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副業・兼業における労務管理とは? 必要性やポイントを解説

副業・兼業における労務管理とは? 必要性やポイントを解説

近年、副業・兼業を認める企業が増加傾向にあり、それに伴い適切な労務管理の重要性が高まっています。労務管理体制が不十分であると、割増賃金の未払い問題や労働災害の増加などが生じてしまう可能性があるため、注意が必要です。

本記事では、副業・兼業における労務管理の必要性とポイントについて詳しく解説します。副業・兼業者の労働時間管理や健康管理を適切に行うための方法を理解し、リスクを最小化しながら、メリットを最大化する方法を探っていきましょう。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

副業・兼業の導入と労務管理の必要性

近年、副業・兼業を許可する企業が増えており、法令順守と従業員の健康確保のための適切な労務管理体制の構築が急務となりました。

企業が副業・兼業を認める場合、労働時間管理や健康管理、社会保険や労災対応など、複雑な労務管理の課題に直面します。適切な労務管理を構築することで、これらの課題に備え、リスクの軽減にもつながります。

ここでは、副業・兼業導入の重要性と形態別の労務管理方法について見ていきましょう。

副業時代の労務管理ニーズを理解する

国の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定と働き方改革を受け、企業は副業・兼業に対応した労務管理体制の整備が求められています。

2018年に策定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は2020年、2022年と相次いで改定され、副業・兼業の普及を後押しする国の動きが加速しています。

副業・兼業が普及するなかで、収入の増加やスキルアップを求める労働者のニーズに応えるためにも、企業はその対応策をしっかりと整備し、健全な労務管理を実現することが重要です。

本業以外の仕事形態と管理区分を把握する

副業・兼業は雇用型と非雇用型に分かれ、雇用型は労働時間の通算が必要ですが、非雇用型は労働時間通算管理の対象外となります。

雇用型副業(正社員、パート、アルバイトなど)では、労働基準法に基づく労働時間の通算や割増賃金の発生など、複雑な労務管理が不可欠です。例えば、正社員としての勤務時間とパートでの勤務時間を合算し、時間外労働が発生する場合、企業は法定どおりの割増賃金を支払う義務があります。

非雇用型副業(個人事業主、フリーランスなど)は労働時間管理の対象外ですが、長時間労働による健康被害を防ぐための安全配慮義務は、依然として企業側に存在します。そのため、フリーランスとして働く従業員が過度な労働を避けるよう、適切な働き方の指導が必要です。

企業は副業・兼業の形態ごとに適切な労務管理方法を理解し、実践することが求められます。


副業における労務管理の労働時間に関するポイント

雇用型副業での労働時間通算管理は法的義務であり、企業が直面する実務課題です。

副業・兼業を行う従業員の労働時間を正確に把握し、法定労働時間を超える場合は適切な措置を取る必要があります。

ここでは、効率的な労働時間管理を実現するためのポイントを紹介します。これらを活用することで、従業員の勤務時間を正確に把握し、法的リスクを回避しつつ業務の効率化も実現可能です。

複数就業時の労働時間通算制度を適用する

労働基準法第38条により、複数企業での労働時間は通算され、法定時間を超えた場合は後から契約した企業が割増賃金を支払う義務があります。この法律は、複数の企業で働く労働者の過剰労働を防止することを目的としています。

例えば、本業で8時間、副業で2時間働いた場合、合計10時間となり、法定の8時間を超える2時間分について、副業先企業が割増賃金(25%増)を支払う必要があるのです。

通算の基準となるのは労働契約を締結した順番であり、この順番に基づいて労働時間を通算し、割増賃金の発生有無を判断します。企業は副業・兼業者の労働時間を正確に把握し、適切な賃金支払いを行うことが求められます。

効率的な労働時間管理を実践する

厚生労働省推奨の「労務管理モデル」を導入することで、副業・兼業開始時に労働時間上限を設定し、煩雑な通算管理を簡素化できます。

このモデルでは、本業企業は所定外労働時間の上限、副業企業は労働時間全体の上限を設定し、合計時間を法定上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内に収めます。

労務管理モデルの導入には、三者(本業企業、従業員、副業企業)の合意が必要です。導入によって毎月の実労働時間の把握・通算作業が不要になり、大幅な事務負担軽減につながります。
このモデルにより、企業と従業員の双方が法定の労働時間上限を守りつつ、効率的に働くことが可能になります。


副業における労務管理の健康管理のポイント

企業は副業・兼業の形態に関わらず、従業員の健康確保と安全配慮義務を果たす必要があります。過重労働によるメンタルヘルス不調や過労死などを防止するため、副業・兼業者の労働状況や健康状態を適切に把握する体制が重要です。

健康管理の不備は労災リスクの増大につながるため、計画的かつ継続的な健康管理施策の実施が求められます。従業員の健康を守ることは、企業の持続的成長にとって欠かせない要素です。

副業社員の健康管理体制を構築する

企業は、副業や兼業を行う従業員の健康管理体制を構築する必要があります。そのためには、副業・兼業の状況報告制度を導入し、定期的な面談を通じて従業員の健康状態を確認することが重要です。

副業・兼業の許可後も、業務内容や勤務時間などに関する定期報告を義務付け、過重労働の兆候がないかを監視する仕組みを整えることが求められます。

さらに、健康診断やストレスチェックの結果を活用し、長時間労働のリスクが見られる場合は就業制限や産業医面談などの適切な措置を講じましょう。

複数事業労働者の労災対応を理解する

2020年の制度改正により、複数の事業場で働く労働者が労災に遭った場合、賃金合算による給付や総合的な業務負荷評価による認定が行われるようになりました。

本業と副業の両方の業務による負荷が合算して労災と認定されるケースが増加しており、企業は労災リスク管理の重要性が高まっています。

事業場間の移動中(例:本業から副業先への移動)の災害は、移動先の事業場の「通勤災害」として取り扱われるため、その点についても、従業員への周知が必要です。

複雑化する労災対応を適切に行うためには、専門家の助言を得ることも有効でしょう。


適切な労務管理で、副業・兼業を企業の成長機会に変えよう

副業・兼業における労務管理は、企業にとって新たな課題であると同時に、大きな成長機会でもあります。

企業は、労働時間管理の効率化や健康管理体制の構築、明確な規定整備を進めることで、副業・兼業のリスクを最小化しながら、メリットを最大化できます。

副業・兼業は単なる「認める・認めない」の二択ではなく、企業の状況や業種特性に合わせた柔軟な制度設計とそれを支える労務管理が重要です。

今後も法改正や働き方の多様化が進むなか、定期的な制度の見直しと改善を行い、時代に合った副業・兼業の労務管理体制を構築していきましょう。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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