出向契約書とは? 作成においての注意点を解説!
企業が労働者を出向させる際には、出向契約書が取り交わされます。
その場合、出向命令が権利の濫用として無効にならないように、どのような点に注意して作成すべきでしょうか。
今回は、出向契約書の書き方や作成の際に注意する点について解説します。
契約書作成に関わる人事や法務担当の方は、ぜひ参考にしてください。
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出向契約書とは?
労働者に出向を命じる場合、出向元企業と出向先企業は個別に出向契約を結ぶ必要があります。
出向契約書は、労働者との権利義務関係を出向元と出向先がどのように分担するのかを記載した書類です。
「出向」には、労働者が現在の雇用先の企業(出向元)との雇用契約を維持したままでほかの企業(出向先)において業務に従事する「在籍出向」と、現在の雇用契約を終了させたうえで出向先と新たに雇用契約を結ぶ「転籍出向」の2種類があります。
ただし、一般的に「出向」は在籍出向のみを指すことが多く、この場合の転籍出向は「転籍」と略されます。
出向契約書の書き方・記載する項目
在籍出向の場合、出向契約書には以下のような項目を記載します。
1.当事者
出向契約の契約当事者は出向元と出向先です。
ただし、出向契約書には対象となる労働者の氏名を記載する必要があります。
2.出向期間
出向期間について、法律上の制限はありません。
しかし、あまりに長期の出向は労働者に不安を与えることにもなり、好ましくありません。
期間を1年間として「業務上の必要性や労働者の希望を聴取したうえで、3年に限り延長することがある」などと記載する方法もあります。
3.身分
出向期間中、出勤しない出向元企業においては休職扱いと定めることが一般的です。
また、出向により、昇給や退職金の計算が労働者に不利にならないように、出向期間は会社の勤続年数に通算すると定めることが多いようです。
4.給与・賞与
給与・賞与は出向元の基準を適用する例が多く、その場合は特に問題にはならないでしょう。
一方、出向先の基準を適用する場合、労働条件の不利益変更にならないよう注意する必要があります。支給額が減少する場合には、出向元が補てんを行うなどの対策が必要です。
そのほかの手当などについても、契約書に記載します。
支払方法については、出向先が支払う場合と、出向元が支払ったうえで、出向先から出向元に対して分担金(出向分担金)が支払われる場合の2種類があります。
5.社会保険・労働保険
社会保険については出向元が負担し、労災保険については出向先が負担することになります。
6.赴任旅費
出向に際して労働者が遠隔地に赴任する場合、赴任旅費を出向元と出向先のどちらが負担するかを取り決めます。
出向期間満了後に、労働者が出向元に復帰する場合の旅費についても同様です。
7.退職金
労働者が出向期間中に退職することとなった場合、出向元の規程に従うなどと定めます。
注意すべきなのは、退職金算定のための在籍期間の計算方法です。
出向期間を通算しなければ、労働契約の不利益変更となりかねません。
8.復帰
出向期間が満了した場合、出向者が会社に復帰する旨や、復帰後の職務等級や職種の扱いなどを記載します。
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出向契約書を作成する際の注意点
ここからは、出向契約書を作成する際の注意点について解説します。
権利の濫用にならないようにする
出向命令に対して、労働者が個別に同意する場合、基本的には権利濫用の問題は生じません。そのため、労働者との話し合いは非常に重要です。
一方、労働者の個別的同意が得られない場合には、その生活状況などを聴取するなどしたうえで、労働者にとって出向が必要以上に過酷にならないよう、十分に配慮する必要があります。
出向命令が権利の濫用とならないためには、以下を考慮する必要があります。
- 業務上の必要性
- 人選の合理性
- 労働者の生活関係(療養介護が必要な同居家族がいるにも関わらず、遠方に出向させる場合など)
- 手続きの相当性
給与・社会保険の支払方法
出向によって労働条件が不利益に変更される場合、出向命令自体が無効になる可能性があります。
労働者が出向を拒否した場合、出向先は当該労働者を業務に従事させることができなくなります。
特に給与(基本給、諸手当)、賞与、退職金の支給基準や、社会保険や労働保険の支払方法については、出向元と出向先との間で事前に十分に協議しなければなりません。
労働条件の不利益変更とならないよう、出向契約書への記載も必要です。
出向の契約書についてのまとめ
出向契約書は、出向元企業と出向先企業で取り交わす書類であり、労働者との権利義務関係をどのように分担するのかを記載します。
法律上に定めはありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも、基本的な項目は記載しておきましょう。
特に、労働条件が不利益に変更される場合、出向命令自体が無効になる可能性があります。
事前に出向者と話し合いを行い、給与や労働条件に十分に配慮した出向契約書を作成するようにしてください。
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