第10回 働き方改革を進めるメンバーに求められるマインド
経営目線で考える、俯瞰して見る
働き方改革を進めるのは、総務や人事といったスタッフ部門。当たり前だが、部という組織が仕事をするのではなく、そこに所属するメンバーが行う。働き方改革コラムシリーズの最後に、働き方改革を進めるのに必要なスタッフ部門のメンバーのマインドについて見てみよう。
まずはメンバーに必要な視点である。先のコラムで戦略スタッフについて書いた。オペレーションと管理業務を手放した後は、戦略立案、企画立案にフォーカスした業務がメインとなる状態である。確かに、「そのレベルに至っていない」というスタッフ部門も多いことだろう。
しかし、スタッフ部門として注意したいことがある。各論最適、個別最適であっても、全体としては最適でなくなる、合成の誤謬が起きることはままある。あるいは、個別の施策でそれぞれが向いている方向が違い、現場従業員が混乱してしまうこと。これは、施策によって指示内容が異なるためだ。
どのレベルで仕事をしようと、全体を俯瞰して見る、確認してみる、ということは常に意識したい。特にスタッフ部門においては、全社にまたがる仕事であるため、俯瞰という視点は重要である。経営目線と言い換えてもいいかもしれない。
経営目線でスタッフの施策が考えられれば、その視線で実行されれば、自ずと経営からの評価も高まる。評価が高まれば期待もされ、さらに大きな仕事も可能となる。その初めの一歩としての全社を俯瞰する視線を身に付けたい。
待ちではなく、働きかけて、会社を変えていく
スタッフの仕事で多いのが、現場従業員からの依頼事項への対応である。「〇〇が欲しい」、「〇〇について教えて」等々、現場起点での業務への対応、待ちの業務である。これを逆にして、こちらから現場従業員に「働きかけ」ていく、そんな姿勢が欲しい。
働き方改革やその他、スタッフ部門が仕掛けていくことは、従来のやり方を変えることであったり、初めてのことであることも多い。そのようなことに対して、積極的に取り入れようとするのは、多くて二割程度。六割の従業員は様子見であり、残りの二割はほとんど動かない。
この積極的に動く二割の従業員を事例として社内メディアで告知していくとともに、様子見の六割の従業員に働きかけをしていく。社内事例を見せながら背中を押す、その働きかけである。プロとして新たな施策を企画立案したという自負を持って、提案していく。「この方が、生産性が上がりますよ!」
社内コンサルタントを目指すスタッフ部門もある。オフィスの使い方、福利厚生制度の使い方、その他全ての社内制度に精通して、その活用を促していく。質問が来て初めて活用を促すのではなく、こちらから動いていく。そのスタッフ業務のプロとしての姿勢が、後の大きな仕事に繋がるはずだ。
小さい所から始め、横展開を図る
スタッフ部門の仕事は全社が絡む。ゆえにいろいろと意見も言われ、クレームも言われる。大きな変化を伴う仕事であればあるほど、いろいろとトラブルもある。それが怖くて、なかなか一歩を踏み出せないことも多いものだ。実は、成果を上げているスタッフ部門は、いきなり全社導入はほとんどしていない。
成果を上げているスタッフ部門に共通しているのは、小さい所から始める、ということだ。例えば、総務部から始めてみる、たまたま移転予定の営業所から始めてみる。失敗したらやめても大丈夫な範囲でトライしてみて、効果検証し、修正し、良ければその範囲をじわじわと広げ、最後に全社導入。
そんな方法で新施策を導入しているところが多い。やってみないとその効果は分からないが、いきなり全社導入して失敗したら、二度と導入できないかもしれない。小さい所から、早めに一歩を踏み出すことをお勧めする。
成長意欲が全ての原点
『月刊総務』の取材を通じて感じる、優秀なスタッフ部門のメンバーのマインドは、変化を恐れないことである。むしろ、積極的に社内に変化を起こそうとする。新たなテクノロジー、サービスを発見したら、それをいかに社内に取り込めないかと、わくわくしながら考える。
業務を標準化し、システム化したら、もう興味はない。現場に出向き、現場の課題や不満を見つけては、その解決策を模索し、新たなスタッフ部門の仕事としていく。安定を好まず、混沌を好む。変化を起こすこと、変えることを使命と任じている。
自由を好むことも共通している。総務の業務分掌にある、「他の部門の行わない事項全てを担当する」という言葉を盾に取り、「逆に理解すれば、何をやってもいいんでしょ」。このように制限を無くして、あらゆる観点で会社のために貢献しようと考える。
その結果、優秀なスタッフメンバーは、ともかく明るく、楽しく、そして元気に仕事をしている。そうすると、必然的にその周りに人が集まり、情報が入る。そこからまた新たな仕事も生まれていく。仕事の報酬は仕事、まさにそれを実現しているようだ。
そして、スタッフの仕事を通じて自らが成長できると信じ対応している。自らの成長が組織の、会社の成長に繋がるという、成長路線を生み出している。この成長意欲。スタッフの仕事を通じて、この困難を乗り切れば、必ず成長できるのだという信念。
つまりは、仕事への向き合い方が、ポジティブである人が成果を出しているようだ。