人員配置計画とは? 目的や手順、策定のポイントを解説

人員配置計画とは、従業員の能力や適性に基づいて最適なポジションに配置することで、組織の目標達成をサポートする計画です。
効果的に取り組むことで、従業員一人ひとりの能力やポテンシャルを最大限に活かして組織の一体感や競争力を高めることができます。
本記事では、人員配置計画を新しく作る・見直す企業に向けて、設定目的や要素、策定手順、ポイントなどを解説します。
人員配置計画の効果が出ていないとお悩みの方もぜひ参考にしていただき、実務に役立ててください。
人員配置計画とは
人員配置計画とは、組織の目標を達成するために、従業員の能力やスキル、経験、適性などを総合的に考慮し、最適なポジションに配置する計画のことです。
まず、組織の現状を分析したうえで将来の方向性を見据え、人材がどのようなポジションや役割を担うべきかを検討します。
これにより単なる人員の入れ替えではなく、戦略的な視点で組織全体のパフォーマンスを最大化できるようになります。
中長期的に策定される人員配置計画は、従業員のモチベーション維持・向上や企業の継続的な成長にも大きく関わります。そのため、徹底した準備と緻密な計画を立てることが重要です。
人員配置計画の主な目的
人員配置計画は、従業員の適切な配置を実現することで、組織に様々なメリットをもたらします。
ここでは、人員配置計画の目的を3つ紹介します。
・組織の生産性向上
・従業員のモチベーション向上
・人材育成の促進
これらの目的を達成し、組織力の向上を図ることが人員配置計画の役割です。
組織の生産性向上
人員配置計画の目的の一つは組織の生産性向上です。個々の従業員の強みを活かした配置を行うことで作業の無駄を減らし、迅速かつ高品質な成果を得ることが可能です。
また、部門間のコラボレーションを促進し、異なる視点からのアイデアが生まれることで、イノベーションの創出と問題解決力の強化を後押しします。
このように適材適所な人材配置によって業務効率と品質を高められるため、組織全体のパフォーマンスを最大化できます。
従業員のモチベーション向上
従業員の適性や志向に合った配置を行うことで、従業員のモチベーション向上や離職防止を図ることができます。
従業員が自身の強みや経験を最大限に活かせる場で働くことができれば、仕事への満足度が高まり、より意欲的に業務に取り組むようになるのです。
またキャリアパスの明確化とスキルアップの機会提供により、従業員のエンゲージメントを引き出すことも可能です。
同時に公正な評価と処遇を実現することで、従業員の組織への信頼と帰属意識を醸成することにもつながります。
人材育成の促進
人員配置計画は戦略的配置と育成プログラムの連動により、従業員の能力開発と成長を促進する取り組みでもあります。
具体的には、OJTとOff-JTを組み合わせた実践的な育成機会を提供し、即戦力人材の輩出を図ることが可能です。
また、チャレンジングな役割への抜擢や新しいプロジェクトの参加などを通じて、次世代リーダーの育成とパイプラインの強化を実現することもできます。
このような人材育成への取り組みが、組織全体の成長や競争力向上につながるのです。
人員配置計画に含まれる5つの要素
人員配置計画では、配置変更の種類が多く存在します。
ここでは、以下5つを紹介します。
・人事異動・配置転換
・昇進・昇格
・雇用形態の多様化
・新卒・中途採用
・解雇・希望退職の募集
これらを戦略的に組み合わせることによって、組織の人材最適化が実現します。それぞれ見ていきましょう。
人事異動・配置転換
人事異動・配置転換とは企業内の異なる職位や部署に異動する取り組みで、従業員のスキル向上や組織の活性化を促します。
異動や配置転換を通じて従業員に新しい知識やスキルを習得させ、多様な経験を積ませることが可能です。
部門間の人材交流は組織の連携強化などのシナジー効果を生み出し、イノベーションの促進につながります。
また従業員のモチベーションと適応力を高め、組織の柔軟性と対応力の強化にもつなげられるのです。
しかし新しい業務に慣れるまで一時的に業務効率が低下することもあるため、研修やサポート体制を整えた上で行うことを推奨します。
昇進・昇格
昇進・昇格は、従業員の職位を上げる施策です。従業員のモチベーション向上と組織の次世代リーダー育成に寄与します。
昇進・昇格の機会を提供することで従業員のキャリア形成を支援し、組織への信頼や愛社精神を高めることが可能です。
