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労働契約とは? 雇用契約との違いや基本原則・ルールをわかりやすく解説

労働契約とは? 雇用契約との違いや基本原則・ルールをわかりやすく解説

会社側が労働者を雇用する際、労働契約を結ぶことが重要です。しかし、労働契約にはさまざまな原則やルールがあるため、契約書を扱う人は正しく理解しなければなりません。

この記事では、労働契約の概要や雇用契約との違い、知っておくべき原則、ルールを契約書を扱うことの多い人事部の社員に向けて解説します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

労働契約とは

労働契約とは、会社側と従業員間で労働条件を合意したもので、同等の立場で契約を結ぶことが法律で定められています。

しかし、現実には会社側の方が強い立場にあることが多く、従業員を保護するために、労働基準法や労働契約法などの法令があります。

雇用契約や業務委託契約との違いを見ていきましょう。

(出典:労働契約法 第6条

雇用契約との違い

労働契約と雇用契約には同じような意味合いがありますが、ニュアンスが異なります。

  • 労働契約:特定の業務へ従事することを約束しており、労働契約法で規定されています。
  • 雇用契約:民法により、さらなる継続的な関係を前提としており、労働者が会社側のために特定の業務を遂行します。

業務委託契約との違い

労働契約は労働に対する報酬を支払うものですが、業務委託契約では、完成した仕事や成果に対して報酬を支払います。

さらに、業務委託契約は、依頼者が業務を請け負う者に対して、仕事の仕方などの細かい内容を指示できません。


労働契約法に基づいた5つの基本原則

労働契約法における基本原則は5つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.労使対等の原則

労使対等の原則とは、労働者と会社側が同等の立場で労働契約を作成や、変更する考え方です。契約は両当事者の合意で成立しますが、実際には労働者と会社側の間には力の差が存在します。

したがって、労働契約法は、双方が平等な立場で合意できるようにします。

2.均衡考慮の原則

均衡考慮の原則は、労働契約の内容が労働者の実際の仕事に適合していることを求める原則です。会社側は労働者の職務内容や責任度、働く時間などを考慮しなければなりません。

そして、労働に対して適切な賃金を支払い、適切な福利厚生を提供する義務があります。

3.仕事と生活の調和への配慮の原則

会社側が労働契約を結ぶ際、労働者が仕事と私生活のバランスを保てるように、会社側は配慮しなければなりません。

例えば、子育てや介護する労働者には、時短勤務を認めるなどの対応が会社側に求められます。現代社会での仕事と生活の両立の重要性を認識し、その実現を助けるための原則です。

4.信義誠実の原則

労働契約が締結済みの労働者と会社側は、信義誠実の原則に従って、契約を尊重し遵守しなければなりません。双方が公正で信用に足る行動をとりましょう。

また、信義誠実の原則は、労働にまつわるトラブルを事前に防止するのに重要な役割を果たします。

(出典:民法 第1条2項

5.権利濫用の禁止の原則

労働契約を結ぶ当事者は、契約から生じる権利を乱用してはならないという原則があります。

権利乱用の禁止は、一般的な契約における基本的なルールですが、労使間の問題で権利の乱用が発生しやすいことから、この原則が非常に強調されます。

(出典:民法 第1条3項

労働契約におけるルール

労働契約の締結や変更、更新などに関連するルールをまとめました。

労働契約の締結

労働契約は口頭の合意だけでも成立しますが、書面のような証拠がないため問題を引き起こしやすく、労働者が不利な立場になるリスクがあります。

労働基準法においては、会社側は労働者に対して、労働条件を明示する書類を交付しなければなりません。

労働契約法では、就業規則に記載されている労働条件が、労働者の労働条件に認識されます。ただし、労働契約の締結時に就業規則が公平であり、労働者がいつでも閲覧できる状況でなければなりません。

