エクセルによる契約更新管理|台帳の作り方から注意点まで徹底解説

多くの会社では、契約更新管理にエクセルを利用しています。エクセルは身近なツールであり、工夫次第で効果的な契約更新管理が可能です。
しかし、適切な方法を知らないまま運用すると、更新漏れや情報の属人化といったリスクが生じる恐れがあります。
本記事では、エクセルを使った契約更新管理の具体的な方法から、メリット・デメリット、失敗しないための注意点までを詳しく解説します。契約書の管理業務を担当している方はぜひご覧になり、日々の業務改善に役立ててください。

契約更新管理をエクセルで行う方法
エクセルで契約更新管理を始めるには、適切な準備と設定が必要です。
以下では、エクセルを使った契約更新管理の具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。
- 管理に必要な項目を洗い出す
- 管理台帳の基本フォーマットを作成する
- 関数を使って、更新日を自動で計算させる
- 条件付き書式で、更新期限が近い契約を可視化する
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
管理に必要な項目を洗い出す
契約書管理の第一歩は、管理すべき項目を明確にすることです。基本項目としては、契約書名、契約相手方、契約締結日、契約開始日、契約終了日が挙げられます。これらは、契約の全体像を把握するうえで欠かせない情報です。
これらに加えて、自動更新の有無や解約通知期限、管轄部署、担当者名なども追加することで、契約内容に関する問い合わせが必要になった際に、すぐに責任者へ連携できる体制が整います。
さらに、契約金額、支払い条件、秘密保持義務の有無など、自社の業務に必要な項目を追加することで、より実用的な管理台帳になるでしょう。
管理台帳の基本フォーマットを作成する
洗い出した管理項目を基に、エクセルで管理台帳を作成します。1行目に各管理項目を見出しとして入力し、2行目以降に個々の契約情報を記載していくのが基本的な構成です。
また、入力規則機能を活用することで、日付は「YYYY/MM/DD」形式、部署名はドロップダウンリストから選択するなど、入力形式を統一できます。これにより、入力ミスや表記ゆれを防ぎ、台帳の正確性が向上します。
さらに、1行目の項目名を「テーブルとして書式設定」すると、見た目が整うだけでなく、並べ替えやフィルタリング機能も使いやすくなるでしょう。
関数を使って、更新日を自動で計算させる
エクセルの関数機能を活用すれば、契約更新に関する日付計算作業が大幅に効率化します。
例えば、EDATE関数を使用すると、契約開始日と契約期間(月数)から、契約終了日や次回更新日を自動的に算出できます。また、TODAY関数と組み合わせれば、契約満了までの残り日数をリアルタイムで表示させることも可能です。
さらに、IF関数を併用することで、「残り30日以下」になった契約に対して「要確認」などのフラグを自動で立てる仕組みも実現します。
条件付き書式で、更新期限が近い契約を可視化する
条件付き書式は、見落としを防ぎ、効率的に優先順位を把握するうえで有効な機能です。契約満了までの残り日数に応じて、セルの背景色を自動的に変更することで、更新時期が近い契約を一目で識別できます。
例えば、「残り30日以下は黄色」「残り7日以下は赤色」「期限切れはグレー」といったルールを設定すれば、各契約の緊急度を視覚的に把握することが可能です。
また、複数の条件を組み合わせることで、より細かなステータス管理も実現できます。これにより、契約ごとの状況を正確に把握し、適切な対応が取りやすくなるでしょう。
契約更新管理にエクセルを使うメリット
エクセルを契約更新管理に活用することには、多くのメリットがあります。
以下では、エクセルを使用することの3つの主要なメリットについて詳しく解説します。
- 追加コストをかけずに始められる
- 項目を自由にカスタマイズできる
- 業務の延長で手軽に操作できる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
追加コストをかけずに始められる
