受付を無人化するには? メリットから方法、注意点まで徹底解説

少子高齢化による労働人口の減少は、ノンコア業務である受付担当者の確保を困難にしているのが現状です。そのなかで、受付の無人化は、深刻化する人手不足への対策や、企業全体のDX推進の一環として多くの企業で検討されています。
本記事では、受付無人化の概要からメリット・デメリット、具体的な導入方法、注意点までを詳しく解説します。受付の無人化を検討している企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。
受付の無人化とは?
受付の無人化とは、これまで人間が行っていた来客対応や取次業務を、デジタルシステムで代替することを指します。具体的には、タブレット端末や専用機器を受付に設置し、来訪者が自身で操作して担当者を呼び出す仕組みが一般的です。
来訪者は画面上で訪問先を選択したり、QRコードをかざしたりすることで、担当者に直接通知が送られる仕組みになっています。これにより、受付担当者が常駐していなくてもスムーズな来客対応が可能となり、業務の属人化を防げるのです。
受付を無人化するメリット
受付の無人化は、企業に多くのメリットをもたらす戦略的な取り組みです。例えば、以下のようなメリットが挙げられます。
- 人件費を削減し、コア業務へリソースを集中させる
- 担当者への取次を自動化し、来客対応をスムーズにする
- 入退館記録をデータ化し、セキュリティを強化する
ここでは、受付無人化がもたらすメリットについて詳しく解説します。
人件費を削減し、コア業務へリソースを集中させる
受付担当者の人件費を大幅に削減できるのは、無人化を導入する大きなメリットです。受付スタッフの人件費と比べて、無人受付システムの導入はコストを大きく抑えられます。
これにより、軽減できた人件費は他の投資に回し、企業の成長に直接貢献する施策に活かせられます。また、創出された人的リソースは、より専門性や創造性が求められるコア業務へ振り分けられ、有効活用されるでしょう。
担当者への取次を自動化し、来客対応をスムーズにする
無人受付システムは、担当者への取次業務を完全に自動化します。これにより、システムが担当者へ直接通知を送るため、受付での取次にかかる時間や手間、伝達ミスといった、従来の課題を解決できます。
SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールやスマートフォンアプリに通知が届けば、担当者はどこにいても、リアルタイムで来客を把握することが可能です。来訪者を待たせる時間が大幅に短縮されるため、顧客満足度の向上につながり、スムーズな商談開始にも貢献するでしょう。
入退館記録をデータ化し、セキュリティを強化する
無人受付システムは、来訪者情報を手書きではなく、デジタルデータとして記録するため、正確な入退館管理が実現します。「いつ」「誰が」「誰に会うため」に来訪したかの記録が自動的に蓄積され、後からの検索や確認も容易です。
このデータは改ざんが困難で、監査対応や追跡調査にも活用できます。そのため、システム導入により、企業のセキュリティ体制が大幅に強化されるでしょう。また、不審者の侵入防止や特定エリアへのアクセス制限なども、システムと連携することで実現可能です。
受付の無人化のデメリットと対策
受付の無人化には多くのメリットがある一方で、導入前に把握しておくべきデメリットも存在します。代表的なデメリットは、以下のとおりです。
- システムの導入や運用にコストがかかる
- 機械的な対応で温かみが伝わりにくい
- システムトラブル発生時の対応が必要になる
以下では、それぞれのデメリットとその対策について詳しく解説します。
システムの導入や運用にコストがかかる
無人受付システムの導入には、初期費用や月額のランニングコストが発生することを理解しておきましょう。これらの費用は、導入するシステムの種類、企業規模、必要機能により、大きく異なります。
しかし、クラウド型のサービスを選択すれば、高価なサーバー設置が不要で、初期費用を大幅に抑えられる場合が多いです。コストを抑える複数のサービスを比較検討し、自社の規模や必要な機能に見合った料金プランを選択することが肝心です。
機械的な対応で温かみが伝わりにくい
システムによる画一的な対応は、有人受付ならではの温かみや、おもてなしの心を伝えにくいという側面があります。特に、接客業やサービス業など、顧客対応を重視する企業では、この点が大きな懸念事項となるかもしれません。
対策として、企業のブランドイメージに合った画面デザインや、親しみやすい案内メッセージを設定する工夫が有効です。また、音声案内を活用したり、アバターを表示したりすることで、より人間らしい対応を演出できます。
システムトラブル発生時の対応が必要になる
停電やネットワーク障害、機器の故障など、システムが利用できなくなるリスクに備える必要があります。完全に無人化してしまうと、トラブル発生時に来訪者が困惑し、企業イメージを損なう可能性もあるでしょう。
