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年次有給休暇とは? 付与日数やタイミング、取得義務化のポイントを解説

年次有給休暇とは? 付与日数やタイミング、取得義務化のポイントを解説

年次有給休暇は、従業員のリフレッシュと心身の疲労回復を目的とした有給の休暇制度です。労働基準法で規定されており、一定の条件を満たす労働者に対して、企業は法定の日数を付与しなければなりません。

本記事では、年次有給休暇の概要や付与日数、取得のタイミング、義務化のポイントなどを詳しく解説します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

有給休暇とは

年次有給休暇は、労働者の権利として法律で定められた休暇制度です。従業員が心身ともにリフレッシュし、仕事に対するモチベーションを維持できるよう、一定の条件のもとで付与されます。

制度の概要

年次有給休暇は、労働基準法で規定された制度です。一定の条件を満たす労働者に対して、企業が有給の休暇を与えなければなりません。労働者は1年間ごとに、法律で定められた日数の有給休暇を取得する権利を有します。

また、そのうち年に5日は必ず有給を取得させなければなりません。それは罰則つきの規定であり、違反した企業には1人当たり最大で30万円の罰金が課されます。

この制度は、すべての企業が対象で、要件を満たす労働者に対して必ず付与する義務があるのです。

有給休暇の目的

年次有給休暇の主な目的は、労働者が心身の疲労を回復し、リフレッシュするための時間を確保することです。日々の業務で蓄積されたストレスを解消し、プライベートな時間を楽しむことで、仕事に対するモチベーションを維持することができます。

また、有給休暇を取得することで、家族との時間を大切にしたり、自己啓発に励んだりと、労働者個人の生活の質を向上させることにもつながります。企業にとっても、従業員がリフレッシュして働くことで、生産性の向上が期待できるというメリットもあるでしょう。


有給休暇の付与日数

年次有給休暇の付与日数は、労働者の雇用形態や勤続年数、出勤率によって異なります。

ここでは、フルタイムの労働者とパート・アルバイトの場合について解説します。

フルタイムで働く労働者の場合

正社員や契約社員など、フルタイムで働く労働者への有給休暇の付与日数は、出勤率のみで計算します。出勤率は、期間内の出勤日数を所定労働日数で割った値です。

出勤率が8割以上の場合、勤続年数に応じて、決められた日数の有給休暇が付与されます。

具体的な付与日数は以下の通りです。勤続年数が長いほど、付与される日数も増えていきます。

継続勤務年数(年)

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数(日)

10

11

12

14

16

18

20

4月1日に入社した正社員の場合、半年後の10月1日に5日間の有給が付与されます。そして、そこから毎年10月1日が有給付与日になるということです。

パート・アルバイトの場合

週の所定労働日数が4日以下で、かつ週の所定労働時間が30時間未満のパートタイムやアルバイトなどの労働者についても、出勤率に基づいて有給休暇が付与されます。

所定労働日数は、該当の労働者が出勤すべき日数のことで、雇用契約の際に企業と従業員の間で決定します。出勤率が8割以上の場合は有給休暇の付与が可能です。

厚生労働省が定める以下の表に基づいて、付与すべき有給休暇日数が計算されます。例えば、週の所定労働日数が3日で、出勤率が8割以上の場合、勤続半年後に5日の有給休暇が与えられます。

 

週所用労働日数

1年間の所定労働日数※

継続勤務年数(年)

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数(日)

4日

169〜216日

7

 

8

9

10

12

13

15

3日

121〜168日

5

 

6

6

8

9

10

11

2日

73〜120日

3

 

4

4

5

6

6

7

1日

48〜72日

1

2

 

2

2

3

3

3

※週以外の期間によって労働日数が定められている場合はこちら


有給休暇が付与されるタイミング

年次有給休暇は、入社してから一定期間が経過した後に付与されます。ここでは、初回の付与タイミングや企業ごとの運用方法について解説します。

初回付与は入社6カ月後

年次有給休暇は、入社日から6カ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して最初の付与がなされます。

