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国民年金基金・小規模企業共済・経営セーフティ共済の基礎

著者: 税理士  髙橋 昌也

国民年金基金・小規模企業共済・経営セーフティ共済の基礎

以前、iDeCo(イデコ)について紹介しました(※「iDeCo・ふるさと納税・NISAの基礎」のコラムを参照)。

自分でできる年金の上乗せということで、近年大変注目されている制度です。

ただ、実はiDeCo以外にも活用できる制度はいろいろとあります。

このコラムでは、iDeCoと似たような感覚で活用できる制度と、事業経営上で損金(経費)にできる制度について簡単にご紹介します。



余裕資金で取り組み、ある程度所得があることが重要

各制度を活用するに当たり、やはり重要なのは「余裕資金で取り組むこと」です。特に国民年金基金と小規模企業共済については、将来の個人所得を改善するためのものなので、よりその傾向が強いといえます。

そして、どの制度についても、ある程度の拘束性があります。掛金等を一度支払ったからには、簡単に手元へ戻すことが難しいです。手元資金に余裕がない人が取り組むと、日常的な資金繰りが圧迫されかねません。

また、これらの制度を検討するとき、支払った保険料等が所得控除や損金になる、という点を重視する方も多いです。そのメリットを最大限活用するためには、個人や法人に一定以上の所得(利益)があることが必要です。

ある程度儲かっている人が、余裕資金で取り組むもの。この前提を忘れずにいることが、各制度をうまく使いこなすためのコツです。


国民年金基金

参考:国民年金基金

まず国民年金基金について。こちらは以前からある年金の上乗せ制度です。加入できるのは個人事業主など、いわゆる社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していない方々です。個人事業主は法人勤務の人と比較して年金制度が手薄いため、その拡充を目的として設けられている制度です。

毎月負担する掛金は、所得税等の計算上、全額が所得控除の対象です。高所得の人であれば、それだけ節税効果が高くなります。そして将来受け取る年金は、比較的緩やかに課税が行われます。掛金の負担時、そして年金受取時、両面で税制上の優遇が用意されています。

制度の性格はiDeCoと似ています。大きく異なるのは以下の点です。

・国民年金基金は確定給付型(いくらもらえるのかが決まっている)

以前に紹介したiDeCoは確定拠出型、つまり「掛金の支払額が決まっている」というものでした。iDeCoは運用方法について自分で選択する必要があり、その結果についても自己責任です。運用がうまくいけば年金資産は増えますし、失敗すれば減少します。

一方、国民年金基金は確定給付なので、掛金を支払った時点で、将来もらえる年金額が確定しています。自分で運用指示をする必要もありません。

また受取についても少し違いがあります。iDeCoは一時金での受取も可能ですが、国民年金基金は基本的に年金形式での受取です。またiDeCoは基本有期年金であるのに対し、国民年金基金は基本終身年金です。終身の方がお得なようですが、死亡年齢によっては損得が逆転します。

両制度を比較すると、その長所短所は表裏一体の関係にあります。iDeCoは運用の責任を問われますが、うまくいけば大きく資産が増えます。国民年金基金は、もらえる金額が決まっているので安心ですが、例えば物価が大幅に高騰した場合には、資産価値が相対的に減少している可能性があります。

自分の性格がどちらの制度に向いているか、そして日本経済の先行きはどうなりそうか。そういったあたりも踏まえながら、両制度を比較する必要があります。そして、両制度は掛金の上限額を共有しています。加入できる上限額は、両制度合わせて68,000円までとされています(2021年7月現在)。


小規模企業共済

参考:小規模企業共済

次は小規模企業共済です。こちらは小さな企業の経営者や役員、個人事業主が対象となっている退職金制度です。昭和40年から始まった歴史ある制度で、2020年時点で約147万人の加入者がいるそうです。

この制度も、iDeCoや国民年金基金と同じく、毎月の掛金について、所得税等の計算上、全額所得控除の対象です。やはり、高所得者であればそれだけ節税効果が期待できます。

共済金を受け取るときには、一括と分割で選択することが可能です。これはiDeCoと同じような形で、課税方式もiDeCoと同様です(一括であれば退職所得、分割であれば公的年金等として雑所得)。

掛金負担時に節税があり、共済金の受取時に課税が緩やかということで、iDeCoや国民年金基金と似たような効果が期待されます。各制度の違いとしては、

・確定給付型なのか確定拠出型なのか

・有期か終身か

・一時金受取ができるか否か

このあたりが考えられます。ご自身の希望に合致した形を選択するようにしましょう。

また小規模企業共済は、経営者向けの制度であることから、契約者に対する貸付制度が用意されています。比較的低金利で、貸付制度もいろいろと用意されています。事業経営という側面から考えたときに、いざというときのために融資枠が用意されているのが心強い、と感じる方もいるでしょう。そういう方にとっては、個人資産を増やしつつ、融資枠も増やせるということで大変優れた制度だと思います。


経営セーフティ共済

参考:経営セーフティ共済

最後にご紹介するのは経営セーフティ共済です。前2つの制度が個人資産の拡充を目的としているのに対して、経営セーフティ共済は事業を存続するためのものです。

大まかな特徴

・毎月の掛金は事業上の経費(法人なら損金、個人なら必要経費)に該当

・支払った掛金に応じて、取引先の倒産等を理由に借入が可能

・借入はかなり迅速に対応

・解約時には手当金がもらえる

取引先の倒産には、法的整理、私的整理から災害によるものなど、いろいろな種類があります(残念ながら夜逃げは不可)。特に昨今、さまざまな形での天災や感染症等の影響が大きくなり続けています。そういう社会的情勢を踏まえ、取引先の倒産に巻き込まれる形で自社が倒産しないように準備をしておく、そんな事態のための制度です。

また解約時に掛金が戻るのも大きなポイントです。法人経営者の中には、同制度を使って掛金を支払い続け、一定の時点で解約し、受け取った手当金を退職金に充てる人もいます。間接的な形で、個人資産形成に活用されています。

最近はiDeCoやNISA、ふるさと納税といった新しい制度の報道が多いため、以前からあるこれらの制度が忘れられている気配もあります。しかし、うまく使えば、新参者には負けないくらい魅力的です。

・どれくらいまで働きたいか

・どういう形で資産を残すのが好ましいか

・事業面への影響(日常の資金繰りや融資など)はどうか

経営者として、様々な立場を総合的に考慮しながら、うまく制度を活用していきましょう。

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著者プロフィール

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髙橋 昌也

税理士

プロフィール
1978年川崎市産まれ。
2006年税理士試験合格、2007年に独立開業。東京地方税理士会川崎北支部所属。同年、FP資格取得。
開業当初より「ちいさなお仕事の支援」に特化して事業を展開。
単なる税務にとどまらず、顧客の事業計画策定を支援するなど業務全般の支援を実施。

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