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契約書の自動更新トラブルを回避する方法|原因・事例・対策を解説

契約書の自動更新トラブルを回避する方法|原因・事例・対策を解説

契約書の自動更新は業務効率化に貢献する一方で、適切に管理されなければ思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。不要なコストの発生や解約できない状況など、企業経営に直接的な影響を与える問題も少なくありません。

本記事では、実際に起こりやすい自動更新トラブルの事例やその原因、トラブル発生時の対処法を解説します。自動更新される契約書の管理を任されている企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
弁護士法人山本特許法律事務所  パートナー弁護士 

【この記事のポイント】

  • 契約書の自動更新は管理不備により、不要な契約継続や解約不能など、経営リスクを招く恐れがある。
  • 主な原因は自動更新条項の理解不足、更新・解約期限管理の欠如、属人化した契約管理体制である。
  • 防止策は契約管理台帳での一元管理、期限前のリマインド、自動更新条項の精査、解約手続きのマニュアル化である。

契約書の自動更新でよくあるトラブル事例

自動更新条項は便利な仕組みですが、管理が不適切だと、さまざまなトラブルの原因となります。特に起こりやすいトラブル事例は、以下のとおりです。

  • 意図せず契約が更新され、不要なコストが発生する
  • 解約通知期間を過ぎてしまい、契約が解除できない
  • 自社に不利な条件のまま、契約が更新される
  • 担当者の変更で引き継がれず、不要な契約が続いてしまう

ここでは、それぞれのトラブル事例を解説していきます。

意図せず契約が更新され、不要なコストが発生する

最も多いトラブルは、すでに利用していないサービスの契約が自動更新され、無駄な支払いが継続してしまうケースです。例えば、プロジェクト終了後に不要となったクラウドサービスやソフトウェアライセンスの解約を忘れ、毎月の利用料が引き落とされ続けることがあります。

この問題は、担当者が自動更新条項の存在を忘れており、解約手続きを怠ることで発生します。特に年間契約の場合、気付いた時には多額の費用が無駄になっているケースも珍しくありません。

解約通知期間を過ぎてしまい、契約が解除できない

解約の意思があるにもかかわらず、契約書で定められた「解約通知期間」を過ぎてしまい、解約が受理されないトラブルも頻発しています。例えば、「契約満了の3ヶ月前までに書面で通知」という条項がある場合、この期限を1日でも過ぎると解約は認められません。

担当者が解約を決定してから実際に通知するまでの社内手続きに時間がかかり、気付いた時には期限を過ぎていたというケースが典型的です。この場合、次の契約期間が満了するまで契約は継続し、その間の料金支払い義務が発生します。

自社に不利な条件のまま、契約が更新される

市場環境の変化により、契約当初は妥当だった条件が、時間の経過とともに自社に不利になることがあります。それにもかかわらず、その条件のまま自動更新されてしまうトラブルには注意が必要です。

IT関連サービスでは、技術革新によって料金が年々下落する傾向にありますが、古い料金体系のまま契約が更新され続けることがあります。こうした状況では、本来であれば可能だった価格交渉やサービス内容の見直し機会を逃しやすいです。

結果として、競合他社より高額な料金を支払い続けることになります。さらに、相手方からの値上げ通知を見落とし、不利な条件での更新が確定してしまうケースもあります。

担当者の変更で引き継がれず、不要な契約が続いてしまう

人事異動や退職によって担当者が変更される際、契約内容の引き継ぎが不十分なために発生するトラブルも深刻です。前任者が管理していた契約の存在そのものが後任者に伝わらず、誰も契約の内容を把握できない状態に陥ります。

この状態では契約の見直しや解約の判断ができず、不要な契約が何年も放置され続けてしまいます。経理部門が支払いだけを続けており、実際のサービス利用部門では契約の存在すら認識していないという事態も起こり得るでしょう。


契約書の自動更新でトラブルが起きる原因

自動更新に関するトラブルは、偶発的に起こるものではなく、組織的な管理体制の不備に起因することがほとんどです。主に、以下のような原因が挙げられます。

  • 内容を正確に理解していない
  • 更新期限や解約通知期間を管理できていない
  • 契約管理体制が属人化している

ここでは、トラブルが起きる原因を解説します。

内容を正確に理解していない

トラブルの最も根本的な原因は、契約締結時に自動更新条項の内容を正確に理解していないことです。多くの場合、契約書の本文に注力するあまり、付随的な条項として扱われがちな自動更新条項を見落としてしまいます。

条項の存在は認識していても、更新後の条件変更の可否や解約通知の具体的な方法など、細かい規定まで確認していないケースも多く見られます。また、契約書の雛形を流用する際、自社の状況に合わせたカスタマイズを行わず、そのまま使用してしまうこともトラブルの一因です。

更新期限や解約通知期間を管理できていない

契約書の更新日や解約通知の期限を適切に管理する仕組みがないことも、トラブルの大きな原因となっています。多くの企業では、契約書を紙媒体のみで保管しており、更新時期を一覧で把握できる体制が整っていません。

担当者が個人の記憶や手帳に頼って管理しているため、多忙な業務のなかで確認を忘れてしまうことがあります。もし1人の担当者が複数の契約を抱えている場合、それぞれの更新時期や解約通知期限を正確に把握するのは難しいでしょう。

契約管理体制が属人化している

契約管理を特定の担当者1人に任せきりにしており、組織的なチェック体制が機能していないことも重大な原因です。担当者が急な休職や退職をした場合、契約に関する情報が共有されていないため、後任者が状況を把握できなくなります。

