ファイル転送サービスとは? メリットや安全な選び方を初心者にも分かりやすく解説

メールでは、容量制限を超えたファイルを送信できないため、どのようにファイルを共有すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ファイル転送サービスは、そんな悩みを抱える企業にとって欠かせないツールです。
本記事では、ファイル転送サービスの基本的な仕組みや導入メリット、選び方のポイントを詳しく解説します。ファイル転送サービスで、ファイルの共有を安全かつスムーズに行いたい方は、ぜひ参考にしてください。
ファイル転送サービスとは?
ファイル転送サービスは、インターネットを通じて大容量データを安全に送受信できるクラウドサービスです。メールでは送れない数GBから数百GBという巨大なファイルも、簡単な操作で相手に届けられます。
ここでは、従来の方法との違いや、ビジネスで必要とされる理由について詳しく見ていきましょう。
メール添付やクラウドストレージとの違い
ファイル転送サービスは、大容量ファイルの「送受信」に特化している点で、メール添付やクラウドストレージとは明確に異なります。
メール添付では、通常10~25MB程度の容量制限があり、それを超えるファイルは送信できません。また、PPAP(パスワードつきZIPファイルの送信)の問題点が指摘されるなか、ファイル転送サービスはより安全な代替手段として注目されています。
クラウドストレージは「保管・共同編集」が主目的であるのに対し、ファイル転送サービスは一時的なデータ共有に最適化されています。送信履歴の管理やダウンロード通知など、ファイルを確実に届けるための機能が充実しているのが特徴です。
ビジネスでファイル転送サービスが必要な理由
現代のビジネスシーンでファイル転送サービスが不可欠となっている背景には、セキュリティ強化と業務効率向上への強いニーズがあります。テレワークの普及により、社外との安全なデータ共有の必要性が飛躍的に高まっているのが現状です。
従来のPPAPは、セキュリティ上の脆弱性が指摘されており、多くの企業が代替手段を模索しています。物理メディア(USBメモリなど)の受け渡しは、紛失リスクや手間がかかるため、効率的とは言えません。
ファイル転送サービスなら、これらの課題を一挙に解決し、コンプライアンスの強化も実現できるでしょう。
ファイル転送サービスを導入するメリット
ファイル転送サービスの導入により、企業はさまざまなメリットを享受できます。具体的には、以下のようなメリットを得られるでしょう。
- 大容量のファイルをスムーズに送受信できる
- セキュリティを強化できる
- 送受信の管理工数を削減できる
ここでは、上記のメリットを詳しく解説します。
大容量のファイルをスムーズに送受信できる
ファイル転送サービスを利用すれば、メールでは送れない数GB単位の動画や設計データも、容量を気にせず一度で転送できます。従来必要だったファイルの圧縮や分割作業が不要になるため、送信者と受信者双方の作業負担が大幅に軽減されるでしょう。
高速な転送技術により、大容量データでも待ち時間が少なく、ストレスなく円滑なデータ共有が実現します。
4K動画やCADデータ、高解像度の画像など、現代のビジネスで扱うファイルサイズは年々増大しています。これらのファイルを効率的に送受信することで、プロジェクトの進行がスムーズになり、生産性が向上するでしょう。
セキュリティを強化できる
ファイル転送サービスの導入により、従来のPPAPを廃止し、より安全性の高いファイル共有方法を確立できます。通信経路の暗号化(SSL/TLS)やファイル自体の暗号化により、第三者による盗聴やデータ改ざんのリスクを防げるでしょう。
多くのサービスにはウイルスチェック機能が搭載されており、マルウェア感染のリスクも最小限に抑えられます。アクセスログが詳細に記録されるため、誰が、いつファイルをダウンロードしたかを把握でき、不正利用の監視も可能です。
これらの機能により、内部統制の強化とコンプライアンスの向上を同時に実現します。
送受信の管理工数を削減できる
法人向けファイル転送サービスでは、全ユーザーの送受信履歴やアクセス状況を一元管理できるため、IT管理者の運用業務が大幅に効率化されます。送信者が宛先間違いに気づいたり、不要になったファイルを後から取り消せる機能を利用したりすることにより、誤送信時の対応が迅速に行えるでしょう。
上長承認フロー機能を活用すれば、重要なファイルの送信前にダブルチェックを行い、人的ミスを未然に防げます。定期的なレポート機能により、利用状況の把握や監査対応も容易です。これらの管理機能を使えば、セキュリティインシデントのリスクを低減しながら、管理コストの削減も目指せます。
法人向けファイル転送サービスの選び方
法人向けファイル転送サービスは多数存在するため、自社に最適なサービスを選びましょう。特に確認すべきポイントは、以下の4点です。
- セキュリティ機能が充実しているか
- データ容量や保存期間が要件に合うか
- 料金体系が予算と合っているか
- 操作が簡単で、サポート体制が手厚いか
ここでは、上記のポイントについて詳しく解説します。
セキュリティ機能が充実しているか
企業の機密情報を守るため、通信・ファイルの暗号化やウイルススキャンなどの基本的なセキュリティ機能は必須です。IPアドレス制限や二要素認証といった、第三者による不正アクセスを防止する機能が搭載されているかも、重視すべきポイントとなります。
