健康管理システムとは? 機能やメリット・選び方を解説
健康管理システムとは、健康管理に関する作業をクラウド上で一元管理し、法定の健康管理業務を効率化するITシステムです。企業にとって従業員の健康を守るための健康診断やストレスチェックなどの取り組みは、法律で義務付けられています。
しかし健康管理における提出書類やデータ管理は煩雑な作業が多く、人事部に加え受診する従業員も億劫に感じることが多いでしょう。
そこで本記事では、そのような健康管理を効率化してくれるシステムの主な機能や選び方、導入のメリットについて解説します。
また、導入における注意点についても紹介しているので、さまざまな側面から理解を深め検討していきましょう。
健康管理システムとは
健康管理システムとは、企業が従業員の健康診断データやストレスチェック結果をクラウド上で一元管理し、法定の健康管理業務を効率化するITシステムのことです。
ストレスチェック義務化や健康経営への関心の高まりを背景に、健康管理システムを導入する企業が増加しています。
紙やExcelで管理していた健康診断結果やストレスチェックデータを、システム上で一括管理できます。健康管理としての役割を持ちつつ、人事担当者にかかる業務負担を大幅に軽減してくれるシステムです。
健康管理システムの主な機能
健康管理システムには、企業の健康管理におけるさまざまな機能が備わっています。
ここでは、以下の健康管理システムの主な機能について紹介します。
- 健康診断管理機能
- ストレスチェック機能
- データ分析・可視化機能
- 産業医連携機能
それでは、それぞれの機能について詳しくみていきましょう。
健康診断管理機能
健康診断管理機能とは、健康診断の予約受付から結果管理までの一連の作業を自動化してくれる機能のことです。この機能によって、人事部門の工数を大幅に削減できます。
例えば、従業員への受診案内や日程調整、未受診者へのリマインド送信、結果データの取り込みまでの作業を自動的にサポートしてくれます。
再検査が必要な従業員への通知や受診勧奨も自動で行えるため、健康診断の高い受診率をキープすることが可能です。
ストレスチェック機能
ストレスチェック機能とは、従業員50人以上の企業に義務付けられているストレスチェックを実施から結果管理まで完結できる機能のことです。
具体的には、厚生労働省が定める57項目の質問に対して、従業員がWebから回答することで、ストレスチェックの受検が完了します。
その際に高ストレス者の判定や産業医面談の要否判定も自動で行われるため、法令遵守の実務負担を大幅に軽減できるのです。
データ分析・可視化機能
データ分析・可視化機能とはシステムが従業員の健康診断データを分析して、再検査が必要な者や高ストレス者に対して早期対応を促してくれる機能です。
この機能によって、部署別や年齢別などの特定グループでの健康リスクにおける分析や、経年での健康状態の変化を可視化することができます。
この結果からデータに基づいた効果的な健康施策の立案や、過重労働による健康リスクの予防が可能です。
産業医連携機能
産業医連携機能とは健康診断やストレスチェックの結果を踏まえ、産業医面談の予約から実施、記録までをオンライン上で完結できる機能のことです。
この機能によって、従業員が相談しやすい環境を整備できます。
面談記録や指導内容もシステムで一元管理されるため、継続的な健康管理と適切なフォローアップができるのです。
健康管理システム導入のメリット
健康管理システムの機能について紹介してきましたが、ここからは、実際にシステムの導入によってどのようなメリットを受けるのかみていきましょう。
ここでは、企業側と従業員側のメリットに分けてそれぞれ解説していきます。
企業側のメリット
健康管理システムの導入によって、人事部門における健康管理業務の工数を大幅に削減できることは、企業にとって大きなメリットです。
手作業で行っていた健康診断やストレスチェックの実施漏れを防ぐことや、結果の労働基準監督署への報告を自動化できます。その結果、健康経営優良法人認定の取得も容易になるのです。
また、健康診断の結果や蓄積したデータを活用し、従業員の健康リスクを早期に発見・対応することで、休職や離職を予防し、生産性の維持・向上や企業の競争力強化に期待できます。
従業員側のメリット
健康管理システムを利用することで、従業員は自身の健康診断結果やストレス状態を気軽にスマートフォンから確認でき、セルフケアの意識が向上します。
健康診断の予約や産業医面談の申し込みがシステム上ですべて完結できるため、利便性が大幅に向上する点もメリットです。
