人事評価システムとは? 導入メリットから選び方まで徹底解説
人事評価システムは、評価業務を効率化して評価の質を高めるシステムです。現在では、企業の規模を問わず導入が進んでおり、評価の公平性を担保しつつ、人材育成や組織活性化にも役立つツールとして期待されています。
本記事では、人事評価システムについて、基本的な知識から導入手順、選び方のポイントなどについて詳しく解説していきます。主な機能や提供形態の知識も蓄えて、最適なシステム導入の参考にしてみてください。
人事評価システムとは
人事評価システムとは、従業員の評価に関する一連のプロセスをデジタル化し、効率的に一元管理するためのソフトウェアのことです。
評価シートの作成から結果の集計、集計結果のデータ分析やフィードバックなど、評価業務全体をシステム上で完結できます。
従来の紙ベースやエクセルでの運用と比べ、評価者と人事部門の手間や作業時間を大幅に削減できます。
また評価データの蓄積・分析が容易になることで、人材の育成や適材適所の配置など、戦略的な人事施策にも効果的です。
人事評価システムの主な機能
人事評価システムには、評価業務に必要である様々な機能が搭載されています。
ここでは、代表的な機能である以下の3つについて紹介します。
- 評価シートの作成・管理機能
- 評価プロセスの自動化機能
- データ分析・レポート機能
評価シートの作成・管理機能
人事評価システムには、目標管理制度やコンピテンシー評価、360度評価など、様々な評価方式に対応したテンプレートが用意されています。
評価項目や尺度の設定、ウェイト付けなど、自社の評価基準に合わせたカスタマイズも可能です。
また過去の評価データを参照しつつ、新しい評価シートを効率的に作成できます。
評価プロセスの自動化機能
評価シートの配布や回収、督促メールの送信などの評価プロセスを自動化する機能もあります。これにより進捗管理が非常に容易になるでしょう。
提出期限前の自動リマインドは、評価遅延の防止に活用されます。承認フローに従って、自動的に次の評価者へと評価シートが回付される便利なシステムです。
データ分析・レポート機能
人事評価システムで集計した評価結果は、自動集計されてグラフやチャートで可視化できます。部門別、職層別など様々な切り口での分析が可能です。
比較しやすいので、各評価の分布や偏り(甘辛)を検出し、調整が必要な箇所を特定できる機能でもあります。
人事評価システムの3つの提供形態
人事評価システムの機能について紹介してきましたが、それらの提供形態は大きく分けて以下の3種類あります。
- クラウド型システム
- オンプレミス型システム
- パッケージ型システム
それぞれの特徴を理解し、自社に最適なタイプを選ぶことでより効果的なシステム導入を目指しましょう。
クラウド型システム
主流といえるのがクラウド型システムです。その理由は初期費用が少なく、短期間で導入できる点にあります。
ベンダー側で定期的なメンテナンスやセキュリティ対策を行ってくれるので、管理や対応による負荷も軽減可能です。インターネット環境さえあれば、場所を選ばずに利用できるメリットもあります。
オンプレミス型システム
オンプレミス型システムは自社のサーバーにシステムを構築でき、完全なカスタマイズが可能です。機密性の高いデータを自社内で一元管理できるため、セキュリティ要件の厳しい組織に適しています。
ただし、初期の導入コストは高額になる傾向があります。専任の担当者の配置や、自社での運用体制の整備が必要です。
パッケージ型システム
標準的な機能が揃えられたパッケージ型システムがあります。自社に必要十分な機能を厳選すれば、比較的安価での導入が可能です。
機能のカスタマイズ性については、クラウド型とオンプレミス型の中間程度といえます。運用に関しては、バージョンアップ時に追加の費用が発生するケースもあるので注意しましょう。
人事評価システム導入のメリット
ここからは、人事評価システムの導入による具体的なメリットについてみていきます。
- 評価業務の工数を削減できる
- 公平な評価を実現できる
- 人材データを一元管理して活用できる
これらの導入におけるメリットを知ることで、自社での導入も検討しやすくなるでしょう。
評価業務の工数を削減できる
人事評価システムを活用することで、評価業務にかかる工数を大幅に削減可能です。
人事評価には、評価シートの作成から配布、面談後の記入、回収、集計などと数多くの作業工程があります。システムはこれらにかかる時間を短縮して、人事部門の作業負荷を大幅に軽減してくれるのです。
またシステム内の自動リマインド機能によって評価の提出漏れが防げるため、評価スケジュールの遅延を最小限に抑えられます。
公平な評価を実現できる
人事評価システムによる統一ルールのもとで評価を行うことで、評価者の主観に左右されない公平な評価が実現できます。
必要に応じて部署や評価者による評価の甘辛を分析し調整しましょう。企業内での評価基準をより明確化し、評価のブレを最小限に抑えられます。
評価の根拠となるデータも蓄積されるので、評価プロセスの透明性が増します。
人材データを一元管理して活用できる
人事評価システムを利用した人事評価の履歴データの一元管理は、社員の成長度合いを把握するために有効です。
過去の実績や目標達成状況を容易に参照できるため、キャリアパスの設計や配置転換の判断材料としても活用できます。
これにより、部門をまたいだ人材の発掘や長期的な人材育成など、戦略的な人事施策に活かすことができるのです。
人事評価システム導入の注意点
システム導入による業務改善効果は大きいですが、スムーズな運用のためにはいくつか気を付けるべき点があります。
ここでは、以下の人事評価システム導入における注意点について解説します。
- 導入・運用コストを事前に把握しておく
- 導入スケジュールを適切に設計する
- 運用ルールを細かく設定する
メリットだけでなく注意点についても知っておくことで、より人事評価システムについての理解を深めましょう。
導入・運用コストを事前に把握しておく
システムの導入費用には、初期費用としてデータ移行や教育研修などの付帯コストなども含めて予算を把握する必要があります。
