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働き方改革関連法に関する11のポイント! 法改正の内容を分かりやすく解説!

働き方改革関連法に関する11のポイント! 法改正の内容を分かりやすく解説!

2019年4月より、働き方改革関連法が順次施行されています。

働き方にかかわる複数の法律が改正され、企業は適切に対応しなければ罰則の対象になるおそれもあります。

では、具体的にはどのような法改正があり、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。

本記事では、働き方関連法の目的や施行日、法改正の内容などについて解説していきます。


この記事の監修者
  社会保険労務士 ITストラテジスト 

働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、働き方改革の実現に向け、労働にまつわる複数の法律に対しておこなわれた改正の総称です。

正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。

2018年6月18日に国会で成立し、2019年4月1日より順次施行されています。

働き方改革関連法案の目的や、それぞれの法改正の施行日については、以下で解説していきます。

法改正の目的

働き方改革関連法による法改正の大きな目的としては、次の2点があります。

  • 労働時間法制の見直し
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

労働時間法制の見直しとは、社会問題となっている長時間労働、いわゆる「働きすぎ」を防止し、労働者のワークライフバランスの確保や、一人ひとりの生活スタイルに合った柔軟な働き方を目指すというものです。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保とは、同一労働同一賃金の考え方に基づき、正社員と非正規社員の間にあった、不合理な待遇差をなくそうというものです。

上記の目的が達成されることで、労働者は価値観やライフステージに応じて、正社員以外にも様々な働き方を選べるようになります。

施行日

働き方改革関連法の施行日を一覧にすると以下の通りです。

ポイント

内容

施行日

労働時間法制の見直し

残業時間の上限規制

大企業:2019年4月

中小企業:2020年4月

労働者のプライベートや睡眠時間の確保

「勤務間インターバル」制度の導入(努力義務)

2019年4月

企業が労働者に対し、有給を取得するよう働きかける

年5日の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)

2019年4月

裁量労働制であっても、労働時間の把握が必要に

労働時間の客観的な把握の義務づけ

2019年4月

精算期間が1ヶ月→3ヶ月に

フレックスタイム制の拡充

2019年4月

一定のスキル・収入の労働者を、労働時間規制の対象外にできる

高度プロフェッショナル制度の創設

2019年4月

産業医の活動環境と、労働者の健康相談体制の整備

産業医・産業保健機能の強化

2019年4月

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

不合理な待遇差の解消規定

2020年4月

労働者は、待遇差について説明を求めることができるように

労働条件の説明義務

2020年4月

中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%に

中小企業の割増賃金率の引き上げ

2023年4月

特定業種・事業について残業時間の上限規制適用・猶予

残業時間の上限規制適用拡大

2024年4月

出典:働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて


法改正の内容

働き方改革関連法で改正された内容は、以下のとおりです。

  • 時間外労働の上限規制
  • 勤務時間インターバル制度(努力義務)
  • 年5日の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)
  • 労働時間の客観的な把握の義務づけ
  • フレックスタイム制の拡充
  • 高度プロフェッショナル制度の創設
  • 産業医・産業保健機能の強化
  • 不合理な待遇差の解消規定
  • 労働条件の説明義務
  • 中小企業の割増賃金率の引き上げ
  • 残業時間の上限規制適用拡大

それぞれの変更点について詳しく見ていきましょう。

時間外労働の上限規制

時間外労働に上限が設けられました。

時間外労働の条件は、原則として以下のとおりです。

  • 1年あたり360時間以内
  • 1ヶ月あたり45時間以内 

ただし、この原則に収まる場合であっても、時間外労働をさせる際は従来どおり、労使間で36協定を結ぶ必要があります。

また、繁忙期などの特別な事情がある職種では、労使間で特別条項つき36協定を結ぶことで、時間外労働の上限を以下のように延長させることができます。

  • 1年あたり720時間以内
  • 1ヶ月最大100時間以内
  • 2~6ヶ月のうち、いずれの期間の平均も80時間以内
  • 45時間を超えて良い月は1年のうち6度まで

時間外労働の上限規制に違反した場合は、罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

参考:時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

勤務時間インターバル制度(努力義務)

勤務間インターバル制度の導入が努力義務になりました。

勤務間インターバル制度とは、勤務の終了から、翌日の勤務開始までに、一定の休息時間(インターバル)を確保するものです。例えば、インターバルを11時間と設定する場合、21時に退勤した社員は、翌日8時以降まで出社できません。

努力義務のため、罰則はありませんが、努力義務を怠ったことにより被害を被った従業員から努力義務違反として訴訟されるリスクがあります。

また、努力義務とされていることに逆行するような、例えば長時間労働を認識しておきながら放置する、といった場合には労働基準監督署から行政指導される可能性もあります。

インターバルを確保するための具体的な方法としては以下のようなものが考えられます。

  • 特定の時間以降の残業を禁止する
  • 特定の時間以降も残業していた社員は翌日の出社時間を遅らせる

インターバルを制度として設けることで、労働者が充分な睡眠や、プライベートの時間が確保され、健康維持やワークライフバランスの向上が期待できます。

年5日の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)

