クラウドPBXの構成図の4つの主要パターンを徹底解説

クラウドPBXを導入する際、どのような構成にするかは重要なポイントです。構成によって必要機器や接続方法などが全く異なるため、十分理解したうえで選択しましょう。
本記事では、クラウドPBXの4つの主要な構成パターンを図解で詳しく解説します。従来のモデルとの違い、構成別の選び方なども併せて紹介するのでぜひ参考にしてください。
クラウドPBX構成図の4つの主要パターン
クラウドPBXの主要パターンは、以下のとおりです。
- 完全クラウド型
- アダプター設置型
- IP-PBX設置型
- ハイブリッド型
上記のパターンごとに、必要機器と接続方法が異なります。
各構成パターンは初期コスト、運用コスト、拡張性、既存番号の継続性、導入の容易さなどの観点で一長一短があり、企業の状況に合わせた選択が重要です。
どのパターンも従来型と比較して導入コストを抑えられますが、インターネット品質が通話品質に直結する点は共通の特徴です。
ここでは、パターンごとに、その特徴を詳しく見ていきましょう。
完全クラウド型PBX

完全クラウド型PBXは物理的な専用機器が不要で、導入が最も簡単です。クラウド上のサーバーですべてのPBX機能を提供し、インターネット回線とルーターさえあれば、最短で即日から利用開始が可能です。
また、拠点間の内線通話が無料でスマートフォンやPCなど、さまざまな端末を内線としても使用可能です。テレワークに最も適した構成で、初期費用と工事費用を最小限に抑えられます。
一方で既存の電話番号を継続利用できないケースが多く、新規番号の取得が必要になる場合が多い点に注意しましょう。
アダプター設置型

アダプター設置型はVoIPゲートウェイを介して、既存電話番号の継続利用と安定した音質を両立させることができる構成です。オフィスに「VoIPゲートウェイ」という専用アダプターを設置して、光回線(ONU)と接続することで、アナログ回線とIP回線を橋渡しします。
アダプター設置型は、NTT回線をベースにするため、音質も安定している点が大きなメリットです。完全クラウド型と比べると若干初期費用がかかりますが、番号継続と安定性を重視する企業に適しています。
アダプター設置により、既存設備を活かしつつ、クラウドのメリットも享受できる点が特徴と言えるでしょう。
IP-PBX設置型

IP-PBX設置型はオフィス内にIP-PBXを設置することで、高度な機能制御とセキュリティ管理をローカルで実現できる構成です。インターネット接続が可能なPBX(IP-PBX)をオフィス内に設置して、光回線と接続することで、クラウドとローカル両方の利点を活かせます。
ローカルでのデータ処理や制御が可能なため、セキュリティ要件が厳しい企業や、高度なカスタマイズが必要な企業におすすめです。自社専用のIP-PBXを構築できるため、きめ細かな設定と柔軟な拡張が可能な点が大きな強みと言えるでしょう。
ハイブリッド型

