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労務管理における労働基準法違反とは? 具体例と対策

労務管理における労働基準法違反とは? 具体例と対策

労務管理において、労働基準法違反は企業にとって大きなリスクとなります。適切な労務管理を行わないと、罰則や社会的信用の失墜などの深刻な問題につながる可能性があるのです。

本記事では、若手経営者の方々に向けて、労働基準法違反の具体例や対策について詳しく解説します。法令遵守の重要性を理解し、適切な労務管理を実践するための知識を身につけましょう。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

労務管理における主な労働基準法違反の具体例

労働基準法違反には様々な形態があります。これらの違反を防ぐためには、法律の正しい理解と適切な労務管理が不可欠です。

ここでは、以下の注意すべき労働基準法違反の具体例を紹介します。

  • 労働時間・残業に関する違反
  • 賃金支払いに関する違反
  • 休憩・休日・有給休暇に関する違反

労働時間・時間外労働に関する違反

労働時間・時間外労働に関する違反は、労働基準法違反の中でも最も頻繁に発生する問題の一つです。従業員に対して、1日8時間、週40時間を超える労働をさせる場合、労働基準法内の36協定を締結し、届出が必要となります。そのため、36協定の未締結や限度時間を超過した時間外労働は、重大な労働基準法違反となります。

このリスクを避けるためには、36協定の締結と運用、そして労働時間の正確な把握と管理が必要です。これらを怠ると、罰則の対象となる可能性があります。例えば、36協定を締結せずに従業員に残業をさせた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。

また、36協定を締結していても、無制限に働かせることはできません。法定労働時間を超えて働ける時間は、原則月45時間、年360時間が上限です。上限時間を超えて時間外労働をさせることは違法であるため、労働時間管理を徹底し、従業員の健康と労働意欲を守ることが重要です。

ただし、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合として、特別条項付き36協定を締結している場合は、月100時間未満、年間720時間以内まで時間外労働をさせることができます。

賃金支払いに関する違反

賃金支払いに関する違反も、深刻な労働基準法違反の一つです。従業員に対して残業代の未払いや最低賃金未満の支払いは、従業員の権利を侵害する重大な問題です。

例えば、従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働(22:00~翌朝5:00まで)をさせた場合、所定の割増賃金を支払わなければなりません。もし、これらを支払わなかった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、最低賃金法違反の場合(事業場において支払われる賃金の水準(時間給)がその地域で定められている最低賃金の水準を下回る場合)、50万円以下の罰金が科されることがあります。賃金は従業員の生活の基盤となるものですので、適切な管理と支払いを徹底しましょう。

休憩・休日・有給休暇に関する違反

休憩時間・休日・有給休暇に関する不適切な扱いは、労働基準法違反に該当します。

例えば、従業員に対しては、1日6時間を超える労働に対して45分、8時間を超える労働に対して1時間の休憩を与えなければなりません。
また、休日は原則として少なくとも週1日は与える必要(4週間に4日の休日を与える規定をしている場合を除く。)があります。もしこれらに違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるでしょう。

さらに、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対しては、年5日の有給休暇を取得させる義務があります。これを怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があるので注意が必要です。


労働基準法違反に対する罰則と処分

労働基準法違反について紹介しましたが、ここからは、労働基準法違反が発覚した場合、企業にはどのような罰則や処分が科されるのかについて解説します。

労働基準法違反によって、罰金や懲役刑といった法的な処罰だけでなく、社会的信用の失墜など、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

具体的な罰則と、違反が及ぼす影響について確認していきましょう。

罰金・懲役刑と是正勧告

労働基準法違反は、罰金刑や懲役刑などの厳しい処罰の対象となります。違反の程度や対応によっては是正勧告で済む場合もあります。この勧告に法的拘束力はありませんが、勧告を無視した場合や、改善が見られない場合は、より厳しい処分につながる可能性があるでしょう。そのため、是非勧告を受けた場合は、速やかに改善策を講じることが重要です。

また、違反行為が悪質な場合は刑事罰の対象となり、経営者個人の責任も問われるでしょう。最も重いものとして、強制労働の禁止(5条違反)に違反した場合は、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、労働基準法違反は行為者である事業主が罰せられるだけでなく、会社そのものに対しても罰金刑が科される事(両罰規定)が規定されていますので、会社として法令順守を意識していく必要があるといえます。

社会的信用の失墜と事業への影響

労働基準監督署の調査により、労働基準法違反が確認されると、労働基準監督署ホームページなどで企業名が公表されます。それによって、会社の信用と事業に深刻な打撃を与えるでしょう。

