ウェルビーイングとは? 企業が取り組むべき具体的なステップと成功事例を徹底解説!
ウェルビーイングとは、健康や幸福を意味し、個人や社会の豊かさを追求する概念です。
もともとは福祉分野で注目されていましたが、近年では多くの企業がその重要性に気付き、職場環境の改善や従業員の幸福を重視するようになっています。
本記事では、ウェルビーイングの定義から、ビジネスにおけるその役割、さらに企業が具体的にどう取り組むべきかを実例とともにわかりやすくご紹介します。
ウェルビーイングとは
ウェルビーイングとは直訳すると「良く-あること(well-being)」を意味しており、ここから転じて「幸福」や「健康」などを指す多義的な概念として使われるようになりました。
ウェルビーイングは、世界保健機関(WHO)がその憲章前文において、次のように利用したことで知られています。
「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。」
(引用元:世界保健機関(WHO)憲章)
このようにウェルビーイングは、当初は医療や介護など社会福祉の領域で注目された概念でした。しかし社会全体で働き方改革が進んでいることもあり、現在はビジネスの現場でも意識されることが増えています。
肉体面、精神面、そして社会面において「満たされた状態」にあることを指す同概念は、いわば社会全体で追求すべき課題といえます。なぜならば、ヘルスケアも経済活動も、究極的には個人や社会のウェルビーイング(幸福)の実現を目的にしたことだからです。
したがって昨今では福祉以外の領域でもウェルビーイングの概念は使われるようになり、同概念に対する意識は社会全体で高まりつつあります。
ウェルビーイングが注目されるようになった経緯
ウェルビーイングの概念が福祉の領域を超えて、広く社会で注目されるようになった背景には何があるのでしょうか。続いては、その経緯について解説します。
SDGsによって推進されている
第一に挙げられるのは、SDGsの観点です。SDGsとは、持続可能な社会の実現のために取り決められた国際的な開発目標を指します。SDGsにおいては17のゴール(目標)が設定されていますが、そのゴール3が「全ての人に健康と福祉を(Good health and well-being)」という内容なのです。
このゴールを達成するためには、妊産婦や5歳未満児の死亡率減少、アルコール・薬物・たばこなどの乱用防止、性や生殖に関するケアと教育の充実、道路交通事故死や環境汚染による健康被害の減少など、社会全体で取り組むべき課題への対処が求められています。
このことからもウェルビーイングが、社会福祉にとどまらず広い領域に関わる概念であることが分かるでしょう。
社会が多様性を認めるようになった
社会において多様性が重視されるようになったこともウェルビーイングと関係しています。昨今ではグローバル化やインターネットの普及などにより、社会の多様化(ダイバーシティ化)が進んでいます。ダイバーシティ社会においては、人々が持つ価値観も様々です。
たとえば会社に一番求めるものとして「給与の高さ」を挙げる労働者もいれば、「やりがい」「良好な人間関係」「ワークライフバランス」などを求める労働者もいることでしょう。
したがって、従業員満足度の向上に取り組む経営者は、賃金などの個々の指標だけではなく、「従業員のウェルビーイングとは何か」という根源的な問いを考えなければいけないことになります。様々な価値観が混在する現代社会だからこそ、ある意味で曖昧な「ウェルビーイング」という概念がより強い効力を持つようになっているのです。
労働力不足における人材確保問題
少子高齢化の進行に伴い、就労人口が減少しつつある日本では、労働力の維持向上のためにウェルビーイングの観点が重要になっています。
内閣府の『令和3年版高齢社会白書』によると、2020年に約1億2,571万人だった人口は、2053年には1億人を下回るとされています。また、高齢化率は1990年代に10%台だったのが、2020年には28.8%にまで上昇しており、2036年には国民の3人に1人が65歳以上になるという予想です。
(参照元:高齢化の状況)
このような超高齢化社会において企業が事業継続に必要な人材を確保するには、老若男女問わず従来よりも幅広い人材が活躍できる労働環境を作ることが重要になります。そのためには、育児や介護など個々人が持つ様々な事情に配慮し、多様な人材が働きやすい職場環境を構築する必要があります。
つまり、従業員のウェルビーイングを実現することが、労働力不足の改善に繋がると期待されているのです。
リモートワークの普及
リモートワークの普及も企業のウェルビーイングへの関心を深めた一因です。
新型コロナウイルスへの対策として急速に社会に浸透したリモートワークですが、その導入が労働者に与えた影響は功罪様々です。リモートワークの導入によって会社への通勤の手間が減り、ワークライフバランスが向上したという人もいれば、人間関係が希薄化したことを受けて、孤独感やストレスをより強く感じるようになったという人もいます。
精神状態の悪化は業務パフォーマンスを下げ、場合によっては休職や離職にも繋がりかねません。人手不足が深刻化している現代において、従業員が安定的に就業できる環境を作ることは企業にとって非常に重要です。
とりわけコロナ禍の終息後もリモートワークの利用を考えている企業にとって、ウェルビーイングの考え方を取り入れて従業員のストレス対策をすることは必須といえるでしょう。
ウェルビーイングにおける5つの要素
人間は自己がどのような状態であればウェルビーイングが実現されていると感じるのでしょうか。
世論調査会社として有名な米国のギャラップ社は、数多くの調査を経て、ウェルビーイングは大きく5つの要素で構成されていることを明らかにしました。以下では、その各要素の内容を解説します。
Career well-being(キャリア ウェルビーイング)
1つ目の要素は、キャリアにおいて良好な状態にあることです。このキャリアとは、仕事上のものだけでなく、結婚や離婚、子育てなど私生活上の経歴も含みます。
要するに、自分の生き方をコントロールできているか、今の自分の生活や境遇に満足できているかどうかがウェルビーイングに大きな影響を与えるのです。
Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)
2つ目の要素は、社会的に良好な状態にあることです。これは特に人間関係を指します。たとえ仕事や私生活で困難に陥ったとしても、家族や友人に恵まれていれば精神的に安定しやすく、周囲からのサポートも得られやすいでしょう。
たとえば従業員満足度の構成要素として職場の人間関係が良好であることは欠かせません。
Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
3つ目の要素は、経済的に良好な状態にあることです。これは単純に資産が多ければ多いほど幸福であるという意味ではありません。たとえ巨額の資産を持っていても、自分がそれに満足できていなければ幸福とは言えませんし、自分の経済状態に見合わない浪費などをしていれば、良好な状態とも言えないでしょう。
したがって、ここでは資産の多寡と同時に、それに自分で納得できているか、資産を自己管理できているかも問われます。
Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)
4つ目の要素は、身体面で良好な状態にあることです。どれほど社会的環境に恵まれていても、心身が健康でなければ幸福感を感じることは難しくなるでしょう。
したがって、過度の疲労や身体的ストレスなどを感じることなく、心身共に活力を持って日々の活動を営める状態を維持することは、ウェルビーイングにおいて非常に重要な要素といえます。
Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)
5つ目の要素は、地域などのコミュニティにおいて良好な状態にあることです。ここでのコミュニティとは、主に地域社会のことを指します。自分が生活している地域社会が良好な状態であるかどうかは個人のウェルビーイングにも関係します。
あるいは、「地域社会と良い関係を築けている」「地域社会の発展に自分が貢献している」という実感も幸福感を高める要因となるでしょう。
企業がウェルビーイングを取り入れるメリット
ウェルビーイングを重視する考え方はビジネスにおいても広がってきています。そこで以下では、企業がウェルビーイングの実現に取り組むメリットを説明します。
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