アダプティブラーニングとは? メリット・デメリットと企業ができる活用方法
学習者に合わせた学習方法を提供するアダプティブラーニングは、画期的な手法として近年注目を集めています。
従来の学習プログラムとは異なり、学習者と指導者に多くのメリットがあります。
この記事では、人財育成の担当者に向けて、アダプティブラーニングの概要や取り入れるメリット、注意点を解説します。
また、この記事の後半部分では、アダプティブラーニングの活用例や企業事例をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
アダプティブラーニングとは
アダプティブラーニングは、学習者に合わせた学習を提供し、効率的な学びを実現することです。
従来の一律の学習プログラムとは異なり、個々の進捗や弱点を分析し、適切な教材を自動選定するのが特徴的です。
普及が進んだ理由や、関連用語との違いを見ていきましょう。
普及が進んだ理由
AIなどの高度な最先端技術が進化していますので、従来のようなマニュアル化された学習ではなく、一人一人に適した学習を提供することが求められています。
また、新型コロナウイルスの蔓延も、アダプティブラーニングが広がった要因です。
オフラインで交流する機会が減少したため、学習意欲の低下を防いだり、孤独感をなくしたりしないようにする意図があります。
(出典:文部科学省 Society 5.0 に向けた人材育成)
関連用語との違い
アダプティブラーニングと似たような言葉や、関連用語があります。
いずれも紛らわしい用語ですので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- アクティブラーニング:学習者が積極的に学ぶ学習法
- eラーニング:インターネットを学習媒体とし、好きな時間と場所で学ぶ学習法
- ゲーミフィケーション:教育などの別の業界へポイント制のようなゲームの要素を追加する学習法
- LMS(Learning Management System):学習者の成績や教材を管理するシステム
企業にアダプティブラーニングを取り入れるメリット
企業がアダプティブラーニングを取り入れるメリットは、多く存在します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 時間がない従業員でも学習できる
- 学習状況を客観視できる
- 早期的な人財育成
- 教育レベルに差が生じない
- 研修コストの削減
時間がない従業員でも学習できる
アダブティブラーニングはITを活用したeラーニングの一つで、一人一人の学習の進捗状況に応じて学習を進められます。
従来の学習方法よりも、全体的に効率よく教育を行えるのが特徴です。
時間がなくて勉強できない従業員や、新入の従業員などに対して活用されることが多いでしょう。
学習状況を客観視できる
ITを活用しているため、受講している人の学習進捗状況について、一人一人を客観的に確認できます。
受講者の得意分野や苦手なところを、管理者が確認できるでしょう。
したがって、受講者が苦手な分野に対して適切にフォローできるようになります。
早期的な人財育成
受講者によって進捗度に違いがありますが、比較的早い段階で自社の即戦力にすることも可能です。
アダプティブラーニングは、受講者に応じて最適な学習環境を提供できるためです。
また、一人一人の進捗状況を確認しながら、早期戦力になるほどの高いスキルのある従業員を見極めることが、容易にできるようになるでしょう。
教育レベルに差が生じない
すべての受講者が同じレベルの内容を受講できるため、教育レベルにおいて差が生じることはほぼありません。
また、進捗状況に差はあるかもしれませんが、学習内容が同じですので、進捗が遅れている方に対して、進んでいる方がフォローをするといった人間関係の形成にも貢献することができるでしょう。
研修コストの削減
従来の集合型のタイプの研修では、研修を行う会場や研修内容に伴う講師の手配など、時間とコストが多大に発生してしまう恐れがありました。
しかし、アダブティブラーニングを取り入れることで、こうした人的コストや時間的コストを削減する効果が見込まれます。
アダプティブラーニングを取り入れる際の注意点
アダプティブラーニングを取り入れる際の注意点をまとめました。
- コストが生じる
- 不向きな分野がある
- 学習モチベーションが低下する可能性がある
コストが生じる
アダブティブラーニングを行うにあたって、システムの整備や端末のセットアップなどの初期投資がかかります。
ITによるeラーニングですので、学習対象者の数の端末を準備する必要があります。
また、インフラの状況によっては、新たにネットワーク設備の整備を行うためのコストが追加で発生し、必要以上に高額になることも考えられるでしょう。
不向きな分野がある
アダブティブラーニングは、あらかじめ用意された教育内容をデータ化したものを使用して学習を行うものとなります。
