Google スプレッドシートで勤怠管理表を作る方法! 効率的な労務管理の実現
企業は、労働基準法に基づく労働時間の適正な把握と管理を行う法的義務があります。勤怠管理は企業にとって重要な業務の一つですが、手作業での管理は複雑で時間がかかります。
そこで注目したいのが、Googleスプレッドシートを使った勤怠管理表の作成です。Googleスプレッドシートは、低コストで導入でき、自社の要望に合わせて柔軟にカスタマイズができます。
本記事では、Googleスプレッドシートを活用した勤怠管理表の作成方法や、押さえるべき法令、セキュリティ対策などについて詳しく解説します。効率的な労務管理の実現に向けて、ぜひ参考にしてください。
勤怠管理については、以下の記事で詳しく紹介しています。
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勤怠管理とは? 企業の健全な運営と従業員の働き方を支える重要基盤スプレッドシートで勤怠管理表を作成する手順
Googleスプレッドシートを使って勤怠管理表を作成する手順を詳しく解説します。
以下の4つの手順を追いながら、効率的な勤怠管理表を作成するためのポイントを確認していきましょう。
- 基本的なレイアウトを設計する
- 必要な項目を設定する
- 計算式を組み込む
- 条件付き書式を活用する
基本的なレイアウトを設計する
効率的な勤怠管理表は、見やすく使いやすい表構造を基本設計として作成します。
日付、氏名、出勤時間、退勤時間、休憩時間などの基本情報を整理し、入力しやすい配置を心がけましょう。
レイアウトを設計する際は、情報の優先順位を考慮し、日付や出勤・退勤時間などの重要な項目を左側や上部に配置します。
また、入力者の視点に立ち、データ入力の流れを意識した配置にすることで、日々の勤怠管理がスムーズになります。
さらに、集計や分析に必要な項目を適切に配置することで、後の作業効率を高めることが期待できるでしょう。
必要な項目を設定する
勤怠管理表には、法令遵守に必要な日付、出退勤時間、休憩時間などの項目を必ず含めなければなりません。
また、有給休暇取得状況や時間外労働の累計など、労務管理に必要な項目も漏れなく設定しましょう。
具体的には、以下のような項目を設定します。
大項目 |
項目 |
基本情報 |
従業員名、所属部署、雇用形態 |
勤務時間関連 |
出勤時間、退勤時間、休憩時間、実労働時間 |
勤務状況 |
出勤日数、欠勤日数、遅刻回数、早退回数 |
休暇関連 |
有給休暇取得日数、有給休暇残日数 |
時間外労働 |
残業時間、深夜労働時間、休日労働時間 |
これらの項目を適切に設定することで、労働基準法に準拠した勤怠管理が可能になるのです。
計算式を組み込む
関数を用いて、勤務時間や残業時間を自動計算する仕組みを実装することで、作業効率が大幅に向上します。
複雑な計算も関数を組み合わせることで自動化し、人為的ミスを防ぎながら効率的な管理を目指しましょう。
このように関数を活用することで、手作業による計算ミスを防ぎ、正確な勤怠管理が可能です。
条件付き書式を活用する
条件付き書式を使用し、休日や残業を色分けしておくと、勤怠状況を直感的に把握することができます。
長時間労働や休日出勤が一目で分かるようにし、労務管理上の問題点を迅速に発見できる仕組みを作りましょう。
例えば、休日の背景色を変更したり、残業時間のセルを色分けしたり、有給休暇取得日の文字色を変更したりすることで、勤怠状況が把握しやすくなります。
このような視覚的な工夫を加えることで、適切な労務管理につながり、従業員の健康管理や働き方改革の推進にも役立ちます。
スプレッドシートの勤怠管理で押さえるべき法令
スプレッドシートで勤怠管理を行う際には、労働基準法をはじめとする各種法令に準拠することが不可欠です。
ここでは、特に注意すべき法令とその対応方法について、以下の3つの観点から解説します。
- 残業上限規制への対応
- 有給休暇取得の管理
- 36協定に基づいた労働時間の管理
残業上限規制への対応
36協定により、残業時間の上限は月45時間、年360時間と決まっています。そのため、残業時間の上限に届きそうか、自動でチェックする機能の実装がおすすめです。
これにより、法定上限を超過しそうな従業員を事前に把握し、労働時間の是正や業務の平準化を図ることができます。
対策として、月間残業時間の累計を自動計算する列を設け、45時間を超えた場合に警告を表示する仕組みを作るとよいでしょう。
また、年間の残業時間を集計し、360時間を超えないよう管理しておくと安心です。
例えば、以下のような数式を活用することで、月間残業時間のチェックが容易になります。
=IF(SUM(H7,I7,K7)>45,"要注意","")
有給休暇取得の管理
労働基準法により、企業には年10日以上の有給休暇が付与される従業員に、付与日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得させる義務が課せられています。
この法令を守る方法として、有給取得状況を自動集計して、5日未満の場合に警告を表示する機能の設定が挙げられます。
