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傷病手当金とは? 支給される条件や支給されないケース、手続きの流れを解説

傷病手当金とは? 支給される条件や支給されないケース、手続きの流れを解説

病気やケガで休業するとき、誰しも不安になるのが休業中の収入です。

傷病手当金は、業務外の病気やケガで休業した場合に支給される給付金で、休業中の収入の不安を減らしてくれます。ただし、支払いには条件があり、他の給付金を受給している場合など傷病手当金がもらえないケースもあるため注意が必要です。

この記事では、傷病手当金が支給される条件や傷病手当金の計算方法、申請の流れ、傷病手当金がもらえないケースについて詳しく解説します。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

傷病手当金とは

傷病手当金とは、被保険者が業務外の病気やケガで休業し、給与が支払われない場合に健康保険から支給される給付金です。支給対象になると、病気やケガで休業した4日目から支給されます。

支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。ただし、支給開始日が令和2年7月1日以前の場合は、支給開始日から最長1年6か月までの期間とされています。

傷病手当金の申請は、休業している被保険者が加入する健康保険に対し、事業主が行うのが一般的です。
提出期限は、仕事ができなくなった翌日から2年間と定められています。

2年を経過した日の傷病手当金はもらう権利が時効により消滅するため、注意しましょう。


傷病手当金が支給される条件

傷病手当金には、以下の4つの支給条件が定められています。

  • 業務外の病気やケガであること
  • 仕事ができない状態であること
  • 連続3日間の休業含めて4日以上仕事を休むこと
  • 休業期間に給与の支払いがないこと

一つずつ詳しく説明します。

業務外の病気やケガであること

傷病手当金は、業務外の病気やケガのときに支給されます。

業務中や通勤途中での病気やケガの場合、労働者災害補償保険の給付対象となるため、傷病手当金の対象にはなりません。その場合は労働基準監督署に相談しましょう。

また、健康保険で診療を受けられない美容整形手術などによる療養も、傷病手当金の対象外です。

仕事ができない状態であること

傷病手当金が支給されるためには、仕事ができない状態であることが条件です。

「仕事ができない状態」とは、今まで従事していた業務ができない状態のことを指します。仕事ができない状態であるかについては、医師の意見などをもとに、被保険者の業務内容などを考慮して判断されます。

連続3日間の休業後、4日目以降に仕事を休むこと

傷病手当金の支給には、連続3日間の休業後、4日目以降に仕事を休むことも条件です。

傷病手当金は、最初の3日間の連続休業を「待期期間」とし、4日目から支給されます。待期期間には年次有給休暇や会社の公休日も含まれ、4日目以降は連続休業の必要はありません。

休業期間に給与の支払いがないこと

傷病手当金は、休業期間に会社から給与の支払いがないときに支給されます。休業期間に給与が支払われている場合は、傷病手当金の対象となりません。

ただし、休業期間に支払われる給与の額が、傷病手当金の額より低い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
なお、任意継続被保険者は給与の支払いの有無にかかわらず、傷病手当金の支給対象になりません。


傷病手当金で貰える金額

傷病手当金でもらえる金額は、どのように決まるのでしょうか。傷病手当金の計算方法について解説します。

傷病手当金の計算方法

傷病手当金の日額の計算方法は、以下のとおりです。

支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3

計算式にある「支給開始日」は、傷病手当金が支給される初日を指します。
支給開始日の以前の期間が12か月未満の場合は、下記を比較して低い額が採用されます。

  • 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 当該年度の前年度9月30日における加入している健康保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額

傷病手当金の金額は調整されることがある

詳細については後述しますが、傷病手当金の金額は調整されることがあります。
調整されるケースは以下のとおりです。

  • 手当などを含め、給与が一部でも支給されている
  • 傷病手当金と同じ病気やケガで厚生年金保険の障害厚生年金または障害手当金が受けられる
  • 老齢退職年金を受けられる
  • 労災保険から休業補償給付が受けられる
  • 傷病手当金の申請期間中に出産手当金の給付が受けられる