現場作業などを行うような業種では、不向きであるといえるでしょう。
例えば、医療業界などの非言語領域の業務が多い業種などが当てはまります。
学習のモチベーションが低下する可能性がある
アダプティブラーニングは、端末を使用して1人で学習を進めていくことになるため、学習に対するモチベーションの低下を招く恐れがあります。
また、学習も1人で行うことになるため、漕艇場に伸び悩んでしなう従業員も出てくることが考えられます。
企業ができるアダプティブラーニングの活用例
企業ができるアダプティブラーニングの活用例をまとめました。
ぜひ参考にしてください。
新人従業員の研修
新人従業員のスキルや知識のレベルはさまざまですので、アダプティブラーニングの活用が効果的です。
各新人の現在のスキルレベルや学習ペースに合わせて、カスタマイズされた研修カリキュラムを提供できるためです。
全員が必要なスキルや知識を効率的に習得できるようになるため、新人の従業員たちが即戦力で活躍できる日がより近くなるでしょう。
既存の従業員の研修
既存の従業員の研修に対しても、アダプティブラーニングの導入は効果的です。
例えば、次のようなメリットが考えられるでしょう。
- どのような業務を行っているとしても、自分のタイミングで学習できる
- それぞれの従業員の学習進捗状況
- 各従業員に応じて適した学習内容の習得
- 未受講者の特定
- 従業員の出欠記録やテスト集計
遠隔地にいる従業員の研修
社内セミナーやOJTとは異なり、アダプティブラーニングは出張やテレワークなど、幅広い働き方に適応できるのが特徴です。
時間帯や場所の制約を受けずに、各従業員のペースやニーズに合わせた研修が可能になるでしょう。
リアルタイムでのフィードバックを受けられるため、遠隔地の従業員も孤立することなく研修を進められます。
テスト・アンケート機能の利用
アダプティブラーニングのシステムには、テストやアンケートの機能が組み込まれてますので、研修の効果を定量的、定性的に評価できるでしょう。
テスト機能は、従業員が研修で学んだ知識やスキルをどの程度習得しているかを確認するのに役立ちます。
また、アンケート機能では、研修の内容や進行方法に対する従業員の意見を収集できます。研修の質を継続的に向上させるための参考データを得られるでしょう。
また、教材の数やバリエーションにより、多岐に渡った解決法を展開できます。
アダプティブラーニングを活用した企業事例
アダプティブラーニングを活用した企業事例をまとめました。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
西日本旅客鉄道株式会社
JR西日本は北陸や近畿などに鉄道事業を展開する大企業で、社員数は約4万7千人です。業務内容や知識の共有、学習の効率化を目指して、アダプティブラーニング「Cerego」を導入しました。
Ceregoは適切なタイミングでの復習問題提供により、知識の定着を助けるシステムであり、国内外で高評価を受けています。職員の学習意識の向上と繰り返し学習の効率化が実現されました。
また、情報のアップデートが容易になり、情報伝達の迅速性と正確性が向上しました。職員間の知識共有が活発になり、アダプティブラーニング導入は成功といえます。
株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJ銀行は、日本の3大メガバンクの1つで、社員数は5万4千人超えの大企業です。
新入社員の育成において、教え手の確保の難しさや個人の理解度のばらつきが課題でした。2016年4月から、凸版印刷が開発した金融機関専用のeラーニング「CoreLearn(コアラーン)」を採用します。
法務や税務、財務、為替といった4つのコンテンツを持ち、銀行が独自に「骨太ドリル」という学習内容を組み込んでいます。導入後は社内テストのスコアが前年比で16%アップしました。研修生間の知識共有やチームワークの向上も実現できたそうです。
凸版印刷株式会社
これまで行っていたのは新入社員に対する基礎研修のみで、綿手社員に対してはOJTが中心となっていました。しかし、コロナ禍を経て、若手社員のOJTの機会が減少し、その結果として理解力不足などに陥ることになりました。
このような課題に対して、アダブティブラーニングで次のような内容に着手し、全体的な知識や理解度の底上げを行うことができました。
- 事業部全体の知識レベルの向上
- 研修機会の整備
- 個人スキルや学習レベルの可視化
アダプティブラーニングのまとめ
アダプティブラーニングは、教育現場への導入が進むだけでなく、人材育成や社員教育にも適用されています。
人材育成にはコストがかかりますが、企業の長期的な成長において人材育成は避けられません。
アダプティブラーニングは効率的で費用を抑えながら、効果的な育成を実現可能ですので、ぜひ導入を検討してみてください。