人材マネジメントとは? その必要性と6つの構成要素、実施手順を紹介
変化の著しい現代においては、企業環境の変化で競争力強化が課題となり、限られた人材の有効活用が注目されています。
そういった背景から、人材マネジメントの効果や役割にも注目が集まっています。
この記事では、経営層や人事の責任者に向けて、人材マネジメントの必要性や構成要素、実施手順を解説します。
また、記事の後半部分では、人材マネジメントを実施する際の具体的なポイントをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください 。
人材マネジメントとは
人材マネジメントは、企業の目標達成のために、効果的に人材を活用する仕組み作りのことです。
採用や教育、評価、報酬制度などが人財育成の内容で、個人と組織の発展を促進する役割があります。
企業は競争力を高め、持続的な成功を追求できるようになるでしょう。
ここからは、人事管理や労務管理との違いを解説します。
人事管理との違い
人事管理は、企業の全体的な人材管理を意味しており、報酬や評価などが管理基準です。
よって、人事管理は人事の従業員が主に使う言葉です。
しかし、人材マネジメントは人材を効果的に活用する仕組みを意味しますので、人事管理よりも一歩踏み込んだ考え方といえるでしょう。
労務管理との違い
労務管理は、社会保険の手続きや給与計算など、従業員の労務にまつわる仕事を管理することです。
従業員の報酬や教育を管理する人材マネジメントとは異なり、労務管理は従業員の待遇に関連することを管理します。
人材マネジメントの必要性、注目される理由
人材マネジメントの必要性、注目されるようになった理由をまとめました。
- 少子高齢化が原因の人材不足
- 働き方改革
- グローバル化
それぞれ見ていきましょう。
少子高齢化が原因の人材不足
少子高齢化に伴い、15歳〜64歳の生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに、2030年は6875万人、2065年には4529万人になると予想されています。
労働力不足や国内需要の低迷、事業の縮小など、企業にとってさまざまな問題に直面するでしょう。
若手人材の早期離職を防止し、継続的な採用による人材確保を図ることと同時に、既存社員の能力やスキルを活用して、いかに組織全体の生産性を向上させていくかが求められます。
限られた人的資源を最大限活かすためには、人材マネジメントが必要不可欠です。
(出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少 (soumu.go.jp))
働き方改革
2019年から、すべての企業で働き方改革を実施または、推進することが義務付けられました。
この働き方改革は「働く人々がそれぞれの事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現する」ことが目的です。
長時間労働の是正や高齢者の就労促進、子育てや介護中の人でも働き続けられる職場環境や、制度作りが求められています。
多様な働き方が可能になることで職場の魅力が増し、仕事に精通した人材の離職防止と、生産性の向上を期待できるでしょう。
さらに、新卒や若手転職者などの入社志望者も集まり、優秀な人材を確保しやすくなるという好循環にもつながります。
企業は働き方改革を効果的に推進するためにも、従業員の多様化する働き方に応じた人材マネジメントが必要になるでしょう。
(出典:厚労省 働き方改革説明資料)
グローバル化
日本では進行する人口減少により、国内需要の減少や国際競争力の低下が懸念されます。
国内の事業展開だけでは、企業の経営が立ち行かなくなる可能性が生じることから、新興国を中心とした海外市場の開拓に目を向ける企業が増加しています。
しかし、新興国市場への対応が、欧州や他の東アジア諸国の企業と比べると遅れている傾向があるということが、文部科学省の調査によって明らかになりました。
産業・経済のグローバル化と激化する企業間競争に取り残されないためにも、次のようなスキルのあるグローバル人材が必要になります。
また、グローバル人材を育成したり、マネジメントしたりする環境も必要です。
- 国際社会で必要となる語学力や交渉力
- コミュニケーション能力
- 採用
- 育成
- 評価
- 報酬
- 配置・異動
- 休職・復職
ぜひ参考にしてください。
1.採用
採用は組織の基盤を築く過程であり、正確な採用戦略を持つことは、必要不可欠です。
将来性のある人やある能力に長けている人を組織に取り込めば、ビジネスの競争力を高める鍵になるでしょう。
社内に足りない人材や長期的に必要な人材を見極めたうえで採用活動すると、効率的に実施できるうえ、時間やコストを抑えられるでしょう。
2.育成
採用したばかりの従業員が企業にとって即戦力になるのは難しいため、継続的な育成が必要です。
新しいスキルの習得や、仕事に必要な勉強を支援することで、社員のモチベーションを高め、組織全体の生産性を向上させられるでしょう。
育成には、定期的な研修や上司、先輩からのフィードバックなどが効果的です。
3.評価
人材のパフォーマンス評価は、組織の成果と個人の成長を促進するために重要です。
評価システムには目標設定や年次評価などが含まれ、これを通じて従業員の達成度やスキル、態度を総合的に判断します。
適切な評価は、従業員の労働意欲の向上や、目標達成に向けた行動の促進にも寄与するでしょう。
