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改善基準告示とは? 改正点や対応のポイントを解説

改善基準告示とは? 改正点や対応のポイントを解説

改善基準告示は、運送業のドライバーを対象とした労働時間についての規定です。

1997年に改正された告示が現行で適用されていましたが、2022年に改正され、2024年4月1日に施行されます。

そのため、各事業者は早急に労働環境を見直し、改善基準告示に従った勤怠管理を行わなければなりません。本記事では、改善基準告示の概要や改正後の内容、新たな告示に関する注意点を解説します。


この記事の監修者
横浜パートナー法律事務所  弁護士 

改善基準告示とは

改善基準告示とは、運送業の自動車運転者の拘束時間に上限を設け、規定の休息時間を与えることを定めた規定です。正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」です。

トラックやタクシー、バスなどの自動車運転者の過労による健康被害や事故を防ぐために、2022年12月に見直されました。

拘束時間の上限と休息時間の改正は2024年4月1日から施行されます。

経営層や人事の責任者は、改正後の拘束・休憩時間に注意して、従業員の勤怠管理を行わなければなりません。

ただし、時間外労働の上限や休息時間などの詳しい条件については、運送の業種によって異なります。


2024年に改正される改善基準告示の変更点

2024年4月の改正では、主に「拘束時間」と「休息時間」に関して、規定が設けられます。

拘束時間は、休憩・仮眠時間を含む始業から終業までの時間で、使用者から拘束される時間を指します。休息時間は使用者から全く拘束を受けない時間のことであり、労働者が自由に処分することができる時間のことです。

ただし、業種によって各時間の原則は異なることに注意が必要です。

  • トラック運転手
  • バス運転手
  • タクシー運転手
  • ハイヤー運転手

の4種に分けて、改善基準告示改正後の規定について解説します。

トラック運転手

改善基準告示の改正により、トラック運転手の拘束時間・休息時間・連続運転時間に関して、下記のように規定が変わりました。

最大・最低時間のほか、原則(基本)の時間が追記された箇所があるため注意しましょう。

改正前と改正後を表にまとめたので、参考にしてください。

 

改正前(現行)

改正後

1年の拘束時間

最大:3,516時間

原則:3,300時間

最大:3,400時間

1カ月の拘束時間

原則:293時間

最大:320時間

原則:284時間

最大:310時間

1日の拘束時間

基本:13時間

最大:16時間

基本:13時間

最大:15時間(宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで最大16時間の延長可)

1日の休息時間

最低:継続8時間

基本:継続11時間

最低:継続9時間(宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで最低8時間でも可。ただし、休息9時間を下回った際は、運航終了後、継続12時間以上の休息を与える必要あり)

連続運転時間

最大:4時間以内

原則:4時間以内

最大:4時間30分(サービスエリアなどに駐停車できず、やむを得ない場合のみ)

ここで注意しておきたいのが、最大まで延長する際や、運転中断時の休憩の際にも、条件があることです。各時間についての注意点は、以下のとおりです。

  • 拘束時間が284時間を超える月は連続3カ月まで
  • 1年のうち284時間を超える月は、1年の総拘束時間を超えない範囲で6回まで
  • 運転を中断した際は、原則休憩を取らなければならない
  • 改正により、中断を分割して10分未満の休憩も可能だが、3回以上連続してはいけない

また、拘束時間が、原則の時間を超える場合は、労使協定を結んでいる必要があります。

バス運転手

バス運転手も、トラックと同様に、拘束時間・休息時間・連続運転時間に関して、規定が変わりました。改正前と改正後をまとめた表は、以下のとおりです。

 

改正前(現行)

改正後

1年の拘束時間

原則:3,380時間

最大:3,484時間

原則:3,300時間

最大:3,400時間

1カ月の拘束時間

原則:281時間

最大:309時間

原則:281時間

最大:294時間(年6カ月まで)

1日の拘束時間

基本:13時間

最大:16時間

基本:13時間

最大:15時間(14時間を超える場合は週3回までが目安)

1日の休息時間

最低:継続8時間

基本:継続11時間以上と努める

最低:継続9時間

連続運転時間

最大:9時間(2日平均の1日あたり)

最大:4時間(1回連続10分以上の休憩を合計30分以上必要)

