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出勤簿の保存期間は5年! 労働基準法改正後の起算日や罰則、正しい保管方法を解説

出勤簿の保存期間は5年! 労働基準法改正後の起算日や罰則、正しい保管方法を解説

出勤簿は、企業が従業員の労働時間を正確に記録するための重要な書類です。2020年の労働基準法改正により、保存期間が従来の3年から5年に延長されました。

しかし、経過措置により当面は3年保存でも問題ないとされているため、実際の運用方法に迷う企業も少なくありません。

本記事では、出勤簿の保存期間に関する最新の法律情報から、起算日の正しい考え方、違反時の罰則、そして適切な保管方法まで、企業の労務管理担当者が知っておくべきポイントを詳しく解説します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

出勤簿の保存期間は原則5年(当面は3年)

出勤簿の保存期間については、2020年4月に施行された労働基準法の改正により、従来の3年から原則5年へと延長されました。

ただし、現時点では経過措置として3年保存でも即座に違法とはなりません。

労働基準法で定められた保管義務

企業は労働基準法第109条に基づき、出勤簿などの労働関係書類を保存する義務があります。この保存義務は、タイムカードやICカードの打刻記録、残業命令書なども対象です。

保存義務を怠ると、労働トラブルや行政調査の際に企業側が不利な状況に陥りかねません。特に労働基準監督署の調査では、これらの書類の提出を求められることが多く、適切に保存していない場合は法令違反として指摘を受ける恐れがあります。

法改正で保存期間が延長された

2020年4月の法改正で、賃金請求権の時効が従来の2年から5年に延長されました。これに伴い、関連する証拠書類としての出勤簿についても、保存期間が5年に見直されたという経緯があります。

この改正は、未払い賃金や残業代の請求をめぐる労働者の権利を保護する目的で行われたものです。したがって、企業にはより長期間にわたって正確な労働時間の記録を保持し、万が一の紛争に備える責任が求められるようになったと言えるでしょう。

「当面3年」の経過措置の内容

今回の法改正には経過措置が設けられており、当分の間は、従来どおり3年間の保存でも法的に罰則の対象とはなりません。

とはいえ、この措置がいつ終了するかは明確にされていないため、実務上は5年間の保存体制を整えておくことが望ましいと言えます。現時点から5年保存を基本としておくと、将来の法改正リスクや時効延長に伴う、未払い賃金請求に備えられるでしょう。

多くの企業では、この機会に勤怠管理システムの見直しや、書類保管方法の改善を進めており、デジタル化による効率的な管理体制の構築を図っています。

他の勤怠関連書類も合わせて保存する

出勤簿だけでなく、労働者名簿や賃金台帳も同じく5年(当面3年)の保存義務があります。これらは「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準監督署の調査で必ず確認される、極めて重要な書類です。

これらの書類を連携して管理することで、勤怠管理と給与計算の正確性を担保し、管理業務を効率化できます。労働者名簿には従業員の基本情報が、賃金台帳には支払った賃金の詳細が記録されており、出勤簿と照合して労働実態を正確に把握できるのです。


出勤簿の保存期間はいつから数える? 起算日の正しい考え方

出勤簿の保存期間を正しく管理するためには、起算日の正確な理解が不可欠です。多くの企業が誤解しやすいのが、従業員の退職日を起算日とする考え方ですが、これは正しくありません。

法律で定められた起算日は「最終賃金支払日」であり、この日から保存期間をカウントする必要があります。

起算日は従業員の退職日ではない

保存期間のカウントを開始する「起算日」は、従業員が退職した日ではありません。退職日を起算日と誤解すると、法律で定められた期間より早く重要書類を破棄してしまうリスクがあります。

労働関係書類の保存期間は、書類ごとに“関連する最後のイベント”を基準にしてカウントします。出勤簿の場合は、それが「賃金の支払日」です。

この誤解は多くの企業で見られる問題であり、労働基準監督署の調査で指摘を受ける要因となりかねません。

正しい起算日(最終賃金支払日)から計算する

出勤簿の保存期間は、その記録にかかる賃金の「最後の支払日」から数え始めるのが正解です。例えば、3月分の給与が4月25日に支払われた場合、3月の出勤簿の起算日は4月25日となります。

「給与締め日」や「退職日」ではないため、実際の支払日を正確に把握し、それを基準に保存期間を設定しましょう。このルールは、賃金請求権の時効起算日ともリンクしており、法的な整合性を保つうえでも重要なポイントです。

具体的な計算方法

具体例として、2025年3月31日に退職した従業員の最終給与が、2025年4月15日に支払われたケースを考えてみましょう。

この場合の起算日は「4月15日」となり、5年保存なら「2030年4月14日」まで、3年保存でも「2028年4月14日」まで、出勤簿を保管する必要があります。

実務では、エクセルや勤怠管理システムを活用して、従業員ごとの保存期限を管理する体制を整えておくと安心です。


出勤簿の保存義務に違反した場合の罰則とリスク

出勤簿の保存義務違反は、単なる書類管理の不備では済まされない、重大な法令違反行為です。労働基準法では明確な罰則が定められており、企業には厳格な管理が求められています。