まず、有給休暇取得日数をカウントする列を設け、年間の取得日数を集計できるようにしましょう。さらに、警告を表示する仕組みを作ることで、有給休暇の未取得を防ぐことができます。
36協定に基づいた労働時間の管理
36協定の特別条項の上限を考慮し、労働時間が協定範囲内かを自動チェックする機能を実装することで36協定に基づいた勤怠管理が容易になります。
協定違反のリスクを低減し、労働基準監督署の調査にも迅速に対応できる体制を整えましょう。
36協定に基づいた勤怠管理をするためには、36協定で定めた上限時間を変数として設定し、月間および年間の残業時間を自動集計します。
協定上限を超えた場合に警告を表示する仕組みを作ることで、36協定の遵守状況を管理することができるのです。
スプレッドシートの勤怠管理での給与計算
スプレッドシートを活用した勤怠管理では、関数を使うことで給与計算の自動化が可能です。
ここでは、スプレッドシートを使った、以下の給与計算の方法について詳しく解説します。
- 基本給の計算方法
- 残業代や各種手当の自動計算
- 給与明細の自動生成
基本給の計算方法
勤務日数や勤務時間に基づいて、基本給を自動計算する仕組みを構築しておきましょう。
正社員やパート、アルバイトなど雇用形態ごとに異なる給与計算ルールにも対応できるよう設計しておくと便利です。
まず、雇用形態ごとの時給や日給、月給を設定する列を作り、勤務時間または勤務日数を集計します。
次に、IF関数を使用して雇用形態に応じた計算式を適用します。こうすることで、複数の雇用形態が混在する職場でも、効率的に給与を計算することができるのです。
例えば、以下のような数式を活用することで、雇用形態に応じた基本給計算が可能になります。(B列が雇用形態、K2が月給、L2が時給、M2が日給、G列が日々の勤務時間)
=IF(B2="正社員",K2,IF(B2="パート",L2*SUM(G2:G32),IF(B2="アルバイト",M2*SUM(G2:G32),0)))
残業代や各種手当の自動計算
残業や深夜勤務の割増率を考慮し、各種手当を自動計算する機能を実装しましょう。
法定内残業や法定外残業、深夜勤務などの複雑な計算を正確に行うことで、給与計算の効率化と正確性向上を目指すことができます。
まず、残業時間、深夜勤務時間、休日労働時間を集計する列を設け、各種割増率を設定しましょう。次に、SUMPRODUCT関数を使用して、時間と割増率を掛け合わせて計算することで、複雑な手当計算も自動化することができます。
例えば、以下のような数式を活用することで、残業手当の計算が可能です。(H列が日々の残業時間、N列が日々の割増率)
=SUMPRODUCT(H2:H32,N2:N32)
給与明細の自動生成
計算結果を基に、テンプレートを用いて効率的に給与明細を自動生成する仕組みを作ります。個人情報保護に配慮しつつ、従業員が自身の給与明細を容易に確認できるシステムを構築しましょう。
給与明細のテンプレートシートを作成し、VLOOKUP関数やINDEX-MATCH関数を使用して、計算結果をテンプレートに反映させます。
さらに、スクリプトエディタを活用し、ボタン一つで全従業員分の給与明細を生成する機能を実装することで、給与明細作成の効率化を図ることができます。
このような自動生成システムを構築することで、給与計算から明細作成までの一連の作業を大幅に効率化することが可能です。また、人為的ミスの削減や、従業員への迅速な情報提供にもつながるでしょう。
スプレッドシートでの勤怠管理のセキュリティ
勤怠管理表には個人情報や給与に関わる重要なデータが含まれるため、セキュリティ対策は非常に重要です。
Googleスプレッドシートを使用する際も、適切なセキュリティ設定を行い、情報漏洩のリスクを最小限に抑えましょう。
ここでは、スプレッドシートでの勤怠管理におけるセキュリティ対策について詳しく解説します。
アクセス権限を設定する
役職や部署に応じて適切な閲覧・編集権限を設定し、情報セキュリティを確保することでセキュリティリスクを減らすことができます。
個人情報保護法に準拠し、必要最小限の範囲でのみデータにアクセスできるよう設定しましょう。
Googleスプレッドシートでは、ファイル単位やシート単位で詳細な権限設定が可能です。
例えば、人事部門には全てのデータへのアクセス権を与え、各部門の管理者には自部門のデータのみ閲覧・編集できるよう設定できます。
一般従業員には自身のデータのみ閲覧可能とするなど、役割に応じた適切なアクセス制御を行いましょう。
また、外部からのアクセスを制限するため、組織のGoogleアカウントのみでログインできるよう設定することも有効です。これにより、セキュリティレベルを高めつつ、必要な情報は共有することができます。
データ保護とバックアップを実施する
定期的なバックアップを行い、データ損失のリスクを最小限に抑える体制を整えておきましょう。クラウドストレージの活用やローカルバックアップの併用など、多層的な保護策を講じておくと安心です。