1カ月の拘束時間に関しては、「1カ月通算(1年)」か「4週間の平均(52週)」かの2つの選択肢があり、それによって条件が異なってきます。上の表は1カ月通算を採用した場合ですが、4週平均をとる基準を採用した場合は以下のとおりです。

4週間平均の場合
原則:52週が合計で3,300時間以内、4週の平均で1週間の拘束時間が65時間以内
例外:52週最大3,400時間。4週平均1週は最大68時間(ただし52週のうち24週まで等制限あり)

原則時間を超える場合は、貸切バス等の運転者であることと、労使協定を結んでいる必要があります。

タクシー運転手

タクシー運転手については、「日勤者」と「隔日勤務者」で、拘束時間と休息時間の規定が異なります。

日勤者:始業及び終業の時刻が同一の日に属する業務を行う者
隔日勤務:始業及び終業の時刻が同一の日に属さない業務を指し、要するに、2日にまたがって一つの勤務を行うこと

また、車庫待ち等の自動車運転者の場合、拘束時間に関して、別途規定が設けられています。

通常のタクシー:基本的に、営業エリア内を走りながらお客を探す「流し営業」を行う。
車庫待ち等のタクシー:基本的に、営業所の車庫で待機して、呼び出しがあった際に対応する。流し営業は行わない。


通常のタクシー運転手の場合

通常のタクシー運転手の、拘束時間と休憩時間に関する改定は、以下のとおりです。

<日勤者の場合>

 

改正前(現行)

改正後

1カ月の拘束時間

最大:299時間

最大:288時間

1日の拘束時間

基本:13時間

最大:16時間

基本:13時間

最大:15時間

(14時間超は週3回までが目安)

1日の休息時間

最低:継続8時間

基本:継続11時間以上と努める

最低:継続9時間


<隔日勤務者の場合>

 

改正前(現行)

改正後

1カ月の拘束時間

原則:262時間

最大:270時間

(労使協定により6カ月まで)

現行通り

2暦日の拘束時間

最大:21時間

最大:22時間

(ただし、2回の各日勤務を平均し1日あたり21時間以内)

2暦日の休息時間

最低:継続20時間

基本:継続24時間以上と努める

最低:継続22時間


車庫待ち等のタクシー運転手の場合

タクシー運転手のうち、車庫待ち等の自動車運転者には、前述の規定は適用されず、別の規定が適用されます。

まず、「車庫待ち等」に定義される条件は、以下の4つです。

  1. 事業場が人口30万人以上の都市に所在していないこと。
  2. 勤務時間のほとんどについて「流し営業」を行っていないこと。
  3. 夜間に4時間以上の仮眠時間が確保される実態であること。
  4. 原則として、事業場内における休憩が確保される実態であること。

(引用:厚生労働省 『タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント(パンフレット)』

車庫待ち等のタクシー運転者も、「日勤者」と「隔日勤務者」で、適用される規定が異なります。


<車庫待ち等の日勤者の場合>

 

改正前(現行)

改正後

1カ月の拘束時間

基本:288時間

最大:322時間

基本:288時間

最大:300時間

1日の拘束時間

※の要件を満たす場合、24時間まで延長可

※の要件を満たす場合、24時間まで延長可(変更なし)

※以下の要件を満たしている場合、1日の拘束時間を最大24時間まで延長することが可能です。

  1. 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えること。
  2. 1日の拘束時間が16時間を超える回数が1カ月について7回以内であること。
  3. 1日の拘束時間が18時間を超える場合には、夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること。

(引用:厚生労働省 『タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント(パンフレット)』


<車庫待ち等の隔日勤務者の場合>

 

改正前(現行)

改正後

1カ月の拘束時間

最大:262時間(労使協定により、270時間まで延長可。下記の要件を満たす場合、さらに20時間を加えた時間まで延長可)

最大:262時間(労使協定により、270時間まで延長可。下記の要件を満たす場合、さらに10時間を加えた時間まで延長可)

2暦日の拘束時間

下記の要件を満たす場合、24時間まで延長可

下記の要件を満たす場合、24時間まで延長可

【要件】拘束時間を延長するための要件は改正前と改正後で以下の違いがあります。

<改正前>

  • 夜間4時間以上の仮眠時間を与えること
  • 1カ月について2暦日の拘束時間が21時間を超える勤務の回数を7回以内とすること。また、それを労使協定で定めること。