罰則だけでなく、労使トラブルの際に企業が不利な立場に置かれるリスクもあります。

労働基準法違反により、30万円以下の罰金が課される

出勤簿の保存義務に違反した場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。この罰則は、保存期間を守らなかった場合だけでなく、記録の改ざんや意図的な不作成も対象です。

罰金は直接的な金銭損失であり、企業の社会的信用を大きく損なう要因にもなりかねません。特に上場企業や公共事業の受託企業にとっては、違反が公表されることで取引停止や入札参加資格の喪失といった、深刻な影響を及ぼすこともあります。

労働基準監督署からの是正勧告が来る

労働基準監督署の調査で保存義務違反が発覚した場合、まずは是正勧告書が交付され、改善を指導されます。

是正勧告に従わず、悪質と判断された場合には、書類送検されて罰金刑に至る可能性や、労働基準監督署のHPで企業名や所在地などの企業情報が公表されることがあります。

日頃から勤怠管理や書類保存の体制を整えておくことで、調査への対応もスムーズになり、リスクを最小限に抑えることが可能です。

なお、是正勧告の事実は内部だけにとどまらず、企業の評判や取引先との信頼関係にも悪影響を及ぼす恐れがある点に注意しましょう。

未払い残業代など、従業員とのトラブルにつながる

出勤簿は、残業時間や休日出勤の客観的な証拠となり、未払い賃金請求の際に極めて重要な資料となります。この記録が欠けている、または不正確である場合、従業員が主張する労働時間がそのまま認められるケースも少なくありません。

未払い賃金請求や労働審判、裁判において、出勤簿の不備が企業にとって大きなリスクとなることは十分に想定しておく必要があります。適切な勤怠記録を残すことは、法令遵守のためだけでなく、将来的な労使トラブルから企業を守る重要な防御策と言えるでしょう。


出勤簿の正しい保存方法と注意点

出勤簿の保存は、単に書類を保管するだけでなく、法的要件を満たした適切な方法で行う必要があります。紙媒体と電子データでは保存方法が異なり、それぞれに注意すべきポイントがあるため、把握しておきましょう。

また、保存期間満了後の廃棄も、個人情報保護の観点から慎重な対応が求められます。

紙媒体のファイリング方法を徹底する

紙のタイムカードなどは、従業員ごと、年度ごとに分類し、誰が見ても分かるように整理してファイリングします。保管場所は、鍵のかかるキャビネットなどを利用し、部外者や権限のない社員がアクセスできない環境を整備しましょう。

また、紙の劣化や印字の消失を防ぐため、高温多湿や直射日光を避けた環境での保管が重要です。定期的に保管状態を確認し、劣化が進んでいる書類は、電子化してバックアップを取ることも検討すべきでしょう。

電子帳簿保存法の要件を満たして、データ保存する

勤怠管理システムのデータなどを電子保存する場合、「電子帳簿保存法」が定める要件を満たす必要があります。訂正や削除の履歴が残ること(真実性の確保)と、速やかに表示・印刷できること(可視性の確保)が求められます。

これらの要件を満たさない場合、正式な証拠として認められないリスクがあるため、システム導入時には仕様をよく確認することが不可欠です。特にクラウド型の勤怠管理システムを利用する場合は、サービス提供事業者が電子帳簿保存法に対応しているかどうか、事前に確認しておくと安心です。

保存期間が過ぎた書類は、安全に廃棄する

保存期間が満了した出勤簿は、個人情報が記載されているため、安全かつ確実に廃棄しなければなりません。個人情報漏洩のリスクを避けるため、シュレッダーで裁断するか、溶解処理を行う専門業者に依頼しましょう。

安易に一般ゴミとして廃棄すると個人情報保護法に抵触する恐れがあるため、廃棄方法のルールを定めるべきです。例えば、「いつ・どの書類を・どのような方法で廃棄したか」といった記録を、台帳などに残しておくとよいでしょう。


出勤簿の保存期間とルールを理解し、適切な勤怠管理をしよう

出勤簿の保存期間は、2020年の労働基準法改正により、原則5年(当面3年)となりました。起算日は従業員の退職日ではなく、最終賃金支払日から数えることが重要なポイントです。

保存義務違反には、30万円以下の罰金や労働基準監督署からの是正勧告などの罰則があり、未払い賃金トラブルのリスクも高まります。紙媒体は適切な環境でファイリング管理し、電子データは電子帳簿保存法の要件を満たしての保存が求められます。

従業員とのトラブルを回避するために、使用者はしっかりと法改正の知識をつけ、適切な勤怠管理ができる方法を検討してみてください。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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