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eラーニングは労働時間に含まれる? 判例から見る労働時間の判断基準

eラーニングは労働時間に含まれる? 判例から見る労働時間の判断基準

企業が主に社員研修やスキルアップのためにeラーニングを導入するケースが増えています。

従業員にとっても気になるのが、eラーニングによる学習は労働時間に含まれるか否かです。給与に関わるため裁判やトラブルにつながったケースもあります。

本記事ではeラーニングが労働時間に入るか否かに関する過去の判例や、その判断基準についての情報をお届けします。

企業による労働時間管理の判断を明確にし、適切に対応していきましょう。


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eラーニングの労働時間該当性とは?判例が示す判断基準

労働時間該当性とは、労働基準法上の労働時間に当たるか否かのことを指します。一言でいうと、eラーニングの受講が労働時間に該当するかどうかは、受講義務の有無によって異なります。

ここでは、労働時間に含まれるパターンと含まれないパターンについて詳しくみていきましょう。

労働時間として扱う必要があるパターン

企業のeラーニングが労働時間に含まれるパターンとしては、主に以下のような場合に該当します。

  • eラーニングの受講を業務命令として指示した場合
  • 受講しないと人事評価に影響する場合
  • 受講が事実上強制される場合

具体的にはコンプライアンス研修や安全衛生教育など、法令で定められた必須研修をeラーニングで実施する場合です。

また、業務に必要不可欠なスキルを習得するための研修も労働時間として扱います。

労働時間に含めなくてよいパターン

一方、企業のeラーニングが労働時間に含まれないパターンとしては、主に以下のような場合です。

  • キャリアアップのための任意の語学研修
  • 業務に直接関係のないスキル習得のためのeラーニング

社員がeラーニングを自己啓発目的で自主的に受講でき、時間や場所の制約もない場合は、労働時間として扱う必要はありません。

また会社が受講を推奨していても、強制力がなく自由意思で受講できる場合も、労働時間としてカウントしません。


eラーニングの労働時間に関する判例|NTT西日本事件

eラーニングの受講時間が労働時間に該当するかどうかをめぐり、企業と社員の間でトラブルになったケースがあります。

ここでは、代表的な判例であるNTT西日本事件についてみていきましょう。

事件の概要と判決について紹介するので、今後の判断材料として参考にしてください。

事件内容

NTT西日本事件とは、NTT西日本の社員が「会社推奨のeラーニングでスキル習得に費やした時間は労働時間に該当する」と主張して未払い賃金を請求した事件のことです。

社員側は、会社が推奨する以上は事実上の業務命令で、労働時間として扱うべきだと主張しました。

一方で会社側は、eラーニングの受講は完全に任意であり、業務との関連性も低いため労働時間には当たらないと反論しました。

判決内容

この事件に対して裁判所は、eラーニングの受講に強制性がなく会社の利益にも直結しないため、労働時間には該当しないと判断し、会社側が勝訴しました。

その結果、社員側の要求はすべて棄却されています。この判決では、以下が重要な判断基準として示されました。

  • 受講の任意性
  • 業務との関連性
  • 不利益の有無

この事件の判例により、eラーニングの労働時間該当性を判断する際の指針が確立されたのです。


研修時間と労働時間に関する最高裁判例|医療法人社団康心会事件

eラーニングに限らず、研修時間が労働時間に該当するかどうかについて、過去に最高裁判所の判例もあります。

ここでは、医療法人社団康心会事件の内容と判決について解説していきます。これをもとに、労働時間に関する理解を深めていきましょう。

事件内容

医療法人社団康心会事件とは、そこで働く看護師が「院内研修の時間は労働時間に該当する」として未払い賃金を請求した事件のことです。

研修は、看護師としての専門的知識を深めるために病院が実施したもので、参加が義務付けられていました。院外での研修も含まれており、その時間の取り扱いが争点となったのです。

判決内容

最高裁判所はこの事件に対し、研修が業務上義務付けられており、その目的が現在または将来の業務に関連する場合において、研修時間が労働時間に該当すると判断しました。

これによって研修の内容が資格取得のためのものであっても、会社が業務上必要として指示した場合は労働時間として扱うべきという基準を示しました。

この判例により、eラーニングを含む研修時間全般において業務上の必要性と義務付けの有無が、労働時間該当性の重要な判断基準となることが明確になっています。


判例を踏まえたeラーニングの労働時間管理の注意点

ここまでの事件の判例を踏まえ、企業がeラーニングを導入する際の労働時間管理の注意点について解説します。

トラブルを未然に防ぐために、以下の点についてそれぞれ確認していきましょう。

  • 必須研修は残業代の支払い対象になる
  • 任意研修は評価制度と切り離して設計する
  • 必須と任意の区別を就業規則に明記する

必須研修は残業代の支払い対象になる

医療法人社団康心会事件の判例を踏まえると、企業が必須研修として実施する場合は明確に労働時間として扱わなくてはなりません。

就業時間内での受講を原則とし、時間外の受講については残業代の支払いが別途必要です。

研修内容と業務の関連性を明確に示し、後のリスク防止のために文書化しておくことがポイントになります。

任意研修は評価制度と切り離して設計する

NTT西日本事件の判例を参考に、受講の自由度を確保し、事実上の強制とならないようにすることも大切です。

人事評価や昇給との関連性を持たせる場合は、その基準を明確にし、過度な不利益とならないようにしましょう。

また、受講時間や場所の制約をできるだけ少なくし、研修は参加義務でなく任意の受講となるよう配慮してください。

必須と任意の区別を就業規則に明記する

研修を行う場合、就業規則や社内規定で必須か任意かの位置づけを明確に区分し、職員に周知しておきます。研修の不参加による不利益は一切ないことを注意書きとして明記し、誤認によるトラブルが発生しないよう努めます。

労働時間管理システムでは必須研修と任意研修の受講時間を分けて記録できるため、そちらを活用するのもいいでしょう。

このように研修を任意参加とする場合は、周知文に「任意参加である」ことを明確に記載する必要があります。

また、参加しないことで不利益を受けることがないと伝えることで、事実上の強制参加とみなされないよう配慮することが重要です。


eラーニングと労働時間の関係を明確にしてトラブルのない運用を目指そう

eラーニングを導入する際は、この記事での判例を参考に受講の任意性を明確にし、労働時間管理の基準を定めることで労務トラブルを未然に防ぐことができます。

就業規則や社内規定の整備や従業員への周知徹底、適切な労働時間管理が、円滑な運用のポイントになります。

また、eラーニングを行った後も定期的な運用ルールの見直しと、従業員からのフィードバックの収集も忘れずに行ってください。良好な労使関係を結ぶための対策をして、eラーニングの実用的な運用につなげましょう。


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