エクセルの最大のメリットは、追加投資なしで契約管理を始められることです。多くの企業ではすでにMicrosoft Officeが導入されていると考えられるため、新たなソフトウェアの購入費用や導入コストが発生しません。
専用の契約管理システムのような月額利用料も不要であり、ランニングコストを気にすることなく、継続的に利用できます。また、多くの社員が基本的な操作に慣れているため、特別な研修や学習期間も必要ありません。
初期費用や導入ハードルが低いため、まずは手軽に契約管理を改善したい企業に適したツールでしょう。
項目を自由にカスタマイズできる
エクセルの柔軟性は、契約管理において大きな強みです。
管理項目の追加・削除が自由にできるため、自社の運用ルールや業界特性に合わせた最適な管理台帳を作成できます。例えば、部署ごとに異なる管理項目が必要な場合でも、シートを分けたり、列を追加したりすることで柔軟に対応可能です。
専用システムでは対応できないようなニッチな管理項目や、独自の計算式も自由に組み込めるため、きめ細かな管理が実現できるでしょう。
業務の延長で手軽に操作できる
エクセルは多くのビジネスパーソンにとって日常的に使用するツールであり、新しい操作を覚える必要がありません。データの入力、修正、並べ替え、フィルタリングといった基本的な操作は、普段の業務で培ったスキルをそのまま活用できます。
さらに、グラフ作成機能を使えば、契約数の推移や部門別の契約金額を簡単に可視化でき、経営判断の資料としても活用できるでしょう。他の業務で作成したエクセルファイルとの連携も容易であり、データの二次利用も簡単に行えます。
契約更新管理にエクセルを使うデメリット
エクセルでの契約管理には多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。
以下では、エクセル管理の4つの主要なデメリットについて詳しく解説します。
- ファイルが属人化しやすく、担当者不在時に困る
- 手作業が多く、入力ミスや更新漏れが発生しやすい
- 複数人でのリアルタイムな共同編集ができない
- 契約件数が増えると動作が重くなり、管理が煩雑になる
それぞれのデメリットを見ていきましょう。
ファイルが属人化しやすく、担当者不在時に困る
エクセルでの契約管理で最も深刻な問題は、ファイルの属人化です。管理ファイルが特定の担当者のPC内にのみ保存されていると、その人が不在の際に、誰も契約状況を確認できなくなってしまいます。
また、作成者独自の複雑な関数やマクロが組まれている場合、他の人が内容を理解したり、修正したりすることが困難になるでしょう。加えて、担当者の退職時に適切な引き継ぎが行われないと、重要な契約情報やノウハウが失われるリスクも高まります。
これにより、契約更新の見落としや手続きの遅延など、企業にとって重大な損失を招く危険もあるのです。
手作業が多く、入力ミスや更新漏れが発生しやすい
エクセルでの契約情報管理は基本的に手作業で行うため、ヒューマンエラーが発生しやすい環境です。タイプミス、コピー&ペーストの間違い、日付の入力ミスなど、さまざまなエラーが潜在的に存在します。
契約件数が増えるにつれて入力作業は煩雑になり、チェック体制が不十分だと、致命的な更新漏れにつながるリスクが高まります。また、担当者が定期的にファイルを確認しない限り、更新時期を見逃してしまうため、自動リマインド機能を持つ専用ツールと比べると確実性に欠ける点も課題です。
複数人でのリアルタイムな共同編集ができない
デスクトップ版のエクセルは基本的に同時編集に対応しておらず、誰かがファイルを開いていると他の人は閲覧しかできません。この制限により、複数の担当者が同時に契約情報を更新する必要がある場合、作業効率が大幅に低下します。
さらに、最新版がどれか分からなくなったり、古い情報で上書きしてしまったりする問題も頻繁に発生するでしょう。共有サーバーに置いても排他制御がかかるため、法務部門と営業部門が連携して管理するような運用には適していません。
契約件数が増えると動作が重くなり、管理が煩雑になる
エクセルは大量のデータ処理に適していないため、契約件数が増加するとさまざまな問題が発生します。例えば、数百件を超える契約データを入力すると、ファイルの起動や計算処理が遅くなり、日常的な作業効率が著しく低下するでしょう。
