日給月給制とは? 他の給与体系との違いや気になる残業代・有給について
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求人票には日給制や月給制、時給制など、さまざまな給与形態があり、それぞれに特徴があります。
経営者や採用担当者の方は、これらの給与形態の概要を正しく理解しておかなければなりません。
この記事では、企業の人事部の社員に向けて、給与体系と計算方法、メリット、デメリットを日給月給制に焦点を当てて解説します。
また、この記事の後半部分では、日給月給制と他の給与体制との違いをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
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日給月給制とは
日給月給制とは、給与の1日単位で給与計算する形態で、欠勤や遅刻で給与が変動するのが特徴です。
月の出勤日数が多ければその分、給与も多くもらえます。
また、固定給のみならず、日給月給制は各種手当てにも適用されます。
日給月給制において気になるポイント
日給月給制において、多くの従業員が気になるポイントを紹介します。
- 有給
- 残業代
- 休日出勤
それぞれの特徴を解説します。
有給
有給休暇は、労働基準法で認められている権利ですので、給与形態に関係なく取得可能です。
また、入社してから半年の経過など、有給休暇が適用されるまでの条件も、他の給与形態と同様にあります。
残業代
残業代も、問題なく支払われます。
残業代が生じるケースは、1日8時間か1週間に40時間を超えて労働した場合です。
また、法定労働時間を超えて働いた際は、賃金の25%割り増しして支払われます。
(出典:厚生労働省 しっかりマスター 割増賃金編)
休日出勤
法定休日に出勤した場合、賃金の35%割り増しで休日出勤手当が支給されます。
法定休日とは、1週に1日以上の休日か、4週4日以上の休日のことで、多くの企業は日曜日に設定しています。
日給月給制の給与の計算方法
日給月給制の計算式は「給与月額 = 日給 × その月の労働日数」です。
欠勤や早退などで生じた各種の控除額を計算すると、その月の給与を算出できます。
欠勤控除の計算方法は、就業規則の規定に従って行うため、ここでは月給と日給の計算例をそれぞれ解説します。
まず、月給制で欠勤した場合の計算式と計算例は、以下の通りです。
- 計算式:月給制の場合の欠勤控除額 = その月の月給額 / 1ヵ月の平均所定労働時間数 × 欠勤時間数
- 計算例:(基本給40万円 + 職務手当2万円) / 160時間 × (8時間 × 5日)=10.5万円
したがって、給与から引かれる金額は105,000円です。次に、日給制で欠勤した場合の計算式と計算例を見ていきましょう。
- 計算式:欠勤控除額 = その日の日給額 / 1日の所定労働時間数 × 欠勤時間数
- 計算例:1.2万円 / 8時間 × 16時間(2日分)= 2.4万円
給与から引かれる金額は24,000円です。そして、早退した場合の計算式と計算例は、次の通りです。
- 計算式:賃金控除額 = その月の月給額 / その月の所定労働時間 × 早退時間
- 計算例:(月給40万円 + 職務手当2万円) / (22日 × 8時間) × (20分 / 60分)
計算結果は794.4545…ですが、小数点以下は切り捨てですので、賃金控除額は794円です。最後に、遅刻した場合の計算式と計算例をまとめました。
- 計算式:賃金控除額 = その月の月給額 / その月の所定労働時間 × 遅刻時間
- 計算例:(月給40万円 + 職務手当2万円) / (22日 × 8時間) × (10分 / 60分)
計算結果は397.7272…ですが小数点以下は切り捨てですので、賃金控除額は397円です。
日給月給制のメリット
日給月給制のメリットを、「企業側」と「労働者側」に分けて解説します。
企業側
企業側のメリットは主に以下の2つです。
- コストカット
- 欠勤の抑止力
コストカット
日給月給制は、従業員が働いた時間に相当する金額を支払いますので、コストカットにつながります。
作業量に応じて労働力を確保でき、仕事がない時期は給与が発生しないため、人件費を抑えられるでしょう。
欠勤の抑止力
