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厚生年金保険料とは?計算方法や注意点を詳しく解説

厚生年金保険料とは?計算方法や注意点を詳しく解説

厚生年金保険料とは、会社員や公務員などが加入する公的年金制度にかかる保険料のことです。厚生年金保険は、適用を受ける企業に勤務する、70歳未満の会社員や公務員が加入します。

厚生年金保険料は、「標準報酬月額」と「標準賞与額」に保険料率をかけて算出しますが、標準報酬月額には複数の決定方法があり、従業員によって異なるため注意が必要です。

この記事では、厚生年金保険料の計算方法を知りたい経理・会計・財務の担当者に向けて、厚生年金保険料の計算方法や注意点を詳しく解説します。


この記事の監修者
きた社労士事務所  代表 

厚生年金保険料とは?

厚生年金保険料とは、厚生年金保険の適用を受ける企業に勤務する、70歳未満の会社員や公務員が加入する公的年金制度の保険料のことです。

日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」、確定拠出年金などの上乗せ部分の3階建てになっています。

厚生年金保険の加入者は、厚生年金制度を通じて国民年金にも加入しており、国民年金と厚生年金保険の2階建て分の給付が受給できます。

また、厚生年金保険の保険料は給与から天引きされ、事業主が納めてくれます。

厚生年金

国民年金

加入対象者

70歳未満の会社員・公務員

20歳以上60歳未満の全国民

保険料

給与・賞与により変動

定額

保険料の支払い負担

加入者と会社の折半

加入者全額負担


厚生年金保険料の計算方法

ここでは、厚生年金保険料の計算方法を解説します。

標準報酬月額と標準賞与額によって保険料や保険給付の額を計算しますが、標準報酬月額の決定方法は従業員によって異なるため、注意が必要です。

厚生年金保険料の計算式

厚生年金保険料は「標準報酬月額」と「標準賞与額」に保険料率をかけて算出します。

標準報酬月額とは、基本給や残業手当、通勤手当など、「労働の対償として支払う報酬」を基に算出された月額です。

また、標準賞与額は、「賞与」「期末手当」「インセンティブ」など名称を問わず、3回以下の回数で支給されるものを指します。

保険料は原則、従業員と会社が折半して負担し、従業員からは、給与または賞与の支給時に天引きして徴収します。

[計算式]

  • 給与の保険料額:標準報酬月額×保険料率
  • 賞与の保険料額:標準賞与額×保険料率

参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料

標準報酬月額と標準賞与額の決め方

厚生年金保険の保険料や保険給付の額は、標準報酬月額と標準賞与額を基準に計算します。

標準報酬月額とは、毎月の保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の計算の基礎となる基準金額です。給与の平均額に応じて32等級に分けられ、等級ごとに標準報酬月額が定められています

標準賞与額とは、税引き前の賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。

標準賞与額に料率をかけて保険料を算出します。

ただし、厚生年金保険は支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が標準賞与額の上限となります。

参考:日本年金機構「標準報酬月額、賞与等


標準報酬月額は、次のタイミングで決定します。

〈定時決定〉

定時決定とは、毎年7月1日現在で雇用している従業員を対象にした、標準報酬月額の見直しをする手続きのことです。

4月~6月に支給された給与の平均額を基に、9月分の保険料から改定します。

原則として、4月~6月の中で支払基礎日数(賃金の支払対象日)が17日未満の月がある場合は、その月を除いて計算されます。

例えば、4月・5月は欠勤なく出勤し、6月のみ支払基礎日数が15日だった場合は、4月・5月の2か月のみで標準報酬月額を算出するということです。

参考:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)

〈随時改定〉

随時改定とは、毎年7月に行われる定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する手続きのことです。

次のすべての条件を満たす場合は、随時改定が必要になります。

  • 昇給・降給などにより固定的賃金に変動があった
  • 変動月からの3か月間に支給された報酬に該当する標準報酬月額が、従前の標準報酬月額と2等級以上の差が生じた
  • 3か月とも支払基礎日数が17日以上である

これらの条件を満たすと随時改定が行われ、変動月から4か月目に保険料が改定されます。

参考:日本年金機構「随時改定(月額変更届)

