不利益変更とは? 不利益禁止の原則や実施する方法と注意点を解説
不利益変更をおこなうと、会社と従業員の間でトラブルへ発展するケースもあります。労働条件などを業務で扱う従業員は、トラブルを未然に防ぐためにも、不利益変更を正しく理解しなければなりません。
この記事では、企業の労働条件における不利益変更の概要や具体例、注意点などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
不利益変更とは?
不利益変更とは、会社が就業規則を変更する際、労働条件を従業員にとって不利な内容に変えることです。
不利益変更の具体例や不利益変更禁止の原則、不利益変更に対する罰則を紹介します。
不利益変更の具体例
不利益変更に該当する内容は主に4つです。
- 賃金:基本給や退職金、一連の手当の減給
- 休日:年間の所定休日の減少や、法律上の有給休暇以外の特別休暇(有給)を認めている場合、この休日をなくすこと
- シフト変更:就業時間帯の変更や勤務時間の増減
- 割増賃金:残業代を支払っていない会社が、月給額を維持したまま固定残業代を追加するなど。所定内賃金が実質減少するため
不利益変更禁止の原則とは
不利益変更禁止の原則は、従業員の同意を得られない場合、会社は従業員が不利になるような労働条件に変更できないことです。不利益変更の原則は、労働契約法の第8条によって明記されています。
(出典:労働契約法 第8条)
不利益変更に対する罰則
従業員の合意を得ずに不利益変更した場合、会社に対する罰則はありません。しかし、実行した不利益変更は無効になり、元の労働条件が引き続き適用されます。法律上、必要とされる手順を踏んでいないためです。
不利益変更の進め方
不利益変更の進め方を3つ紹介します。いずれの方法も不利益変更には客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければなりません。
そうでない場合は、その変更が無効になるかもしれませんので、注意が必要です。
1.従業員の同意を得る方法
従業員に直接不利益内容に変更することを説明し同意を得ることが、最も用いられる不利益変更のやり方です。変更内容によっては、全従業員が必ず不利益になるわけではないため、不利益を被る恐れがある従業員に対する同意を得ることが必要です。
具体的には、不利益を受ける可能性がある従業員と面談して同意を得たり、メールなどで変更内容を周知し、その後、変更内容に同意を得る方法などがあります。
2.就業規則を変更する方法
就業規則を変更する場合は、その職場で働く従業員の過半数以上の代表者から意見を聴取し、変更届を所轄労働基準監督署長へ提出しなければなりません。
不利益な内容への変更について従業員に意見を聞いたうえで、その内容を変更する必要があるかどうかを決めます。
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3.労働組合と労働協約を締結する方法
労働協約は、労働組合と事業主との間で締結する取り決めごとです。労働協約による不利益取り扱い変更は、労働組合と事業主が話し合い、労働協約を締結する必要があります。
就業規則とは異なり、労働協約は会社全体に対して効力が及びますので、不利益変更の内容を会社全体に周知させることが重要です。
不利益変更を実施する際の注意点
不利益変更を実施する際、特に注意しなければならない点をまとめました。ぜひ参考にしてください。
不利益変更の必要性を説明
不利益変更する場合、変更内容や適用範囲、影響の度合いなどを従業員に対して、丁寧に説明しましょう。従業員の合意をともなわない不利益変更に罰則はありませんが、従業員への説明を怠ると、トラブルに発展する恐れがあるためです。
従業員に説明する際は書面と口頭の両方を使うと、確実性が高まるでしょう。
一部の従業員が不利になる場合は調整手当を導入
人事評価制度の改定によって特定の従業員に不利益が及ぶ場合、不利益の影響を考慮した調整手当が必要です。具体的には、不利益分を踏まえた手当金などです。
また、次のようなことも必要です。
- 人事評価制度を改定する理由
- 労使と十分な話し合いが行われているか
- 人件費削減が目的ではなく、業務の生産性や効率アップが目的であること
賃金や給与などの不利益変更には合理性のある理由が必要
給与や退職金にまつわる不利益変更は、従業員にとって大きな影響を及ぼすため、合理的な理由が必要不可欠です。
例えば、多額の損失やその措置、同業他社より給与が高水準などの理由は合理性があるといえます。
また、休日を減らす不利益変更の場合、賃金に及ぼす影響を従業員に説明したほうがよいでしょう。人件費しか削る箇所がないなど、同業他社と比較しながら説明するのがポイントです。
不利益変更についてのまとめ
就業規則の不利益変更は、客観的に判断しても合理性があったうえで、労使の同意を得られれば法律違反になりません。
しかし、従業員の同意を得ない不利益変更は、従業員からの信頼を損ねたり、企業と従業員のトラブルに発展したりするリスクがあります。
不利益変更する際はその内容を十分に理解し、適切な手順を踏みましょう。
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