上長承認フローや操作ログの詳細な管理機能は、内部統制や情報漏洩対策の観点から非常に重要でしょう。ISMS(ISO 27001)やプライバシーマークなどの第三者認証を取得しているサービスは、信頼性が高いと言えます。
また、データセンターの所在地や、バックアップ体制についても確認しておくことをおすすめします。
データ容量や保存期間が要件に合うか
自社で扱うファイルの平均的なサイズや、コンプライアンス上必要な保存期間を基準にサービスを選定することが重要です。一度に送信可能なファイル容量や月間の総転送容量が、実際の業務利用に見合っているかを慎重にチェックしましょう。
将来的なデータ量の増加も見越して、上位プランへの変更が容易に行える、柔軟性のあるサービスを選ぶと安心です。保存期間については、短すぎると受信者がダウンロードする前に削除される可能性があるので、注意しなければなりません。
逆に長すぎる保存期間は、セキュリティリスクを高める恐れがあるため、適切な期間設定ができるかを確認します。
料金体系が予算と合っているか
初期費用、月額料金、ユーザー数や転送量に応じた課金体系など、総コストを正確に算出して、比較検討してください。基本料金で利用できる機能と、追加料金が必要なオプション機能を明確に把握し、自社に必要な機能を見極めましょう。
複数のサービスで見積もりを取り、機能と価格のバランスが取れたコストパフォーマンスの高いサービスを選択することが重要です。長期契約による割引制度がある場合は、その条件やメリット・デメリットも検討材料となるでしょう。
隠れたコストがないか、契約更新時の料金変更がないかという点も、事前に確認しておくべきポイントです。
操作が簡単で、サポート体制が手厚いか
ITに不慣れな従業員でも直感的に使えるインターフェースと、トラブル時の迅速なサポートは社内定着の鍵となります。無料トライアルを積極的に活用して、実際の画面でファイルの送受信を試し、誰でも簡単に使える操作性かを評価しましょう。
電話やメールでのサポート対応時間、レスポンスの速さ、マニュアルの充実度といった、万が一の際のサポート体制を確認することが大切です。日本語でのサポートが受けられるか、専任の担当者がつくかなども重要な判断基準となるでしょう。
導入時の研修やトレーニングサービスの有無も、スムーズな社内展開には欠かせません。
ファイル転送サービスを利用する際の注意点
ファイル転送サービスは便利なツールですが、適切に利用しないと、セキュリティリスクが生じる可能性があります。特に、以下の注意点に気をつけましょう。
- 情報漏洩のリスクを理解し、対策する
- 社内での運用ルールを定めておく
- 無料プランに潜む、ビジネス利用のリスクを把握する
ここでは、上記の注意点について解説します。
情報漏洩のリスクを理解し、対策する
サービス自体のセキュリティが高くても、人的ミスによる情報漏洩は起こり得ます。このリスクを防ぐためには、対策を講じることが不可欠です。
まず、送信前には、必ず宛先を確認する習慣を身につけるのが肝心です。メールアドレスの入力ミスや、オートコンプリート機能による誤選択といった些細なミスが、重大な事故につながる可能性があります。
そのため、重要なファイルを送信する際は、複数人でのダブルチェックなど、組織的な対策を入念に行いましょう。
パスワードについても注意すべきです。推測されやすい単純なパスワードは、第三者に解読される危険があるため、英数字と記号を組み合わせた複雑な文字列の使用をルール化しましょう。
また、ダウンロードURLを不特定多数が閲覧できる場所に記載すると、意図しない相手にファイルが渡るリスクがあるため、細心の注意を払う必要があります。
社内での運用ルールを定めておく
全従業員が安全にサービスを利用するために、送信可能な情報の範囲や利用手順を明確なガイドラインとして定める必要があります。パスワードの設定規則、ダウンロードURLの通知方法、保存期間の設定基準といった具体的な操作手順をマニュアル化し、周知を徹底しましょう。
機密レベルに応じた利用可否の基準を設け、重要度の高い情報は別の手段を使うなど、リスクに応じた使い分けも大切です。定期的に利用状況のログ監査を行い、ルールが遵守されているか確認する体制を構築するのが望ましいでしょう。
違反があった場合の対応方針も事前に決めておき、全社的なガバナンスを効かせることが重要です。
無料プランに潜む、ビジネス利用のリスクを把握する
無料のファイル転送サービスは手軽に利用できますが、セキュリティ機能やサポートが不十分なため、法人利用には適していません。無料プランでは詳細なログ管理機能がない場合が多く、情報漏洩などのインシデント発生時に、原因追跡が困難となるリスクがあります。
サービス上に表示される広告が取引先に不信感を与え、自社のブランドイメージを損なう可能性も考慮すべきでしょう。利用規約が頻繁に変更されることがあり、突然のサービス停止や機能制限のリスクも存在します。
また、データの保管場所や管理体制が不透明な場合も多く、コンプライアンス上の問題が生じる恐れがあります。
最適なファイル転送サービスを導入し、安全なデータ共有を実現しよう
ファイル転送サービスは、大容量データの送受信に特化したクラウドサービスとして、現代のビジネスに欠かせないツールです。メール添付の容量制限やPPAPの問題を解決し、セキュリティを強化しながら、業務効率を向上させられるでしょう。
導入時はセキュリティ機能、容量、料金、操作性を総合的に評価し、自社の要件に合ったサービスを選ぶことが重要です。この記事を参考に、自社に最適なファイル転送サービスを導入し、安全でスムーズなデータ共有を実現しましょう。