介護休暇とは? 介護休業との違いや申請方法を解説
超高齢社会の現在、働きながら家族の介護をする方も増えてきています。
どうしても就業時間中に手続きをしに行ったり、家族の世話が求められたりすることもあるでしょう。
そうした場合は、介護休暇を取得すると良いでしょう。
介護休暇は雇用形態にかかわらず平等に取得でき、時間単位で利用できます。
しかし事前の申請が必要、給付金が出ないなどの注意点も。
似た制度である介護休業との違いにも触れながら、介護休暇について解説します。
介護休暇とは?
介護休暇とは、要介護状態にある両親や身内の家族を介護する労働者に対して与えられる休暇です。
直接的な介護以外に、家族の通院の付き添いや介護サービスの手続きなどの理由でも取得できます。
介護休暇は、対象家族が1人につき年5日、2人以上の場合は年10日付与されます。
法改正により時間単位でも取得できるようになったため、状況によって柔軟に取得可能です。
育児・介護休業法の改正
平成29年度の育児・介護休業法の改正により、介護休暇は半日単位(1日の所定労働時間の2分の1)での取得が可能になりました。
以前は、1日単位のみの休暇でしたが、この法改正により仕事と介護の両立をより柔軟に行えるようになったのです。
しかし半日単位の取得では1日の所定労働時間が4時間以下の労働者に適用されないため、令和3年1月に再度法改正がありました。その結果、時間単位でも取得できるようになりました。
現在では、短時間勤務の労働者でも介護休暇が取得できるようになり、多くの労働者が取得できる休暇となっています。
参考:厚生労働省:「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得について」
介護休暇と介護休業との違い
介護休暇と似た制度に、「介護休業」があります。
どちらも、要介護状態の対象家族を介護することを条件に取得できる制度です。ただし、介護休暇と介護休業は以下のように要件が異なります。
介護休暇 |
介護休業 |
|
---|---|---|
休暇日数 |
対象家族1人につき年5日 (2人以上は年10日) |
対象家族1人につき93日まで (3回まで分割取得が可能) |
給付金の有無 |
なし |
あり(介護休業給付金) |
申請方法 |
当日申請が可能 |
介護開始日の2週間前までに申請 |
対象者 |
対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く) ※労使協定を締結している場合、以下の労働者は対象外
|
取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと ※労使協定を締結している場合は以下の労働者は対象外
|
参考:厚生労働省「介護休業制度」
介護休暇と介護休業のどちらを利用すべき?
介護休暇と介護休業で、どちらを利用するべきか迷う方もいらっしゃるでしょう。
介護休暇は1日単位だけではなく、時間単位でも取得が可能です。
そのため、家族を病院に連れて行ったり、介護認定の手続きに行ったりといった短時間で終わる用事に向いています。
一方で介護休業は、まとまった日数が必要な時に利用すると良いでしょう。
たとえば、介護サービスの選定や介護方針が決まるまでに家族が直接介護する場合などです。
ただし介護休業は介護休暇と違い、93日分の休暇を使い切ってしまうと、その後に追加で付与されません。
そのため、突発的な用事は介護休暇を利用し、状況を見て介護休業を取得するようにしましょう。
介護休暇利用のポイント
介護休暇は仕事を継続しながら、介護に専念できるよう設けられた制度です。
しかし、介護休暇を取得しながら仕事を続けるのは、精神的に負担がかかります。
そのため、介護施設を利用して介護の負担を軽減することも検討しましょう。
費用はかかりますが、介護に慣れない方には大きな負担軽減になるはずです。
介護休暇の申請
実際に介護休暇を使用したい場合、事前の申請が必要です。
まずは、ご自身が申請の対象者になっているかを確認しましょう。
介護休暇申請の対象者
介護休暇を取得できる対象者は、対象家族を介護している労働者のうち、日雇い労働者以外のすべての方です。正社員やパート、契約社員など雇用形態に関わらず取得ができます。
なおここで言う対象家族とは、ご自身から見て以下の間柄の方を言います。
- 配偶者 (事実婚を含む)
- 父母
- 祖父母
- 子
- 兄弟姉妹
- 孫
- 配偶者の父母
介護休暇の取得条件である「要介護状態の家族」とは、負傷・疾病または障害が原因で、2週間以上、常に介護を必要とする状態の家族を指します。
ただし要介護認定を受けていなくても、介護休暇は取得できます。
もし企業側から証明書を求められた場合は、対象家族の要介護状態を証明する書類の提出を提出しましょう。
証明書類は医師の診断書に限定されず、要介護状態にある事実を証明できるものであれば構いません。
なお企業が労使協定を締結している場合は、「入社6ヶ月未満の労働者」と「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」を対象外にしている場合もあるため注意しましょう。
参考:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」
介護休暇の申請方法
介護休暇は法律上、当日に口頭の申請でも取得が認められており、書面での申請を強制していません。
しかし、一般的には企業で独自に申請書を作成しており、あわせて要介護状態を証明する書類の提出も求めています。
なお申請書は紙に限定されず、システムを用いた申請でも認められています。
社内手続きについては、自社の担当者に確認してみてください。
介護休暇の申請理由
介護休暇の申請理由は、介護に関連したものであれば構いません。一例として、以下のようなことが理由となります。
- 通院の付き添い
- 介護サービスの手続き代行
- ケアマネジャーとの打ち合わせ
介護休暇の取得には、対象家族が要介護状態であることが必要です。
そのため企業側は、対象家族が要介護状態である証明書の提出を求める場合もあります。
ただし企業側は、証明書がないことを理由に介護休暇の申請を拒否できません。
介護休暇は口頭でも申請できるためです。
介護休暇申請においての注意点
介護休暇は介護休業と違い、介護休業給付金は対象外となります。
もし自社が介護休暇を無給としている場合には、介護休暇分の賃金が支給されません。
また、法改正により介護休暇は時間単位の取得が可能になりましたが、法律では「中抜け」を義務としていません。
そのため、介護休暇を取ってから出社する、または出社してから介護休暇を取って退勤するといったどちらかでの適用が主となります。
しかし実際には、法律上を上回る制度として中抜けを認めている企業もあります。就業規則で自社の制度を確認しましょう。
介護休暇についてのまとめ
介護休暇は対象家族1人につき5日間付与され、当日の使用申請もできます。
1日単位・半日単位での使用のほか、時間単位での使用も可能です。
一方、介護休業は1人につき93日間の休暇が付与されますが、使用の2週間前に申請が必要です。
一度使い切ると日数も追加されないため、状況に応じた使い分けをすると良いでしょう。
ただし、雇用状況によってはこうした制度が使えない場合があります。
また介護休暇は、就業時間の中抜けを認めていない企業もあります。
介護休暇は自社でどのように取得できるかを確認するところから、始めてはいかがでしょうか。
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