組みを人事部の責任者に向けて解説します。
また、この記事の後半部分では、職務委の評価基準をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
職能資格制度とは
職能資格制度は、従業員の職務遂行能力ごとに等級を設定し、昇給や昇格を決定するメンバーシップ型の人事評価制度です。
従業員の能力を重視し、人材育成や自己啓発を促進させる目的があります。
職務等級制度との違いや、役割等級制度との違いを見ていきましょう。
職務等級制度との違い
職能資格制度は、従業員の職務遂行能力を評価するのに対し、職務等級制度は、職務ごとの達成度を評価するジョブ型の人事システムです。
欧米を中心に広がり、人種差別排除の観点から、仕事の内容と達成度合いに基づいて評価を下します。
職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に書かれた職種が職務等級制度の対象で、接客業や営業などが該当します。
役割等級制度との違い
役割等級制度は、一人一人の従業員の役割や、目標への成果を基準にして評価する人事システムです。
役割等級制度は職務のみならず、従業員が担う役割に焦点を当てて評価するので、属人的な要素が多く含まれます。
職能資格制度とは異なり、役割等級制度では年功序列やキャリアは、評価の対象になりません。
職能資格制度のメリット
職務資格制度のメリットをまとめました。
- ジェネラリスト人材を効率的に育成できる
- 将来を見据えた人材育成
- ポスト不足の対応
ぜひ参考にしてください。
ジェネラリスト人材を効率的に育成できる
ジェネラリストはさまざまな業種を、広く浅く経験させることでスキルを身に付けさせることです。
職能資格制度を導入することで、それぞれの部署における必要なスキルの目安を明確にできます。
そのレベルに合わせるようなキャリア形成につながり、その結果として、ジェネラリストとなる人材を育成できるでしょう。
将来を見据えた人材育成
職能資格制度は、職務の遂行能力を段階に分けるため、その部署において必要とされる業務の水準を把握できます。
将来的にどの部署でどのようなキャリアアップをしていきたいかを、従業員と話し合いを進めながら、人材育成を進められるでしょう。
ポスト不足の対応
職能資格制度は、その部署における業務水準を評価することで、給与などに反映させます。
ポスト(役職)を新たに創設して人事評価をおこなうよりも、同じポストのなかで評価段階を細分化することで、業務の遂行能力による人事評価を行えるでしょう。
職能資格制度のデメリット
職務資格制度におけるデメリットを紹介します。
- スキルと賃金がマッチしない
- 管理が複雑でわかりにくい
- 多様な働き方に対応しきれない
それぞれ解説します。
スキルと賃金がマッチしない
職能資格制度では、設定されたスキル水準と賃金の額が見合っていない場合が多いです。
会社側で認識している水準と、実際の現場で業務に携わっている人が体感する水準に認識のずれが生じ、従業員が離職することもあります。
管理が複雑でわかりにくい
職能資格制度によるスキルの水準は、会社全体から見た共通の水準であることが多いです。
つまり、それぞれの部署において業務に必要なスキルとは異なるケースが、よく見られます。
同じようなスキルを持ったとしても、所属する部署や担当する業務によって評価が異なるといった問題が生じ、管理が複雑でわかりにくくなります。
多様な働き方に対応しきれない
職能資格制度では、共通のスキル水準によって評価されることが多いため、現代の多種多様な働き方や、業務の方法を正当に評価することが難しいといえます。
多種多様な働き方には、リモートワークやフレキシブルタイム制、時短勤務などのいろいろな特性を持った働き方が当てはまります。
職能資格制度の仕組み
職能資格制度の賃金や昇格、降格の仕組みを解説します。
賃金
職能資格制度における昇格方法には「習熟昇給」と「昇格昇給」の2つがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
習熟昇給
習熟昇給は、従業員のスキルに応じて一定額を昇給します。
従業員の等級に変動がなくても、その従業員のスキルが上がれば、昇給がなされます。
スキルの習熟度は必然的に年齢と比例するため、年齢に応じて昇給される年功序列制度のような側面が強くなるでしょう。
昇格昇給
昇格昇給は、上位等級に昇格した従業員を昇給します。
習熟昇給のように能力は評価基準にならず、等級が同じ従業員は昇給しません。
なお、昇格しない時期に昇給額が積み重なり、昇給されたときに反映されます。
昇格昇給においては等級を上げようとする従業員が増加し、企業内における競争やスキル向上を目指す機会が増加するでしょう。
昇格
職能資格制度における昇格には、「卒業方式」と「入学方式」の2種類があります。
それぞれ詳しく解説します。
卒業方式
卒業方式とは、従業員が等級に見合うスキルを習得でき次第、上の等級に昇格させる方法です。
スキルが昇格するかどうかの評価基準ですので、昇格させる際の企業側の労力や時間を省けるでしょう。
しかし、昇格したあとの業務を仕事を遂行できるかは不明確ですので、期待していたパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
入学方式
上の等級の条件を満たし従業員が昇格できる方法を、入学方式といいます。
スキルが判断軸の卒業方式とは異なり、昇格条件を満たしているかが判断ポイントで、昇格するのはより難しくなり、優秀な人材が能力を発揮できない可能性があります。
しかし、昇給後の業務を問題なく遂行できる可能性が高まりますので、従業員と企業側の双方において、昇給後の失敗などがなくなるでしょう。
降格
スキルや経験は持続するという考えに基づいて、職能資格制度においては降格を避けられます。
ただし、例外的な状況を考慮したうえで規則を明確にし、トラブルを回避する必要もあります。
降格を明記した記載が就業規則にない場合、従業員と企業がトラブルに発展する恐れがあるため、注意しましょう。
職能資格制度における評価基準
職能資格制度における評価基準をまとめました。ぜひ参考にしてください。
①情意評価
情熱評価は、従業員の労働意欲や勤務態度を評価する項目です。
等級付けで評価するときは、評価基準に評価する人物の個人的な考えに左右されやすいため、上司や年齢の近い社員など、さまざまな立場の人たちから意見を聞くとよいでしょう、
また、チームワークやポジティブさ、親切さなどの姿勢も大きな評価基準です。
②能力評価
能力評価は、従業員が持つ知識やスキルなど、業務遂行能力がどれほど高いかを評価する項目です。
今現在の能力だけではなく、成長過程も評価しますので、自己啓発や人材の育成が活発化するでしょう。
例えば、営業力や、プログラミング力などの専門知識などが能力評価に該当します。
③成績評価
成績評価は、目標を達成するまでの過程と業務成績を、数字ベースで評価する項目です。
評価する前に定めた目標にどれだけ近づいているかを考慮して、具体的な評価を下されるのが一般的です。
情意評価とは異なり、数字で評価する成績評価は従業員のモチベーションがアップしやすいため、企業全体の売上につながるでしょう。
職能資格制度についてのまとめ
職能資格制度の導入により、役職より能力が評価されやすくなりました。
全従業員の昇給やモチベーション向上が促進され、企業全体の生産性向上も期待できます。
驚くべきスピードで日々変化する世界に適応するためにも、効果的な制度を構築して、組織の成長に貢献しましょう。