管理ルールは存在していても実際には運用されておらず、契約内容の定期的な棚卸しが行われていない企業も少なくありません。また、部門間の連携不足により、法務部門、事業部門、経理部門がそれぞれ断片的な情報しか持っていないケースもあります。


契約書の自動更新でトラブルを防ぐためのポイント

自動更新に関するトラブルは、適切な予防策を講じることで大幅に減らせます。ここでは、実務で実践できる以下の4つの対策を見ていきましょう。

  • 契約書管理台帳で更新時期を正確に把握する
  • 更新前にリマインダーで通知する
  • 自動更新条項を契約締結時に精査する
  • 解約時の手続きをマニュアル化して共有する

契約書管理台帳で更新時期を正確に把握する

全ての契約情報を一覧化した管理台帳を作成し、更新日や解約通知期限を一元管理することが、トラブル防止の第一歩となります。台帳には、契約相手、契約期間、自動更新の有無、解約通知期限、担当部署、契約金額などの必須項目を漏れなく記載しましょう。

ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを活用すれば、コストをかけずに管理体制を構築できます。より高度な管理を求める場合は、専用の契約管理システムの導入も検討すべきです。

更新前にリマインダーで通知する

解約通知期限の数ヶ月前に、担当者へ自動で通知が届くリマインダー機能を設定すると、期限の見落としを防げます。GoogleカレンダーやOutlookの予定表機能を使えば、誰でも簡単にリマインダーを設定できるため、特別なシステムは不要です。

通知は解約期限の3ヶ月前、2ヶ月前、1ヶ月前など、複数回設定することで、より確実な対応が可能になります。担当者本人だけでなく、上長や法務部門など、複数の関係者にも通知が飛ぶように設定することで、属人化のリスクも軽減できます。

自動更新条項を契約締結時に精査する

契約を締結する段階で、自動更新条項の内容が自社に不利益でないかを、法務部門を交えて精査しましょう。特にチェックすべきは、解約通知期間が3ヶ月以上前などのように不当に長くないか、更新後の条件が相手方に一方的に有利になっていないかという点です。

通知方法についても、書面のみに限定されている場合は、電子メールでの通知も可能とするよう交渉をおすすめします。必要であれば、自動更新ではなく、その都度合意のうえで更新する「合意更新」への条項変更を提案することも検討しましょう。

解約時の手続きをマニュアル化して共有する

解約通知の方法、通知先、必要書類、期限などを定めた社内マニュアルを作成し、関係者全員で共有することが肝心です。解約通知書のテンプレートを用意しておけば、担当者が迷わず迅速に手続きを進められます。

マニュアルには、通知方法が書面かメールか、宛先は誰か、どのような文言を使用すべきかなど、具体的な手順を明記してください。担当者が変更になってもスムーズに引き継げるよう、誰が見ても理解できる、平易な表現で記載することがポイントです。


自動更新でトラブルが発生してしまった場合の対処法

万全の対策を講じていても、トラブルが発生してしまうことはあります。もし問題が発覚した場合は、以下の手順で対処しましょう。

  • 契約書を再確認して、事実関係を整理する
  • 相手方と協議する場を設ける
  • 弁護士などの専門家に相談して、法的助言を求める

ここでは、それぞれのステップを詳しく解説します。

契約書を再確認して、事実関係を整理する

トラブルが発覚したら、まずは慌てずに契約書原本を確認し、自動更新条項の詳細な内容を正確に把握することから始めましょう。契約期間、解約通知期限、通知方法、更新後の条件など、関連する条項をすべて抜き出し、整理します。

次に、相手方とのやり取りの経緯をメールや書面から時系列で整理し、自社の対応に不備がなかったかを確認してください。契約が更新された事実、更新後の契約条件、そして自社が望む解決策を明確にしてから、今後の対応方針を決めるのが大切です。

相手方と協議する場を設ける

整理した事実に基づき、相手方に状況を説明し、解約や条件変更を希望する旨を伝えて交渉の場を設けましょう。これまでの取引関係や今後の関係性も考慮し、高圧的な態度は避け、まずは相談という形で穏便に話し合いを進めることが賢明です。

相手方も長期的な関係を重視している場合、柔軟な対応を示してくれる可能性があります。交渉では、自社の事情を丁寧に説明し、相手方にとってもメリットとなる代替案を提示することで、合意に至りやすくなります。

弁護士などの専門家に相談して、法的助言を求める

当事者間の交渉で解決が困難な場合は、すぐに弁護士など法律の専門家に相談し、客観的な助言を求めるのがおすすめです。専門家は、契約条項の有効性や法的な解釈に基づいて、自社にとって最適な解決策を提示してくれます。

また、契約内容に不当な条項が含まれている場合や、相手方の対応が不誠実な場合は、法的措置も視野に入れた対応が可能です。弁護士は交渉の代理人として相手方との交渉を行うこともでき、より有利な条件での解決が期待できます。


契約書の自動更新トラブルをなくし、適切な契約管理を実現しよう

契約書の自動更新トラブルは、企業に予期せぬコストや法的リスクをもたらす可能性があります。しかし、適切な対策を講じれば、十分に防ぐことが可能です。

トラブルを未然に防止するには、契約内容の正確な理解、組織的な管理体制の構築、定期的な見直しの実施が欠かせません。加えて、契約管理台帳による一元管理、リマインダー機能の活用、解約手続きのマニュアル化など、具体的な対策を着実に実行することが重要です。

万が一トラブルが発生してしまっても、冷静に事実関係を整理し、相手方との協議や専門家への相談を通じて、適切な解決を目指しましょう。


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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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