振替休日の定義|代休との違いと必要要件・注意点をわかりやすく解説
振替休日とは、休日と出勤日を事前に入れ替える(休日の振替)ことによって、本来は労働日である日に取得する休日のことを指します。
一般的には祝日と日曜日が重なったとき、翌日の月曜日を休日とすることも振替休日と呼びますが、本記事では労働基準法による振替休日についてのみ解説します。
解説する項目は、混同されやすい代休との違いや、振替休日の要件、注意点、トラブルの事例などです。振替休日について知りたい人事担当者の方は参考にしてください。
振替休日とは
労働基準法における振替休日とは、事前に休日を振り替えることによって、出勤日から休日に変わった日のことを指します。
休日を振り替えるとは、就業規則によって定められた休日を事前に出勤日とする代わりに、他の出勤日を休日にすることです。
振替休日の代わりに、休日から出勤日に変更された日は通常の出勤日として扱われます。
振替休日と代休の違い
振替休日と混同されやすい言葉に代休があります。振替休日と代休は、いずれも休日に仕事をする代わりに、別の出勤日を休日に充てる制度ですが、以下の3点で違いがあります。
- 取得のタイミング
- 給与の計算方法
- 36協定の締結が必要か
取得のタイミング
休日の振替は、振り替えて出勤する日よりも前に決めておかなければなりません。振替休日を取るということだけでなく、実際に休む日付も決めておきましょう、
事前に決めずに休日労働をした場合、その代わりに取る休日は代休となります。
給与の計算方法
振替休日と代休では、出勤日の労働に対する割増賃金の適用が異なります。
振替休日の場合、振替によってもとの休日は出勤日に変更されるため、休日出勤による割増賃金は発生しません。ただし、振替出勤によって、その週の労働時間が法定労働時間(40時間)を超える場合は時間外労働となるため、超過分に対して25%以上の割増賃金が発生します。
一方、代休の場合、休日出勤をしているため、その日については割増賃金が発生します。割増賃金は、その休日が法定休日であれば35%以上、法定外休日であれば25%以上です。
36協定の締結が必要か
時間外労働や休日労働をさせるには、36協定の締結が必要です。振替休日では、もとの休日は出勤日に変更されて休日出勤にならないため、36協定の締結は必要ありません。
しかし、振替により1週間の労働時間が合計で40時間を超える場合は時間外労働となり、36協定が必要になります。
代休では36協定を結び、休日出勤を可能にしておく必要があります。
振替休日の要件
休日の振替をおこなうためには、つぎの3つの要件を満たす必要があります。
- 振替休日の規定が就業規則にあること
- 出勤する日の事前に決めておくこと
- 法定休日(1週間に1日以上の休日)が確保されていること
それぞれ見ていきましょう。
振替休日の規定が就業規則にあること
休日の振替をするためには、「休日を振り替えることがある」ということを、就業規則に記載しなければなりません。
出勤する日の事前に決めておくこと
前述のとおり、休日の振替は休日から出勤日に変わる日と、出勤日から振替休日に変わる日を事前に決めておく必要があります。
「出勤する日だけ先に決めれば良い」と判断し、振替休日を事前に指定しない場合、代休だと見做されてしまうこともあるため注意しましょう。
法定休日が確保されていること
休日の振替は、法定休日が確保される範囲内で行わなければなりません。法定休日は、1週間に1日以上、あるいは4週間に4日以上の付与が義務付けられている休日で、労働基準法第35条によって規定されています。
たとえば休日の振替によって、1月に取るはずだった法定休日を1日、2月に振替をした結果、1月の法定休日が4日よりも少なくなってしまうというようなケースは認められません。そのため、振替休日はできるだけ近接する範囲で取ることが原則です。
企業が振替休日を与える際の注意点
ここでは、企業が振替休日を与える際の注意点について紹介します。
意図せぬ法律違反や、後ほどのトラブルに発展することがないよう、ポイントを押さえておきましょう。
振替休日の制度内容を従業員に周知する
休日に関する規定は、就業規則に記載するだけでなく、従業員に周知しなければなりません。採用時はもちろん、振替休日が発生しそうな部署への異動時などに再確認しましょう。
周知が不十分だと、従業員が「休日出勤したのに割増残業代がつかない」などの不満を感じたり、トラブルになるリスクもあります。
振替する休日と出勤日を早めに通知する