従業員にとってはプライバシーに配慮された環境での健康相談ができるため、産業医に心身の不調を相談しやすくなり健康維持につながります。
健康管理システム導入の注意点
健康管理システム導入によるメリットもある一方で、システム導入の際にはいくつかの注意点があります。
ここでは、企業規模や業種にあった機能を選ぶこと、運用ルールを整備することについて解説します。
企業規模や業種にあった機能を選ぶ
健康管理システムを導入する際には、自社の企業規模や業種に応じた必要機能を明確にし、最適なシステムを選定する必要があります。
課題や目的を明確にすることで、無駄なコストや時間の浪費を防ぎ、システムの効果的な運用につながります。
また、事前に既存の人事システムや勤怠管理システムとの連携可否を確認し、データ連携による業務効率化を図りましょう。
加えて導入実績やユーザーレビューを確認し、運用面での課題や改善要望を把握しておくことで後のトラブル防止に役立ちます。
運用ルールを整備する
健康管理システムの導入前には、アクセス権限の設定と運用ルールの整備が不可欠です。
従業員の健康情報は機密性の高い個人情報のため、システム導入後の教育・研修計画を立て、人事部門や従業員への利用方法の周知を徹底する必要があります。
また、実際に導入した後にも定期的な運用状況の確認と改善を行い、継続的にシステムの活用度を高めていく体制づくりが大切です。
健康管理システムの費用
健康管理システムは、ベンダーが用意してクラウド上でデータ管理する「クラウド型」と、自社で構築したサーバーによってデータ管理する「オンプレミス型」の2種類があります。
以下で、それぞれの費用相場について詳しくみていきます。
クラウド型の費用相場
クラウド型システムの場合、初期費用はおおよそ最大100万円程かかります。そのため、従業員1人あたりの月額料金は約1,000円までが相場です。
このように費用相場に開きがあるのは、利用人数や搭載機能によって価格が大きく変動するためです。
クラウド型の特徴としては、導入までの期間が短くサーバー構築などの追加投資が不要なため、中小企業でも導入しやすいところです。
ただし、外部システムとの連携やオプション機能の追加で費用が増加する場合もあります。
オンプレミス型の費用相場
オンプレミス型システムの初期費用の相場は、100万円以上と高額です。月額固定費用については、従業員数に関係なく約30万円程度となっています。
オンプレミス型の特徴としては自社でサーバーを構築・運用できるため、セキュリティポリシーに応じたカスタマイズが可能なところです。
また、月額のランニングコストは固定であるため、従業員の多い大規模企業にとっては、コスト面においてクラウド型よりメリットがあります。
健康管理システムの選び方
健康管理システムを選ぶ際は、いくつかポイントがあります。
以下の重要なポイントについて紹介するので、システム選定の際の参考にしてください。
- 導入前の状況を分析する
- 製品を比較・検討する
導入前の状況を分析する
健康管理システムを導入する際は、企業はまず現状の健康管理業務における具体的な課題を洗い出す必要があります。
健康診断の受診率向上や産業医面談の効率化など、システム導入による改善目標を設定しましょう。
それぞれの課題解決のために必要な機能を明確にします。この際、人事部門や産業医、保健師などの現場の意見を収集し、必要な機能要件をより具体化することが重要です。
これによって、ニーズに適した健康管理やシステム開発が可能になります。
製品を比較・検討する
健康管理システムの選定では機能面だけでなく、ベンダーの導入実績やサポート体制、セキュリティ対策を総合的に評価することが大切です。
可能であれば無料トライアル期間を活用し、実際の使い勝手や操作性を確認しておくことで、導入後の混乱なくスムーズな運用につながるでしょう。
また、将来的な従業員数の増加や機能拡張の可能性を考慮し、長期的な視点でシステムを比較検討することで効果を最大限発揮できます。
適切な健康管理システムを選んで効率的な健康管理をしよう
健康管理システムは、従業員の健康データを一元管理し、健康管理業務を効率化するためのツールです。
企業は健康管理システムを通じて従業員の健康増進と生産性向上を実現し、企業価値の向上につなげることができます。
ただしシステム導入は目的ではなく、従業員の健康増進という目標を達成するための手段だと考えなくてはなりません。
そのため、段階的な導入と効果測定で試行錯誤しながら、自社に最適な健康管理の仕組みを構築していくことで成功につなげましょう。