人事評価システムはエクセルで自作できる! テンプレートの作り方と運用の注意点

人事評価システムの導入を検討している企業にとって、コストは大きな課題です。専用システムは便利ですが、初期費用や月額料金が負担になります。そこで注目されているのが、エクセルで人事評価を行う方法です。
本記事では、エクセルで人事評価を行うメリット・デメリットから、具体的な方法、運用上の注意点までを詳しく解説します。費用削減のため、人事評価をエクセルで行おうと考えている企業は、ぜひ参考にしてください。
人事評価システムはエクセルで自作できる?
エクセルは、多くの企業で導入済みのソフトウェアです。関数や機能を活用すれば、人事評価システムを構築できます。また、VLOOKUPやIF関数などの基本的な機能を組み合わせることで、評価の自動計算や集計が可能です。
コストを抑えながら、自社の評価制度に合わせたカスタマイズができる反面、集計の手間やセキュリティリスクなどの課題も存在します。特に従業員数が多い企業では、データ管理の複雑さが増すため、注意が必要です。
エクセルで人事評価を行うメリット
エクセルを活用した人事評価システムには、さまざまなメリットがあります。
エクセルで人事評価を行うメリットは、以下のとおりです。
- 導入・運用コストを削減できる
- 評価項目を柔軟に設計できる
- 従業員が使い方を覚える手間が省ける
ここでは、上記のメリットを詳しく解説します。
導入・運用コストを削減できる
エクセルは、多くの企業ですでに導入済みです。そのため、エクセルを使えば、人事評価のための新たなシステム投資が不要です。専用システムで発生する月額利用料や保守費用がかからず、ランニングコストを削減できます。
一般的な人事評価システムでは、従業員規模によっては、相応の費用が発生することも少なくありません。エクセルであれば、担当者が自ら作成・修正できるため、外部業者へのカスタマイズ費用なども不要です。
評価項目を柔軟に設計できる
自社の評価制度や企業文化に合わせ、評価項目や配点を自由に設計できる点もメリットです。役職や職種ごとに異なる評価シートを、簡単に作成・調整することができます。
営業部門では売上目標の達成度を重視し、技術部門では技術力やイノベーションを評価するなど、部門の特性に合わせた設計が可能です。会社の成長段階や方針転換に応じて、評価基準を柔軟に見直し、修正できます。
従業員が使い方を覚える手間が省ける
ほとんどの従業員がエクセルの基本操作に慣れていれば、新たなツールの使い方を学ぶ必要がありません。日常業務で使用している操作と同じため、評価入力時の心理的ハードルも低いです。
システムの使い方に関する研修やマニュアル作成の手間が不要となり、導入をスムーズに進められます。新しいシステムの導入に際して、入力や操作方法に関する問い合わせも少ないでしょう。
エクセルで人事評価を行うデメリット
エクセルでの人事評価にはメリットが多い一方で、運用面での課題も存在します。
エクセルで人事評価を行うデメリットは、以下のとおりです。
- 評価シートの作成や集計に時間がかかる
- ファイルの管理が複雑になる
- セキュリティリスクや情報漏えいの危険が伴う
- 担当者によって、評価のバラつきが出やすい
ここでは、上記のデメリットを詳しく解説します。
評価シートの作成や集計に時間がかかる
エクセルでの人事評価は、関数やマクロを組む専門知識が必要です。加えて、評価シートの設計やフォーマット作成に多くの時間がかかります。
複雑な評価制度を実現しようとすると、VLOOKUP関数やピボットテーブルなど、高度な機能の理解が求められます。しかも、評価データが複数のファイルに分散しやすく、全社分のデータを手作業で集計するため、膨大な工数がかかるでしょう。
企業規模によっては、評価期間中、人事担当者が集計作業にかなりの時間を費やすケースも珍しくありません。
ファイルの管理が複雑になる
評価シートの作成者しかメンテナンスできない状態では、その担当者の異動や退職で運用が破綻するリスクがあります。特に、複雑な関数やマクロを使用している場合、引き継ぎは非常に困難です。
また、各部署で評価シートのファイルが乱立すると、どのファイルが最新版なのか、分からなくなるという問題が生じます。エクセルはバージョン管理が困難なため、古いファイルで評価を行ってしまうミスも発生しやすいです。
セキュリティリスクや情報漏えいの危険が伴う
評価データは個人情報のため、メールでの誤送信やPCの紛失によって、情報漏えいにつながる危険があります。エクセルファイルは、USBメモリでのデータ持ち出しも容易なため、悪意のある流出を防ぐことが困難です。
ファイルにパスワードを設定しても、パスワードの使い回しや単純さから、セキュリティレベルは十分とは言えません。また、誰が、いつファイルにアクセスしたかのログが残らないため、不正な閲覧や改ざんの検知が難しいです。
担当者によって、評価のバラつきが出やすい
人事評価システムに比べて、エクセルは評価基準や評価プロセスをシステム的に制御しにくいです。そのため、評価者ごとの解釈の違いが、評価結果に直接反映されやすくなります。
同じ成果であっても、評価者によってA評価になったり、B評価になったりと、公平性に欠けてしまいがちです。他の評価者の評価状況を確認できないため、部署間で評価の公平性が保ちにくいという問題もあります。