4.報酬
報酬は従業員の努力や業績を正当に評価し、その結果を反映させる手段です。
報酬には固定給だけでなく、業績連動型のボーナスや株式オプション、福利厚生などの非金銭的な報酬も含まれます。
これらの組み合わせは、従業員が感じる報酬の公平性や満足度に大きく影響するでしょう。
5.配置・異動
配置は組織内における人材の適切な位置づけのことで、異動はその位置を変えることを意味します。
それぞれの役割をまとめました。
- 配置:社員のスキルや適性、経験などを考慮して、最も効果的な位置に配置
- 異動:組織のニーズや従業員のキャリアの進行に応じて、異動や昇進で行われる
組織の柔軟性が高まり、変化するビジネス環境に迅速に対応する能力が強化されるでしょう。
6.休職・復職
休職とは、健康や家族の都合で一時的に職を離れることなのに対し、復職は休職後に職場へ再び戻ることです。
休職や復職のサポート体制を整えることは、従業員の満足度や組織への所属意識を高めるために重要です。
多様な働き方ができる体制や環境を整備することで、各自の能力を最大限発揮できるようになるでしょう。
人材マネジメントの実施手順
人材マネジメントの実施手順をまとめました。
- 組織が抱える課題点の把握
- 課題を解決する人材設定
- 課題を解決する人材設定
- 計画の立案と情報共有
組織が抱える課題点の把握
まずは、組織が直面する課題点を、明確に理解しましょう。
組織内のコミュニケーションの取り組みや、業績データの分析などが重要です。
- 市場や業界の変化:外部環境の変動や、競合との差別化など
- 組織内の問題:生産性の低下や高い離職率、低い従業員の満足度など
- 技術的な遅れ:新しい技術やツールの導入が必要な状況
組織の共通目標や経営理念を、さらに浸透させられるでしょう。
課題を解決する人材設定
把握した課題に対応できる人材の設定や、育成方針を明確にしましょう。
例えば、必要な役割やスキルをリストアップし、新しい人材の募集に努めたり、組織内から適切な人材を選定したりします。
また、新しいスキルや知識を身につけるための研修や、教育プログラムを実施します。
人材募集や育成システムなどを充実させることで、組織の競争力を高められるでしょう。
計画の立案と情報共有
計画の立案は、課題点の把握や必要な人材設定の基盤になりますので、具体的なアクションプランを策定し、組織内の関係者との情報共有を行いましょう。
具体的な内容の一部を紹介します。
- 短期、中期、長期に応じた目標設定
- 目標を達成するための具体的な戦略や方針の決定
- 関係者や従業員と計画内容を共有し、理解と協力を得るための会議などを実施
また、経営層のみならず、組織全体が人材マネジメントの役割や意義を理解できるようにしましょう。
人材マネジメントの実施とフィードバック
計画を元に組織へ人材マネジメントの実施を伝え、マネジメント活動を開始します。
人材マネジメントの実施中は定期的に確認し、目標に対する進捗状況をチェックしましょう。
そして、従業員や関係者からのフィードバックを収集し、実施中の活動の有効性や効果を評価します。
フィードバックは、人材マネジメントの効果を最大限にするのに欠かせません。
人材マネジメントを適切におこなうためのポイント
人材マネジメントを、適切におこなうためのポイントをまとめました。
企業のビジョンと一貫性を持たせる
人材マネジメントを効果的に行うためには、経営ビジョンや経営戦略・戦術と一貫性を持たせることが重要です。
また、経営ビジョンを全従業員と共有し、いかに組織全体に浸透させることができるかによって、企業の成長度合いに大きな影響が生じるでしょう。
企業のビジョンと人的戦略・戦術が一致しており、それが組織全体に行きわたることで、経営側も従業員も一体感を持って、目標達成に向けて尽力できるようになります。
従業員自身に目標を設定させる
トップダウン方式経営は企業の経営方針や戦略に沿って、経営トップ層の指示通りに従業員が動く仕事のスタイルで、日本では多くの企業で行われています。
「企業内での意思統一がスムーズに運ぶ」といったメリットがあるでしょう。
しかし、従業員が指示待ちになり、個々の能力が十分に育ちにくくなるリスクもあります。
従業員自ら考え、能力とスキルを十分発揮して成果を出して成長につなげるためには、従業員自身に主体的に目標を設定させる必要があります。
第三者から一方的に与えられた目標よりも、自主的に定めた目標のほうが責任を持って最後まで成し遂げる原動力や達成感、モチベーションの向上につながるでしょう。
状況に合わせて変化させていく
2020年に発生した新型コロナウィルスの流行により、人々のライフスタイルも働き方も大きく変化しました。
さらに、デジタル化や働き方改革の推進なども加わって、企業の柔軟な対応が求められています。
また、技術革新のスピードの速さや人々の価値観の多様化によって、現代社会は将来の予測が困難な時代になっています。
このような変化の激しい時代の流れに合わせて、企業も経営戦略と人材マネジメントの仕組みも見直し、変化させていくことが必要になるでしょう。
人材マネジメントのまとめ
少子高齢化や働き手の減少に伴い、人材の流動性が近年増加しており、魅力的な職場への集中が起こっています。
人材マネジメントの適切な運用が、従業員のモチベーション向上と職場の魅力の向上に繋がる重要な要素です。
この記事を参考にしながら、経営層や人事部の責任者は適切な人材マネジメントを行いましょう。