〈資格取得時の決定〉

資格取得時の決定とは、企業が従業員を雇用したときに標準報酬月額を算出する手続きです。

入社時点では給与の支払い実績がないため、基本給や通勤手当、家族手当など、毎月支給される見込みの給与額で算出します。

また、残業がある職務に従事する場合は、同様の職務に従事する従業員の残業時間を考慮しながら、残業手当も合わせた金額で資格取得時の決定を行います。

参考:日本年金機構「資格取得時の決定

〈産前産後・育児休業等終了時の改定〉

産前産後休業、または育児休業から復職した従業員は時短勤務になることが多く、月給が減る可能性があります。

そのため、復職後の給与に見合った社会保険料に改定できるよう、休業終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額に基づき、4か月目から社会保険料の改定が行われます。

なお、随時改定とは異なり固定的賃金の変動は考慮せず、1等級でも変動があれば改定されます。

参考:日本年金機構「産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出

育児休業等終了時報酬月額変更届の提出

〈保険者決定〉

保険者決定とは、通常定められた方法によって算定することが困難な場合や著しく不当である場合に、厚生労働大臣が報酬月額を算定し、標準報酬月額を決定することをいいます。

「算定が困難な場合」とは、欠勤などによって4月~6月に報酬を全く受けていない場合や、4月~6月の支払基礎日数が17日未満である場合です。

また、「著しく不当な場合」とは、遡った昇給によって一括して差額を支給している場合や、ストライキによる賃金カットがあった場合などが該当します。

参考:日本年金機構「保険者決定


厚生年金保険料の計算シミュレーション

厚生年金保険料額表を基に、厚生年金保険料をシミュレーションしてみましょう。

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出典:日本年金機構「○令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)


例:4月〜6月の平均給与額が25万円、賞与額42万500円の従業員(厚生年金基金なし)の場合

  • 毎月の給与にかかる厚生年金保険料

厚生年金保険料額表の「報酬月額」を見ると、25万円は「250,000~270,000円」の17等級になり、標準報酬月額は26万円になります。

厚生年金保険料 = 260,000円 × 18.300% × 1/2 = 23,790円

  • 賞与にかかる厚生年金保険料

賞与は42万500円から千円未満を切り捨て、42万円を標準賞与額とします。

厚生年金保険料 = 420,000円 × 18.300% × 1/2= 38,430円


厚生年金保険料を担当する際の注意点

厚生年金保険料は、保険料率の改定や値上げなどで価格が変わります。

支払金額にミスがないように手続きを進めるのはもちろんのこと、従業員から質問が来た時に説明できるよう、理解を深めておきましょう。

ここでは、厚生年金保険料を担当する際の注意点を解説します。

支払い期限を守る

厚生年金保険料は、事業主が事業主負担分と従業員負担分の保険料を合わせて、翌月の末日までに日本年金機構へ納めます。

末日が休日の場合は、翌日以降の最初の営業日が納付期限です。

保険料を納付期限までに支払わなければ、延滞金が課される場合がありますので注意しましょう。

また、日本年金機構の納付督励によって完納の見込が立たない場合には、財産調査および差し押さえの可能性もあります。

参考:日本年金機構「日本年金機構の取り組み(保険料徴収)」

保険料が上がる可能性を知っておく

厚生年金保険料は、昇給・昇格などで基本給が上がる場合や、役職手当・家族手当などの各種手当が支給開始された場合に上がる可能性があります。

保険料の改定があった場合は、従業員に改定内容の通知が必要です。保険料が改定する前に従業員に通知し、徴収される保険料を確認するよう促しましょう。通知義務を怠ると罰則の対象になることがあるため、注意が必要です。

また、通知された決定内容に不服があるときは審査請求が可能です。請求の期限は、決定を知った日の翌日から3か月以内と定められているため、併せて従業員へ通知しましょう。

参考:日本年金機構「被保険者への通知


厚生年金保険料についてのまとめ

近年は、働き方改革の一環として、社会保険の適用対象が拡大されてきました。

例えば、令和4年10月には、健康保険・厚生年金保険が適用される短時間労働者の要件が緩和されています。

企業は制度の変化だけでなく、働き方の多様化にも対応していく姿勢が求められるでしょう。

働き方改革の推進には、厚生年金保険などの制度を正しく理解し、常に情報をアップデートしていく必要があります。

社内研修を実施するなど、制度への理解を深める機会を積極的に設けていきましょう。

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監修者プロフィール

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北 光太郎

きた社労士事務所 代表

2012年に社会保険労務士試験に合格。

勤務社労士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。

2021年に社会保険労務士として独立。

労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。

法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアでも労働法や社会保険の情報を提供している。

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