ストレスチェックの点数の評価基準は? 計算方法も解説
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ストレスチェックとは労働者のストレス状況を把握し、メンタルヘルス不調を予防することを目的とした制度です。
従業員が50人以上いる事業所では、労働安全衛生法により従業員に対して年に1回のストレスチェックを実施することが義務付けられています。
ストレスチェックの結果は点数化され、その評価基準に基づいて高ストレス者かを判定しますが、判定基準や計算方法について知らない方も多いはずです。
本記事では、点数の計算方法や、評価基準について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ストレスチェックについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
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ストレスチェックの調査票と項目
ストレスチェックには、厚生労働省が推奨する職業性ストレス簡易調査票が広く用いられています。ここでは、この調査票の構成と質問内容について見ていきましょう。
厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票
厚生労働省が推奨するストレスチェックの調査票は労働者のストレスの程度を測定し、メンタルヘルス不調を予防することが目的です。
57項目で構成される質問はストレスに関連する幅広い要因をカバーしており、労働者のストレス状況を多角的に評価できます。
調査票は心身の状態や仕事の状況、周囲のサポートなど、ストレスに影響を与える様々な側面を網羅する内容です。
調査票の3領域と質問内容
ストレスチェックの調査票は以下のように、心身のストレス反応(29項目)、仕事のストレス要因(17項目)、周囲のサポート(9項目)の3領域から成ります。
調査票の領域 |
測定対象 |
心身のストレス |
ストレスが原因で生じる心身の不調や変化 |
仕事のストレス要因 |
仕事の量的・質的負荷、対人関係、裁量権などのストレッサー |
周囲のサポート |
上司や同僚、家族からのサポートの程度 |
これらの質問への回答を総合的に評価することで、労働者のストレス状況を把握できるのです。
ストレスチェックの点数の計算方法
ストレスチェックの点数を算出する方法には「単純合計判定法」と「素点換算表を用いた方法」の2種類があります。
ここでは、それぞれの計算方法の特徴と使い分け方について見ていきましょう。
単純合計判定法
単純合計判定法は、各質問の回答を点数化して領域ごとに合計点を算出します。質問項目の点数を合計するという簡単な計算方法のため、手軽に評価することが可能です。
しかし項目数の偏りによる影響を受けやすく、領域間の項目数の違いが点数に大きく影響します。ストレス状況の正確な把握が難しい場合があるため、評価の精度には注意しなければなりません。
素点換算表を用いた方法
素点換算表を用いた計算方法は、質問への回答を点数化した後、領域ごとに素点換算表を用いて5段階の評価点に変換する方法です。
項目数の偏りを調整できるので、ストレス要因や心身の反応をバランスよく評価できます。詳細なストレス状況を把握できますが、計算が複雑で手間がかかります。
2つの計算方法の使い分け
単純合計判定法は手軽さ、素点換算表を用いた方法は精度の高さが特徴のため、目的に応じて使い分けましょう。
簡便にストレス状況を把握したい場合は「単純合計判定法」、詳細で正確な評価が必要な場合は「素点換算表を用いた方法」が適しています。
両方法の特徴を理解し、事業場の実情に合わせて適切な計算方法を選択しましょう。
ストレスチェックの点数の評価基準
ストレスチェックの点数を参考に、評価基準に基づいて高ストレス者かどうかを判定します。ここでは、以下の内容について見ていきましょう。
- 高ストレス者の判定基準
- 単純合計判定法での評価基準の例
- 素点換算表を用いた場合の評価基準の例
- 事業場独自の評価基準を設定する場合
高ストレス者の判定基準
高ストレス者の判定基準は各事業場の実情に合わせて設定されますが、国の指針を参考にすることが一般的です。
心身のストレス反応の点数と、仕事のストレス要因および周囲のサポートの点数を組み合わせて決定されます。
高ストレス者の判定は、ストレスチェック制度の重要な目的の一つです。メンタルヘルス不調のリスクが高い労働者を見出すために行われます。
高ストレス者の判定は、ストレスチェック制度の中核をなす大切なプロセスといえるでしょう。
単純合計判定法での評価基準の例
単純合計判定法では以下の条件のいずれかに該当する場合、高ストレス者とみなされます。
- 心身のストレス反応の合計点数が77点以上
- 仕事のストレス要因と周囲のサポートの合計点数が76点以上かつ心身のストレス反応の合計点数が63点以上
この基準は、国の指針に基づいており、ストレスが高い状態にある労働者を広く抽出することが目的です。
素点換算表を用いた場合の評価基準の例
素点換算表を用いた場合、以下の条件のいずれかに該当すると高ストレス者とみなされます。
- 心身のストレス反応の合計が12点以下
- 仕事のストレス要因と周囲のサポートの合計が26点以下で心身のストレス反応の合計が17点以下
この基準も国の指針を参考にしたものであり、ストレス状況を詳細に評価した上での、高ストレス者の選定を意図しています。
事業場独自の評価基準を設定する場合
事業場が独自の評価基準を設定する際は、各事業場の特性を考慮し、産業医などの専門家と相談しながら適切な基準を定めましょう。
国の指針を参考にしつつ、業種や職種、労働者の属性など、事業場の実情を十分に考慮してください。
評価基準の設定は、ストレスチェック制度の実効性を左右する重要な要素であり、慎重に検討することが求められます。
ストレスチェックを職場の健康づくりに役立てよう
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の予防と早期発見・対応を目的とした重要な取り組みです。
ストレスチェックの点数について評価基準や計算方法を正しく理解して適切に実施することが、職場の健康づくりに役立つでしょう。
事業場の実情に合わせて適切な評価基準を設定し、ストレスチェックを確実に実施することで、従業員の心身の健康保持・増進と、働きやすい職場環境の構築が期待できます。
ストレスチェック制度を有効に活用し、従業員の健康とともに、組織の生産性向上を目指していきましょう。