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コロナ禍により、進化が求められるBCP

データシリーズ3

コロナ禍により、進化が求められるBCP

2020年1月から全世界を混乱の渦に巻き込んだ、新型コロナウイルス感染症。パンデミックへの対応を想定していなかった企業も多かったのではないだろうか。

世は、VUCA時代。何が起こっても不思議ではない現代において、総務のリスク管理能力はますます重要となってくる。

では実際のところ、リスク管理、特にBCP対策については、どのような実態となっているのだろうか。

2020年7月に行った『月刊総務』アンケートで見ていくことにしよう。


この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

BCP策定済みの企業は38.9%。想定リスクは「自然災害」が1位

BCPの策定状況を尋ねたところ、「策定済み」は38.9%と約4割にとどまり、「策定中」が25.9%、「まだ策定していないが策定予定である」が24.1%と続いた。

・策定済み:38.9%

・策定中:25.9%

・まだ策定していないが策定予定である:24.1%

・策定しておらず今後も策定予定はない:6.9%

・わからない:4.2%

10年前の東日本大震災を受けて、多くの企業がBCPの策定に走った。それにもかかわらず、現在でも策定済みは40%に届かない。おそらく、自然災害への防災対策はほとんどの企業が策定していると思うが、ことBCPとなると、まだ手が付けられていない、あるいは、どうやって策定したらよいかわからない状態なのだろう。BCPとなると総務だけで策定することはできず、全社を巻き込み、経営判断も組み込みながら策定しないといけない。どの事業を継続し、どの事業を止めるか。どれから優先的に人的リソースを投じて復旧させるか。経営判断と各事業部の理解と協力を得る必要があるからだ。全社的、経営的活動となる。

一方で、世に言う「なんちゃってBCP」も数多く存在すると言われている。簡単なフォーマットに事務局が記載すれば、それで完成。形式上、ペーパー上だけで作成してBCPが完成したという、実効性の全く担保されていないBCPである。また、紙の枚数を競ったコンサル会社が作るBCPも要注意、という話もよく聞く。とにもかくにも、BCPは策定が目的ではなく、それにより動けるか、その実効性をしっかりと確認していきたい。

また、策定済みの企業にどんなリスクに対してBCP対策をしているか尋ねたところ、「自然災害(地震、水害等)」が97.8%と断トツの1位。パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等)は58.3%で2位となった。自然災害の多い日本、特に、最近は地震に加え、台風や豪雨が激甚化しており、その点においても自然災害が断トツの1位となる所以である。そもそも策定しているところが40%弱、その中でも、パンデミック対策をしているところは、またその半分である。過去に経験もなく、想定しようもない、というのが実態であろう。

・自然災害(地震、水害等):97.6%

・パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等):58.3%

・オフィスや自社施設の火災:48.8%

・情報漏えいやセキュリティのトラブル:46.4%

・コンプライアンス違反:36.9%

・自社製品の事故やトラブル:26.2%

・テロ:16.7%

・経営者の不測の事態:11.9%


実施しているBCP対策は1位「従業員の安否確認手段の確立」

BCP策定済みの企業にBCP対策としてどんなことを実施しているか尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の確立」が92.9%で最多、「緊急時の指揮命令系統の確立」が88.1%、「事業所の安全性確保」が64.3%と続いた。

・従業員の安否確認手段の確立:92.9%

・緊急時の指揮命令系統の確立:88.1%

・事業所の安全性確保:64.3%

・緊急時初動対応の社内周知(社員向けマニュアル作成、研修等):59.5%

・自社サーバーのバックアップ:54.8%

・災害保険への加入:52.4%

・テレワーク制度の整備:51.2%

・情報の電子化(ペーパーレス化等):42.9%

・業務の復旧訓練:35.7%

・業務システムのクラウド化:35.7%

・事業所・生産・物流拠点の分散:31.0%

・事業中断時の資金計画:28.6%

・予備在庫の確保:26.2%

・代替生産先・仕入れ先・業務委託先・販売場所の確保:20.2%

・その他:2.4%

BCP対策の中で初期対応の部類に入るものが大半である。これはどの企業のBCPにおいても共通の初期対応である。まずは状況を把握し、その状況に応じて指揮命令する体制の構築が最初の一歩である。特に、自然災害のように、瞬間的に大きなダメージを与えるものについては、状況把握が最重要項目となる。今後、複合災害、つまり、パンデミック下の自然災害が発生したときのことを考えると、災害対策本部の中心となる総務部長が、たまたまそのときに在宅勤務で出社できない状況もあり得る。よって、主だったメンバーの自宅にも電源確保のための設備が必要となったり、パンデミックを絡ませることで、またいろいろな課題が生じてきそうだ。


新型コロナウイルス感染症拡大において役立ったBCP対策は、1位「テレワーク制度の整備」

BCP策定済みの企業に、新型コロナウイルス感染症拡大において役立ったBCP対策を尋ねたところ、「テレワーク制度の整備」が51.2%で最多、「従業員の安否確認手段の確立」が36.9%、「緊急時の指揮命令系統の確立」が35.7%と続いた。

・テレワーク制度の整備:51.2%

・従業員の安否確認手段の確立:36.9%

・緊急時の指揮命令系統の確立:35.7%

・情報の電子化(ペーパーレス化等):28.6%

・業務システムのクラウド化:27.4%

・事業所の安全性確保:26.2%

・緊急時初動対応の社内周知(社員向けマニュアル作成、研修等):20.2%

・自社サーバーのバックアップ:17.9%

・予備在庫の確保:14.3%

・事業所・生産・物流拠点の分散:10.7%

・事業中断時の資金計画:10.7%

・代替生産先・仕入れ先・業務委託先・販売場所の確保:9.5%

・業務の復旧訓練:8.3%

・災害保険への加入:4.8%

・役立った対策はない:3.6%

・その他:6%

今回のコロナ禍、対策の最重要項目が、三密回避。従業員の命を守るためにも、強制的な在宅勤務が必要であった。そのために、従来からテレワークを経験、推進してきた企業は、スムーズに対処ができていた。一方、テレワーク未経験の企業は、インフラの整備からパソコンの準備と、大慌てで対応していたようだ。逆に、まさかテレワークがパンデミックに必要な対策だったとは、と感じた総務担当者もいたに違いない。パンデミックとはどういうものなのか、どのような事態に陥るのか、未経験ゆえにイメージできなかっただろう。このコロナ禍をBCP策定のよい機会ととらえて、実体験を踏まえて対策を練り込みたいものだ。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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