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第28回 急遽テレワークを進めることになったら

第28回 急遽テレワークを進めることになったら

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

このままテレワークをしていくべきなのか?

2020年オリンピック開催日7月24日を目標にテレワークを進めてきた日本企業。そのオリンピックは延期となったが、期せずして新型コロナウィルスにより、強制的にテレワークを実施することとなった。できるできないの議論を通り越し、とにかく実施してみる、そのような壮大な社会実験の場となった感がある。

細々だが、既にテレワークを実施していた企業では、ともかくも実施した結果、「案外できるよね!」という感想のようだ。今回の経験により、一気にテレワークが普通の状態になる雰囲気もある。一方で、テレワークをすると、「実は仕事がそんなになかった」という声も耳にする。会社に行くことで生じる、本当に必要なのか分からない仕事により、忙しかったというのである。

もう一つ、怖い事実もある。テレワークにより、先述したように仕事が減り、上司の関与が激減し、「自分は組織に必要な人材なのか?」と気付く社員もいる。転職活動に走る若手も多いという事実もある。会社として、組織として、管理職としての求心力が足りないと、一気に人材が離れていく可能性もあるようだ。

確かに、このような事態であれば、テレワークを実践しなければならないだろうが、平常時にもテレワークをするべきかどうかは、組織の状況を冷静に検証してからの方が良さそうだ。今回、強制的にテレワークを実施した結果を踏まえて、テレワーク実施のためのポイントを記してみる。

テレワークの定義と事前準備

テレワークと言われるものの中には、自宅で仕事を行う「在宅勤務」、自社のサテライトオフィスで働く場合、自社で契約しているコワーキングスペースで働く場合、仕事の合間や通勤途上においてカフェや空港などで働く場合がある。今回は主に「在宅勤務」をイメージして紹介する。

まず自社の制度として確定する作業が必要となる。在宅勤務においては、「どのようにして誠実な就業を確保するか」、「残業代トラブルを防ぐための対策をどうするか」、「私物のPCを業務に利用する際の情報漏えいをどう防ぐか」などについて、通常の勤務と異なる課題が生じる。

また、「始業時刻」や「終業時刻」など勤務時間に関する項目や、「通勤手当」などに関する項目についても、通常の就業規則をそのまま適用するのでは不具合が生じる場合が多いはず。就業規則を改訂するか、就業規則とは別に「在宅勤務制度に関する就業規則」を作る必要がある。

就業規則での確認点は、テレワークを認める条件、テレワークを認める期間、就業時間に関するルール、就業場所に関するルール、業務上の情報の取り扱いのルール、在宅勤務・テレワーク中の費用負担に関するルール、テレワーク中の手当支給に関するルールなどがある。

その他、物理的に外で仕事ができる環境整備が必要となる。人事的な制度があったとしても、この環境整備ができていないと、テレワークは事実上不可能だ。

進めたいのは、紙の電子化。紙の書類が必要となると、その都度それを取りに帰ったり持ち出さなければならなくなり、手間とリスクが付きまとう。考慮したいのは「捺印」。この作業が残ると、捺印することの多い総務部は、誰かが必ず事務所にいなければならず、足かせとなる。

電子化された書類を、どこでもいつでも誰でも取り出せるように、クラウド上に収納しておく。セキュアな環境確保のために、VPNでの接続が必須。また、シンクライアントにして、端末に情報が残らないようにしたいもの。そうすると、シンクライアントに適応した端末を会社が用意して貸与することが必要となる。自宅の自分の端末での仕事は厳禁である。つまり、電子機器の貸与、パソコンやスマホの貸与が必要となり、その分コストもかかる。

ここで、今回の強制テレワークで出てきた課題が、回線の容量の問題。一気に全社員がテレワークして、自社のサーバーにアクセスして仕事を開始すると、想定を超えたアクセス数により、サーバーがパンクしたりつながりにくくなるという事態が生じている。この回線容量を増やすと、それなりのコストがかかる。アクセス制限をかけると仕事ができなくなるので、ここは慎重にコストを考えた上で増強しておくことが必要となる。

ウェブ会議システムも必須だ。これがないと会議のために出社しなくてはならない。無料で使えるものもあり、ビジネスには必須のアイテムとなっている。必要なのは慣れ。多少時間のズレが生じるので、リアルな会議との違和感はある。また、発言するタイミングもつかみにくい。早めに使い、とにかく慣れることが必要だ。慣れれば、はるかに効率的に会議ができる。

ただ、課題となるのが自宅のwi-fi環境。これが十分でないと、会議ができなかったり、途中で途切れたりする。貸与しているスマホのテザリングもあるが、相当のデータ通信量を使うので、やめた方が無難だ。会社から無線ルーターを貸与するなどして、自宅のwi-fi環境が整っていない場合のケアが必要だ。また、ある会社では、知った者同士なら映像を切って音声だけで会議をするケースもある。慣れると違和感がないそうだ。一度試してみるのも良いかもしれない。

ビジネスチャットも契約しておきたい。その都度メールや電話ではなく、気軽にコミュニケーションが取れるチャットによるコミュニケーションルートを構築しておかないと、先述したようなコミュニケーション不全による疎外感、それによる退職という最悪の事態を招きかねない。

また、特に年次の高い方に多いのが、どのコミュニケーションツールを選択したら良いか迷い、結果としてちぐはぐなコミュニケーションをしてしまうという課題。若いメンバーなら気軽にチャットでフランクにできる会話も、年次が高いと簡単には進まない。慣れの問題もあるが、シーン別のコミュニケーションツールの選択基準もある程度示しておいてあげたいものだ。

最後に、そもそも、仕事をきっちりと切り出して、社外でできるか、という課題。日頃から業務の可視化を行い、誰が何をどのように行っているかを明確にして、すぐに仕事の切り出しができるようにしておくことだ。この業務の可視化は、たとえテレワークをしなくとも、業務効率化に必ず結び付く。ぜひ行っておきたいものである。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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