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ウェルビーイングとは?意味や企業の取り組み事例を紹介!

監修者: キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士®  木村 千恵子

ウェルビーイングとは?意味や企業の取り組み事例を紹介!

近年のビジネスシーンで注目されるようになった考え方の一つに、ウェルビーイングがあります。

個人の権利や自己実現を重視し、それぞれが身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを示す概念です。

人口減少や高齢化、技術革新といった社会背景のもと、厚生労働省によって掲げられたウェルビーイングの概念は、ビジネスにも多様なメリットをもたらします。

ウェルビーイングの定義やビジネスシーンにおけるメリット・デメリット、企業での取り組み事例などをご紹介します。


ウェルビーイングとは?

近ごろよく耳にするウェルビーイングという用語ですが、その意味を正しく理解していない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、厚生労働省による定義や著名心理学者の解釈から、ウェルビーイングという概念に迫ります。同時に、近年ウェルビーイングの考え方が急速に広まってきた背景も考察します。

ウェルビーイングの定義

ウェルビーイングとは、英語の「Well-being(幸福な状態、健康な状態)」から派生した用語です。

厚労省によるウェルビーイングの定義は、「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」となっています。

ウェルビーイングを構成する5つの要素

ウェルビーイングにはさまざまな解釈がありますが、最も一般的に広まっているのは、ポジティブ心理学で著名な米国ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授が提唱しているウェルビーイング理論に基づく解釈です。

セリグマン教授のウェルビーイング理論では、ウェルビーイングとは「構成概念」であり、次の5つの要素によって構成されると説明しています。ウェルビーイングの構成要素は、頭文字をとって「PERMA(パーマ)」と呼ばれています。

  • ポジティブ感情(P:Positive Emotion)
  • エンゲージメント(E:Engagement)
  • 関係性(R:Relationships)
  • 意味・意義(M:Meaning)
  • 達成(A:Achievement)

上記要素はどれ一つとして単独でウェルビーイングを定義するものではなく、各要素が複合的にウェルビーイングに寄与するとされています。

ウェルビーイングが広まった背景

「人口減少」「高齢化」「技術革新」といった日本の社会的背景がある中で、ウェルビーイングの考え方は、2019年厚生労働省雇用制作研究会の報告書において提示されました。

2040年の我が国がめざす姿として「ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環」というテーマが掲げられたのです。

さらに、2020年の同報告書でも、「新型コロナウイルス感染症禍における労働市場のセーフティーネット機能の強化」の一環として、ウェルビーイングの実現に向けた雇用調整助成金の支給と、それに関わる各種政策の進行が報告されています。

モノがあふれている現代社会の大量生産・大量消費の考え方を見直し、社会がモノではなく人と人との関係性に心理的な満足や幸福感を求めるように変わってきたことが、ウェルビーイングの考え方が広まった背景にあると考えられます。


ウェルビーイングとビジネス

ウェルビーイングの考え方は、企業によりビジネスとも関連づけられています。

ここでは、ビジネスシーンにウェルビーイングの概念を導入することの、メリットとデメリットを確認し、その意義を考えます。

ウェルビーングがビジネスでもたらすメリット

企業がウェルビーイングの向上を事業戦略に取り入れることにより、業績拡大と人材育成の視点から、広い意味でメリットがもたらされると想定されます。

具体的に考えられるおもなメリットは、以下の3つです。

  • 生産性の向上
  • ダイバーシティの実現
  • 企業価値の向上

以下では、ウェルビーイングがビジネスにもたらす3つのメリットを、それぞれ詳しく解説します。

生産性向上

企業が従業員のウェルビーイングを尊重し支援することは、一人ひとりが自ら望む、豊かで健康的かつ成長を推進する、多様な働き方ができる環境の整備につながると考えられます。

そのような職場環境では、従業員は安心かつ集中して職務に当たることができ、それぞれが持つ能力や技術をより発揮できるようになります。

結果として、従業員全体のパフォーマンスの底上げが期待でき、企業は組織全体の生産性の向上というメリットを得ることができるのです。

人材の確保

ウェルビーイングを尊重した職場環境を整備することで、企業はダイバーシティの実現に、より強力に取り組めるようになるでしょう。

多様な個性を持つ人々の活躍を支援するダイバーシティへの取り組みは、それ自体が自然と個々のウェルビーイングの向上につながります。

したがって、企業は従業員のウェルビーイングの支援を通して、ダイバーシティの実現というメリットを享受し、多様で優秀な人材の確保を期待できるのです。

企業価値の向上

近年は特に、投資家がESGやSDGsに配慮した経営をしている企業に、積極的に投資する傾向が強く見られます。

ウェルビーイングの尊重とESGやSDGsには共通する概念が多くあります。

SDGsの「誰一人取り残さない」や、開発目標の「3.すべての人に健康と福祉」、「5.ジェンダー平等を実現しよう」、「8.働きがいも経済成長も」などがそれにあたります。