参考:厚生労働省『タクシー運転者の労働時間等の改善基準のポイント』

<改正後>

  • 夜間4時間以上の仮眠時間を与えること
  • 「2暦日の拘束時間が22時間を超える回数」および「2回平均1回の隔日勤務の拘束時間が21時間を超える回数」の合計を1カ月7回以内の範囲で定めること。また、それを労使協定で定めること。

参考:厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント』


ハイヤー運転手

ハイヤーは、タクシーとは営業形態が異なるため、拘束時間と休息時間に関する規定は適用されません。ただし、時間外労働に関しては、改善基準告示の改正で、以下の規定が適用されます。

 

改正前

改正後

1カ月の時間外労働

最大:50時間(または3カ月140時間)

 

最大:45時間

1年間の時間外労働

最大:450時間

最大:360時間(臨時的特別な事情で限度時間を超えて労働させる場合にも、年間960時間まで)

明確な規定は、時間外労働についてのみですが、ハイヤー運転手の使用者は、以下の2点も留意する必要があります。

  • 使用者は、36協定において、時間外労働時間を定めるに当たっては当該時間数を、休日の労働を定めるに当たっては当該休日に労働させる時間数を、それぞれできる限り短くするよう努めなければなりません。
  • ハイヤー運転者が疲労回復を図るために、必要な睡眠時間を確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えなければなりません。

(引用:厚生労働省 『タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント(パンフレット)』


改善基準告示への対応ポイント

改正された改善基準告示は2024年4月に施行され、違反するとペナルティが発生します。そのため、各事業者は労働環境の見直しと改善が急務です。

改正後の改善基準告示に対応するうえで、押さえておいたほうがよいポイントを2つ紹介します。

違反した場合行政処分が下される可能性がある

改善基準告示は、法律ではないので、違反しても罰則は課されません。

しかし、改善基準告示の違反が発覚すると、国土交通省による行政処分と、労働基準監督署からの指導を受ける可能性があります。

行政処分が下ると、軽い場合でも一定期間車両の使用が制限され、重い場合では、一定期間事業を停止されるので注意が必要です。

先に説明したような拘束時間などを無視されている場合には、ペナルティの対象となるので気を付けましょう。

クラウドシステムの導入を検討する

運送業では、ドライバーの勤務時間が変則的なため、人の手だけで正確な勤怠管理をすることは難しいでしょう。

そのため、運送業に特化したクラウドシステムを導入するのも一つの手です。クラウドシステムを導入することで、勤怠時間の計算と記録が自動化され、新しい規定に対応した就業管理が行えます。

また、改善基準告示と同じ、2024年4月施行の「働き方改革関連法」により、年間の時間外労働の上限が960時間と定められます。こちらは、改善基準告示と違い、法律なので違反すると罰則が課されるため、厳重な就業管理が必須です。

改善基準告示と働き方関連法の双方に則った就業管理のためにも、効率性と正確性に富んだクラウドシステムの導入を検討してみましょう。


改善基準告示のまとめ

改善基準告示は、運送業ドライバーの長時間労働を改善するために改正されました。トラックだけでなく、バスやタクシー、ハイヤーの運転手も改正の対象です。

2024年4月から施行されるので、各事業所は、特にドライバーの拘束時間・休息時間・連続運転時間、休日労働についての見直しと改善が急務でしょう。

また、今回照会した改正内容はあくまで概要であり、一部なので、リーガルチェックをして進める際は、社労士や弁護士に相談すると良いでしょう。

同じく2024年4月から、働き方改革関連法も施行されるので、双方の違反がないように、規定に従った正確な勤怠管理が必要です。

運送業専門のクラウドシステムは、管理の負担とヒューマンエラーを軽減します。改善基準告示に際して、勤怠管理の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。


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監修者プロフィール

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原田 大士

横浜パートナー法律事務所 弁護士

東京都出身。弁護士登録後、弁護士法人横浜パートナー法律事務所に入所し、現職(共に神奈川県弁護士会所属)。
中小企業や個人事業主のリーガルサービスを提供するとともに、損害賠償や労働訴訟等の民事事件も取り扱う。
監修書籍 『図解わかる会社法』新星出版社2023年(所属事務所弁護士共同監修)

Webサイト:https://bengoshiharadadaishi.com/

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