ハイブリッド型は既存ビジネスフォンとクラウドPBXを併用することで、既存設備を活かしながら、段階的に新システムへ移行できる柔軟な構成です。IP-PBXをONUの下部に接続したうえで既存のビジネスフォン主装置へ接続すると、両システムが共存できます。
既存のビジネスフォン環境を活かしつつ、クラウドPBXの機能も利用できるため、急激な変更によるリスクを避けられます。旧システムからの移行を検討する企業にとって、非常にスムーズな切り替え方法です。
従来のビジネスフォン構成図と比較した、クラウドPBXの構造的違い
クラウドPBXと従来のビジネスフォンは、構成や接続方式に大きな違いがあります。ここでは、両者の構造的な違いを初期費用と接続方式の観点から比較してみましょう。
初期費用の違い
従来のビジネスフォンとクラウドPBXは主装置の設置場所、接続方式、対応端末など、根本的な構造が大きく異なります。従来のビジネスフォンはオフィス内に主装置と配線工事が必要で、初期投資が大きいです。
一方クラウドPBXは、主装置がクラウド上にあるため、初期投資を大幅に削減できます。また、インターネット回線があれば利用できるため、テレワークや分散型オフィスなど、多様な働き方に柔軟に対応できる点が最大の構造的違いです。
クラウドPBXの初期コストを抑えて柔軟な働き方を実現できる点は、従来と大きく異なります。
接続方式の違い
従来型は専用線接続で、固定電話機のみの対応でした。そのため、主装置と電話機が物理的に同じ場所になければいけません。
しかし、クラウドPBXはインターネット回線で多様な端末に対応しているため、場所を問わずに利用が可能です。従来型では、拠点間を接続するには専用線や高額な中継サービスが必要でした。クラウドPBXでは拠点間通話もすべて内線通話として、無料で行えます。
構成別クラウドPBXの選定ポイント
ここまで、クラウドPBXの主要な構成と、従来のビジネスフォンと比較した特徴を説明しました。それらを踏まえたうえで、クラウドPBXを導入する際は、自社の状況に合わせて選定をしてください。
構成を考慮したクラウドPBXの選定ポイントは、以下のとおりです。
- 自社の規模や予算に合っているかを検討する
- 業務特性から最適な構成を選定する
- ビジネスシーンに応じた構成を選択する
- 将来的な面も考えて、総合的に判断をする
- 障害対策と冗長性を考慮する
- 将来を見据えた拡張性を確保する
ここでは、上記のポイントをそれぞれ解説します。
自社の規模や予算に合っているかを検討する
企業の規模、既存システム、業務特性、将来計画などによって最適なクラウドPBX構成は異なるため、自社の状況に合わせた選定が重要です。各構成タイプには明確な特性と向き・不向きがあり、導入目的や予算、既存環境との整合性を総合的に考慮する必要があります。
選定を誤ると期待した効果が得られないだけでなく、追加コストや業務効率の低下を招く恐れもあるため、慎重な検討が欠かせません。
クラウドPBXの費用については、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
業務特性から最適な構成を選定する
クラウドPBXは、既存番号継続、拠点分散度、テレワーク比率、セキュリティ要件などの業務特性に応じて最適な構成が異なるため、自社の優先事項を明確にしましょう。既存電話番号の継続が絶対条件なら、VoIPゲートウェイを利用するアダプター設置型が最適です。
テレワーク比率が高く、社員がどこからでも会社番号で発着信する必要がある企業は、完全クラウド型の実現が比較的安易にできます。
ビジネスシーンに応じた構成を選択する
新規オフィス開設では完全クラウド型が、既存システムからの移行ではアダプター設置型やハイブリッド型が、複数拠点統合では完全クラウド型が適しています。新規オフィス開設時は配線工事が不要で、最短即日から利用開始できる完全クラウド型が、最も迅速かつ低コストです。
既存システムからの移行時は、番号継続が可能なアダプター設置型か、段階的移行ができるハイブリッド型によって業務の混乱を最小化できます。既存のビジネスフォンや通話環境に合わせた最適な構成を選ぶことで、スムーズに導入できるでしょう。
将来的な面も考えて、総合的に判断をする
クラウドPBX選定時には障害対策、セキュリティ、将来の拡張性などの技術的側面も重要な判断基準となります。初期コストや機能面だけでなく、万一の障害時の影響範囲や復旧方法、情報セキュリティのレベル、将来の事業拡大への対応力も含めた総合的な評価が必要です。
特にビジネスにおける電話システムは業務の生命線となるため、コスト削減だけを優先せず、信頼性と将来性のバランスを考慮した選定をしましょう。初期費用だけでなく、長期的な視点でどれだけの費用対効果を得られるかという視点が大切です。
障害対策と冗長性を考慮する
完全クラウド型はインターネット障害の影響を受けやすいですが、設置型やハイブリッド型はUPS導入やフォールバック機能で障害時の耐性を高められます。完全クラウド型はインターネット接続が断たれると全機能が停止するため、重要拠点では回線の冗長化やバックアップ回線の確保が不可欠です。
アダプター設置型やIP-PBX設置型では、UPS(無停電電源装置)を導入することで、停電時も一定時間は通話機能を維持できます。万が一を考え、冗長性や具体的な障害対策も含めてサービスを評価しましょう。
将来を見据えた拡張性を確保する
従業員増加や拠点追加を見込む企業は、設定変更だけで柔軟に拡張できる完全クラウド型が将来的なコスト抑制に有利です。完全クラウド型は端末の追加が設定変更のみで完了し、物理的な工事や機器増設が不要なため、急成長企業や頻繁な組織変更がある企業に適しています。
新拠点の開設が予定されている場合、完全クラウド型なら新拠点も同じ電話システムに統合でき、拠点間の内線通話も無料で行えます。店舗やオフィスの拡大といった物理的な展開も想定して、サービスを選びましょう。
自社に最適なクラウドPBX構成の選び方を考えよう
クラウドPBXは単なる通話コスト削減手段ではなく、働き方改革やDX推進の基盤です。
クラウドPBXの主要な構成は「アダプター設置型」「IP-PBX設置型」「完全クラウド型」「ハイブリッド型」の4タイプがあります。各タイプの必要機器や接続方法を理解したうえで、現在の要件と将来の拡張性を踏まえて選定しましょう。
この記事を参考に、実際の利用環境でのトライアルや音質確認を行い、社内のIT環境との整合性を検証して導入後のトラブルを最小化しましょう。自社の特性と将来像を見据え、経営戦略と整合した選定が企業の競争力強化につながります。