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賞与から雇用保険料は引かれる? 計算方法や、そのほかにかかる保険料・税金を解説

監修者:マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP  岡崎 壮史

賞与から雇用保険料は引かれる? 計算方法や、そのほかにかかる保険料・税金を解説

企業が従業員に給与を支払う時、雇用保険料が徴収されます。賞与からも雇用保険料の徴収は必要になるのでしょうか。

今回は、雇用保険料が賞与から引かれるかどうかをケース別に解説します。

賞与から徴収されるほかの保険料や税金についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


賞与から雇用保険料は引かれる?

雇用保険料は、毎月支払われる給与だけでなく賞与からも控除されます。

雇用保険とは、労災保険などと同じ労働保険の一つで、労働者の失業や雇用の継続が困難になる場合などに備える制度です。

その制度を実施するための財源として、雇用保険料が徴収されています。

賞与から控除される理由としては、雇用保険等の労働保険の保険料が「労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」(労働保険の保険料の徴収等に関する法律2条1項)に対して保険料率を乗じて、納付すべき保険料が算定されていることが挙げられます。

つまり、賞与についても「労働の対償として事業主が労働者に対して支給されたもの」であるため、雇用保険料の控除の対象となるのです。


【ケース別】賞与から雇用保険料は引かれるか

では、ここからはケース別に賞与から雇用保険料が引かれるか見ていきましょう。

退職後の場合

退職後に支給される賞与であっても、雇用保険料は控除されます。

賞与の計算期間が労働者として勤務していた期間である以上、雇用保険料は徴収される対象(労働力の対償として事業主が労働者に支給するもの)です。

退職後に支給される賞与は「退職前の時期の労働に対する対価」として支払われるため、退職の時期に関わらず、雇用保険料の徴収は行われるとも言えます。

死亡した場合

本人が死亡した場合でも、賞与から雇用保険料は徴収されます。

退職後に支給される賞与と理由は同じです。

賞与は「労働の対償として事業主が労働者に支払ったもの」であるため、死亡した後に支給される場合でも、雇用保険料が引かれることになります。

こちらについても、退職時と同様にいつ亡くなったかに関わらず、雇用保険料が徴収されることに変わりはありません。


賞与から引かれる雇用保険料の計算方法

賞与から引かれる雇用保険料の計算の方法は、以下の手順を踏んで行います。

  1. 賃金総額(今回は賞与総額)を集計する。(1000円未満切り捨て)
  2. 被保険者負担分に該当する雇用保険料率(令和5年3月31日までは5/1000(一部の業種については6/1000))を乗じて雇用保険料額を算定する

令和4年度において、雇用保険料率は前期(令和4年4月2日~9月30日)と後期(令和4年110月1日から令和5年3月31日)の2回に分けて、雇用保険料率が段階的に引き上げられているため、計算の時期によって使用する率が異なります。

◎令和4年4月1月~令和4年9月30日

accounting-column90_01.png

◎令和4年10月1月~令和5年3月31日

accounting-column90_02.png

出典:令和4年度雇用保険料率のご案内

また、算定された雇用保険料額は年間の額となります。賞与から控除する場合は、計算期間に応じて按分が必要です。


賞与から雇用保険料が引かれないケース

基本的に賞与からは雇用保険料が控除されますが、賞与の内容によっては雇用保険料が控除されないケースもあります。

たとえば、大入り手当や臨時的なボーナス等のように、臨時的に支給されるような性格のものは、賞与という名称でも雇用保険料が控除されません


雇用保険料以外で賞与にかかる保険料・税金

ここからは、雇用保険料のほかに賞与から引かれる保険料や税金について解説します。

健康保険料

健康保険料は、毎月支払われている給与等(標準報酬月額)や毎年決まった時期に支払われている賞与(標準賞与額)に対して保険料率を乗じて得た金額が徴収されます。

その際に徴収される保険料は、会社と被保険者(労働者)が折半して負担します。

つまり、実際に賞与から控除される健康保険の保険料は、全体の半分の金額です。

なお、健康保険(協会けんぽの場合)の保険料率は、都道府県別に設定されており、毎年4月より新しい保険料率での徴収が行われます。

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、毎月支払われている給与等(標準報酬月額)や毎年決まった時期に支払われている賞与(標準賞与額)に対して保険料率を乗じて得た金額が徴収されます。

その際に徴収される保険料は、会社と被保険者(労働者)が折半負担となるため、実際に賞与から控除される厚生年金保険の保険料は、全体の半分の金額です。

なお、厚生年金保険料率は平成29年8月以降 、18.3%(9.15%ずつの折半負担)となっています。

介護保険料

介護保険料は、毎月支払われている給与等(標準報酬月額)や毎年決まった時期に支払われている賞与(標準賞与額)に対して保険料率を乗じて得た金額が徴収されます。

その際に徴収される保険料は、会社と被保険者(労働者)が折半して負担します。

つまり、実際に賞与から引かれる健康保険の保険料は、全体の半分の金額です。

なお、介護保険料は満40歳以上を対象に、標準賞与額の1.64%の折半負担分が健康保険料とセットで徴収されます。

源泉所得税

源泉徴収税については、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しているかどうかで計算の方法が異なります。

原則として、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は、算出率の表(甲欄)から源泉徴収税額を算出する際に使用する税率を求め、賞与の額にその税率を乗じることで徴収する税額が決定します。

源泉徴収税額は、賞与の額から直接徴収することになるため、会社が負担することはありません

毎年12月に行われる「年末調整」で、徴収した税額の調整(払い過ぎている場合は「還付」され、不足している場合は「追加徴収」)を行います。

労働保険

労働保険料は、労災保険料と雇用保険料を合わせたものとなります。そのため、保険料を計算する際に使用する基準は共通です。

また、労働保険料の計算(今年度の保険料の確定精算と翌年度の保険料の概算払い)は毎年6月1日から50日以内に行うことになるため、それまでに1年間に支払われた賃金や賞与の合計額を集計しておくなどの準備をすることも重要です。

負担割合は、労災保険料は「全額会社が負担」、雇用保険料は「会社と労働者がそれぞれ負担(負担割合はそれぞれ別で規定有り)」となります。


賞与から引かれる雇用保険料についてのまとめ

雇用保険料は、毎月支払われる給与だけでなく賞与からも控除されます。

退職した場合や死亡した場合でも、同様に控除の対象です。ただし、臨時的に支給されるような大入り手当や臨時的なボーナスには、賞与という名称でも雇用保険料が控除されません。

賞与からはほかにも、健康保険料や厚生年金保険料などが徴収されます。

それぞれの保険料や税金について正しく理解して、適切に納めるようにしてください。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表 / 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業として、生命保険や個人年金といった資産運用などに関する業務を担当する。

平成26年9月に1級FP技能士の資格を取得。その後、平成27年11月にFPの国際ライセンスであるCFPを取得。資格取得後は、保険や個人年金以外の様々な金融資産の運用や活用についてのセミナーや金融関係のサイトへの執筆・記事監修などを行う。

平成29年9月にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金を活用した企業の労務環境改善コンサルタントとして、労働者・事業主に対して職場環境の改善に向けた企業研修や助成金活用セミナーと保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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