一般的に、月額利用料は従業員数に比例するため、将来的な人員計画を考慮して試算しておくことが重要です。
導入後の運用・保守費用やカスタマイズ費用なども含めたトータルコストで判断しましょう。目の前の安易な価格比較だけでは想定外の出費を招くリスクがあるため、中長期的な目線で費用対効果を見極めることが大切です。
導入スケジュールを適切に設計する
人事評価システムの導入には、平均して3〜6ヶ月程度の期間を要します。そのため評価サイクルに間に合うように、余裕を持ったスケジュール管理が肝心です。
まずは、現行の評価制度の棚卸しから、システム選定、テスト運用まで段階的な移行計画を立てましょう。また、説明会や研修など、社員への周知・教育の期間も十分に確保しましょう。
評価者と被評価者双方への丁寧なコミュニケーションを重ねていくことで、新制度への理解と納得を得ることができます。
運用ルールを細かく設定する
人事評価システムを円滑に運用するためには、評価基準やプロセス、権限設定などの細かいルール作りが欠かせません。
部門間での評価の調整方法や、最終評価の確定プロセスなど、詳細なルールまで決めておくと安心です。そのあとでシステム設計に入りましょう。
システム導入を機に、評価制度自体の見直しも検討してください。
人事評価システムの選び方
効果的な人事評価システムの導入・運用を実現するためには、自社に最適なものを選ぶことが重要です。
以下では、人事評価システムの選定において押さえるべきポイント3つについて解説していきます。
- 企業規模や目的に応じたシステムを選ぶ
- 必要な機能を見極める
- セキュリティ面を確認する
企業規模や目的に応じたシステムを選ぶ
企業の従業員規模や予算に応じて、適切な人事評価システムを選択することが重要です。
例えば、先述した提供形態においては、従業員100人以下の中小企業は月額3-5万円程度のクラウド型、1000人以上の大企業はオンプレミス型が適しています。
また、使いにくさや評価方法の複雑さが新しいシステム運用の浸透を妨げてしまうため、慎重に考慮する必要があります。
具体的には、比較検討の際、以下のポイントについて着目してみましょう。
- 価格(導入費や、運用にかかる費用等)
- 使いやすさや見やすさ
- 従業員規模
- 評価方法
- カスタマイズ性
- 提供形態
- システム連携
- サポート体制
- 拡張性
このように、将来的な事業展開も含めて、自社の企業規模や目的に適した機能が備わっているシステムを選んでください。
必要な機能を見極める
先述の通り、人事評価システム導入に向けた比較検討の際のポイントから自社に適したシステム選びが重要です。
そのために自社の評価制度における課題を洗い出して必要な機能を見極めます。優先順位を付けてリスト化することがおすすめです。
特に、目標管理、コンピテンシー評価、360度評価など、採用している評価方法への対応可否の確認は大切です。
さらに、レポート機能やデータ出力機能など、評価後の活用シーンも想定して機能を検討することでより長期的な運用が見込めます。
セキュリティ面を確認する
人事評価システムを選ぶ際には、データセンターのセキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況は必ずチェックしておきましょう。
セキュリティが保証されていないことで、個人情報の流出やSNSの不正利用、データ改ざんなどのトラブルが発生する可能性があります。
そのため、データバックアップの頻度や保管方法、災害対策の内容に至るまで詳細に確認することが大切です。
また個人情報の取り扱いポリシーや、情報漏洩時の補償内容まで細かく確認しておくことで後のリスクを最小限にすることができます。
人事評価システムの導入ステップ
人事評価システムの導入は、段階を追って徐々に進めていく必要があります。
以下では、人事評価システムの具体的な導入ステップについてみていきましょう。
- 導入前の準備をする
- システムを選定して導入環境を整える
- 社内への定着化を図る
1.導入前の準備をする
人事評価システムを決める前に、まずは導入する目的や課題を整理しておきましょう。現行の評価制度や運用上の課題を洗い出し、システム化による解決点を明確にしておいてください。
そのあと人事評価に関係する部門への説明をして合意を得てから、プロジェクトチームを発足します。そのチームの中で予算、スケジュール、責任者など、プロジェクトの基本事項を決定しましょう。
2.システムを選定して導入環境を整える
自社に適した人事評価システムについて理解を深めたら、以下のような流れで進めていきます。
- 要件定義
- システム選定
- 契約
- 環境構築
- テスト運用
- 研修
- 本稼働
上記の各フェーズでの必要工数と担当者を明確にしたら、プロジェクトや業務進捗における区切りや中間目標(マイルストーン)を定めることが大切です。
テスト運用の際のフィードバックを反映し、適宜設定やルールの調整も行っていきましょう。
3.社内への定着化を図る
人事評価システムの効果を最大限発揮するためには、導入後いかに定着させるかがポイントになります。定着化に有用な施策は、以下のとおりです。
- 評価者・被評価者向けのマニュアル整備
- 管理職への定期的な研修の実施
- 従業員の満足度調査
- 定着を妨げる問題点の発見と改善
- ヘルプデスクの設置
導入後の活用状況をアンケートやヒアリングを通してモニタリングし、必要に応じて改善を行うことも大切です。
自社に最適な人事評価システムを導入して、評価業務を効率化しよう
人事評価システムは、導入目的や自社の課題を明確にした上で必要な機能を備えているシステムを選定することが成功の鍵です。
導入においても、段階的なステップと丁寧な社内コミュニケーションを心がけることにより、スムーズな運用開始が可能になります。運用後も定期的な効果測定を行い、社内でヒアリングを行いながら改善することも重要です。
人事評価システムを最大限に活用し、評価業務の効率化と公平な評価制度を実現しましょう。