例えば、取引先からの信頼喪失、求職者の減少、既存従業員の離職など、長期的な事業継続に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、ブラック企業というレッテルを貼られてしまうと、その評判を払拭するのに多大な時間と労力を要することになります。

また、上場企業の場合、株式市場への影響も無視できません。労働基準法違反が発覚すると株価が下落し、企業価値の毀損につながる可能性があります。非上場企業であっても、融資や取引条件に影響が出てくるでしょう。

現在のところ、企業名公表は、影響力の大きい一定規模以上の会社が対象です。また、悪質な違法行為の場合は、規模に関係なく公表されることがあります。ただ公表されなくとも、上記のような社会的な制裁を受けてしまうため、違反行為に該当するものがないか今一度確認することが大切です。


労働基準法違反を防ぐための労務管理対策

労働基準法違反を防ぐためには、適切な労務管理が不可欠です。
ここでは、以下のような具体的な対策について詳しく解説します。

  • 適切な労働時間管理と賃金計算の実施
  • 就業規則の整備と36協定の締結
  • 労務管理のアウトソーシング
  • 労務管理ツールの導入

適切な労働時間管理と賃金計算の実施

適切な勤怠管理システムによる労働時間管理は、労働基準法違反防止につながります。

例えば、ICTを活用した勤怠管理システムの導入や、定期的な労務管理のチェック体制構築が効果的です。タイムカードやICカードによる打刻システム、スマートフォンアプリを活用した勤怠管理など、従業員の実労働時間を正確に記録する仕組みを整えましょう。

また、残業時間の自動集計や、割増賃金の自動計算機能を持つシステムを導入することも有効的です。システム導入によって人為的ミスを減らし、適正な賃金を算出しやすいです。

就業規則の整備と36協定の締結

法令準拠の就業規則と36協定の締結は、労働基準法違反リスクを大幅に低減します。就業規則は労働条件の基本を定めるものです。36協定は時間外労働や休日労働の取り決めを示す文書で、毎年締結し労働基準監督署への届け出が必要となります。

これらのほかに、定期的な見直しと従業員への周知徹底、労使間のコミュニケーションも重要です。もし法改正があった場合は、速やかに就業規則に反映させましょう。

また、就業規則や36協定の内容は、従業員全員が理解できるよう、分かりやすい言葉で説明することが大切です。社内イントラネットでの公開や、定期的な説明会の開催など、周知の機会を設けましょう。労使間で十分なコミュニケーションを取っておくと、誤解によるトラブルを未然に防ぎやすくなります。

労務管理のアウトソーシング

労務管理のアウトソーシングは、専門知識を持つ外部の力を借りて法令遵守を徹底する効果的な方法です。特に中小企業など、専門の人事部門を持たない企業にとっては、大きな助けとなります。

人事担当者の負担軽減と同時に、最新の法改正にも迅速に対応できるメリットがあります。社会保険労務士や専門の労務管理会社に業務を委託することで、専門的な知識や経験を活用できるでしょう。

例えば、給与計算や社会保険手続き、就業規則の作成・更新、労働時間管理のチェックなど、幅広い業務をアウトソーシングすることが可能です。また、労働問題が発生した際の相談窓口としても活用できるため、リスク管理の面でも有効です。

労務管理システムの導入

労務管理システムの導入は、人為的ミスを減らし、効率的で正確な労務管理を実現します。
クラウド型のツールを使用することで、リアルタイムでの労働時間管理や給与計算の自動化が可能になります。例えば、勤怠管理、給与計算、年次有給休暇管理などの機能を一元化したシステムを導入することで、一貫性のあるデータとなり、ミスを防ぐことができるでしょう。

また、労働時間の上限アラート機能や、36協定の上限時間との照合機能など、法令遵守を支援する機能を持つツールも多く存在します。これらを活用することで、労働基準法違反のリスクを早期に発見し、対策を講じることができるでしょう。


適切な労務管理で労働基準法違反を防ごう

労働基準法違反を防ぐためには、継続的な労務管理の改善と法令遵守への取り組みが不可欠です。本記事で紹介した様々な対策を実践することで、違反リスクを大幅に低減することができます。

例えば、適切な労働時間管理と賃金計算、就業規則の整備と36協定の締結、労務管理のアウトソーシングや労務管理システムの導入など、それぞれの企業に合った方法を選択し、実践しましょう。

労働基準法を遵守することは、従業員の権利を守り、働きやすい環境を整えることです。その結果、企業の持続的な成長と発展につながります。適切な労務管理を通じて、従業員と企業がともに成長できる職場づくりを目指しましょう。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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