第8回 スタッフ部門の働き方改革、その目的は戦略スタッフの実現にある
戦略スタッフは「コンパクト」
働き方改革の司令塔、スタッフ部門が自身の働き方改革、仕事改革を進めていくと、スタッフ部門はどのような組織となっていくのだろうか。スタッフ部門の将来像を今回のコラムでは考察していきたい。先のコラムで記したように、足元の仕事の見直し、問い合わせ業務の削減、さらに効率化の王道である「止める、減らす、変える」を突き詰めていくとどうなるのか。
さらにデジタルトランスフォーメーションによるタスク分解を通じて、テクノロジーやBPOを活用することで、間違いなくスタッフ部門はコンパクト化していく。考える舞台、戦略立案、企画立案に特化した部隊となっていく。いわゆる「戦略スタッフ」への進化である。戦略スタッフへの道程には、オペレーション・スタッフ、管理スタッフがある。その進化形が戦略スタッフなのだ。
車両管理を例に考えてみよう。社有車を導入すると、車両の手配、駐車場の手配、車両保険の手配、社有車利用ルールの制定、事故対応の体制づくり、社内免許制度の運用といったタスク、作業が発生する。これらの個々の業務が、オペレーションレベルの業務である。これを行うレベルが、オペレーション・スタッフである。
それらをひっくるめて、車両管理と一つにまとめることができる。このまとまりが一連の業務管理となり、管理スタッフレベルと言うことができる。戦略スタッフというのは、その管理レベルのオペレーションや作業はせずに、車両管理のあり方、有効で効率的な社有車管理を考える業務、戦略や方針を考え、立案していく業務と言うことができる。
デジタルトランスフォーメーションのタスク分解、「止める、減らす、変える」の業務の見直しにより、正社員が行う業務の流れとしては、この考える業務、戦略スタッフへと移行しつつある。逆に、移行しなければならない。それがスタッフ部門の働き方改革の真の目的でもあり、そこで働くスタッフメンバーの個々人の働き方改革でもある。
現に、総務業界では、それが現実の世界となっている。ある大手金融機関では、全国の100名もの総務部メンバーのうち、93名をシェアードサービス会社に異動させて、本社に残る総務部は7名だけ。その7名は、作業はせずに企画立案、業務指示だけに徹している。さらに外資系の日本法人の総務部は、正社員は総務部長だけ。残りの20数名は全員BPO会社からの常駐メンバー。その彼らが、サプライヤーの管理から指示命令、予算の執行も執り行う。
テクノロジー、RPAを駆使して、足元の業務を仕組み化し、BPOに管理レベル業務を任せていく。そして、戦略立案に特化していく。これは着実に現実のものとなりつつあるのだ。
戦略スタッフは「One Team」
スタッフ部門、総務部、人事部、経理部、情報システム部、広報部、経営企画部、そのような部門が、同じようにコンパクト化していき、戦略立案に特化していくと、どのようになっていくのか。ここで出てくるキーワードは、先のコラムでも記した「働く場」である。
「働く場」は、オフィス空間や什器というハード、その場を使うためのハウスルールやその場が所属する組織の制度といったソフト、その場に組み込まれているITインフラ、その場を使う従業員の関係性、さらにはそれらも含めた社風や文化。それらを全てひっくるめたものとしての「働く場」である。
そこに関係する部門は、総務部、人事部、経理部、情報システム部、広報部、経営企画部と、全ての管理部門系、いわゆるスタッフ部門が絡む。「働く場」の生産性向上を企業として目指すのであれば、当然ながら、関係する部門同士でコラボしながら進めていかなければ合理的ではない。
つまり、今後「働く場」にフォーカスされればされるほど、スタッフ部門同士の緊密な連携が必要となり、その結果、流れとしてはスタッフ部門の融合、統合化が進展していくと考えられる。お互いが同一の目標に向かい、緊密に連携を取りながら同一歩調を取っていくことが重要となるのだ。
「働く場」は従業員が演じる舞台装置でもある。その舞台のある部分はあっちを向いて、違う部分はこっちを向いていたら、演じる役者が混乱してしまう。全てが同一のトーンで、同一のストーリーの中で舞台が進行していく必要がある。だからこそ、ALLスタッフ部門の意思統一、同じ「絵」を見ながら仕事をしないと現場が混乱してしまう。
ラグビーのワールドカップ、桜の戦士たちが実現した「One Team」。これをスタッフ部門でも目指し、実現しなければならない。「同じ絵」を見て、それぞれの担当において業務遂行していかなければならない。いままで以上にコラボレーションが必要となるのである。
そのコラボレーションが実現できれば、必然的に全社の働き方改革も実現できるのではないだろうか。法的に対応しなければならない働き方改革はもちろんすぐに対応しなければならないが、全社の働き方改革を効果あるものにするためには、まずはスタッフ部門が働き方改革を実現し、その結果スタッフ部門の成果が全社の働き方改革に結実する。そのような考えのもとに働き方改革を進めるのも、効果的な一つの選択肢ではないだろうか。