企業は労働者に、年に少なくとも5日以上、年次有給休暇を取得させることが義務付けられました

年次有給休暇の取得は、従来より労働者の権利としてありましたが、企業として取得を働きかける義務はありませんでした。

しかし法改正により、現在は年次有給休暇を取得していない社員に対して、企業側から率先して取得するよう働きかける必要があります。

対象となるのは、年次有給休暇が年に10日以上付与される労働者です。管理監督者や、有期労働者も対象です。

違反した場合は30万円以下の罰金が課せられます。

参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得

労働時間の客観的な把握の義務づけ

企業に対し、労働時間の適切な把握が義務付けられました。

なお、労働時間を把握しなければならない労働者は一般的な正社員だけではありません。

有期労働者や管理監督者、裁量労働制の適用者など、すべての労働者を含みます。

労働時間を把握する方法としては、「使用者が自ら現場で確認する」「勤怠管理ツールを利用する」などがあります。

また、労働時間は把握した上で記録に残し、3年間(経過措置期間中、本来は5年間)は保存しなければなりません。

参考:労働時間の適正な把握のために

フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制の精算期間の上限が、1ヶ月から3ヶ月に延長されました。

フレックスタイム制とは、精算期間あたりの労働時間の総量があらかじめ決まっており、いつ働くかは労働者自身で決められる働き方のことです。

従来は、フレックスタイム制の精算期間は最大1ヶ月と定められていました。しかし法改正により最大3ヶ月に延長されたことで、例えば1ヶ月目に10時間多く働き、3ヶ月目には10時間少なくするなど、より柔軟な働き方が可能になりました。

参考:フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き

高度プロフェッショナル制度の創設

高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門知識があり、業務範囲が明確で、年収が一定以上(1075万円)の労働者を、労働基準法における労働時間、休憩、休日、割増賃金の適応外にできる制度です。

働き方改革の目的のひとつに、労働時間法制の見直しによる長時間労働(働きすぎ)の防止がありますが、その一方で、より多く働きプロフェッショナル性を高めたいと考える人も一定数います。

高度プロフェッショナル制度が適用された労働者は、労働時間の上限に縛られることなく働くことができます。

ただし、高度プロフェッショナル制度には長時間労働の原因となるリスクもあるため、導入するためには労使委員会の設置と決議、そして対象となる労働者本人の同意が必要です。

また、年間104日以上の休日や、健康管理体制も確保しなければなりません。

参考:高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説

産業医・産業保健機能の強化

産業医・産業保健機能では、大きく2つの変更点があります。

1つ目は労働者の健康確保対策の強化です。

企業は産業医に対し、労働者の労働状況や稼働時間といった情報を、必要に応じて提供しなければなりません。

これにより、産業医は長時間労働者に対して関与しやすくなります。

また、事業者が産業医や産業保健スタッフに対し、直接、安心して相談できる環境の整備も必要です。

2つ目は産業医がより効果的に活動できる環境の整備です。

企業は産業医からの勧告を受けた際、衛生委員会に報告しなければなりません。

また産業医は衛生委員会に出席して、労働者の健康を守る上で必要な措置を提案することができます。

不合理な待遇差の解消規定

雇用形態を理由に待遇差を設けることが禁止されました。

同一労働同一賃金の原則に基づき、業務内容が同じであるのならば、正社員も、パートタイム労働者も、有期雇用労働者も、同じ待遇でなければなりません。

これには基本給だけでなく、賞与や各種手当も含まれます。

参考:「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要 ①

労働条件の説明義務

パートタイム労働者や有期雇用労働者は、正社員との待遇差やその理由について、企業に説明を求めることができます。求められた際、企業は説明に応じなければなりません。

また、説明を求めたことを理由に、その労働者にとって不利益になる扱いをしてはいけません。

参考:解説動画|正社員との不合理な待遇差の解消

中小企業の割増賃金率の引き上げ

2023年4月より、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分についての割増賃金率を50%とすることが義務付けられます。

中小企業はそれまで25%だった割増賃金率を60時間超えた分については50%で計算し、支給する必要があります。

60時間超え時間外労働が深夜労働だった場合には、

深夜割増賃金率25%+60時間超割増賃金率50%=75%

となります。

就業規則の改定や、代替休暇制度について見直すなど準備をしておきましょう。

参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

残業時間の上限規制適用拡大

2019年4月(中小企業は2020年4月)より、残業時間(時間外労働)の上限規制が適用されています。ただ次の業種・事業については適用が猶予されていました。

  • 工作物の建設の事業
  • 自動車運転の業務
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

これらの業種・事業についても2024年4月より上限規制が一部適用されます。

対象業種・事業の労働者がいる場合に残業時間を短縮できるよう対策を検討することが必要です。

参考:時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務|厚生労働省


働き方改革関連法のまとめ

働き方改革関連法の目的や施行日、法改正の内容について解説しました。

企業が対応しなければいけない事柄は多いですが、働き方改革を通して従業員の健康維持や、ワークライフバランスの充実は、従業員の集中力やモチベーションアップに繋がるため、取り組み方次第では生産性を向上させることも可能です。


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監修者プロフィール

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緒方 瑛利

社会保険労務士 ITストラテジスト

北海道むかわ町生まれ。2013年、東京都競馬(株)へ入社し、総務・IR広報等を担当。2018年に経済団体へ転職、創業・融資相談業務等に従事。2019年に社会保険労務士試験とITストラテジスト試験に合格。2020年にITに強い社会保険労務士事務所としてロームテックを開業。

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