しかし、労働者が就業規則を閲覧できなければ、その規則は労働者の労働条件ではありません。

(出典:労働基準法 第15条、第7条

労働契約の変更

労働契約は、会社側と労働者が合意すれば変更できますが、就業規則で定められた労働条件よりも低い条件には変更できません。

また、会社側が一方的に、労働者にとって不利な就業規則に変更することは禁止されています。

労働契約の内容を変更する際には、内容の妥当性と労働者への通知が大切です。

(出典:労働契約法第8条、第12条、第9条、第10条

労働契約の更新

労働契約を更新するには、契約更新後の待遇に変更がない場合でも、新たに労働条件通知書や雇用契約書を作成し、労働契約を結び直さなければなりません。

契約更新の有無によって労働者が取るべき行動が変わるため、契約期間が終わる30日以上前には契約更新するかどうかを伝えましょう。

一部の例外を除き、雇用契約の更新は次のような特定の基準に基づいて判断します。

  • 契約期間満了時の業務量
  • 労働者の勤務成績や態度、能力
  • 企業の経営状況

雇用契約書や労働条件通知書、就業規則に明記し、労働者に周知させましょう。

ただし、5年以上労働契約が続いた場合、労働者は無期契約を結べるため、企業は契約を更新しなければなりません。

なお、雇用形態が必ずしも変わるわけではありません。

(出典:厚生労働省「労働契約法のあらまし」

労働契約の終了

労働者側による労働契約の終了には、次のようなものがあります。

  • 退職:労働者が辞める
  • 合意解約:双方の合意による契約終了
  • 定年退職
  • 契約期間満了

(出典:民法 第628条

(出典:労働契約法 第16条

(出典:労働基準法 第20条

一方、会社側側による解雇は次の4つの種類があります。

  • 普通解雇:解雇理由が労働者にある
  • 諭旨解雇:解雇理由が経営秩序侵害であるが、これまでの功績などが考慮される
  • 整理解雇:解雇理由が経営難
  • 懲戒解雇:解雇理由が経営秩序侵害

また、有期労働契約の場合、契約期間中の解雇は、特別な事情がなければ認められません。

(出典:労働契約法第17条第1項


労働契約の締結時に交付すべき「労働契約書」

給与や休日などの条件面を決めて文書にしたものが労働契約書で、労働者と使用者が契約を締結します。両者が署名・押印して正式に合意することで、労働関係が始まります。

労働契約書の発行は法律で義務付けられていませんが、契約書があるとさまざまなトラブルを回避できるでしょう。

労働契約書の書き方・記載項目

労働契約書の内容については、労働基準法の第15条(労働条件の明示)において、「必ず記載しなければならない項目(絶対的明示事項)」と「規定がある場合は必ず記載しなければならない時効(相対的明示事項)」があります。

絶対的明示事項として、以下の内容を必ず労働契約書において明示しなければなりません。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所、従事すべき業務に関する事項
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働(残業)の有無、休憩時間、休日給か、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における終業時転換に関する事項
  5. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期、昇給関する事項
    退職に関する事項

(出典:労働基準法 第15条

労働契約書は電子化も可能

労働契約書は電子化できますので、契約書を作成したり、送付したりする作業を省けるでしょう。また、労働条件を詳しく書いた労働条件通知書も、2019年4月から電子化が可能になりました。

労働契約書の電子化している企業の割合は、全体の約6割程度で、企業規模が大きい企業ほど電子化に移行されているケースが多いとされています。

なお、労働条件通知書は、労働者が希望した場合のみ電子化できます。電子化するだけではなく、労働者への口頭による説明も怠らないようにしましょう。

(出典:「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ


労働契約についてのまとめ

労働契約は、契約上弱い立場になりやすい労働者を保護するために、法律に則って合意して成立します。

労働契約は口頭でも成立しますが、トラブルやリスクを未然に防止するためにも、労働契約書の交付を推奨します。

契約書の担当者は、労働契約の概要やルールなどを理解したうえで、手続きを間違いのないように進めましょう。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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