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学習する組織とは? 考え方や自主的な組織を作るポイントを解説

学習する組織とは? 考え方や自主的な組織を作るポイントを解説

学習する組織とは、「メンバーがトップに従う」といったヒエラルキーに基づく考えではなく、「組織そのもの全体が学習と変化を繰り返す」という組織のことです。

ハーバード大学のクリス・アージリスとマサチューセッツ工科大学のドナルド・ショーンが提唱した概念を元に、ピーター・M・センゲが1990年に広めました。

これからの組織には、従来のような「管理重視」から脱却し、「学習」を核とする動きへの転換が重要視されます。本記事では学習する組織の理解と実践の可否について解説します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

学習する組織とは

学習する組織は、これまでの組織によく見られた「トップリーダーが学び、組織の構成員であるメンバーはトップに従う」といった組織ではありません。トップリーダーのみならず、従業員も積極的に学び、組織運営を担うことが重視されている組織です。

従来の姿勢のまま硬直化した組織では、急激な事業変化への対応が困難になりつつあります。そのため、すべての構成員が学習と意思決定を行い、変化に柔軟に対応する力を持つことが求められます。


学習する組織を支える3本の柱

学習する組織を支える柱として、「志の育成」「内省的な会話の展開」「複雑性の理解」の3本があります。それぞれの柱について説明します。

志の育成

志の育成とは、組織の構成メンバーが自律的に仕事を進めるための力を育てることです。志は次の2つに分類されます。

  • チームの志である「共有ビジョン」
  • 社員個人の志を意味する後述する「自己マスタリー」

「学習する組織」を形成するためには、会社組織と社員個人のそれぞれが、自分たちが心から望むことを描き、実現させようとする意志と力を持つことが重要です。

内省的な会話の展開

内省的な会話の展開とは、「自分たち自身の思考について深く考え抜くこと。また、それについて話しあうこと」を指します。

私達が物事を考える時は、どうしても経験や知見に基づくバイアスがかかったり、思い込みをしたりしがちです。

内省的な会話をしっかりと行うことで、抱えているバイアスや思い込みを排除し「本当に正解だ」と考えられる選択肢を選べるようになることが大切です。

複雑性の理解

複雑性の理解とは、「システムや仕組みは多様な繋がりから成立していること、ならびにそうした繋がりの背景で作用しているものは何かを理解すること」を意味します。

複雑性の理解は、目の前で発生している現象がなぜ起きているのかを、表層ではなく根本から考えることが重要です。


学習する組織の5つのディシプリン

ディシプリンとは、もともとフランスの哲学者ミシェル・フーコーが用いた、権力のテクノロジーの本質的要素を指し示す言葉です。ビジネス領域では「会社の指針」や「専門分野・部署」の意味で利用されます。研究領域では「学問分野」の意味で利用されます。

システム思考

システム思考とは、発生している問題の根本的な原因である真因を考えぬくことです。

問題が発生したとき、多くの人は眼前で起こっている事象に目が向きやすいものです。そして、すぐにその火消しをしようと、対処療法的な対応を取りやすくなります。

しかし、それでは根本的に解決することにはつながりません。離職者が続く職場では、新しい人材を採用したとしても、辞めてしまう根本原因が解決されないと、同じ問題が継続することになります。

自己マスタリー

自己マスタリーとは、なりたい姿と現在の姿のギャップを埋めるために、学習を継続しなりたい姿を目指していくことです。

学習する組織では、トップリーダーのみならず組織のメンバーも、社員個人がどのように成長したのかをイメージし、思い描く力が求められます。仕事を通じて社員個人がどのように成長していきたいのか、考えて学習することが重要なのです。

メンタルモデル

メンタルモデルとは組織や社員個人が潜在的に持っている固定イメージのことです。

社員一人ひとりには無意識下で行われる行動があり、本人も認識していないイメージや思い込みに沿って行動していると言われています。

誰にでもこうした強い思い込みはあることを理解し、変容させることが組織の変化や改革につながります。

共有ビジョン

共有ビジョンとは、会社組織全体で共有するビジョンです。

社員一人ひとりが同じ方向を目指すためには、目標や価値観、使命(ミッション)などが組織に浸透し、各々の社員に自分事として共有されていることが大切です。

共有ビジョンには以下の2つのポイントがあります。

  • 組織が目指す形を明確化する
  • 理想とするあり方を共有する

チーム学習

チーム学習とは社員でビジョンを共有しながら学習を深めることです。

チーム学習をすることで、共創的な会話も展開されやすくなります。個人ではなくチームで学習することが、優れたアウトプットにつながるのです。チーム学習のポイントは以下の2つがあります。