将来のリーダー候補を早期に特定して戦略的に育成することで、組織の持続的な発展を実現できます。
また、公正で透明性の高い昇進・昇格制度を整備することで、従業員の納得感と満足度向上にもつながります。
雇用形態の多様化
雇用形態の変更は組織の人材ニーズと従業員のライフスタイルに対応するための人員配置計画の施策です。
非正規社員から正社員への登用や、フルタイムからパートタイムへの変更など、柔軟な雇用形態の選択肢を用意することで多様な人材の活用が可能になります。
雇用形態の変更は、従業員のワークライフバランスの実現と組織の生産性向上を両立させる効果的な手段です。多様な働き方を支援することで、優秀な人材の確保と定着率の向上にもつながります。
新卒・中途採用
新卒採用では組織の文化や価値観に合った人材を長期的に育成することができます。組織の未来に必要なリーダーや専門職の育成も可能です。
中途採用では即戦力となる専門性の高い人材を獲得し、組織の人材不足の解消に寄与します。また他の企業の経験を活かすことで、新しい視点を組織へもたらすこともできます。
このように新卒・中途採用は、組織に新しい知識とスキルをもたらし、人材のパイプラインを強化する人員配置計画の要素です。
新卒と中途のバランスを適切に保ちながら多様な人材を確保することで、組織の活力と競争力を高めることが可能です。
解雇・希望退職の募集
解雇・希望退職の募集は、組織の構造改革と人件費削減の手段として位置づけられる人員配置計画の要素です。
事業の縮小や撤退、組織のスリム化などの経営判断に基づき、余剰人員の削減を図る際に実施されます。
解雇・希望退職の募集は法的規制や社会的影響を考慮しながら、慎重な計画・実行が必要です。特に解雇は企業が従業員に対して行う最終手段であり、慎重な検討を求められます。
対象者の選定や条件設定、支援措置などを適切に行い、従業員の理解と納得を得て対応しましょう。
戦略的な人員配置計画を策定する4つのステップ
戦略的な人員配置計画を策定するためには、適切に計画を立て、実行する必要があります。
具体的には以下の手順で進めましょう。
1.経営ビジョンと組織課題を明確にする
2.人員の現状を分析し、将来を予測する
3.人事関連データを収集し、整理する
4.計画を策定し、周知・実行する
これらのステップを着実に踏むことで、人員配置計画の効果を実感することができます。
ステップ1: 経営ビジョンと組織課題を明確にする
経営ビジョンと組織課題を明確にすることは、人員配置計画の方向性を定める上で不可欠です。組織の目指す姿と現状のギャップを分析し、克服すべき課題を特定します。
課題を明確化することで、どのような人材を配置したら良いか適切に把握できるのです。
また、経営戦略と連動した人員配置計画を立てることで、組織の目標達成に必要な人材の確保と育成ができます。
人員配置計画は、経営ビジョンの実現に向けた重要な施策の一つであることを認識しましょう。
ステップ2: 人員の現状を分析し、将来を予測する
人員の現状分析と将来予測は、適切な人員配置計画を立てるための基礎です。
年齢、経験年数などの従業員の属性、スキル、パフォーマンス、ポテンシャルなどを評価し、これらを基に人材の全体像を把握します。
将来の事業展開や技術動向を見据え、必要となる人材像を予測することで、計画的な人材確保と育成が可能です。
ステップ3: 人事関連データを収集し、整理する
人事関連データの収集と整理は、客観的な根拠に基づいた人員配置計画を作成するための大切なステップです。
採用、異動、昇進、退職などの人事データを一元的に管理し、傾向分析や課題抽出に活用できます。
また人事評価や従業員満足度調査の結果を活用すれば、人事施策の効果検証と改善につなげられます。
データに基づく意思決定を行うことで、人員配置計画の精度と説得力を高めることができるのです。
ステップ4: 計画を策定し、周知・実行する
計画の策定、周知、実行は、人員配置計画の成否を決定づけるプロセスです。ステップ1から3で得られた情報を基に、具体的な人員配置計画を立案します。
計画の内容を関係者に周知して理解と協力を得ながら、着実に実行に移すことが求められます。計画の進捗状況を定期的にモニタリングし、問題があれば早期に軌道修正を行うことも重要です。
人員配置計画に関連する4つの計画