いずれのケースも、受ける給与や給付金の額が傷病手当金を下回る場合に差額が支給されます。

参考URL:https://www.meiyaku-kenpo.or.jp/qa/1674457688_2528


傷病手当金を申請する流れ

傷病手当金を申請する一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 健康保険の被保険者が会社に休業を申し出る
  2. 会社が被保険者に「傷病手当金支給申請書」を配付する
  3. 被保険者が「被保険者記入欄」に記入する
  4. 医師が「療養担当者記入欄」に記入する
  5. 会社が「事業主記入欄」に記入する
  6. 添付書類とあわせて健康保険組合や協会けんぽに提出する

医師に「療養担当者記入欄」の記入を依頼するときに発生する費用は、被保険者が負担します。「傷病手当金申請書」を配付する際、その旨を被保険者に伝えておくと良いでしょう。

傷病手当金の申請サイクルについて、例えば協会けんぽでは、給与の締め日ごとの申請が推奨されています。理由として、傷病手当金の申請には、事業主が勤務状況や給与の支払有無を証明する必要があることが挙げられます。

申請書では、勤務状況や給与の支払有無の証明を3か月までまとめて記入できるようになっているものの、まとめて申請した場合、その分被保険者への給付も遅れるため慎重に検討しましょう。


傷病手当金が貰えないケースとは

傷病手当金が貰えないケースは、以下のとおりです。

  • 給与の支払いがあるとき
  • 障害厚生年金・障害手当金を受給しているとき
  • 老齢退職年金を受給しているとき
  • 労災保険から休業補償給付を受給しているとき
  • 傷病手当金の申請期間中に出産手当金を受給しているとき
  • 国民健康保険加入者(自営業・フリーランスなど)である

一つずつ詳しく解説します。

給与の支払いがあるとき

休業中に給与の支払いがあるときは、傷病手当金を貰うことはできません。

ただし、傷病手当金の日額より少ない額の給与が支払われている場合は、傷病手当金と給与との差額が支払われます。

障害厚生年金・障害手当金を受給しているとき

傷病手当金と同じ病気やケガを理由に、障害厚生年金か障害手当金を受給しているときは、傷病手当金は支払われません。

ただし、障害厚生年金の日額((障害厚生年金+障害基礎年金) ÷ 360)が傷病手当金の日額を下回る場合は、その差額が支給されます。

障害手当金を受給している場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達するまで、傷病手当金は支給されません。

老齢退職年金を受給しているとき

老齢退職年金を受給しているときも傷病手当金は支払われません。退職して資格喪失後に傷病手当金を受給している方が、老齢厚生年金などの老齢退職年金を受けている場合などが該当します。

ただし、老齢退職年金の額を360で割った額が傷病手当金の日額を下回る場合は、その差額が支給されます。

労災保険から休業補償給付を受給しているとき

過去に労災保険から休業補償給付を受給している方が、休業補償給付と同じ病気やケガで仕事ができなくなった場合、傷病手当金は支払われません。

また、業務外の理由による病気やケガで仕事ができなくなった場合でも、別の原因による病気やケガで労災保険から休業補償給付を受給している期間は、傷病手当金が支給されないため注意が必要です。

ただし、休業補償給付の日額が、傷病手当金の日額を下回る場合は、その差額が支給されます。

傷病手当金の申請期間中に出産手当金を受給しているとき

傷病手当金の申請期間中に出産手当金を受給しているときも、傷病手当金は支給されません。

ただし、出産手当金の額が傷病手当金の額を下回る場合は、その差額が支給されます。

国民健康保険加入者(自営業・フリーランスなど)である

国民健康保険の加入者の場合も、原則として傷病手当金は支給されません。国民健康保険には、傷病手当金という給付がなかったからです。

ただし、新型コロナウイルス感染症に係る特例措置として、一部の市町村が国民健康保険でも傷病手当金を支給しているケースがあります。


傷病手当金のまとめ

傷病手当金は、業務外の病気やケガを理由に仕事ができなくなった場合に、健康保険から支給される給付金です。

傷病手当金の受給には、給与が支払われていないことや4日間以上の休業など、一定の条件があります。

また、障害厚生年金や老齢退職年金、労災保険の休業補償などを受給している場合、傷病手当金は支払われないため、注意が必要です。

傷病手当金の申請は、会社から被保険者の所属する健康保険に対して行うのが一般的です。業務外の病気やケガで4日以上の休業となる場合は、会社に休業する旨を知らせ、自身が傷病手当金の対象となるかを確認するようにしましょう。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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