Googleスプレッドシートは自動的にクラウド上に保存されますが、重要なデータは定期的にPCのストレージにダウンロードしておくことをおすすめします。
また、バージョン管理機能を活用し、誤って削除や変更をした場合でも、以前の状態に戻せるようにしておきましょう。
さらに、スプレッドシートの共有設定を「リンクを知っている全員」ではなく、特定のユーザーのみに制限することで、意図しない情報漏洩を防ぐことができます。
セキュリティ意識を高め、定期的なセキュリティチェックを行うことも効果的です。
複数管理者での共同編集を活用する
Googleスプレッドシートの共同編集機能を活用することで、複数の管理者が同時に勤怠データを更新できます。これにより、情報の一元管理が可能になり、データの整合性も保たれます。
コメント機能を使用して疑問点や確認事項を直接シート上でやり取りすることで、コミュニケーションの効率化も期待できるでしょう。
さらに、変更履歴機能を活用することで、誰がいつどのような変更を行ったかを追跡できます。これにより、不正な変更や誤操作を迅速に発見し、対処することができます。
また、必要に応じて承認フローを設け、重要な変更に対するチェック体制を整えておきましょう。
スプレッドシートを使用した勤怠管理の注意点
Googleスプレッドシートを使用した勤怠管理には多くのメリットがあります。
しかし、注意点もいくつか存在するため、勤怠管理をする際は気を付けなければなりません。ここでは、以下3つの注意点とその対策について解説します。
- データ改ざんのリスクがある
- 大企業には向かない場合がある
- 勤怠管理システムより機能が劣る
データ改ざんのリスクがある
Googleスプレッドシートの勤怠管理表は従業員自身で出勤・退勤の時間を手入力するため、従業員であれば誰でも編集が可能です。
そのため、勤務時間を後から書き換えることができてしまい、勤怠データの改ざんのリスクがあります。この対策として、セルの保護と変更履歴の活用により、不正なデータ改ざんを防止する仕組みを導入することが効果的です。
重要なデータや計算式が入力されているセルは編集できないよう保護し、入力ミスや意図的な改ざんを防ぎましょう。また、変更履歴機能を活用することで、誰がいつどのような変更を行ったかを追跡できます。
さらに、定期的な監査やダブルチェック、承認プロセスの設置など、改ざんや入力ミスを早期に発見できるような仕組みを取り入れることがおすすめです。
大企業には向かない場合がある
Googleスプレッドシートは非常に便利なツールですが、大量の従業員データを扱う場合、処理速度が低下する可能性があります。
このような場合、データを月単位や部門単位で分割し、複数のスプレッドシートに分けて管理することで、パフォーマンスの向上を図るとよいでしょう。
また、大規模な組織では、より高度な機能や柔軟なカスタマイズが必要となる場合があります。そのような場合は、専門の勤怠管理システムの導入を検討するのも一つの選択肢です。
組織の規模や業務の複雑さに応じて、最適な勤怠方法を選択しましょう。
勤怠管理システムより機能が劣る
スプレッドシートは柔軟性が高く、カスタマイズも容易です。しかし、専門の勤怠管理システムに比べると機能面で劣る部分があります。
例えば、高度な勤務シフト管理や複雑な給与計算、勤怠データと人事システムとの連携などは、専門システムのほうが優れている場合が多いです。
自社の現状と将来的な成長を見据え、スプレッドシートで十分か、専門システムが必要かを慎重に検討しましょう。コストと機能のバランスを考慮し、段階的にシステムを拡充していく方法も有効です。
また、法改正や働き方改革への対応など、長期的な視点でシステムの選択を行うことが大切です。
勤怠管理表の作成ならビズオーシャンの書式テンプレートで
勤怠管理表の作成に悩んでいる方には、ビズオーシャンが提供する書式テンプレートがおすすめです。すぐに使える汎用性の高い勤怠管理表テンプレートを利用することで、導入の障壁を下げることができます。
ビズオーシャンのテンプレートは、労働基準法に準拠した項目が網羅されています。初めて勤怠管理表を作成する方も安心して利用してください。
基本的なレイアウトや計算式が既に組み込まれているため、自社の状況に合わせて微調整するだけで、すぐに使用できます。
これらのテンプレートは、エクセルやGoogleスプレッドシートなど、複数のフォーマットに対応しているため、使い慣れたツールで勤怠管理を始めることが可能です。
また、定期的に更新されるため、最新の労働法制に対応した勤怠管理ができます。
スプレッドシートで効率的な勤怠管理を実現しよう
Googleスプレッドシートを活用した勤怠管理は、低コストで柔軟な運用を目指すことができる方法です。
基本的なレイアウト設計から、必要項目の設定、計算式の組み込み、条件付き書式の活用まで、適切に設定することで、法令に準拠した正確な勤怠管理が実現できます。
また、アクセス権限の設定やバックアップ、変更履歴機能の活用などによりセキュリティにも配慮した勤怠管理が可能です。
ただし、複雑な勤怠管理やシステム連携などは難しいため、組織の規模や業務の複雑さに応じて、専門システムへの移行も検討しましょう。