さらに、データ量の増加に伴い、フィルタリングや並べ替えにも時間がかかるようになるため、必要な情報を素早く見つけることが困難になります。
また、契約書原本へのリンクを貼る運用では、ファイルの移動やサーバーの変更によってリンク切れが発生し、管理体制が崩壊する可能性もあるのです。
エクセルでの契約更新管理を失敗させないための注意点
エクセルでの契約管理を成功させるためには、適切な運用ルールの設定と徹底が不可欠です。
以下では、エクセル管理でよくある失敗を防ぐための4つの重要な注意点について解説します。
- 入力ルールを定めて、表記ゆれを防ぐ
- ファイルの保管場所と命令規則を統一する
- 定期的にバックアップを取得し、変更履歴を残す
- アラート機能を活用して、更新漏れを徹底的に防ぐ
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
入力ルールを定めて、表記ゆれを防ぐ
契約管理において、表記の統一は検索性と正確性を保つうえで非常に有効です。例えば、「株式会社」と「(株)」、「東京都千代田区」と「千代田区」のような表記ゆれは、検索漏れや重複登録の原因となります。
エクセルの「入力規則」機能を活用し、企業名や部署名をドロップダウンリストから選択する仕組みを作れば、誰が入力しても表記が統一されます。
また、日付形式も「YYYY/MM/DD」で統一し、半角・全角の使い分けも明確にルール化することが必要です。これらのルールを徹底することで、データの品質の維持、契約管理の効率化が期待できます。
ファイルの保管場所と命名規則を統一する
契約管理ファイルの適切な保管は、情報共有と業務継続性を確保するうえで不可欠な要素です。
管理ファイルを管理する際は、個人のPCではなく、アクセス権限を適切に設定した共有サーバーの指定フォルダに保管しましょう。セキュアな環境において、クラウド上にエクセルデータを置くというやり方も考えられます。
ファイル名は「【契約管理台帳】_YYYYMMDD_v01.xlsx」のように、内容、日付、バージョンが分かる規則で統一することが重要です。こうすることで、複数のファイルが混在しても目的のファイルをすぐに見つけられ、誤って古いファイルを使用したり、データの重複や混乱を防ぐことができます。
定期的にバックアップを取得し、変更履歴を残す
エクセルファイルは、誤操作やシステム障害により、簡単にデータが失われる可能性があります。そのため、週次や月次など、定期的にファイルのバックアップを取得する運用を確立し、万が一の事態に備えることが重要です。
エクセルの「変更履歴」機能を有効にすれば、「誰が」「いつ」「どのセルを」変更したかを記録でき、不正な更新や誤操作の発見に役立ちます。
バックアップファイルは、管理ファイルとは物理的に異なる場所(別のサーバーやクラウドストレージ)に保存することで、災害時のリスクも軽減できるでしょう。
アラート機能を活用して、更新漏れを徹底的に防ぐ
エクセル単体では自動通知機能がないため、工夫してアラート機能を実装する必要があります。条件付き書式を活用し、更新期限が迫った契約のセルを目立つ色に変更することで、視覚的なアラートとして機能させることができます。
さらに、Power AutomateなどのRPA(Robotic Process Automation)ツールと連携すれば、特定の条件を満たした際に担当者へメール通知を送る仕組みも構築可能です。これらのアラート機能を活用することで、更新漏れのリスクを大幅に減らし、契約管理の精度を大きく高められます。
まずは、エクセルで契約更新管理を始めてみよう
エクセルでの契約更新管理は、無駄なコストを抑えながら、効率的な管理体制を構築できる手段です。管理項目の洗い出し、関数や条件付き書式の活用により、基本的な契約管理機能を十分に実現できます。
しかし、属人化や手作業によるミスといったデメリットもあるため、注意が必要です。入力ルールの統一やファイルの適切な管理、定期的なバックアップ、さらにはアラート機能の活用など、しっかりとした運用ルールを確立することが重要になります。
こうしたポイントを押さえることで、多くのリスクを回避し、安定した契約管理が実現します。まずは本記事の内容を参考に、エクセルでの契約更新管理をスタートしてみましょう。