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高度プロフェッショナル制度における健康管理時間とは? 意味や把握方法を専門家が解説

高度プロフェッショナル制度における健康管理時間とは? 意味や把握方法を専門家が解説

2019年4月の高度プロフェッショナル制度導入に伴い、健康管理時間が規定されました。

健康管理時間とは、高度プロフェッショナル制度に該当する労働者の長時間労働を防ぐために、企業が把握すべき時間です。

本記事では健康管理時間の意味や把握方法、上限と事業主の義務、36協定との違いなどについて、専門家が詳しく解説します。健康管理時間を正確に管理したい方は、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

健康管理時間とは

健康管理時間とは、高度プロフェッショナル制度における労働者の健康管理のための時間です。

高度プロフェッショナル制度の対象者が事業場内で過ごした時間と、事業場外で働いた時間を足して計算されます。

健康管理時間に休憩時間や組合活動時間を含めるかは、労使委員会の決議によって決定される事項です。

高度プロフェッショナル制度の対象者は、労働基準法の労働時間規制が適用除外となります。そのため、個別で健康管理時間を確認し、健康確保措置を講じる必要があるのです。

高度プロフェッショナル制度について、以下の記事で詳しく紹介しています。

健康管理時間の計算方法

健康管理時間は、事業場内に滞在した時間と事業場外での労働時間の合計時間です。事業場内で過ごした時間は、通常の労働時間と同じように管理することができます。

一方、事業場外で働いた時間は、客観的な方法での把握が原則です。しかし困難な場合は自己申告も認められています。

休憩時間や組合活動時間の扱い

先述の通り、健康管理時間に休憩時間や組合活動時間を含めるかは労使委員会の決議により決定されます。

労使委員会では、健康管理時間の把握方法や上限設定など、健康確保措置の内容などを決議します。

労使間で十分に協議し合意形成することで、健康管理時間の適切な運用が可能です。


健康管理時間の把握方法

健康管理時間の適切な把握は、高度プロフェッショナル制度の運用において欠かせません。ここでは、健康管理時間の主な把握方法をみていきましょう。

  • 把握が必要な時間
  • 客観的な方法が原則
  • やむを得ない場合の自己申告

把握が必要な時間

事業主は以下の時間を把握する必要があります。

  • 労働者の日々の始業・終業時刻
  • 労働者の日々の健康管理時間数
  • 月間の合計健康管理時間数

日々の始業・終業時刻と時間数を把握することで、労働者の日々の健康管理時間を管理できます。

また、月間の合計時間数を把握することで、月単位での上限時間の管理や、医師による面接指導の必要性の判断などに役立てることが可能です。

客観的な方法が原則

健康管理時間の記録には、タイムカードやPCログなど客観的な方法を活用しましょう。客観的な管理によって労働者の健康管理時間を正確に記録できるので、適切な健康確保措置を講じることができます。

タイムカードやPCログ以外にも、ICカードによる出退勤記録も視野に入れ、自社に合った記録方法を活用することが望ましいです。

やむを得ない場合の自己申告

健康管理時間の客観的な把握が困難な場合に限り、自己申告も認められています。労働者の主観に依存しないよう客観的な方法での管理に努めましょう。

自己申告が認められるケースの例は、事業場外での労働時間の把握が現実的に不可能な場合です。自己申告は例外的な措置であり、客観的な把握方法の活用が原則となっています。


健康管理時間に関する事業主の義務

長時間労働による健康被害から労働者を守るために、労働基準法では事業主にさまざまな義務を課しています。

各措置の内容や実施方法については、労使委員会での決議を経て、就業規則等に明記することが求められます。

ここでは、「選択的措置」と「健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置」に関する事業主の義務について解説します。

選択的措置

選択的措置とは、高度プロフェッショナル制度に該当する労働者の健康を確保するために事業主に義務づけられた措置です。事業主は以下のいずれかの措置を実施しなければなりません。

  • 11時間以上の勤務間インターバルと深夜業回数制限
  • 健康管理時間の上限設定
  • 年1回以上の連続2週間休暇
  • 臨時健康診断

「健康管理時間の上限設定」とは、週平均40時間を基準として1ヶ月または3ヶ月を単位として健康時間の上限を設けることです。

1週間当たり40時間を超えた時間を「1ヶ月については100時間以内」、「3ヶ月について240時間以内」になるように、上限時間を設定します。

たとえば、1ヶ月28日(基準となる1ヶ月の健康時間は160時間=週40時間×4週)で1ヶ月の上限を設ける場合、上限時間は260時間(=160時間+100時間)以内で設定しなければなりません。

「臨時健康診断」とは、次の労働者に対し定期健康診断以外に臨時の健康診断の実施を義務づけるものです。

  • 1週間当たり40時間を超える健康管理時間が1ヶ月当たり80時間を超えた労働者
  • 受診申出のあった労働者

健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

選択的措置のほかに、労働者の健康や福祉を確保するための措置を次の中から選択し決議しなければなりません。

  • 選択的措置のいずれかの措置(選択的措置で選んだもの以外)
  • 医師による面接指導
  • 代償休日又は特別な休暇の付与
  • 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
  • 適切な部署への配置転換
  • 産業医等による助言指導又は保健指導

「医師による面接指導」を選択した場合、対象となる労働者の範囲を決めます。

ただし、1週間当たり40時間を超える健康管理時間が1ヶ月当たり100時間を超えた労働者については、労働安全衛生法で医師による面接指導が義務づけられています。


健康管理時間と36協定の違い

健康管理時間と36協定は、適用労働者の範囲や休日労働の扱い、割増賃金の有無などが異なります。以下5つの項目における両者の違いについて詳しく紹介しています。

項目

健康管理時間

36協定

適用労働者の範囲

高度プロフェッショナル制度の対象労働者

一般労働者

法律上の位置付け

労働基準法

労働安全衛生法

労働基準法

労働基準法で定める労働時間規制

適用除外

適用

休日労働の扱い

休日労働も含めて事業場内外の労働時間の合計で管理

休日労働を別途管理

割増賃金の有無

なし

あり(時間外・休日労働について)

適用労働者の範囲

健康管理時間は高度プロフェッショナル制度の対象者のみ、36協定は一般労働者に適用されます。

高度プロフェッショナル制度に該当する労働者は、労働時間規制の適用除外となるため36協定の対象外です。

36協定は、一般労働者の時間外・休日労働について労使間で協定を結ぶ必要があります。

休日労働の扱い

健康管理時間では休日労働の概念がありませんが、36協定では休日労働の別途管理が不可欠です。

健康管理時間では、休日労働も含めて事業場内外で労働した時間を合算して管理します。36協定では、休日労働について別途協定を結び、管理しなければなりません。

割増賃金の有無

健康管理時間では割増賃金の支払い義務がありませんが、36協定では割増賃金の支払いが求められます。

高度プロフェッショナル制度の該当者は、労働時間ではなく成果で評価されるため、割増賃金の支払い義務はありません。

36協定の対象となる一般労働者は、時間外・休日労働について割増賃金の支払いが必要です。


健康管理時間を正しく理解・運用して働きやすい職場環境を作ろう!

健康管理時間の把握と活用は、高度プロフェッショナル制度に該当する従業員の健康管理に欠かせません。

また、働きやすい職場環境の実現には、労使双方の協力が不可欠です。そのため健康管理時間の趣旨を踏まえた取り組みが求められます。

労働者も自身の健康管理に対する意識を高め、事業主の取り組みに協力することが大切です。健康管理時間を正しく理解・運用し、労使が協力して働きやすい職場環境の実現を目指していきましょう。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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