人員配置計画は、他の人事関連計画と密接に関連しています。これらの計画を相互に連携させ、整合性を保つことで、効果的な人員配置を実現することができます。
ここでは、以下4つの計画を紹介します。
・定員計画
・要員計画
・人員計画
・代謝計画
定員計画
定員計画は組織の目標達成に必要な人員数を定める計画であり、人員配置計画の基本となる工程です。事業計画や予算との整合性を図りながら、適正な人員規模を設定します。
定員計画によって採用計画や人件費管理の指針が定まり、組織運営の効率化につながるのです。
要員計画
要員計画は、定員計画を基に各部門の業務量や目標に応じて必要な人員を割り当てる計画です。
部門ごとの業務内容やプロジェクトの進捗状況を考慮し、適切な要員配分を行います。
要員計画は部門間の人員バランスを最適化し、組織全体のパフォーマンス向上を実現しましょう。
人員計画
人員計画は要員計画に基づき、個々の従業員の配置を決定する計画です。従業員の能力、適性、キャリア志向などを考慮し、最適な配置先を選定します。
人員計画は従業員のモチベーションとエンゲージメントを高め、組織の生産性向上に寄与する工程です。
人員計画に従って個々の従業員の配置を行うことで、適材適所の人材活用を実現します。
代謝計画
代謝計画は、採用、退職、異動などを通じて、組織の人員構成を最適化する計画です。自然減員や計画的な新陳代謝によって組織の活力を維持し、人材の質的向上を図ります。
代謝計画は人件費管理や組織の年齢構成の適正化に対して有効です。人員配置計画は、代謝計画と連動して組織の人材ポートフォリオを最適化することで、持続的な成長と発展を支えます。
人員配置計画を行う際のポイント
人員配置計画を実践し効果を得るためには、以下のポイントに留意する必要があります。
・トップを巻き込む
・組織的な情報共有を図る
・社員のキャリア志向を把握する
・配属後の効果検証を行う
各ポイントについて詳しく解説します。
トップを巻き込む
トップのコミットメントと巻き込みは、人員配置計画の実効性を高める上で欠かせません。経営層が人員配置計画の重要性を認識して積極的に関与することで、組織全体での取り組みを促進します。
具体的には、人員配置計画の進捗の共有や評価を行うことで組織の協力体制を強化できます。トップ主導の明確なメッセージ発信も、従業員の理解と協力を得るために有効な手段です。
また、トップが人員配置計画の進捗状況をモニタリングして必要な支援や資源の提供を行うことで、計画の着実な実行を後押しすることができます。
組織的な情報共有を図る
組織的な情報共有とコミュニケーションは、人員配置計画の円滑な実行に寄与します。人事部門と現場の連携を密にし、定期的に情報を共有することで、計画に対する理解を深めることが可能です。
定期的な情報発信や対話の機会を設けることで、人事施策への理解と浸透を図ることができます。また、従業員からのフィードバックを積極的に収集することも重要です。
社員のキャリア志向を把握する
社員のキャリア志向の把握とマッチングは、従業員のエンゲージメントと定着率の向上につながります。
個々の従業員のキャリアビジョンや成長意欲を丁寧に汲み取り、適切な配置やサポートを行うことが大切です。
さらに従業員のキャリア開発を組織の成長と連動させることで、Win-Winの関係を構築できます。
キャリア面談やアンケートなどを通じて従業員の希望や課題を定期的に把握し、人員配置計画に反映させるように心がけましょう。
配置後の効果検証を行う
配置後のフォローアップと効果検証は、人員配置計画のPDCAサイクルを回す上で重要です。
配置後の従業員の適応状況や業績推移を定期的にモニタリングし、必要に応じてサポートや調整を行います。
人事施策の効果を定量的・定性的に評価して改善点を抽出することで、次期の計画策定に役立てることができます。
適材適所の人員配置で組織力を高めよう
人員配置計画を通じて各従業員の能力を最大限に引き出すことで、組織の持続的な成長と発展を実現することができます。
人員配置計画の策定と実行を成功させるには、経営ビジョンとの連動、現状分析と将来予測、関連データの活用、関係者の巻き込みなどを行わなくてはなりません。
本記事で紹介したステップやポイントを参考にし、人員配置計画を着実に進めることで、組織の競争力の向上を図りましょう。
適材適所の人員配置によって、組織の生産性と従業員のモチベーションを高め、組織力の強化も期待できるはずです。