振替休日を実施するときは、従業員に振替休日と出勤日を早めに伝えましょう。「遅くとも休日出勤日の前日まで」と言われることもありますが、従業員の立場からするとできるだけ早く伝えてほしいところです。
また、可能ならば振替休日の指定については従業員の希望を反映し、気持ちよく働いてもらうように努めましょう。
所定休日なら半日単位の振替ができる
法定休日に出勤させることを前提に振替休日について解説してきましたが、所定休日(※)に出勤してもらう代わりに振替休日を設けることもあります。
法定休日に出勤させる場合は1日単位でしか振替休日は設定できませんが、所定休日の場合は半日単位での振替も可能です。所定休日の土曜日に2回、半日ずつ出勤してもらって平日の労働日1日を振替休日にするケースなどが該当します。
振替休日の扱いで法律違反になるケース
休日の振替をおこなう際には、法律に違反することがないよう注意しましょう。
ここでは、振替休日に関係する法律違反のうち、よくあるものを2点紹介します。
振替休日を取得させない
休日の振替をおこない、本来休日であるはずの日に出勤したにもかかわらず、振替休日を取らせない場合は違法となります。休日出勤したものとして、割増残業代を加えた日当を支払わなければなりません。
なお、代休は、かならずしも取得させなければいけないものではありません。休日出勤をしても、労働基準法によって定められた日数の休日を取得できているのであれば、代休がなくても違法行為にはあたりません。
割増賃金が必要なケースで支払わない
休日の振替を行ったことで発生する割増賃金を支払わない場合も違法行為にあたります。
休日の振替は、本来休日にあたる日をあらかじめ出勤日と入れ替えているため、休日出勤による割増賃金は発生しません。
しかし、休日の振替をしたことで週あたりの労働時間が40時間を超えると、その超過分に対して時間外労働による25%の割増賃金が発生します。これを支払わない場合は当然違法です。
振替休日に関するトラブル事例
ここでは、振替休日にかかわるトラブルの事例を3件紹介します。
いずれも確認やコミュニケーションの不足によって発生するため、「振替休日なのか、代休なのか」「労働時間が週40時間を超えていないか」などの項目は、事前にしっかりとチェックしてください。
振替休日を特定しなかったことにより割増残業代を請求された
急な仕事で休日出勤が必要になった場合、振替休日をいつにするかを明確に決めずに出勤日だけを伝えるケースがあります。企業側は振替休日を取らせるつもりであっても、従業員が休日出勤だと判断し割増残業代を請求することもあります。
休日出勤を依頼するとき振替日を特定するのが原則ですが、企業または従業員の都合で日程を決められない場合でも、振替休日を取ることを明確にしておきましょう。
出勤日の直後に振替休日を取らせても割増残業代が発生した
月曜から金曜まで40時間勤務後、休日の土曜日を出勤日として振替休日を2日後の月曜日に取得させた場合でも、週40時間を超える時間外労働が発生する可能性があります。
1週間の労働時間を計算するときの起算日をいつにするかは企業が任意に設定できますが、就業規則に定めがなければ日曜日を起算とします。
つまり、休日出勤した週の労働時間は40時間を超えるため割増賃金が発生するのです。
出勤日の直後に振替休日を取れば割増賃金は発生しないと思っている人もいますが、週の起算日によっては割増賃金の支払が必要です。
振替休日が取れないままになった
恒常的に仕事が忙しい場合、予定していた振替休日が取れないこともあります。日程を変えて振替休日を取得することになりますが、業務多忙や勤怠管理の不備で企業も従業員も失念することもあります。
忘れていると給与不払いで違法となるため、振替休日を設ける場合、企業は「速やかに振替休日を取らせる」「勤怠管理を徹底する」「休日出勤として賃金を支払う」などの対応が必要です。
振替休日についてのまとめ
労働基準法における振替休日について、代休との違いや要件、実際に運用する際の注意点などを解説しました。
振替休日が発生するケースは、代休が発生するケースと異なり、事前に休日と出勤日を入れ替えているため、休日労働にはあたりません。
そのため、休日労働により割増賃金は発生しませんが、週あたりの労働時間が合計で40時間を超える場合は、時間外労働による割増賃金が発生します。週をまたいで振り替える場合などは注意が必要です。
振替休日の取り扱いが原因で、給与計算や休日数にかかわるトラブルが発生することもあるので、正しいルールを把握しておきましょう。
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