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就業規則の作り方 年次有給休暇の付与・管理は大丈夫ですか?

著者:本山社会保険労務士事務所 所長  本山 恭子

就業規則の作り方 年次有給休暇の付与・管理は大丈夫ですか?

法に定められている年次有給休暇ですが、付与する時期や、取得の方法、取得しきれなかった分の処理、また正社員でないパートやアルバイトへの付与の有無など、なかなかピンとこない方も多いかもしれません。

年次有給休暇の目的を理解し、法律に従って対応することで、年次有給休暇の正しい管理・取得につながっていくでしょう。

ここでは、年次有給休暇の付与、取得、管理についての基本事項をわかりやすく解説していきます。


1. 年次有給休暇って付与しないといけないもの?

労働基準法では、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として、使用者には一定の要件を満たした労働者(管理監督者を含む)に対して、毎年、法で定められた日数の年次有給休暇を付与することを規定しています。

雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤することが当該要件です。その後は、雇入れ日から6か月経過日から起算した勤続年数に応じて付与日数が定められています。この付与が義務付けられているのは、いわゆる正社員だけではありません。契約社員、パート、アルバイトなどの雇用形態の人たちにも要件を満たせば付与しなければなりません。学生アルバイトだとしても同様です。ただし、所定労働日数によって付与日数が違い、次の表のようになっています。

上記表に「継続勤続年数」とありますが、在籍期間をいい、勤務の実態から判断されます。例えば定年退職した人を嘱託社員と称して再雇用する場合などは、勤務は継続していますので、改めてカウントするのではなく、継続して勤務しているとして勤続年数を割り出します。


2. 年次有給休暇の取得方法

(1)原則の方法

年次有給休暇の原則としての取得方法は、労働者が「この日に取得したい」として時季を指定することによります。使用者は労働者が指定した日に年次有給休暇を与えなければなりません。しかし、当該労働者が指定した日に年次有給休暇を取得されてしまうと、事業の正常な運営が妨げられる場合には、使用者に他の時季に変更する権利が認められています。

(2)計画的付与

労働者が時季を指定する方法の他に、付与されている年次有給休暇日数のうち5日を除いた残りの日数について、「計画的付与」の対象とできるとされています。計画的付与を行うには次の手続きが必要です。

① 就業規則による規定

就業規則に、5日を超える分については、労使協定を締結し、当該労使協定の定めるところにより年次有給休暇の時季を指定することがある旨の定めをおくこと。

② 労使協定の締結

実際に計画的付与を行うためには、従業員過半数代表者等との間で、書面による労使協定を締結すること。
この労使協定書では、計画的付与の対象者又は除外者、対象となる年次有給休暇の日数、計画的付与の具体的付与日に関する方法、有給休暇の付与を受けていない等、持っていない従業員の扱い、計画的付与日の変更について定めます。この協定書は労働基準監督署へ届け出る必要はありません。

計画的付与は様々な時季指定の方法が考えられます。例えば、全社一斉日としたり、部署ごとにしたり、個人別にしたり。どのような取得日の指定がいいか検討の余地があるといえるでしょう。5日を超える有給休暇を持っていない従業員の対応は、特別な休暇を与えるとする方法が多いかもしれませんが、出勤させることも考えられますし、どのようにするか検討が必要です。

(3)年次有給休暇の時季指定義務

年次有給休暇は先に説明した原則の方法のように、労働者が指定する時季に与えることとされていますが、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、当該年次有給休暇の日数のうち年5日については、付与された基準日から1年の間に、使用者が時季を指定して取得させることが必要とされています。ただし、既に自らの時季指定及び計画的付与にて5日以上取得している場合には、使用者による時季指定は不要です。あくまでまだ取得した年次有給休暇日数が5日に満たない従業員に対しての指定義務となっています。

使用者による指定とはいっても、従業員の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めることが求められています。「努める」ですので、必ずしも本人の意見と同じ日になるとは限らない場合もありえます。年10日とはその年に付与された日数のみを指し、前の年から繰り越された日数は考慮されませんのでご注意ください。

又、会社が時季を指定した後に、従業員自らが時季を指定して年次有給休暇を取得した場合、当該会社が指定した日は時季指定が解除されたりするわけではありませんので、どのようにするかは就業規則において定めておきましょう。

(4)時間単位の年次有給休暇

年次有給休暇の目的には心身のリフレッシュがあり、原則的な付与は1日単位です。しかし、就業規則における定めと労使協定を締結することで、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります。労使協定では次の事項を定めることとされています。なお、この労使協定書は労働基準監督署に届け出る必要はありません。

  • ① 時間単位年休の対象者の範囲
  • ② 時間単位年休の日数(5日以内)
  • ③ 時間単位年休1日分の時間数
  • ④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数

3. その他のいくつかの法的な決まり

(1)時効

年次有給休暇は発生の日から2年間で時効により消滅します。従って、付与された日から2年の間に取得しきれなかった分があれば、時効が来れば取得することができなくなります。

(2)年次有給休暇取得日の賃金

年次有給休暇に対する賃金は、原則として次のいずれかで支払います。支払う方法を就業規則で定め、③の方法を取る場合には労使協定の締結も必要となります。

  • ① 平均賃金
  • ② 通常の賃金
  • ③ 健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額

(3)年次有給休暇管理簿

労働基準法施行規則において、年次有給休暇管理簿を作成し、有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間の保存が義務となっています。書式は特に定めはありませんが、厚労省でひな型を出していますので参考にしてもいいでしょう。


4. まとめ

シフトで管理をしている業種などでは、ぎりぎりの人数で運営しているために、年次有給休暇を取得されては困ると考えるところもあるかもしれません。しかし、要件を満たせば、年次有給休暇の付与及び取得させることが義務になりますから、どのようにしていくか考えていかなければなりません。ときに「アルバイトには有給休暇はないから」などと伝えてしまい、トラブルになる例もありますのでご注意ください。

今回は基準日など基本となる付与の考え方のみお伝えしましたが、管理の簡素化を考えて一斉に付与する日を定める方法などもあります。どのような付与とするかなども検討するのもいいでしょう。実際に付与、取得となると様々な疑問などが出てくるかもしれませんが、書籍やインターネット、労基署に確認するなどして対応していきましょう。

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著者プロフィール

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本山 恭子

本山社会保険労務士事務所 所長

特定社会保険労務士、行政書士、公認心理師、産業カウンセラー、消費生活アドバイザー
ストレスが多く、事業運営もグローバル化の中厳しく、企業、労働者共に大変な今、少しでも働きやすい環境を作るお手伝いをすることを通して、企業、労働者の皆様のお手伝いを精一杯してまいります。法律だけの四角四面でない、気持ちを汲んだサポートを心掛けています。

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