対策として、システム停止時の代替運用フロー(内線電話の設置、担当部署への連絡方法の掲示など)を必ず準備しておくことが大切です。また、迅速な復旧を支援してくれる、手厚いサポート体制を持つサービス提供者を選ぶことも極めて重要です。
受付を無人化する方法
受付の無人化を実現する方法は、企業の規模や予算、求める機能によってさまざまな選択肢があります。代表的な受付無人化の方法は、以下のとおりです。
- 多機能な「無人受付システム」を導入する
- 手軽な「タブレット受付」を設置する
- 「電話・内線」で直接担当者を呼び出す
ここでは、それぞれの特徴と適用場面を詳しく解説します。
多機能な「無人受付システム」を導入する
最も効果的な方法が、チャット連携や入館証発行といった、多機能な専用の無人受付システムを導入することです。これらのシステムは、来客通知、アポイント管理、入退館管理、会議室予約など、受付に関わる業務を幅広くカバーします。
ビジネスチャットへの自動通知、カレンダーシステムとの連携により、受付業務以外の効率化も期待できるため、投資対効果が高いといえるでしょう。セキュリティ機能も充実しており、ICカード認証や顔認証といった、高度な入退館管理も可能です。
手軽な「タブレット受付」を設置する
iPadなどの汎用タブレットに受付アプリをインストールし、手軽かつ低コストで無人化を実現する方法もあります。初期投資を抑えられるため、スモールスタートで無人化を試したい企業におすすめです。
機能はシンプルなものが多く、来訪者が担当者名や部署名で検索して呼び出す、基本的な操作が中心となります。アプリによっては、来客履歴の記録や簡単な入館証の発行機能を備えているものもあり、小規模ながら効果的な運用が可能です。
「電話・内線」で直接担当者を呼び出す
最もシンプルでコストのかからない方法として、受付に電話機や内線を設置し、来訪者が直接担当者を呼び出す運用があります。システム導入コストはほぼゼロで、既存の電話設備を活用できるため、すぐに実施可能な方法です。
ただし、担当者不在時の対応が難しく、正確な来客履歴も残らないため、セキュリティや管理面での課題が存在します。また、来訪者にとっても操作が分かりにくい場合があり、満足度の低下につながる可能性もあるでしょう。
受付の無人化で注意すべき点
受付の無人化を成功させるためには、技術的な導入だけでなく、組織的な準備と計画が不可欠です。特に、以下の点には注意してください。
- 何のために導入するのか、目的を明確にする
- 運用ルールを定めて、社内の周知を徹底する
- 緊急時やトラブル発生時の対応策を決めておく
ここでは、無人化を導入する際、特に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
何のために導入するのか、目的を明確にする
「なぜ受付を無人化するのか」という目的を明確にし、関係者間で共有することが導入成功に欠かせません。「コスト削減」「業務効率化」「セキュリティ強化」「従業員の働き方改革」など、最も優先したい目的を具体的に定義しておくことが重要です。
目的が曖昧なまま導入すると、システム選定の基準がぶれたり、導入後の効果測定ができなかったりと問題が生じます。明確な目的があれば、それに応じたKPIを設定し、導入効果を定量的に評価できるでしょう。
運用ルールを定めて、社内の周知を徹底する
システム導入後、従業員がどのように来客対応を行うか、具体的な運用ルールを事前に定めておく必要があります。来客通知を受けたら誰が何分以内に迎えに行くのか、担当者不在時は誰が代理で対応するのか、優先順位はどうするのかなど、詳細なルールを設定しましょう。
また、来訪者への説明方法や、システムの操作サポートをどのように行うかも明確にすべきです。定めたルールはマニュアル化し、全従業員への説明会開催や研修実施を通じて、導入前に周知を徹底してください。
緊急時やトラブル発生時の対応策を決めておく
システムがダウンした場合や、操作が分からず困っている来訪者がいた場合の対応策を、あらかじめ決めておきましょう。受付の近くに内線電話を設置したり、担当部署の連絡先を明記した案内板を用意したりすることで、トラブル時でも対応可能な体制を整えます。
また、システムの不具合を検知したら、誰がどのような手順で対応するのか、ベンダーへの連絡方法なども明確にしておくのが望ましいです。定期的な避難訓練のように、トラブル対応訓練を実施することで、実際の場面でも慌てずに対処できるようになります。
計画的な準備で、受付の無人化を成功させよう
受付の無人化は、人手不足対策やDX推進の有効な手段として、多くの企業で導入が進んでいます。人件費削減、業務効率化、セキュリティ強化など、無人化がもたらすメリットは計り知れません。
一方で、導入コストや機械的な対応への懸念、システムトラブルへの対策など、事前に検討すべき課題も存在します。本記事を参考に、自社に適した無人化方法を選び、受付の無人化を成功させましょう。