その後は、初回の付与日を基準として、1年ごとに新たな有給休暇が追加で付与されていきます。入社日が同じ新卒社員などは全員同じ付与日です。しかし中途社員の場合は、その人の入社日に応じて付与日が異なるので注意しましょう。

企業によっては前倒しで付与されることもある

法律では、入社から6カ月経過後に初回の有給休暇を付与することが決められていますが、それよりも早いタイミングで有給休暇を付与することも可能です。

例えば、入社日から初回の有給休暇を付与する企業もあります。この場合、労働者は6カ月の継続勤務を待たずに、有給休暇を取得することができます。ただし、付与日数については、法定の計算方法に基づいた算出が必要です。

入社してから6カ月以内に、休みが必要になる社員もいるかもしれません。そうした場合に、前倒しで取得が可能であることを覚えておきましょう。

付与日を全員で統一することも可能

従業員の入社日が異なると、有給休暇の付与日もバラバラになってしまい、管理が複雑になるという問題があるかもしれません。そこで、有給休暇の付与日を全従業員で統一する方法を採用している企業もあります。「有給休暇の斉一的取扱い」と呼ばれる仕組みです。

例えば、全従業員の有給休暇付与日を4月1日に統一するといった方法です。ただしこの場合、法律より下回る条件になるなど、労働者に不利益が生じないよう注意する必要があります。

固定の人事担当者がいない企業など、管理が難しい場合にはこの方法を検討しても良いかもしれません。


有給休暇の繰り越し・時効

年次有給休暇は、付与された年度内に全て消化しきれない場合、一定の条件のもとで翌年度に繰り越すことができます。ここでは、有給休暇の繰り越しと時効について解説します。

有給休暇の繰り越し

労働者が、付与された年次有給休暇を使い切れなかった場合、残りの日数を翌年度に繰り越すことが可能です。ただし、繰り越せる日数には上限があります。

有給休暇が年10日以上付与される労働者は、1年以内に5日間の有給休暇を取得しなければなりません。付与された日数から5日を引いたものが、翌年に繰越できる上限日数ということになります。

例えば、年次有給休暇の最大付与日数は、勤続年数が6年6カ月以上の場合で20日です。そのうち、5日間は取得義務が発生するため、繰り越せる有給休暇の日数は、最大で15日となります。

有給休暇時効は2年

年次有給休暇の権利は、付与日から2年間で時効となります。つまり、有給休暇を取得せずに2年が経過すると、その権利は消滅してしまうということです。

例えば、20日の有給休暇が付与され、そのうち6日しか消化しなかった場合、残りの14日は翌年度に繰り越されます。その14日分について、さらに1年が経過すると、時効により権利が消滅するという仕組みです。

なお、就業規則で有給休暇の繰り越しを禁止していたとしても、法律上の時効期間である2年が経過するまでは、労働者の権利は失われません。時効で消滅する有給がないかは確認しておくと良いでしょう。


有給休暇取得は義務化された

労働基準法が改正された2019年4月より、労働者の年次有給休暇取得が義務化されました。

ここからは、その概要と、違反した場合の罰則について解説します。

付与日から1年以内に5日有給休暇取得が義務化

改正労働基準法により、有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、企業は付与日から1年以内に、5日間の有給休暇を取得させる義務が課されました。

例えば、4月1日に10日の有給休暇が付与された場合、翌年3月31日までに最低5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

有給休暇の取得にあたっては、労働者の希望を尊重した時季指定や計画的付与など、適切な方法で取得を促しましょう。労働者が期限までに5日間の取得をしていない時には、企業から時季を指定して取得させる必要があります。

所定の年次有給休暇を与えない場合は罰則となる

企業が、労働者から請求があったにもかかわらず、年次有給休暇を与えない場合、労働基準法違反として罰則の対象となります。

違反した企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、このような違反行為が明るみに出れば、企業イメージの悪化にもつながりかねません。労働者から有給休暇の申請があった場合には、必ず承認するようにしましょう。

