被扶養者(異動)届とは? 必要になるケースから要件・手続き方法まで解説!
企業にとっては、社会保険に加入する従業員だけではなく、その従業員が扶養する配偶者などの手続きも大切です。特に被扶養者届の取り扱いは非常に重要ですので、企業の保険保険担当者は間違いのないように進めなければなりません。
この記事では、人事部の担当者に向けて、被扶養者届の概要や必要になるケース、必要書類を解説します。また、この記事の後半部分では、手続きの手段を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
被扶養者(異動)届とは?
被扶養者(異動)届は厚生年金保険や、健康保険に加入する従業員の被扶養者の情報を変更する手続きです。主に結婚や出生などのタイミングで必要になります。
その事実が生じた日から5日以内に、管轄の年金事務所や健康保険組合などへ勤務先を軽油提出すると、扶養家族は保険給付を受けられます。
審査は公正かつ厳格に行われ、虚偽申告が発覚すると扶養者認定が取り消されますので注意しましょう。
被扶養者(異動)届が必要となるケース
新人の従業員に被扶養者がいる場合に被扶養者届が必要になります。社会保険の資格取得届に被扶養者届を追加して、提出しなければなりません。
また、既に在籍する従業員に被扶養者に増減があった場合も、被扶養者届が必要です。
- 被扶養者が増える:結婚や出産
- 被扶養者が減る:死亡や離婚、離縁
なお、従業員の配偶者の収入が扶養の上限を超えた際、その配偶者は従業員の扶養から抜けるため、被扶養者届が必要です。
また、従業員の配偶者の収入が減少し、新規でその従業員の扶養に入る際も同様に被扶養者届を提出しましょう。
被扶養者の認定要件
被扶養者の認定には被扶養者の範囲と、被扶養者の収入要件の2つを満たさなければなりません。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
要件1.範囲
まず、被扶養者になるためには、日本国内に住所を持っていることが絶対条件です。
しかし、次の条件に当てはまる人は、国内に住所があっても被扶養者の範囲外です。
- 留学中の学生
- 一時渡航中(就学を除く)
- 海外赴任中の被保険者と身分関係が生じた
- 原則として国内に生活基盤がある人
そして、被保険者と生計維持関係が認められる次の人が被扶養者になれます。
なお、被保険者と同居しているかどうかは関係ありません。
- 内縁関係を含む配偶者
- 父や母などの直系尊属
- 実の子や養子、孫
- 兄弟や姉妹
また、被保険者と同居しており、生計維持関係が認められている次の人も被扶養者になります。
- 3親等内の親族
- 内縁関係の配偶者の父母か子
- 内縁関係の配偶者の死亡後、その父母と子
要件2.収入
被扶養者になれる年間収入は130万円未満で、60歳未満でなければなりません。
なお、障害者若しくは60歳以上の者は180万円未満の年間収入でよいです。年間収入は被扶養者と認められた日以降の、年間収入が見込まれた金額です。
収入の目安をまとめました。
- 月額:108,311円以下(障害者は150,000円以下)
- 日額(失業給付など):3,611円以下(障害者は5,000円以下)
また、収入要件に加えて、次のうちのどちらかの要件を満たさなければなりません。
- 被扶養者と同居:扶養者の半分以下の収入
- 被扶養者と別居:扶養者の仕送り額を下回った金額
被扶養者(異動)届の手続きに必要な書類
被扶養者届の手続きに必要な書類は次の通りです。
- 被扶養者(異動)届書・国民年金第3号被保険者関係届
- 続柄確認の書類
- 収入要件の確認書類
- その他確認書類
それぞれ詳しく解説します。
被扶養者(異動)届書・国民年金第3号被保険者関係届
健康保険被扶養者(異動)届の提出は必須です。