  • 学習を深めるためのメンバー間の意見交換やディスカッション
  • 組織に関わるメンバー同士の対話

7つの学習障害

企業には7つの学習障害があると言われています。成長や変革を阻害する学習障害について具体的に解説します。

職務イコール自分

組織におけるアウトプットは全ての職務が関連して生み出される結果ですが、社員は「自分の職務範囲が、自分の責任範囲」と考えがちです。

こうした思考に陥ってしまうと、自分が行ったことが不本意な結果になっても「自分ではない、誰かの失敗によって発生した」と考えてしまいがちです。その結果、不本意な結果になった際も本質的な原因がつかみにくくなります。

原因の他責思考

「問題の原因は自分ではなく、他人にある」と人のせいにする他責思考です。こうした思考をする社員は、問題を自分事として捉えることがなくなります。

積極策という幻想

困難な問題に直面した時、敵に対してひたすら攻撃的になることです。

攻撃的なことは一見、積極策であるかもしれませんが、それは真の「積極策」とは言えません。攻撃的になることは正確な状況判断や原因分析を欠いていることの現れでもあり、形を変えた受け身にすぎないのです。

個別事象にとらわれる

組織の会話が「すでに起こった過去の事」に向いている場合や、「短絡的な出来事」だけに支配されている組織では創造的な学習の維持ができないと言われています。

例えば、先月の売上高、新規に発表されたコスト削減計画、競合の新製品に関する会話に終始するようなケースです。

体験から学ぶ限界

体験から学ぶ大切さは、繰り返し説かれています。しかし学習する組織では「重要な決定は直接経験していない」と考え、体験から学ぶことの限界を認識しています。

ゆでられたカエルの寓話

水の中のカエルもゆっくりと温められていくと、お湯になったことに気づかずにいつかは茹で上がる運命です。これは組織にも同じことが言えるものです。

組織にとって重大な脅威は、わかりやすく表面化することはありません。問題は徐々に進行するプロセスに隠れているので、ゆっくりと進むプロセスに目を向けることが必要です。

まとめて管理するマネジメント

多くの企業では会社の考えに同調する優秀な社員を評価しがちで、批判的な検討が敬遠される傾向にあります。

このことから、経営層は集団での批判的な検討を行わないことが多く、「熟練した無能」な集団になることを意味します。


学習する組織を目指す方法

学習する組織を目指すためには複数の方法があります。この章ではダブルループ学習やワークショップの有効活用について説明します。

ダブルループ学習

ダブルループ学習とは、既存の価値観や枠組みを取り払って学習する方法です。これまでの前提にとらわれず、行動自体を見直すことで変化や変革を目指します。

ダブルループ学習では、現在の延長線上にある「頑張れば達成できる目標値」ではなく、今までの価値観や枠組みを超えるための高い目標値を設定することが大切です。

また、ブレインストーミングを行うことで自由にアイデアを出し合い、創造的な発想や目標達成のための方法を考えます。

ワークショップの有効活用

ワークショップの有効活用も、学習する組織を目指す選択肢の1つです。ワークショップには、「ビールゲーム」や「アクティブ・ブック・ダイアログ」といった手法があります。

ビールゲームでは、ビジネスゲームを通して自分自身が最適と考えた意思決定でも、全体にとっては最適ではないといったことを学びます。

アクティブ・ブック・ダイアログは、1冊の本をグループのメンバーで分担して読み、著者の伝えたいメッセージを深く理解していく読書手法です。個々が理解した内容をもとにメンバー間で対話を行い、共有します。


学習する組織についてのまとめ

組織にとって「学習する組織」の追求は、従来の枠組みを超えた変革への適応力や自己革新の力を有することです。

内外の環境変化が加速する時代においては、トップリーダーのみならず、社員一人ひとりがビジョンを共有し、自律性と協調性を備え、変化に柔軟に対応することが重要です。その実現により、組織として望ましい成果を創出できるでしょう。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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