定量的な分析が難しいので、評価エラー(ハロー効果など)に対する客観的なフィードバックも難しいです。
エクセルで人事評価シートを作成する方法
エクセルで人事評価シートを作成する際は、正しい手順を踏んで進めていきましょう。
エクセルで人事評価シートを作成する手順は、以下のとおりです。
- 評価の目的を明確にし、評価項目を定義する
- 評価の公平性を保つための評価基準を設定する
- 関数を活用して、集計や分析を効率化する
- 既存のテンプレートを参考に、作成時間を短縮する
ここでは、上記の手順について詳しく解説していきます。
評価の目的を明確にし、評価項目を定義する
まず、「何を評価し、どう処遇に反映させるか」という目的を明確にしましょう。人材育成を重視するのか、成果主義を徹底するのかによって、評価項目の設計は大きく変わります。
そして、会社の経営目標や部署の目標と連動した「業績評価」の項目を設定しましょう。この際、売上目標達成率、コスト削減額、新規開拓件数など、具体的な数値を用いることが重要です。
評価の公平性を保つための評価基準を設定する
次に、各評価項目に対し「S・A・B・C・D」などの段階評価と、その判断基準を定義しましょう。この際、曖昧な表現を避け、誰が読んでも同じ理解ができるよう、明確な文章で記載することが大切です。
例えば、「目標を120%達成した場合にA評価」のように、誰が評価しても同じ結果になるよう、定量的な基準を設けてください。行動評価においても「月に3回以上改善提案を行った」など、可能な限り数値化した基準を設定します。
関数を活用して、集計や分析を効率化する
ここまできたら、いよいよエクセルに関数を打ち込みましょう。VLOOKUP関数やIF関数を使うと、評価点数の自動算出や総合評価の自動表示ができます。例えば、評価段階(S~D)を数値(5~1)に自動変換し、ウェイトを掛けて合計点を算出する仕組みを構築することが可能です。
入力規則機能を活用し、選択肢をプルダウンリストにすることで、入力ミスを防ぎ、集計作業が容易になります。さらに、条件付き書式を設定すれば、評価点数に応じてセルの色が変わるなど、視覚的に評価結果を把握しやすいでしょう。
既存のテンプレートを参考に、作成時間を短縮する
人事評価シートをゼロから作成する手間を省きたい場合、Web上で配布されている無料テンプレートを活用するのがおすすめです。厚生労働省や経済産業省のサイトでも、参考となる評価シートのサンプルが公開されています。
テンプレートを参考にすることで、自社に必要な評価項目の洗い出しやシートの構成をスムーズに進められます。また、他社の事例も参考にしながら、自社の強みや課題に合わせて項目を追加・削除していくのが望ましいでしょう。
エクセルでの人事評価を失敗させないための注意点
エクセルで人事評価シートが作成できたら、いよいよ運用です。運用の際には、エクセル特有の注意点をいくつか押さえておく必要があります。
エクセルで人事評価をする際の注意点は、以下のとおりです。
- 評価者向けの研修を実施する
- ファイル名や保管場所のルールを定める
- 定期的に運用方法を見直し、改善を続ける
ここでは、上記の注意点について詳しく解説します。
評価者向けの研修を実施する
評価者によるブレを防ぐため、評価基準や注意点を説明する研修を実施しましょう。評価の目的や会社の求める人材像を共有し、評価者全員が同じ方向を向いて評価できる環境を整えます。
研修では、実際の事例を用いてグループディスカッションを行うことで、評価者間の目線を合わせられます。「この成果はA評価かB評価か」といった具体的なケースで議論し、判断基準を統一していくとよいでしょう。
ファイル名や保管場所のルールを定める
「部署名_氏名_2025年度上期」のようにファイル名のルールを統一し、誰でもファイルを探せるようにしてください。日付は必ず西暦で統一し、半角英数字を使用するなど、細かいルールも明文化することが大切です。
評価ファイルは個人のPCではなく、アクセス制限をかけた社内サーバーなどの特定の共有フォルダで一元管理しましょう。部署ごとにフォルダを分け、閲覧権限を設定することで、情報漏えいのリスクを抑えられます。
定期的に運用方法を見直し、改善を続ける
一度作成したフォーマットを使い続けるのではなく、年に1回は評価者や被評価者から意見を募り、運用方法を見直しましょう。アンケートや面談を通じて、評価制度に対する満足度や改善要望を収集し、次期の評価に反映させることが重要です。
事業内容の変更や組織改編があった場合は、評価項目や基準が現状と合っているかを都度確認し、修正してください。新規事業の立ち上げや働き方改革の推進など、会社の変化に合わせて評価制度も進化させることが必要です。
もし集計作業の手間など、エクセルの限界を感じた場合は、専用システムの導入を検討しましょう。
人事評価は、エクセルと専用システムを賢く使い分けよう
エクセルで人事評価を行うことで、導入・運用コストを削減し、柔軟に評価項目を設定できます。一方で、評価シートの作成と集計に時間がかかり、セキュリティリスクが高まることなどがデメリットです。そのため、小規模企業や評価制度の導入初期段階では、エクセルでの運用が効果的です。
しかし、従業員数が増加したり、評価制度が複雑になったりした場合は、専用システムへの移行を検討しましょう。自社の規模、予算、運用体制を総合的に判断し、エクセルと専用システムを使い分けることが、効果的な人事評価制度につながります。