日給月給は、足りなかった分が給与からマイナスされるため、従業員たちは欠勤や遅刻、早退などしないように意識するでしょう。
また、労働の対価が賃金だという企業の意思表示にもなりますので、給与の公平性が高まります。
労働者側
労働者側のメリットは、主に以下の2つです。
- 生活設計が立てやすい
- 休みやすい
生活設計が立てやすい
日給と月の出勤日数を掛け合わせるだけで給与を計算できるため、生活設計が立てやすくなります。
生活費用など、必要な金額に対して把握からアプローチできますので、毎月の計画を立てやすくなります。
休みやすい
休んだ分は本人の給与からマイナスになるだけですので、企業のコストに影響が出ることはありません。
そのため、必要に応じて仕事の休みがとれやすくなるでしょう。
一方、月給制は休んだ分も企業が給与を支払うため、日給月給に比べると休みにくい場合があります。
日給月給制のデメリット
ここからは、日給月給制のデメリットを「企業側」と「従業員」に分けて解説します。
企業側
企業側のデメリットは、主に以下の2つです。
- 給与形態に不満が出る可能性がある
- 労働生産性の見えづらさ
給与形態に不満が出る可能性がある
日給月給は基本的に出勤した分だけ給与が支給されるため、月の給与にばらつきがあり、不安定です。
建設業であれば悪天候などで仕事ができず、月給が減ってしまう可能性もあります。
安定的に給与が支給される月給制と比較し、給与形態に不満を抱く従業員も出てくるでしょう。
労働生産性の見えづらさ
日給月給制は働いた時間に応じて給与を支払うため、実際の業績や成果に基づいた評価が難しくなる場合があります。
労働時間が長く、出勤日数が多い従業員が得するシステムです。
働いた時間だけではなく、労働生産性や成果につながる仕事をした従業員の待遇の改善も行いましょう。
労働者側
労働者側のデメリットは、主に以下の2つが考えられます。
- 働かないと収入が入らない
- 福利厚生が整備されていない可能性がある
働かないと収入が入らない
日給月給制は、働けない期間は収入が入ってきません。
- 年末年始
- ゴールデンウィーク
- お盆
- 祝日
- 季節に応じた長期休み
特にゴールデンウィークや季節に応じた長期休みのある月は、数万円単位で給与から控除される場合もあるでしょう。
福利厚生が整備されていない可能性がある
日給月給制を導入している企業のなかには、残業代や休日出勤手当も日給に含めて計算する企業も存在します。
しかし、日給月給制であっても残業代は発生するうえ、休日出勤した場合は、休日出勤手当の支払いも必要です。
また、社会保険に加入すると手取りが減るという理由で社会保険を完備していない企業もあります。
日給月給制を導入する企業では、福利厚生が整っていない可能性があるため、注意が必要です。
日給月給制とその他の給与体系との違い
日給月給制とその他の給与体系との違いをまとめました。
ぜひ参考にしてください。
月給制
月給制は、1ヵ月の給与を事前に定めた給与体系です。
欠勤や遅刻、早退などにおける控除の方法によって、月給制は3種類に分かれます。
- 日給月給制:月給から、欠勤分などを給与から差し引く
- 月給日給制:月給から、欠勤分を固定給のみから差し引かれる
- 完全月給制:月給から、欠勤分が控除されない
日給制
日給制は、あらかじめ設定された日給に実働日数を掛け給与を決める体系です。
日給月給制のように、月の給与が設定されていません。
また、日給月給制は決まった給与からマイナスする方式なのに対し、日給制は働いた日数を積み重ねて給与をプラスにする方式です。
月給日給制
月給日給制は、日給月給制と同様に、あらかじめ決められた給与に対して、欠勤や早退などで労働しなかった分をマイナスして支給します。
しかし、月給日給制は職務手当や役職手当など、各種手当てはマイナスにならず、そのまま支給されます。
つまり、月給日給制は固定給から、欠勤分などのマイナス分を差し引きます。
完全月給制
完全月給制は、月給制の一種で、欠勤や遅刻した分を給与から差し引かず、定められた金額を支払う給与体系です。
一般的には、管理職に適用されるケースが多いでしょう。
日給月給制についてのまとめ
日給月給制は働いた分に応じて支払う給与体系ですので、月の労働日数によって給与が増減します。
人事部の担当者は、日給月給制のメリットとデメリットを把握しながら、他の給与形態も確認して正しく理解しましょう。