こうした目標の実現に向けて積極的に取り組むことで、企業価値の向上につながります。結果として、投資家からの評価が高まり、活発な投資も期待できるでしょう。

ウェルビーイングがビジネスでもたらすデメリット

続いては、ウェルビーイングがビジネスでもたらすデメリットを紹介していきます。

〈経営上の目標や利益を最優先することができなくなる〉

個々の従業員のウェルビーイングを支援する経営には、当然ながらコストがかかります。

このことは、経営者によってはウェルビーイングのデメリットとして捉えられるでしょう。

これまで、企業は投資家への利益還元という義務を負っているため、経営上の売り上げ目標や利益を最優先してきました。

従業員の個人のウェルビーイングに配慮したい意思はあっても、実際には犠牲にせざるを得ない経営を行ってきたという見方もできます。

企業が従業員のウェルビーイングを支援するためには、仮に同じ額の経営資源があった場合、その中から別の目的に使用する予定だった資源を従業員のウェルビーイングの支援に充てることになります。当然、その分経営が厳しくなる局面も考えて、経営していかなければなりません。

企業が従業員のウェルビーイングに経営資源を投資することの価値は理解していても、その投資に対するリターンには中長期的な視野が必要となることを覚悟せざるを得ません。

そのため、経営者によってはウェルビーイングの追求が、経営上のデメリットとして捉えられる可能性があるのです。


ウェルビーイングの企業の取り組み事例

ウェルビーイングの意義とビジネスにおけるメリット・デメリットを確認したところで、実際の取り組みについても見てみましょう。ここでは、国内における企業のウェルビーイング取り組み事例をピックアップしてご紹介します。

【事例1.味の素グループ】

アミノ酸を基点とした独自技術を核として、食品とアミノサイエンスの事業を展開する味の素グループでは、2018年に健康宣言が制定されました。「人財に関するグループポリシー」に従い、社員のこころとからだの健康を維持・推進できる職場環境づくりという形で、ウェルビーイングに取り組んでいます。

【事例2.サイボウズ株式会社】

2005年に過去最高の離職率を経験したサイボウズ株式会社では、以来さまざまな社内ルールの改革を行い、幸せな会社づくりに取り組んできました。その結果、売上増加に反比例して離職率が下降するという、驚きの実績を上げています。

【事例3.株式会社ボーダレス・ジャパン】

株式会社ボーダレス・ジャパンでは、従業員のウェルビーイングを飛び越え、社会課題の解決をビジネスとして成り立たせることにチャレンジしています。ソーシャルビジネスの実践により、地球全体を幸せにすることに本気で取り組んでいるのです。


ウェルビーイングについてのまとめ

個人の権利や自己実現を尊重し、身体的、精神的、社会的に良好な状態を保つことをめざすウェルビーイングの考え方。

人口減少や高齢化、技術革新といった昨今の社会背景を受け、厚生労働省の提言にも盛り込まれるなど、急速に広まりつつあります。

ウェルビーイングの概念をビジネスに導入することで、生産性の向上や人材確保といった多様なメリットがもたらされます。

また、企業価値の向上を通して、投資家の興味・関心を惹き、活発な投資を引き出せる可能性もはらんでいるのです。

従来の売り上げ目標や利益を最優先した経営から、関わる個人を尊重する経営へと転換することは、大きなパラダイムシフトとなります。ビジネスシーンにおいてのウェルビーイングの考え方を、障害と考える経営者もまだ多くいるでしょう。

しかし、将来を見据えたビジネス展開を実践したいなら、ウェルビーイングの概念を導入することはもはや欠かせないことです。

国内外の事例も参考にしながら、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者プロフィール

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木村 千恵子

キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士®

2度のアメリカ留学経験をはさみ、20年以上外資系IT企業を渡り歩きグローバルプロジェクトに従事したのち、2016年にキャリアコンサルタントとして活動を開始。

現在は中小企業の従業員のキャリア、メンタルヘルス、テレワークに関する課題解決支援、外国人留学生の就職支援、個人向けキャリアセミナーなどを中心に活動中。

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