源泉徴収票の見方は? 書類が必要なタイミングや手元にない時の対処方法も解説
年末調整が終わると会社から交付される源泉徴収票。源泉徴収票に記載された数字の意味について、正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。源泉徴収票は、会社が行った源泉徴収の結果が記載されています。支払われた金額だけではなく、差し引かれた金額やその意味もあわせて理解することが重要です。
この記事では、源泉徴収票の見方や必要となるタイミング、手元にない時の対処方法について解説します。「源泉徴収票の見方が分からない」という方は、ぜひお読みください。
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、1月1日~12月31日までに会社が支払った給与や、給与から天引きした所得税の金額が記載された書類です。
会社側からの視点で作成されるため、給与として受け取った金額は「支払金額」と記載され、これがいわゆる個人の「年収」です。
年収だけでなく、社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などの控除額も記載されています。納税額の算出の根拠になるため、確定申告をする場合は源泉徴収票をもとに確定申告書を作成します。
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源泉徴収とは? 仕組みや種類、事務手続きの流れ、計算方法を解説源泉徴収票の見方は?4つの項目
源泉徴収票には、以下の4つの項目が記載されています。
- 支払金額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除額の合計額
- 源泉徴収税額
それぞれの項目が何を意味するのか、源泉徴収票の見方について詳しく解説します。
支払金額
「支払金額」には、1年間に会社が支払った給与と賞与の合計金額が記載されています。基本給に加えて、住宅手当などの各種手当や残業代も「支払金額」に含まれます。
ただし、通勤費や出張時に支給される旅費、日当など非課税扱いになる手当は含まれません。
「支払金額」には1年間に支給された給与の合計額が記載されるため、副業をしていなければ、記載されている金額が年収とほぼ等しくなります。
給与所得控除後の金額
「給与所得控除後の金額」は、給与所得控除がされた後の金額です。
給与所得控除とは、給与所得者の収入から一定額を経費として差し引き、税金の負担を抑える制度です。給与所得控除額は支払金額によって異なり、下記の表をもとに算出できます。
給与等の収入金額 |
給与所得控除額 |
1,625,000円まで |
550,000円 |
1,625,001円 から 1,800,000円まで |
収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円 から 3,600,000円まで |
収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円 から 6,600,000円まで |
収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円 から 8,500,000円まで |
収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円 以上 |
1,950,000円(上限) |
所得控除額の合計額
「所得控除額の合計額」に記載されているのは、給与所得控除以外の所得控除の合計額です。「所得控除額の合計額」に含まれる所得控除は以下のとおりです。
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
適用される控除は個人の状況によって異なるため、「所得控除額の合計額」欄で確認します。
所得控除には、毎月控除されるものと年末調整のみで控除されるものがあります。
源泉徴収税額
「源泉徴収税額」は、1年間に徴収された所得税と復興特別所得税の合計額です。
所得税額は、以下の「所得税の速算表」を使用すると簡単に算出できます。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円 以上 |
45% |
4,796,000円 |
課税される所得金額は、以下の計算式で算出します。
課税所得=給与所得控除後の金額-所得控除額の合計額
次に、課税所得を「所得税の速算表」に当てはめて、所得税額を計算します。
例えば課税所得が650万円の場合、所得税額の計算式は以下のとおりです。
6,500,000円×20%-427,500円=872,500円
なお、平成25年から令和19年までは、所得税とあわせて復興特別所得税(所得税額の2.1%)を納付することとなっています。
源泉徴収票が必要になるタイミング
源泉徴収票はどんなときに必要になるのでしょうか。主に以下の2つのケースで必要になります。
- 転職した時
- 収入証明が必要な時
また、転職時に取得する源泉徴収票には、年末調整が行われていないため所得控除の記載はありません。
源泉徴収票が必要になるタイミングを把握しておくと、必要なときに手元にないという状況を防げるため、確認しておきましょう。
転職した時
転職した時、転職先に源泉徴収票を提出する必要があります。
その年の源泉徴収を転職先が行うことになるため、転職先は転職前の会社から支払われた給与や控除額を正確に把握しなければなりません。源泉徴収票を転職先に提出できない場合、転職先での源泉徴収はできなくなり、自身で確定申告を行う必要があります。
退職時に会社から発行される源泉徴収票を忘れずに受け取り、紛失しないようにしましょう。
収入証明が必要な時
源泉徴収票は、収入の証明として提出を求められる場合があります。例えば、以下のようなケースで源泉徴収票の提出が必要です。
- 住宅ローンやマイカーローンの申込み
- 子供の保育園の入園申込み
- 健康保険の扶養申請
- 公営住宅の入居申込み など
源泉徴収票は収入を証明するだけでなく、会社勤めをしている証明としても使えるため、課税証明書などの他の書類では代用できない場合があります。
必要となったときに慌てないよう、源泉徴収票は大切に保管しておきましょう。
源泉徴収票がない場合の対処方法
源泉徴収票が必要となったタイミングで、源泉徴収票が手元にない場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。源泉徴収票がないケースとは、主に以下の3つです。
- 会社が倒産して源泉徴収票が発行されない
- 支払先が対応してくれない
- 前職の源泉徴収票がない
それぞれのケースで、どのように対処すべきか、具体的に解説します。
会社が倒産して源泉徴収票が発行されない
年末調整前に会社が倒産すると、源泉徴収票が発行されないことがあります。
その場合は、倒産した会社の事後処理を行う破産管財人に、源泉徴収票の発行を依頼しましょう。
破産管財人とは裁判所によって選任され、倒産した会社の財産を管理する弁護士です。破産管財人が分からない場合は、所轄の税務署に相談しましょう。
税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、税務署が会社に源泉徴収票の発行を催促してくれます。「源泉徴収票不交付の届出書」は国税庁のホームページからダウンロードが可能です。
支払先が対応してくれない
源泉徴収票が会社からもらえず、会社に依頼しても発行してくれない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。
「源泉徴収票不交付の届出書」は、源泉徴収票の交付期限を経過した後に提出できます。源泉徴収票の交付期限は以下のとおりです。
- 中途退職:退職後1カ月
- 中途退職以外:翌年1月31日
この手続きは、その年の源泉徴収票を会社が一度も交付していない場合のみ利用できます。既に交付された源泉徴収票の再発行は対象外のため、注意しましょう。
前職の源泉徴収票がない
転職したときは、転職先が前職の源泉徴収票をもとに年末調整を行います。前職の源泉徴収票が手元にない場合は、転職先で年末調整ができないため、自身で確定申告をする必要があります。
まずは退職した会社に連絡し、源泉徴収票の再発行を依頼してみましょう。再発行がされない場合、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する方法は利用できないため、自身で確定申告を行いましょう。
まとめ
源泉徴収票は、1年間に会社から支払われた「支払金額」や「所得控除額の合計額」、「源泉徴収税額」などが記載され、納税額の根拠として使える書類です。
源泉徴収票は転職した時や収入証明が必要な時などに提出を求められるため、紛失しないよう保管しておくことが重要です。
源泉徴収票が手元にない場合でも、状況に応じて破産管財人や税務署に相談すると源泉徴収票を発行できます。ただし、源泉徴収票の再発行は破産管財人や税務署で対応できないため、注意しましょう。