具体的な違反行為については、次の見出しで解説します。

有給休暇取得のNG事例

前述の通り、有給休暇は本人の希望に沿って取得させなければなりません。しかし、年5日の取得義務を守るために、違法な対応をとっている企業もあります。

具体的には、下記のようなケースが違反の対象です。

  • 公休日を有給休暇扱いにして消化させる
  • 年末休暇や夏季休暇を強制的に有給休暇に当てさせる
  • 従業員が希望した有給取得日を拒否する
  • 有給休暇日に仕事を持ち帰らせる
  • 有給取得した社員の賞与を下げる
  • 有給休暇の理由を細かく聞いて、正当な理由でないと希望を拒否する

産休・育休や業務での傷病も出勤扱いになる

有給休暇付与の条件として、出勤率が8割以上という規定があります。その出勤率の算出において、実際に労働していない日も、下記のようなケースは出勤日に含まれるため注意しましょう。

  • 育児休業期間
  • 介護休業期間
  • 業務での負傷や疾病による療養のための休業
  • 産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業した期間

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

有給付与の計算や手続きをする担当者は、これらの長期休暇をとっている従業員の分も忘れずに対応しましょう。

社員が有給休暇を取りやすくするためには?

年次有給休暇の取得が義務化されたとはいえ、職場の雰囲気や業務の状況によっては、従業員が有給休暇を取得しにくい環境があるのも事実です。

そこで、企業には、従業員が有給休暇を取得しやすい職場環境を整備することが求められます。以下のような取り組みが考えられます。

有給を取得しやすい職場の雰囲気づくり

上司や管理職が積極的に有給を取得して、取りやすい雰囲気づくりに取り組みましょう。管理職自らが率先して有給休暇を取得することで、部下も遠慮せずに休暇を取得しやすくなります。

逆に、休むことに対して難色を示すような言動をとってしまうと、部下は自由に有給を取得しにくくなってしまいます。普段のコミュニケーションから、有給取得に肯定的な態度を示しましょう。

業務内容を可視化・改善

業務の内容や進捗状況を可視化し、特定の個人に業務が偏らないようにしましょう。

いつ、誰かが休んでも、他のメンバーが代わりに業務を引き継げるような体制を整えることが大切です。属人化してしまっている業務がないかを洗い出し、マニュアル化などによって解消に努めましょう。

これは有給休暇の推進だけでなく、業務の生産性向上の観点からも効果的です。

有給推奨日の設定

企業が有給休暇の取得を推奨する日を設定し、従業員に周知することで、計画的な休暇取得を促すことができます。夏季休暇や年末年始休暇のタイミングで取得を促すことで、従業員も遠慮せずに休むことができるでしょう。

ただし、基本的に有給休暇は従業員の希望を尊重して取得させる必要があります。無理に取得させるのではなく、必ず従業員の意思を尊重しましょう。

勤怠管理システムの導入

勤怠管理システムを導入することで、付与・取得忘れなどを防止することができるでしょう。システム上で有給の消化が少ない従業員を把握し、アラートすることができるので、取得義務違反も避けられます。

従業員からすれば、自分のパソコンやスマートフォンから有給申請を行うことができることも魅力です。口頭で上司に有給取得の希望を伝えにくいといった悩みも解消されるでしょう。

自社の勤怠管理が煩雑になってしまっている時には、システムの導入も検討してみてください。


まとめ

年次有給休暇は、労働者の心身の健康を守り、仕事と生活の調和を図るために重要な制度です。企業は、法律で定められた日数の有給休暇を適切に付与し、労働者が取得しやすい環境を整備する必要があります。

また、2019年4月からは、年5日の有給休暇の取得が義務化されました。企業は、義務を果たすことはもちろん、従業員のワークライフバランスを支援する姿勢を示すことが求められています。有給休暇を取得しやすい職場環境を整えることで、従業員の満足度や生産性の向上につなげていきましょう。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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