残業40時間は違法? 違法となるケースや対処法を解説
厚生労働省の調査によると、現在の日本の残業平均時間は約14時間です。
平均残業を超えた40時間の残業はプライベートでゆっくり過ごす時間が少なくなったり、通勤時間によっては睡眠を十分に取れなかったりする場合もあります。
参考:「毎月勤労統計調査 平成28年度分結果確報 第2表 月間実労働時間及び出勤日数」(厚生労働省)
残業時間が月40時間を超えそうな人やすでに超えている人の中には、「きつい」「しんどい」と感じている人も多いでしょう。
本記事では、残業時間が40時間を超えることは違法なのかどうかやリスクについて解説します。
残業40時間は違法になるのか
残業40時間は違法になるのか、36協定と合わせて違法になるケースを解説します。
36協定が締結されていないケース
労働基準法32条(労働時間)に定められている法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合には、事前に会社と労働者の代表者との間で36協定を締結しておかなければいけません。
36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
- 労働基準法32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について八時間を超えて、労働させてはならない。」 - 労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
1「使用者は、頭角事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表するものとの書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た老婆においては、第三十二条から第三十二条の後まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」
36協定には残業時間の上限が定められているため、36協定を締結したからといって無制限に残業をさせても良いということではありません。
- 労働基準法第36条第3項・第4項(時間外及び休日の労働)
第三十六条
③前項第4号の労働時間を延長して労働させることができる時間は当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
④前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
36協定の残業の上限は月45時間・年360時間と定められています。そのため、36協定を締結している場合には月40時間の残業は、違反になりません。
残業代が支払われていないケース
残業代が支払われていない場合、労働基準法24条で定める賃金の全額払いに違反します。
また、会社の義務として、残業をした社員に対して割増賃金を加えて残業代を支払わなければなりません。
会社が残業代を支払わなかった場合、6か月以内の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。
- 労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、…労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」 - 労働基準法119条
「次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
残業40時間が及ぼすリスク
残業40時間が、従業員や会社に与えるリスクについて解説します。
従業員側:メンタル不調や体調不良のリスク
残業40時間を超えることで、メンタル不調や体調不良に陥るリスクがあります。業務の内容や負担の大きさ、通勤の負担などによって同じ残業40時間でも体力面や精神面の負担は異なるでしょう。
具体的なメンタル不調や体調不良のリスクとして、下記のリスクが挙げられます。
- 脳・心臓疾患の危険性
脳や心臓への負荷が高くなると発症しやすくなる - 精神疾患や自殺
十分な睡眠や休養が取れない時間が増えると、心身ともに疲労しうつ病などの精神疾患を患う可能性がある。最悪の場合、自殺してしまう可能性もある
体力面や精神面の負担が大きい人は、メンタル不調や体調不良に陥ってしまう可能性が大きくなるでしょう。
会社側:従業員退職や評判悪化のリスク
残業が多くなることで、退職者が増えたり会社の評判が悪化したりするリスクが考えられます。退職者が増えると、新たな人材の確保などの採用コストがかかります。
さらに、長時間労働が慢性化すると労働者が不満に感じ、退職者が多くなったり労災が発生しやすくなったりすることも考えられるでしょう。
このような会社は「ブラック企業」と認識され、会社の評判が悪化するリスクがあるのです。
36協定を締結していれば残業40時間は違法ではありませんが、従業員に負担がかかることやブラックだといわれかねないリスクがあることも覚えておきましょう。
残業40時間を超えない・減らす対処法
残業40時間を改善するための対処法を労働者向けに解説します。
仕事の効率化に着手する
専門スキルやAI技術を活用するなどして作業を効率化することが大切です。業務を効率化して働く時間を短縮することで残業時間を減らすことができます。
例えば、PC作業が多い業務であればOfficeのソフトウェアに内蔵されているショートカット機能やメール自動振り分け機能などを活用することで作業時間を短縮できます。
自身の業務について、効率化できることはないかネットや書籍で知識を取り入れると良いでしょう。
残業削減の申請
自分自身のスキルや業務の効率化で残業削減が難しい場合は、上司や責任者に残業の削減を提案しましょう。
残業が慢性化している会社であれば、会社側から残業を減らしてくれることは期待できないため、積極的に会社に働きかけを行うことも必要です。
一人で言いづらい場合は、職場の同僚などと複数人で申請することなども検討すると良いでしょう。
専門家に相談する
残業時間を減らすことが難しい場合は、社外の専門家などに相談すると良いでしょう。
弁護士や社会保険労務士に相談すれば解決策を一緒に考えてくれます。毎日の業務に追われながら、自分一人の力で問題を解決することは簡単ではありません。
1人で悩むよりも、専門家の意見を聞くほうが解決が早くなる可能性が高まります。また、相談に乗ってもらえることで精神的に楽になれるというメリットもあります。
残業40時間のまとめ
残業40時間は、36協定を締結していて残業代が支払われている場合には違法にはなりません。
しかし、36協定を締結していても、特別条項を設けていなければ月45時間以上の残業は認められません。
月40時間残業は従業員にとっては健康を損なうリスクが高く、会社にとっては退職者が増えたり会社の評判が悪化するなどリスクが高くなります。
従業員は、自らの働き方を変えることで残業圧縮を目指しつつ、自分から改善提案を発信する、社外の専門家に相談するなどの取り組みも大切です。