被扶養者が国民年金の第3号被保険者なら、国民年金第3号被保険者関係届も合わせて提出してください。日本年金機構の公式サイトでは、2枚が1枚にまとめられています。
次の4つの項目の記載が必要です。
- 事業主記載欄:勤務先の企業が事業所の名称などを記入します。また、収入要件などを勤め先の企業が確認したら、事業主確認欄の「確認」に○をつけましょう。
- 被保険者欄:被保険者整理番号欄に企業が定めた番号を記載し、収入欄は年収見込み(1年後の金額)を書きます。
- 配偶者である被扶養者欄:配偶者が被扶養者になる際に記載が必要です。なお、被保険者が企業に書類を提出した日が「氏名欄の提出日」になります。
- その他の被扶養者欄:父母や子などを被扶養者にするときに記載が必要です。
- 戸籍謄本
- 被保険者との続柄を証明できる戸籍抄本
- マイナンバーが書かれていない住民票の写し(原本)
住民票は、被保険者が世帯主で被扶養者と同居しているときに使用可能です。被保険者と同居が要件の続柄は、被保険者世帯の全員分が書かれた住民票を提出しましょう。
ただし、次のすべての条件を満たしていれば、続柄確認の書類の提出は扶養です。
- 被保険者と被扶養者になる人のマイナンバーが届出に記載済み
- 「扶養認定を受ける人物の続柄が届出の記載と間違いがないこと」を勤め先の企業が確認したということを記載
- 退職:退職証明書か雇用保険被保険者離職票
- 失業保険を受給中もしくは受給終了:雇用保険受給資格者証
- 年金を受給中:受給額が載っている書類(年金額の改訂通知書など)
- 漁業などを含む自営収入や不動産収入がある:直近の確定申告書
また、次のケースも重要ですので、当てはまる人は気をつけましょう。
- 自営収入や不動産収入以外の収入がある人:課税(非課税)証明書
- 障害年金や遺族年金など、非課税対象の収入がある人:受取金額を確認できる年金振込通知書など
- 15歳以下の被扶養者:収入要件の確認書は不要
(出典:健康保険法施行規則 第38条1項)
(出典:健康保険法施行規則 第38条)
その他確認書類
別居している親族を被扶養者にするためには、仕送りをしている事実とその金額を確認できる次のような書類を添付してください。
なお、6歳未満もしくは、16歳以上の学生を被扶養者にする場合は、確認書類は不要です。
- 名義と振込み日、金額がわかる預金通帳の写しページ
- 振込明細書
- 現金書留の控え
また、配偶者(内縁関係)を被扶養者にしたいときは、次の書類を添付しましょう。いずれも提出日から90日以内に発行した書類を使います。
- 被保険者と被扶養者の戸籍謄本もしくは戸籍抄本
- 被保険者の世帯全員の住民票の原本
(出典:健康保険法施行規則 第38条1項)
(出典:全国健康保険協会 被扶養者とは?)
被扶養者(異動)届の手続き手段
健康保険被扶養者(異動)届の手続き方法は、以下の3種類です。
- 郵送
- 窓口持参
- 電子申請
それぞれ詳しく見ていきましょう。
郵送か窓口持参
郵送で送付する際は、勤務先の所轄にある年金事務所の事務センターを宛先にして送りましょう。
なお、街角の年金相談センターで対応しているケースもあります。
窓口に持って行く場合は、紙の書類だけではなく、CDなどの電子媒体の状態で提出できます。被扶養者にその資格が生じてから5日以内に提出してください。
電子申請
電子申請したいときは総務省が運営元の「e-Gov」を使いましょう。
24時間365日空いていますので、自分の好きなタイミングで申請できます。
ただし、電子申請の前に電子証明書を取得して本人確認を行いましょう。
(出典:e-Govポータル)
被扶養者(異動)届のまとめ
健康保険被扶養者届の提出は被扶養者の認定と被扶養者の削除、被扶養者の記載事項の変更の3つのケースで必要です。
結婚や出産により被扶養者が増えた場合は、健康保険被扶養者(異動)届を提出してください。
確認事項が多いため、保険の担当者はミスがないように手続きを進めましょう。